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15.多人数 犬派と猫派

七誌◆7SHIicilOU氏の作品です。


その原因は最初はただのちょっとした会話だった

「キョンキョンて猫飼ってるんだよね~?」

部室でボケッと比較的薄めの本を読んでると
こなたが隣に座ってそう切り出した

「あぁ、雄の三毛猫というアルティメットレアが我が家の、特に俺の部屋を寝床としているぞ」
「だよね、よかった~」

なにがよかったのだろうか?
不思議に思ってると、こなたは鞄から一つの写真集を取り出して俺に渡してきた
まぁ写真集といっても健全なる男子高校生が狂喜乱舞するような代物ではなく
それは写真集といっても猫の写真ばかり集めたやつだった

「へぇ、なかなか可愛いの持ってるんだな」
「うん、私も猫飼って見たいんだけどお父さんがだめでさ」
「そうじろうさん猫ダメなのか…」

たまたまその日は本当に集まりが悪く
俺達以外は長門しか居なかったので
俺とこなたは世間話のようなものを交わしつつ
しばらく写真集を眺めて、この猫が可愛いだとかどうとか言ってた

「遅れた…ってあんた達だけ?」

かがみがバタンと扉を開いて入ってきて
想像以上の人の少なさに肩透かしを食らったように呆けていた

「やぁやぁかがみん、これを見たまへ」

こなたはかがみを手招きして写真集を見せる
かがみはイキナリ自分の顔の真ん前に差し出された写真集に後ろに仰け反ったが

「へぇ可愛いわねこの猫」

それがなにか気が付くと
こなたから受け取って一ページ一ページ捲って眺めていた
こなたはそのかがみの反応に満足したのかふんぞり返っていた
だが

「でも私は飼うなら猫より犬のほうがいいわね」

かがみが本をパタンと閉じてそういった
さっきまで無い胸をはって偉そうにしていたこなたは目を開いてかがみに詰め寄る


「なんですって!? かがみんどういうことだい」
「いや、だって猫って金魚食べちゃうでしょ?
 ぎょぴを食べられたら困るし、それに犬なら番犬になるじゃない」

かがみはこなたの剣幕に鼻白んだように言う
あぁ、このとき最初からみんな集まっていればよかったんだ
そうすれば誰かがとめただろうに、ゆっくり拡大していった所為で
結局みんなが自分達のやってることに気付くのに時間がかかってしまったのだ
だから俺だって

「いや違うぞかがみ、ちゃんと躾ければ猫と鳥を放し飼いにして同じ部屋で飼う事だってできる」

こんな煽るような発言をしやしなかったというのに
猫を飼ってる一飼い主として、つい言ってしまったんだ

「いやでも、猫って気まぐれじゃない?
 犬なら一緒に散歩したりコミュニケーションが色々できるじゃない」
「でもかがみん、それが猫のいいところじゃないか!
 かまって欲しいときと欲しくないとき、構いたい時とそうでない時があるわけで
 その点、猫の勝手気ままな生き方は非常に心地よいんだよ」
「…それって家族より、ルームシェアみたいな感じじゃない」
「だからいいんだよ、丁度いい距離感ってのは円滑な対人関係にも必要だぞ」

俺だって別に犬が悪いとは言わないが
どうしても比較的に考えれば猫の方がいいと思うな
するとかがみは二対一では分が悪いと察したのか黙り込んだ

ここだ、ここでもあんなにタイミングよくみゆきさんがこなければ
この件はここで終わってたはずだ
だがしかし、みゆきさんは来たのだ、見事としかいいようのないタイミングで
そしてその見事なタイミングは最後まで続きやがったんだ


「なんのお話ですか?」

空きっぱなしの扉からみゆきさんが入ってきて
朗らかに声をかける
それに対しかがみは素早く

「みゆき! あんた犬派? 猫派?」
「そうですね、私は犬のほうが好きですね~大型犬とか憧れます」

かがみはそれを聞いてガッツポーズをしたのだが
…しかしここでみゆきさんが猫派と言ったらどうするつもりだったのだろうか

「だよね~、私も犬が好きなんだゴールデンレトリバーとか大きくて可愛いよね~」
「はい、ふわふわでもこもこで、やわらかそうでいいですよね」
「ちょ! みゆきさん猫はアカンの?」

