◆q1eroUCEuk氏の作品です。
みさお「・・・あやの~、最近の柊、ますます付き合い悪くなってね~?」
あやの「そうかしら・・・そんなことないと思うけど」
みさお「あやのは甘いなぁ・・・ちびっ子に柊取られて、あやのは悔しくないのかよ」
あやの「悔しいというより、羨ましい、かな・・・みさちゃん、妬かないの!」
みさお「・・・しかもちょっと小耳に挟んだんだけどさー」
あやの「なあに?」
みさお「ちびっ子のクラスに4月、転校生来たじゃん。男子の。なんかちびっ子の小学校の
時の同級生で、こっちに戻ってきたっていうヤツ」
あやの「あ・・・なんか面白いあだ名で呼ばれてる人だ。キョンくん・・・だっけ」
みさお「柊さ、そのキョンってのと、最近すごく仲いいみたいでさー」
あやの「ふふっ・・・柊ちゃん、彼に気があったりしてね」
みさお「ちびっ子たちに、男までが絡んできたら、ますます柊、私らとの付き合いが悪く・・・」
あやの「お友達でしょ。先走りすぎよ、みさちゃん」
みさお「いーや、クラスの男子のほとんどが怖がって敬遠してるあの柊に近づくなんて、
ただモンじゃないZE!キョンってのがよほどヘンなヤツか、下心があるに決まってる!」
あやの「こらこら、よく知らない人をヘンな人呼ばわりしないの。それに、柊ちゃん可愛いじゃない。
失礼よ、みさちゃん」
みさお「女同士の友情は男で崩れんだ。そのキョンってヤツに釘刺しとかなきゃな」
みさお「おい、おまえ、キョンだろ」
キョン「なんだ藪から棒に・・・ええと、キミは隣のクラスの・・・」
みさお「日下部みさおDA!」
キョン「その日下部さんが、一体俺に何の用だ」
みさお「ひとつ言っとくぞ。よく聞けっ。柊はウチんだっ! お前、手出したりヘンなこと
するんじゃねぇぞ」
キョン「ええと、それはどっちの柊の話だ」
みさお「姉貴の方だ」
キョン「かがみの知り合いか(ま、つかさの友達にしちゃちょっとアレだしなぁ)」
みさお「お前、手ぇ出すなら、妹の方とか高良とかいんだろ。そっちにしろYO」
キョン「あ・・・つまり、かがみと日下部さんは、そういう関係ってことなのか?」
みさお「そうだよ、なんか文句あんのか」
キョン「いや、文句はない。で、いつからそうなんだ・・・」
みさお「中学のときからだっ。長い付き合いなんだぞ」
キョン「それは知らなかった・・・かがみが・・・女の子と・・・」
みさお「分かったなっ、今言ったこと忘れんなよ」
みさお「これだけ言っとけば、柊のヤツにヘンなちょっかい出したりしないだろ」
キョン「知らなかった・・・かがみが・・・でも良く考えたら、あれだけ美人なのに男の気配が
ないってのは・・・そういうことか・・・なんか、顔合わせづらいなぁ・・・」
こなた「ねぇ・・・最近のキョンキョン、かがみをヘンに意識してない?」
みゆき「泉さんもそう思います? なんかかがみさんのこと、よく見てますよね」
こなた「ほほう・・・これはもしかしてフラグ立ったかもよ」
つかさ「キョン君、照れ屋さんだからね」
かがみ「そ・・・そっかな・・・えへへ・・・」
こなた「かがみん、チャンスだヨ」
つかさ「お姉ちゃん、がんばれー」
みゆき「私も応援します」
みさお「柊のヤツ、最近機嫌いいなー。あんまり怒ったり殴ったりしないしさ」
真相を知ったらどうなることやら・・・
最近キョン君の様子がおかしい。私もこなたの指摘で気づいたんだけどね。
こなたは「フラグ立った!」なんて言ってたけど、本当なのかな、そうだったら嬉しいナ、えへへ。
なんか私も照れちゃって、かえってキョン君を意識するようになっちゃったんだけど…
けどしばらく経つと、なんか、キョン君の私に対するぎこちなさが、果たして私に対する
好意から出ているものなのか、ちょっと疑問に思えてきた。
なんて言えばいいのかな…私もそっち方面は鈍いんで確証はないんだけど、好き避けっていう
感じじゃないんだよな。なんか、私を気遣っているのか、何かを探っているのか、どう接したら
良いのか困ってるのか、そんな感じがする。
一体どうしたのよ、キョン君、何か私に言いたい事、聞きたいことがあるなら、ちゃんと言いなさいよ!
