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22.みなみ ピアノ

七誌◆7SHIicilOU氏の作品です。


私は黒い無骨な楽器の前に立ってそれを見下ろしている
手を伸ばすとひんやりとした無機物の感触が手のひらに、指先に伝わる
革の張られた椅子を引き出して、私は楽器の前に座る
パタン、と鍵盤を覆うような形になってる部分を持ち上げる
白と黒のモノクロな鍵盤を、私は慈しむ様に撫でて
ゆっくりと頭の中にある旋律を奏でる
それは私があの人の前で始めて引いた曲

『ピアノを弾けるって格好いいよな?』

私がピアノを始めたのは、高校に入ってから友達の親戚の友達である
言葉にするとちょっと遠くに居る人
一人の先輩がそういったのを聞いたからだった
幸い家にもピアノがあったし、小さい頃から身近にあったから
家で練習して、学校でも練習して
結構上達が早かったと思う

『なぁ、みなみのピアノ聞かせてくれよ』

先輩の卒業式
私は音楽室で一人で泣いていた
そしたら先輩が肩を卒業証書で叩きながらやってきて
そういった、緊張で涙でボロボロの演奏だったけど

『上手だな』

そういって私の頭を撫でてくれた先輩
二年になってから私はブラスバンド部に入って
ピアノの練習をもっとするようになった
おかげで今年は大会でも優勝をすることが出来た


ジャン、と音を立てて曲が終わる
私は鍵盤から手を離し立ち上がる

「上手だな」
「…先輩」
「いや、俺はもう卒業してるからそれは適切じゃないな」
「キョン……さん」

先輩は音楽室の入り口から動かずに言う
制服ではなく私服で、卒業証書をもってるのは私

「まったく自分の卒業式だというのに…、探したぞ」
「すみません」
「まぁいいさ、じゃあ行こうか」
「はい」

私と先輩は、今日から本当に先輩と後輩で無くなる
だからといって友達の親戚の友達なんかじゃない
私達は自分以外の人間を示す場合のもっとも距離の近い言葉を使えるようになる

「なぁみなみ」
「はい?」
「またピアノ聞かせてくれ」
「…これからは好きなときに聞かせてあげます」

すなわち"夫婦"

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最終更新:2008年02月23日 20:59
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