七誌◆7SHIicilOU氏の作品です。
喫茶店、といってもいつものSOS団御用達の喫茶店じゃない
そんなところで休日を過ごそうものならば
ものの5分とせずに団員の誰かに発見されて、即座に八時だよ!になってしまうからな
まぁでも喫茶店であることにはかわりないし
べつにいつものところじゃないからといって現在地を詳しく記す必要もないだろう
とにかく喫茶店で俺はあやのを待っていた
待っていたというと相手が遅れたような印象を受けるかも知れんが
この場合俺が単に少し早めに来ただけであってあやのに非は無い事を明記しておく
カランと入り口にぶら下がる小さな鐘が鳴る
最近の喫茶店は自動ドアで入ったときは電子音でピローンとなるだけだったりするので
そういう面ではこの店を非常に気に入っている
「ごめんねキョン君、待った?」
「いや、今来たところだ」
少し大げさに、芝居がかった調子で俺は答える
ただ単にいい返しが浮かばなかったからテンプレートで答えたのだが
普通にいってもつまらないので、変な感じで答えたのだが
「ふふっ、なら良かった」
俺は正面に座ったあやのを見て安心する
良かった受けたみたいだ、この手のは意外と滑ったときのリスクがでかい
もし素で返されようもんなら俺の精神は海底二万マイルまで沈み込む
「ご注文はお決まりですか?」
店員が素早く注文をとりに来た
対応が早いのはいいが早すぎると少し問題だ
俺はともかくあやのは来たばかりでメニューに目を通してない
だがどうやら最初からあやのはなにを頼むのか決めてたらしく
店員に向かって、長ったらしい名前のパフェを頼んだ
あぁ、俺は普通にコーヒーだなんの捻りも無いが
ここで捻る必要はなんて毛頭無いので気にしない、俺はハルヒとは違う
「えへへ、これ新商品で食べてみたかったんだ」
子供のように舌を出して無邪気に純粋な笑みを浮かべるあやの
自分には到底できない笑顔
とうの昔に忘れたもの、少し羨ましかったけど
この笑顔は自分には似合わないだろうなと苦笑した
「? どうしたのキョン君」
「いや、あやのの笑顔は綺麗だなって思ってさ」
こんな事をさらりと言えるようになった自分に半分驚き、半分呆れ
でも本音には変わりなく、照れるあやのを眺める自分はひどく穏やかな気分だった
と、店員が本来同時にでるとは考えにくいはずの結構豪華なパフェとコーヒーを持って現れた
おぼんから両方を順番において、ごゆっくりといって店員は去っていった
「…でかいな」
「パフェってみんなこんなものよ?」
俺は小さなスプーンでコーヒーをかき混ぜながら感想を呟く
正直俺にはこんな量の甘いものを食えそうにも無いのだが
あやのは平然とスプーンで幸せそうにパフェを食べ始める
甘いものは別腹ってのは事実だったのか…知らなんだ
見てるだけで口の中が甘いので、少し砂糖の量を控えてコーヒーを飲む
結構普通に苦かった
そういえばいつからだったろうか、コーヒーを苦く感じなくなったのは
…いや違うな苦いものを苦いと感じたまま、それをまずいと思わなくなったのは
前はだめだった、苦いや辛いはそのまま等号で美味しくないだったのに
今は苦いものは苦い、辛いものは辛いでそれを普通に口にすることができる
これも成長か、あるいはただの慣れか…
「でも、ブロッコリーは嫌いなままだ」
ぼそっと呟く
呟いた後に、一体俺は何を思考してるのかと馬鹿らしくなった
「ねぇキョン君、一口食べる?」
「んあ?」
変な返答をしてしまった
いやこれはもう返答ではなくただのうめき声だ
あやのはくすくすとそれに笑った後
いつのまにか結構減ったパフェをスプーンですくって
もう一度聞いてきた
「食べる?」
「あぁ、貰うよ」
俺は今度こそ普通に答えてスプーンを受け取ろうとした
「ダメ」
スプーンを引っ込めて渡してくれなかった
あやのは頬を膨らまして俺の事をジッと見る
どうやら俺があやのの意図をわかってそういう行動にでたのはばれてるらしい
俺は諦めて
「わかったわかった悪かった」
「じゃあはい、あ~ん」
スプーンを真っ直ぐ俺に伸ばして
可愛らしい声で俺にパフェを向ける
俺は少々以上の恥ずかしさを感じながらも
それを食べる、もちろん俺はあーんなんて事は言わない
…非常に甘かったし美味かったのだが
やはりその量は絶対に俺には食えそうに無い
パフェの冷たさを口の中で感じた後
コーヒーに手を伸ばす
「うん、甘いの食べた後だから非常に苦い」
「あははっ」
愉快そうに笑うあやの
鶴屋さんのような快活な笑顔じゃなく
ハルヒのような豪快な笑顔でもなく
笑顔、妹やゆたかちゃんに近い笑顔
俺はそれを見て、さっきよりも苦いコーヒーを飲み干した
その後、あやのとウィンドウショッピングをして
なにが欲しいとか、これあったら便利とか
これが可愛いとか、どれが似合うだとか
そんなことをやって別れて
いまは自宅に向かう帰路
のんびりと今日一日の事を思い出しながら歩いていると
携帯
「ん、メールか」
ポケットから引っ張り出して携帯を見ると
こなたからのメールだった
なんだろうかと思い、メールを開くと
本文なしの添付ファイルが一つ
……それも俺があやのにパフェを貰ったときの写真
一体どこで見てやがったあの野郎
もしかしたらこなただけじゃなくて他の連中も居たかもしれないと思うと
背筋が凍る
俺は立ち止まって180度向きを変えて後ろでニヤ付いてるこなたに聞く
「一体どこから見てた?」
「おぅ! よく気が付いたね?」
「携帯の画面にたまたまお前が反射して映ったからな、答えろ」
眉間を押さえて俺はこなたに聞く
俺が答えたのだから、そっちも答えてくれなくちゃこまる
するとこなたは急に腕を組んで
あからさまに芝居がかった調子で
「いや、今来たところだ の辺り」
「最初からじゃねぇか!」
しかし俺が大げさに言った台詞をさらにこなたが演じるように言うと
非常にわざとらしい、無理にキザぶってる馬鹿野郎のような感じだ
どことなく谷口に通じてる気がする程にな
こなたは詰め寄ろうとする俺から素早い身のこなしで距離をとる
「ちょいとキョンキョンにお願いがあるんだけど」
「それは脅迫か?」
「受け取り方しだいだね~」
「…なんだ」
「いや、こんど荷物持ちをしてもらいたいだけだよ
そんな警戒すること無いじゃない」
ストーカーまがいの事を平然としたくせに
盗人猛々しいとは思わんのか
だが荷物持ちくらいならいいだろう
奢らされたりよりは少なくともいいさ
毎日暇人やってるんでね、俺は
懸念事項としてはあやのにあまり見られたくないって事ぐらいだが
まぁあやのに限ってそんな勘違いをするはずも無いだろう
「わかったよ」
俺は不承不承頷いて
メールを開きっぱなしの携帯に視線を落とす
…やはりこっぱずかしい物があるが、保存しとこう
俺は自分の要求が通りしたり顔で頷くこなたにチョップをしながらそう思った
最終更新:2008年02月23日 09:15