20.谷口 ゴミ箱行き

七誌◆7SHIicilOU氏の作品です。


今日は終業式だ
つまりは長期休暇の前日であり
この一学期の成績を数値という形で見せ付けてくれる日でもある
俺は退屈なテンプレートの言葉をつむぎ続ける単調な式に
眠気を抑えきれずにあくびしながら
あとで手元にやってくる通知表に今から憂鬱な気分を発してる
今回の成績がどれほどのもんかでこれからの俺の進路は大きく変わる
ようやく校長の話が終わったらしく
ぞろぞろと体育館からでていく生徒達
多分このなかの大半が俺と同じく数分後の悲劇を思い悩んでることだろう
去年までは俺と同じように一緒に苦悩していたキョンの野郎も
今年はずいぶんと女子達に勉強を教えてもらって
俺を一気に引き離しやがった敵だ
足取り重く教室に入って自分の席に座ると

「ほんじゃま、皆さんお待ちかねの成績表を配るでー」

他人の不幸は自分の愉悦とばかりに
元気溢れた様子の黒井せんせは、本当に楽しそうに一人一人の名前を呼ぶ

「谷口~」
「へい」



「うっがぁぁぁぁ!」

叫ぶ俺、自分の内からあふれ出るものを抑え付けるように叫ぶ俺
かっこいい、が成績は見るも無残

「1はかろうじてないもののもう少しでオール2だね」

国木田がほぼ4で固められた成績表を片手に俺の成績表を覗き込む

「この野郎! キョンはどこだ!?」
「ん、呼んだか?」
「お前の成績はどうなんだ!?」
「ほれ」

…この野郎平気で俺に見せやがった
それが勝者の余裕って奴か!? あん?

「畜生! お前なんで5があるんだよ?」
「あぁでも他はほぼ3だし…」
「ふざけんな!」

俺はキョンの成績表をあさっての方向へ投げる
そして自分の成績表を丸めてゴミ箱に捨てる

「おい谷口、成績オール1にされたいか?」

…歩く、ゴミ箱から成績表をとりだす
壁に押し付けて伸ばして、それを両手で掲げる

「大丈夫です! すいません!」
「よし」

ちくしょう、俺は社会的弱者なのか?

「まぁ…気を落とすなよ谷口」

キョン…お前の成績表を吹っ飛ばした俺を慰めてくれるのか…?

「友達だろ?」
「ありがとう、ありがとう」



「キョンキョン! 休みになったから遊びにいくべー!」
「おぅ、いいぞカラオケ最近言ってないしな」


「………ちくしょう、お前なんか友達じゃないぜー!」

俺の未来はどこだ……!?

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最終更新:2008年02月23日 20:54
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