…そんな一言も言えないのが今の私。問い詰めて、嫌われるのが怖い。
でも、キョン君の心を、キョン君が私のことをどう思っているのかを、何を言いたいのかを聞きたいよ。
そんな気持ちを押し隠しながら、私は今日もこなたたちと、キョン君と一緒に、学校生活を送っている。
正直、かがみがそういう性的嗜好を持っているということを知ったとき、ショックだったのは確かだ。
日下部さんも、かがみが俺に取られるかもしれないって必死だったんだな。だから敢えてカミングアウト
したんだろう。だから、日下部さんに対しては、俺はなんら含むところはない。
しかしなんで俺はショックを受けたのだろう。かがみがどんな嗜好の持ち主だったとしても、友人として
付き合うには何の支障もないはずだ。別にかがみと付き合いたいとか、そんなことは…そんなことは…
ないのならなぜ、俺はショックなのだろう。
自問自答しながらも、俺は心の奥底で、こんなことで悩むフリをして、自分の心を偽っていることに
薄々気づいていた。なんてこたない…俺は、かがみのことが好きだったんだ。
はは、告白する前に、振られちまったようなもんだな。男に興味のないかがみに告白したところで、かがみを
困らせるだけだし、そんなことをしたら、今までみたいな友達づきあいも出来なくなる。こなたやつかさたちにも
良くない影響を与えるだろうしな…
しかし、好きだとはっきり自覚しちまうと、今のかがみとの距離感が俺にとっては辛い。気取られないように
気をつけちゃいるつもりだが、俺は古泉みたいに、何でもかんでも怪しい笑顔の奥に、感情を押し込めるような
高度なスキルは持ち合わせちゃ居ないんだ。
それにしても、かがみと日下部の関係、こなたたちは果たして知っているのだろうか。
いくら仲が良いといっても、言えることと言えないことってのはあるだろうし、このテのことはまあ、普通に
考えれば「言えない事」に分類されるんだろう。
…もし知らないとしたら、ここで変に探りを入れるとかえって薮蛇になるぞ、自重しろ!
そんな声が心の奥底から聞こえてきたが、もしこなたたちが知っているとすれば、俺の今の心のうちを
理解して、相談に乗ってくれるのではないか。
正直、胸を真綿で締め付けられるようなうっとおしさに、俺は辟易していた。ストレートに切り出せないまでも、
どうとでも取れる、曖昧な聞き方に対する反応からでも、こなたたちが事実を知っているかどうか、類推できるかも
しれない。
そんな誘惑に耐え切れず、俺は思い切ってある日、こなたにこう切り出してみた。
「なあ、かがみと日下部のこと、お前・・・知ってるか」
俺が探りを入れる相手にこなたを選んだのは、まあ、なんとなく、だ。分かるだろ。
つかさや高良には正直聞きにくい。かがみの性格からして、妹のつかさには絶対に事実を告げていなさそうだし、
高良は博識だが正直、そういう方面には疎そうだ。知っている可能性が一番あるのはこなただろう。
「ん? 知ってるヨ。中学時代からの付き合いだって…かがみもよく付き合ってるよねー
でもま、人の好みはそれぞれ、蓼食う虫も好き好き、なんて言うからね」
随分とあっさりしていらっしゃることで、お前は…そういうことに抵抗ないのか?
「抵抗? いや、私らの付き合い方と、みさきちの付き合い方ってのは違うからねー」
そりゃ、友達と恋人じゃなぁ…でも、そんなモンなのか。女ってのは、そんなに簡単に割り切れるものなのか?
「ヘンなキョンキョン。嫉妬深いとかがみんに嫌われちゃいますヨー」
いや、まあ、ヘンなこと聞いて悪かった。今のことは忘れろ。
キョン君と私との間の、なんとなく違和感のある、含みのあるような距離感は、その後もなかなか
解消しなかった。険悪って訳じゃないから、私もキョン君を問い詰めるなんてこと、出来ないし。
こなたは相変わらず「キョンキョンはかがみんをえらーく意識してますな」なんて言ってたけど、意識の
仕方があれじゃなぁ…そんなことを思っていると、こなたが思いもかけないことを言い出した。
「そういやこないだキョンキョンがさー、かがみんとみさきちのこと、お前知ってるか、なんて聞いてきたん
だよネ。キョンキョン、みさきちとかがみんの仲、結構気にしているみたいだったよ」
なんでキョン君が、私と日下部の仲を気にするのよ。ま、日下部のヤツは…私がこっちのクラスに入り浸ってるのを
付き合いが悪いとか冷たいとか、よく峰岸にぼやいてるけど、キョン君は関係ないでしょ?