こなたが机に置かれた写真集を指差してみゆきさんに問う
みゆきさんは少し考えてから

「私意外と寂しがり屋なので、猫さんは合わないと思うんですよね~」

引き込み失敗
こなたは肩を落として、しかし諦めずに猫のよさを挙げる

「でもさ、猫だと一緒に寝れるじゃん? 大型犬だと潰されちゃうんじゃない」
「あぁ確かにな、シャミセンがたまに布団にもぐりこんで来る時があるが、あれはいい湯たんぽだ」

俺もさりげなく、こなたに加勢して
自分の実体験をあげる、この中で動物のペットを飼ってるのは俺だけだから
その辺アドバンテージはこちらにある

「へぇいいですねぇ、私冷え性でもあるので、羨ましいです」
「ちょっとみゆき」

よし

「でも、みゆきのところってみゆきとおばさんだけでしょ?
 番犬ってことじゃ犬のほうがいいわよね」
「そうですね、最近物騒ですから」
「みゆきのところなんか家だって大きいんだから泥棒とか気をつけないと」

かがみが別方面で攻めてくる
ふぅむここはもう少し手勢が欲しいところだ


「長門、ちょっと来てくれ」

俺はずっと我関せずを貫いて本を読んでる長門を手招いく
長門は本を閉じて素直に俺の横に机を回りこんでやってくる
…実は俺とこなたは隣に並んで座っていて
かがみとみゆきさんは机を挟んで向こう側に居た
俺は隣の椅子を引いてそこに座るようにいうと、長門はやはり素直にそこに座った

「長門も猫の方がいいよな?」

言ってこなたの写真集を長門に手渡す
本を閉じて自分の椅子においてきた長門はそれを受け取って
熱心に読み始める

「…可愛い」
「よし、これで三対二だ」

俺は変なノリでかがみに向かって言う
この辺りでみゆきさんもようやく俺達の会話の意味を完全に把握したのか
納得したように頷いて、かがみと一緒に俺達の向かい側へ腰を下ろす

「いや、でも猫だよねキョンキョン」
「まったくだ」
「あら犬のほうがいいですよね? かがみさん」
「そうよね」

バチバチと火花を散らすようなエフェクトが入ってそうな場面
そしてまたこのタイミングで

「オース! おっくれったぜー」
「みさちゃん、もう少し静かに…」

みさおとあやのが入室してきた
この辺から流れが泥沼化している


「日下部! あんたどっち!?」
「へ、なにが?」
「犬か猫かよ!」

かがみが主語を抜けた発言をするまでにいたってる
まったく張り切りすぎだ、こういうのは冷静にだな

「あやの、長門が持ってる本を見てみろ」
「あ、可愛い」
「やっぱ猫っていいよな?」
「そうねぇ」
「よし、座れ」

こなたの隣の席に座らせる
また一人獲得
みさおはどうやら犬側に合併吸収されたらしいが
そのキャラクター性からしてこっちの方が優秀だ
でも一応みさおがあっちについた考え方を聞いてみるか

「…でみさおは犬のどこがいいんだ?」
「決まってるジャン! 犬の方が強いから!」

…よし、みさおは無力だ
と今度はかがみがあやのに同じように聞く

「あやのは何で猫派?」
「ん~…だって可愛いじゃない、大きい犬とかって可愛いよりカッコいいでしょ?」
「小型犬は?」
「小さい子ってよく吼えるじゃない」

ナイスだ、素晴らしいぞあやの
これで我々の勝利は揺るがない
事実と個人的思想の組み合わせはひっくり返すのが難しいからな
かがみは悔しそうに下唇を噛み
その後携帯を取り出して、少し離れた位置におく

「これはつかさの分よ」
「かがみんの卑怯者!」

なんという手を使うのだろうか
そこまでも心を犬に染めてしまったというのか、嘆かわしい
…まぁ俺達も少々汚い手で長門を引き入れたがな



その後、しばらくそのメンバーで喧々囂々
犬(猫)のいいところ、猫(犬)の悪いところを
ディベートのように挙げては相手のを否定して
一時間近く口論を続けていた俺達を収めたのは


「あんた達なにやってんの?」

掃除後、進路指導室に呼ばれていた
ハルヒの呆れたような一言だった

…まったくこのときばかりはハルヒの事をどうこう言える立場でなかったな

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最終更新:2008年02月23日 10:22
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