ロウユウ

雪茶◆yukichanHA氏の作品です
タイトル…ロウ→蝋と狼(性的ry ユウ→憂と遊(遊戯とか悪戯とか)

梅雨時の天気はそりゃあ真っ暗だ。
雲はグレーなんかより黒いしな。
お天道様は何処に掠われたのかと問い質したいくらいだ。
「またか……」
窓際の席の所為で憂鬱さが増している。
生徒は殆ど部活か帰宅してる。
窓の縁に時折当たる雨足が欝陶しい。
そっちに気がいって授業がまともに受けれんかった。
「キョンキョン溜め息増えたネ?老けるよー?」
こなたが心配してないかのような声で背後からのしかかる。
正直大して重くないし、滅入ってる気の方が重い。
敢えてどけ、とか言わない。言う気が出ない。
「老けていいから家でごろごろしたい」
「……秋以外ずっと言ってるよね」
そうか?
「『春は眠い』『夏は暑い』『冬は寒い』って。
  ほんでもって梅雨は湿っぽい?」
湿っぽいのもあるな。
とりあえず学校面倒だ。
「ま、明日から週末じゃんかー」
そうだったな。
こなたはやっと俺から下り、横に椅子を引っ張って座る。
「最新ゲームが手に入ったんだけど?」
こそこそと話すとどっかの悪徳商人みたいだぞ。
「…ジャンルは?」
「勿論旦那様お得意のシューティングゲームですぜ?」
「それじゃあお邪魔するかね」
「毎度ありっ」
週末の過ごし方なんてこんなもんだ。
7割ゲーム、2割団欒、1割宿題のサイクル。
まだ若いんだ、ほっといてくれ。
「あれ、さっき老けてもいいって」
「空耳じゃないか?」
そっか、とこなたは笑い、俺の手を握って教室を出る。
傘は忘れずに。


「うっわぁ…」
こなたは外に出ると思わず声を出す。
俺も靴を履いてからこなたの横に並ぶ。
「…煙雨って言うのか?」
まるで霧のように立ち込められた雨は視界を白く覆ってる。
「これじゃあ帰れないね」
あはは、と乾いた笑いを見せる。
「しゃーない、静かに学校で雨宿りするか」
「? 何処行くの?」
俺は足早に脱ぎたての上靴を再度履く。
こなたも自分のロッカーから上靴を取り出して履き変える。
「さて、何処でしょう」
右の人差し指を立ててこなたに問うた。
「…部室?」
残念、ハルヒはいないから静かだろうけどな。
「図書室?」
俺は本の山は嫌いだ。
「答えは?」
俺はポケットの携帯を取り出して時間を確認する。
「どしたの?」
「5時は過ぎたな」
こなたも腕時計を覗いて頷く。
「正解は保健室だ」
5時を過ぎると保健室の職員は帰るからな。
「でも鍵閉まってるんでしょ?」
俺は歯を見せて笑ってやる。
胸ポケットにある生徒手帳を開き、とあるキーを取り出して見せる。
「まさか」
「そのまさか。」
保健室の鍵だ。
「どうやったの?」
「型に"ろう"を溶かしてやった。鍵は保健室の先生が落とした」
「犯罪じゃング…」
こなたの口を塞ぐ。
「……抵抗がある、か?」
こなたは両手で、口を塞ぐ俺の手を引っぺがす。
「面白そうじゃんか!」
俺から鍵を奪い取る。
「レッツゴー!保健室!」
俺は即座に奪い返して保健室に共に向かう。


幸い保健室回りには誰もいない。
実は初挑戦だったのだが、鍵も楽に開いて暗闇の保健室に入る。
すぐさま鍵を閉めて、電気のスイッチを入れる。
「ダメだよっ!」
こなたからお叱りを受けてしまった。
「電気点けたらばれるじゃんかー」
俺はスイッチをオフにして、真っ暗にする。
「まず目を慣れさせないとねー」
こなたが鼻歌を歌ってるのが聞こえる。
物音が聞こえるということはこなたはもう慣れたのか。
「うわーい、ふかふかー!」
ベッドに飛び乗ったのが解った。
俺も物の陰が掴めて来た。
手を前でうろうろさせながらベッドの方へ向かう。
「わっ!」
「う、うわぁっ!」
背後からこなたが大声を出す。
思わず俺は前のめりに倒れる。
「あはははははははっ!」
「こなた……お前…」
前に何もなくてよかった。
体を反転させると、背の小さい人影が目の前で仁王立ちしてる。
「キョンキョンは驚かし甲斐があるねー」
俺はいらっとキて、足払いを決める。
「のわっ!」
見事こなたのバランスは崩れる。周りには机があるのは分かってるので俺の方に倒れ込ませる。
そのままこなたを抱え込み、アイアンクローを決めてやる。
「あ、あいたたたたたたたぁ!やめてやめてっ」
小柄な分指に力が入れ易い。
こなたは床を叩き始めたところで俺は指を離す。
こなたはそのままへたれて俺の胸に頭を落とす。
「コノヤロゥ」
声にはさほど勢いはなく、弱々しい声だ。
「先にやったのはお前だろ」
ベッドに飛び乗った時に脱いだのか、こなたは裸足だ。
「そ…そうだっけ?」
息も絶え絶えだ。お互いに。
よく思えば今、俺とこなたの足先は同じなのに頭二個分くらいの差があるのな。
「……………」
「……………」
雨の音だけの沈黙が続く。
肩で息をしてたこなたも落ち着いたようだ。
少し頭を撫でてやる。
「…キョンキョンの心臓の音がする」
そりゃあ耳を胸に当ててたらな。
こなたは俺の胸に顔を埋めてから、俺の上を這い、頭を俺の顔の真上に動かす。
大きな青い瞳が暗闇でも見える。
俺は撫でていた手を止める。
「……キョンキョン…」
こなたの顔が近付いてくる。
俺は目を閉じて、こなたの頭に置いた手に真下への力を入れる。
こなたと唇が重なった。

「ん…」
瞳を閉じてるのでこなたの表情は分からない。
頭に置いている手を離すと、こなたはゆっくりと糸が出来る。
「ねぇキョンキョン」
こなたの声を聞いてから目を開ける。
「なんだ?」
「折角保健室なんだし…さ?」
「………そうだな」
こなたを抱えて起き上がり、お嬢様抱っこをしながら、闇に慣れた目でベッドインした。


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最終更新:2008年03月01日 11:28
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