七誌◆7SHIicilOU氏の作品です。
「はぁ、今朝よりかなり勢い増してるぞ…」
放課後、自分の黒い傘を構えながら俺は下駄箱から激しくコンクリートを打つ雨を眺める
ここまで勢いがある雨は久しぶりに見た気がする、まったく気が滅入る
と後ろからどたばたと騒々しい足音をたてて馬鹿が現れた
「俺傘もってきてねぇぞ! キョン入れてくれ!」
……こいつ相手に馬鹿じゃ足りんな
「全身全霊 徹頭徹尾 断る、大体朝も雨が降っていた事をにおわす台詞を俺が言った後に
傘を持ってきてない宣言とは一体なんのつもりだ?」
まったく雨を眺めてセンチメンタリズムに浸ることすら許されんのか俺には
「まぁ谷口に何を言っても仕方ないよキョン
僕は折り畳み傘も持ってるからそれを不承不承ながらも谷口に貸すことにするよ」
「すまん国木田」
俺は国木田に礼と別れを、ついでに谷口にも別れを告げて下駄箱を出た
「……はい谷口、壊すなよな?」
「サンキュー国木田! 恩に着るぜぇぇぇ!!!」
「うるさいっ、ちょっと黙ってろ」
…国木田、変わったなお前
「水が染み込む」
水溜りはよけてるものの、この豪雨のなかではやはり普通の靴では耐久性など大した意味はない
突然ぶわっ、と強い風が吹く
俺は傘を少し前に傾けてそれをやり過ごそうとした
「ふぅ、危うく吹き飛ばされるところだっ!?」
傘を元に戻して前に進もうとしたのだが
開けた視界にまた傘があった、というか飛んできている
「ぬおっ」
その傘の向こうに見慣れた顔があり、そいつがこっちに向かって走ってくるのを見て
俺は大体の状況を飲み込みその傘を全身ブロックした
刺さった
「いってぇ~…」
傘の先のとがった部分が俺の腹部に勢いよく刺さった
これは痛い、泣きそうだ、泣かないけど
「すみません先輩! 大丈夫ですか?」
「あぁ、大丈夫だみなみ」
さっきの風で吹き飛ばされた傘、それを追うみなみ
まぁそういうことだったのだろう
俺はまだ多少残る痛みを誤魔化しつつ、俺に全身でボディーブローをかました傘を
「ほら、これみなみのだろ?」
手渡した
「はい、ありがとうございます…あ」
「ん、どうした…あぁ壊れてるな」
みなみの傘は転がり俺にアタックした所為で半分以上の骨が折れていた
これでは雨を防ぐという目的を達成しない
大切なものだったのだろうか、現在その身に降り続ける雨にも微動だにしない
俺はとりあえず自分の位置をずらしてみなみが雨に当たらないようにする
すでにかなりぬれているがぬれ続けるよりはいいだろう
「その傘、大事なものだったのか?」
「いえ…ただ昔から使ってるものだったんです」
それはそれは愛着も付くだろう
そしてそれが壊れてしまったのならやはり悲しいのだろう
俺はなんとか落ち込むみなみを励まそうと言葉を考える
壊れた理由に俺も関与してるのでさらに罪悪感もある
「じゃあさ、今度新しい傘でも買えばいいじゃないか、俺も付き合うよ」
「え、一緒に買いに行ってくれるって事ですか?」
おや、思った以上に効果があったのかみなみの声には覇気が感じられた
やっぱり女の子はショッピングが好きなんだな…、としみじみ思う
「今度の週末でもいいさ、俺は暇だし好きなときに付き合うよ」
とりあえず、話に乗ってくれて元気を出してくれるならなんだっていい
「…デート」
「ん、なんか言ったか? あぁそれとも俺じゃないほうがいいか?」
ショッピングなら女の子同士のほうがいいだろうし、ゆたかとか友達と居れば気も晴れるだろう
「いえ! そんなことないです! じゃあ今週末よろしくお願いします」
どうやら杞憂だったらしい、しかし一気に元気になったな
ショッピングはそんなに楽しいものだろうかね、目的を持ってしか買い物しない俺にはわからない
「あの…先輩、それで今日は傘が壊れちゃったんで」
「あぁ家まで送ってってやるよ、傘は一つしかないけど我慢してくれ」
俺なんかと相合傘はしたくなかろうがな
みなみはそういうと俯いて小さく、はい、といって俺の傘に入った
壊れた傘は一応たたんで持って帰るらしい
さて、今週末ね…
ショッピングを楽しもうとするか
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最終更新:2008年02月21日 20:17