雪茶
◆yukichanHA氏の作品です。
タイトルは配(こなたを送る)・盃(ジュースとキス)・背(おんぶ)・徘(徘徊)の4つの意味で。
ほのかにまだ暗くなるのが早い。
月が神々しく俺を照らす。
たまには趣向を変えて、と何気なくコンビニに歩いて通う。
チンピラに絡まれたらそりゃあ諦めざるを得ないが別に絡むチンピラなんぞいないしな。
スティックパンと柿ピーと、新発売のプリン・ラテなる紙パックジュースを購入。
軽く無愛想な男の店員に朝比奈さんの笑顔を見せてやりたい、と思うが、朝比奈さんファンが増えると困るので言わない。
男が笑っても気持ち悪いのが殆どだ。古泉は―…爽やかな方か?胡散臭いが。
帰りながら買いたてのスティックパンを一つくわえながら、携帯をいじる。
携帯が鳴った。
液晶画面には『泉 こなた』の文字。
「なんだ、こなた」
繋いで第一声、そう言うと、
「うあ……キ、キョンキョン…」
苦しそうな声でこなたが話す。
「どうした?」
「た……助け、て…」
パンを飲み干す。
「何処だ?」
「んーと…コンビニの近く…」
「わかった」
俺は電話を切って、来た道を戻る。
「……キョンキョン…ありがと…」
人気のない路地裏でこなたは端で座り込んでいた。
俺はこなたが差し延べた手を掴み、肩に回し、おんぶしてこなたの家のルートを通る。
運び難いからビニール袋はこなたに渡した。
「ありがとー…イテテ…」
「どうしたんだ?」
「ぐねって、…つった……」
また珍しいドジをしたもんだ。
「親父さん呼べばいいのに」
「ゆーちゃんもいるからネー」
「そうかい」
コンビニからこなたの家までは俺の家よりかは遠くない。1km程度か。
車が行き交いする道路沿いを歩く。
「何してたんだ?」
「ん?葉書を投函した帰りだヨ」
「また懸賞か何かか」
「そそ、フィグマが当たるかも知れないからネー」
ああ、稼動式のやつか。CMでやってたな。
「それにしてもキョンキョンが近くにいて助かったよ、ありがとね」
「有り難く思うなら人のパン食うな。着いたぞ」
「固いこと言わなーいっ」
背負ってるこなたに呼び鈴を押させる。
ゆーちゃんの小動物のような声が返事する。
事情を説明して、理解して貰い、扉を開けて貰う。
「キョン先輩こんばんはー」
「こんばんは」
玄関までお邪魔する。
反転して、こなたを段差に座り込ませる。
「アイタタ……もうちょい丁寧に下ろしてよ…」
「喧しい、……ってこなた!足やばいぞ」
発見時は暗くてよくわからんかったが、反対の足の比較せずともとてつもなく腫れてるのが分かる。
「お姉ちゃんっ、わ、私氷と湿布を……」
ゆーちゃんは少し青ざめて、リビングに駆ける。
「あはー、ここまでとは…」
当人が一番呆けてるとは不思議なんだが。
「そういうモンだよ?」
怪我してない足をぷらぷらさせながら笑う。
「ほら、お姉ちゃん!これで冷やしてっ」
ゆーちゃんが慌てふためきながら戻って来る。
こなたは袋に入れてタオルで巻かれた氷を腫れた部分に当てる。
「…だ、大丈夫なの?」
ゆーちゃんが口に手を当てながら聞くと、
「動かさなかったネー」
と、こなたは答える。
どう見ても明日までには引きそうにない腫れなんだが…。
「ま、引くまではお父さんにでも送って貰うヨー」
こなたは氷を付けたり離したりする。
「それじゃ俺帰るわ」
ゆーちゃんもいるし、別に問題ないだろう。
「あ、キョンキョン!」
こなたに呼ばれ、翻した体をまた振り返らせる。
こなたが氷を外し、けんけんで俺の方に向かって来る。
「おい、無理はする――――」
束の間、左頬に柔らかい感触を感じた。
こなたの長い髪が頬と左手に当たる。
「帰りはよろしく、ね?」
呆気に取られて硬直してる俺に歯を見せて笑う。
「お、お姉ちゃん…」
ゆーちゃんが口に手を当てている。さっきとは違い頬を赤らめて。
「わざわざありがとねーバイニー☆」
こなたが俺との間に扉をスライドさせる。
背後の道でバイクが通り過ぎる。
帰路の記憶は、無い。
翌日放課後。
学校では昨日のアレは何も無かったかのように接してきてた。
約束通り、共に帰ってるわけだが。
「あ、そうそうプリン・ラテ買ってたでしょ?」
あ、忘れてたな。
「……何あれ…カラメルシロップ?」
知らんよ、試しに買ったのに。
「酷いよ!後味悪くなったじゃんか!」
「何の後味なんだ?」
そう突っ込んでやると、こなたの頬は赤くなっていく。
「……バカ」
作品の感想はこちらにどうぞ