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酒食徴逐 3

それは心の片隅に置いておく事にして、"古泉夫妻"と別れた俺達はエスカレーターで3階に行き、女性服売場に向かう。
平日だけあってどの階にも男性だけでなく女性も多くはない。
子供を抱えた主婦ならいたが。
階の中央付近にある服売場は男女共にくっついてて、俺もついでに周りを見ながら歩いていた。
「あ、これいいなー」
かがみが俺の元を離れて、気に入った服をじっくり見る。
簡単に言えばVネックの長袖の薄着。
腰の括れが少々きついんじゃないか、とは思ったが女性用だもんな、で心中で納得しておいた。
しばらくすると残念そうな顔でその服をまた元の場所に掛け直すので理由を聞いた。
「ちょっと高いかな、って…」
はぁ、と溜め息をつきながらそれを見つめるので、金額を確認してから、奢ってやるよ、と言った。
「本当?」
ああ、本当だ。
元々そのつもりだったしな。
だから着てみろよ、とかがみに言うと、元気に返事をしてボックスの試着室に入って行った。
俺が試着室近くの服を眺めていると、着替え終えたかがみが声をかけてきた。
少し不安そうな顔で格好を見せるので、俺は昨夜のように褒めてやる。
かがみは照れ臭そうに俺に「ありがと」と言ってカーテンを閉めた。
俺はかがみが再び着替えてる間に家にいる時に良さそうなシャツを見つけたので買うつもりで手にしといた。
試着室から出て来たかがみは他に良さ気なのがなかったらしく、買ったのは2点だけ。
久々に服屋とか来たからか、今時のファッションはあんな派手であったことを再認識した。
行き当たりばったりの街中散策の所為で目的が終わる度に次の行き先悩むのが難点だ。
「とりあえずデパートを回ろう」かがみが言うので俺は迷わず賛成した。
家具や食器の売場に行くと、今日朝飯を作ったかがみが包丁の歯切れが悪いだの言うので、砥石ともう一本包丁を買っといた。

色々回ると、時刻は昼過ぎで二人とも腹の音が鳴り始めた。
俺達は顔を見合わせて苦笑いをして大衆食堂に行くことを決めた。
「あ、ちょっと待って」
かがみが目の前にある様々なチェーン店に目もくれず、左側に駆ける。
「どうした?」
「いや、このブレスレットがいいなって」
店を遠くから見ると、そこはジュエリーショップだった。
どうやらかがみは晒し展示されてる手作りブレスレットの一例に惹かれたようだ。
それを見つけた店員さんが俺達に近付く。
「お客様、如何ですか?」
その女性はにこやかで接客上手そうだった。
かがみ、どうする?
「そうね、欲しいかな」
そうか。
かがみが小さな粒のジュエリーとガラス玉を選択して、店員さんは丁寧にかがみの腕回りに適した紐に通していく。
アクアマリンの藍色、トパーズの黄、エメラルドの緑にダイアモンドの白。鮮やかな腕輪が出来た。
かがみが右手に付けたそれを眺めて笑ってると、店員さんも笑っていた。
レジに向かい、その金額を支払うと、かがみが俺の腕を取って、
「この人のブレスレットも作って貰えますか?」
などと言いやがった。
店員さんはそれを聞くと微動だにせず、はい、と返事をして俺の腕回りを測る。
「買ってくれたから私がアンタのを買ってあげるわよ」
お揃いにしましょ、と楽しそうに言われたら断れそうにない。
俺は適当にかがみに負担をあまりかけないようにガラス玉を多めに選んでたら。
「何遠慮してんのよ、たくさん奢りになったんだからしたいようにしてよ」
その台詞は命令ではなく要望で、そっちの方が従わないといけない感じになる。
俺はかがみから"頼まれた"ダイアモンドやペリドットとかいうまた変わった緑色の宝石だけ増やして、左手に括って貰った。
かがみは少し不満げだったが。
「俺はこれで満足さ。ありがとうな」
と言うと良かったらしく、かがみはそれで支払った。
する事を終えると、腹の音がさっきより激しくなってやがるじゃねぇか。
俺はうっとりしてるかがみを呼んでラーメン屋に注文しに行く。

かがみは昨日居酒屋での油気とかを落としたいらしく、うどんを頼んでいた。
今アイツはどうしてる、俺の近所のだれそれがどうなんだ、と井戸端会議のように二人で飯を食う。
ピリリリリピリリリリ
朝方に聞いた電子音が鳴るので俺がアラームのセッティングミスをしたかと思ったら、かがみの仕事用からだ。
手でゴメンネとジェスチャーをして席を空ける。
それからしばらくして俺が食い終わったラーメンの汁を啜っているとかがみが急いで戻って来る。
「ゴメン!急に仕事の呼び出し喰らっちゃった!」
かがみは俺に話す時間もなさそうだったので、俺は「服は預かってやるよ」と言う。
「ありがとっ、急にゴメンね?」
気にするな、忙しいんだろ?頑張って働いて来い。
「うん、あ、コレもありがと!また今度ね!」
と言いながら右手に付けたブレスレットを俺に見せて去るかがみを俺は手を振って見送る。
当然だがラーメンを食った所為で汗が浮き出てきた俺は、セルフの冷水器で水を大量に飲んでからお盆ごと食器を返してゆっくりと帰路に着いた。

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最終更新:2008年02月19日 19:34
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