「うーん、男にも嫉妬はあるんじゃないかナ。みさきちが私とかがみのラブラブっぷりを妬くようにサ」
…なんで私があんたとラブラブなのよ。私にはそんな趣味はないわよ。アンタが仮に男でもお断りよ。
こうこなたに答えながらも、私は心のどこかで、引っかかるものを感じていた。最近のキョン君の意味ありげな態度、
こなたとの会話の中で、キョン君の口からなぜか、面識がないはずの日下部の名前が出てきたこと…まさかこの件、
日下部のヤツが絡んでいるのか…だとしたら…
考え込んでしまった私を、こなたたちが不思議そうに見つめている。
「ちょ…ゴメン。私、用事思い出したんで教室に戻るわ」
心の奥に暗雲が立ち込めている。私は猛ダッシュで、自分の教室に駆け込むと、日下部の姿を探した。
「日下部~、私さ、ちょっとアンタに聞きたいことがあるんだけど」
なんだよ柊~、相変わらず怖ぇなぁ。なに怒ってんだよ。
「アンタさ、隣のクラスのキョン君と面識ある?」
あ~、いつもちびっ子たちと一緒に居るヤツだろ。ま、知ってるといっちゃ知ってるけど…
「キョン君と話したこと、ある?」
…だ、だから怖ぇって柊よー、もっと穏やかに話せないのかよ、いったい何だってんだYO!!
そんなことを考えながら、あたしは何かイヤ~な予感がした。柊がなんで怒っているのか、心当たりあるからな。
いや…まあ…その、ちょっとな。柊の友達として、付き合い方ってやつについてちょっと忠告を…
「キョン君に何て言ったのか、一字一句、正確に再現しなさいっ! 誤魔化すとタメにならないわよ!」
あう~、助けてくれよ~、あやの~
「…みさちゃん、ここは正直に柊ちゃんに話した方がいいと思うの」
うう、分かったよ、話せばいいんだろ、話せば。
日下部の話を聞いて、私は頭が真っ白になった。この馬鹿、なんてこと言いやがるのよ。
日下部はまだ事の重大性を理解していないようで、「だってさ…今だってちびっ子のとこにばっか行ってるのに、その上
男なんか出来たら、私らとの付き合いがますますなくなるじゃないかよ」なんてブツブツごねている。
問題はそんなことじゃないのよ、その、アンタのその言い方じゃ、まるで私とアンタが…
「付き合っていて、横恋慕かけてきたキョン君を追っ払ったみたいに聞こえる、かなぁ」
おい峰岸、他人事みたいに言わないでよ。キョン君にその…そっちのケがあるって誤解された私の身にもなってよー
「あたしはそんなこといってないぞー、その…キョンってヤツが勝手に誤解しただけで」
うっさい、アンタのその言い方じゃ、誤解されても仕方ないっての、なんてことしてくれたのよ!
「いってーっ! 柊に殴られたー」
とにかく真相が分かった以上、直ぐにでも誤解を解かなきゃね。日下部、アンタも一緒に来なさいっ!
「なんであたしが、ちびっ子のクラスに行かなきゃなんねえんだよー」
元はアンタのせいでしょうが、なに、もう1発ぶん殴られたいの?
「この暴力女ー、柊なんかキョンに嫌われちまえばいいんだ!」
はい、もう1発献上!
日下部を隣の教室まで引きずっていって、こなたやキョン君たちの前で弁明させ、なんとか誤解を解いた頃には、
すっかり日も暮れてしまっていた。
峰岸を捕まえて、珍しく、大所帯での下校になった。この面子が集まったのって初めてじゃない。
「ううー、今日は酷い目にあったZE」
そりゃこっちの台詞だ。それにしても…キョン君…
「何だかがみ」
日下部の言葉が足りなかったにしろ、そこから私がレズじゃないかって誤解したって事は、私のことそういう女だと
思っていたってことだよね…
「まー、かがみんは男っ気ないからねぇ。そう誤解されても仕方ないと思うよー」
うっさいこなた。アンタも殴られたいの!
「いやいや、謹んで拳骨はご辞退します。そういやさー、みさきちー、私も1つ聞きたいことがあるんだけどさー」
「何だよちびっ子! あたしはお前に聞かれたいことなんてねーぞ!」
「みさきちさ、キョンに、手を出すならかがみじゃなくて、つかさかみゆきさんにしろって言ったんだよね。
なんで私を外したのかなー」
「そりゃ決まってんじゃねえか。お前みたいな特殊仕様のヤツが、高良や柊の妹と張り合えるかって…痛てーっ!」
うわ、痛そうなローキック。こいつちっこいけど格闘技経験者だし、身体の割りに力強いんだよねー
「特殊仕様言うなーっ、みさきちだって人の事言えないだろー」
「…う~ん、言われて見ると、みさちゃんも確かにそうかもね」
ちょっと黒いわね峰岸。
「うう…柊には殴られるし、ちびっ子には蹴られるし、ホントに今日はついてないなー」
終わり
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最終更新:2008年02月26日 23:31