七誌◆7SHIicilOU氏の作品です。
春、花粉症には非常に辛い時期である
幸か不幸か、今のところ花粉症とは無縁の人生を歩んできた俺には
その辛さがいかほどのものかはかりかねるが――
「それは絶対幸せですよぅ! 少なくとも不幸じゃありません!」
…人の独白に横から突っ込みを入れないように
俺は横に座っている少女を見やる
彼女はティッシュで鼻をかみ、少し離れたところにあるゴミ箱になげた
ナイッシュ、とでも言えばいいのかね?
「キョンさん、あなたは花粉症の恐ろしさを知らないからそんな事をいえるのです!」
ビシッと俺の目に本当に刺さるんじゃないかというような勢いで指をさす
少女、橘は俺に涙で潤んだ瞳で睨む
ついでに言うと、橘は俺の理解のなさに泣いてるわけでなく
単に花粉症の症状の一つだ、少女が泣いてるというだけで一方的に悪者にされるのはごめんなので
一応ここで言わせて貰うからな
「そりゃ知らんよ、だからわからないって言ってるんだろ?」
「だったらもっと嬉しそうにしなさい! あたしはあなたのようになれたら幸せ絶好調ですよ!?」
一体こいつは何に大して怒ってるのだろうか、もはや理解できない
なぜ俺はこんなにも理不尽な怒りをぶつけられてるのだろう
ただ、こうも思いっきり打算なく怒りをぶつけられるとどうにもこっちが悪い気がするから不思議だ
「まぁ、すまんかった」
「わかればいいんです!」
すまん、まったくわかってない
だが俺も延々と同じ事で言い合うつもりは無いので
口には当然だしはしない
「しかし、いまは花粉99%カットのマスクとかあるだろうに…なんでつけてこないんだ?」
「馬鹿ですかあなたは!?」
あぁ、また怒られた
こんどは何がいけなかったのだろうか
女心なんてのは本当に異国の言語よりも理解できない
六面鏡に向かって万華鏡をかざす位わからない
この例えもわけがわからない
もうなにもわからない
「せっかくキョンさんにお誘い受けたのに、そんなものつけてたら可愛くないじゃないですか」
不貞腐れたように、というか完璧に不貞腐れて橘は
吐き捨てるように真っ直ぐ言ってきた
反応に困る奴である
「俺はまったく気にせんがな」
「それはそれでむかつきます」
「どうすればいいんだよ?」
ん~、と顎に手を当てて橘が思案すると同時に
ぶわっと突風が後ろから吹いた
木々が揺れ、桜の花びらが中に舞う
「桜吹雪…か」
こんなものずいぶんと見ていない
身近のところのこういう美しさってのも捨てたもんじゃ―
「ハックション!」
「…お前は本当に雰囲気に欠けるな」
「ずびばせん」
ため息、の後
俺はベンチから立って提案する
「どっか室内に入れば大丈夫だろ?」
「え!? あたしの家ですか、そんないきなり…」
こめかみが痛い
「いや、どっか店に入ろうと―」
「ホテルですか!? 初めてはもっとロマンティックに…」
まったくこいつと付き合うのは疲れる
それでも嫌いになれないどころか、それも気に入ってるから俺も大したもんだ
とにかく両頬を押さえてキャーキャー言ってる橘を
どうにかして素早く黙らせなくては、……いい加減視線が痛い
「まぁ落ち着け橘、ただ昼時だしなに飯でも食おうと思ってだな」
「あたしを食べるんですか!?」
「ちょっと黙ってろ」
…まったくある意味ハルヒより性質が悪い
「無理やりですか!?」
「あぁもう!」
最終更新:2008年02月23日 09:19