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本人コラム - (2005/09/07 (水) 00:25:01) のソース

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8月16日 朝日新聞朝刊
「やっぱり地味がいい」 日本代表MF 加地 亮

「加地は地味だ」という評価は僕の耳にも入ってくる。そう言われるのは結構悪くない。 
「右サイドは別の人でもいいんじゃない?」という評価にも「はい、誰か違う人を使って 
下さい」という感じだ。 
確かに僕のプレーは見た目が派手派ではない。シュートを決めるわけでもない。 
でも、ボールに直接関わっていない場面での動きをしっかり繰り返すことで、周りが 
生きてくることがある。サッカーには、そういう役割を担う選手が必要だと思う。 
例えば、右サイドでMF小笠原がボールを持っていたとする。そこで僕がオーバー 
ラップすれば、小笠原をマークしている相手DFの位置は僕のほうにずれる。小笠原 
はどうなるか。相手のマークが緩くなり、視野が広がって余裕ができる。センタリングも 
あげられるし、中にドリブルで切りこむこともできる。 
そうやって味方を助ける一方、相手DFが僕についてこなければ、小笠原が僕にパス 
を出す選択も生まれる。僕の動き一つで選択肢は一機に増える。でも、オーバーラップ 
せずに小笠原の後ろに立っていると小笠原はきっちりマークされ、自由にできない。 
だから僕のサイドでいかに2対1の局面を早く作るかが重要だ。小笠原に球が渡る直前 
には、2、3メートル後ろにいたい。そして、トラップした時にはもう横にいるのがベストだ。 
その後、僕のパスが出てくるか出てこないかは問題ではない。 
好きなのはそういうプレー。目立ち過ぎると、あまりいいことはない。いい時は周囲から 
持ち上げられるだけ持ち上げられ、悪い時にはガーンと落とされるから。 
やっぱり地味がいい。 

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8月23日 朝日新聞朝刊
初得点 『おいしい形、緊張した』 

「ごっつぁんシュート」でも、1点は1点。うれしいのは間違いない。 
17日のイラン戦の先制点。国際Aマッチ34試合目での初得点だった。 
玉田の左からのセンタリング。 
目の前に来たボールを詰めただけの、美味しい形だったけど、逆に緊張した。 
あの場面は周囲の状況をみて、前に味方の人数が少なかったからゴール前まで走ろうと思った。 
簡単なシュートでも、あそこまでしっかり走りきれたからこそだった。 

東アジア選手権の2試合を欠場した後だった。 
負けると印象も良くない。意地を見せるというほどのことではないけれど、 
結果を出さないと、ポジションをとられてしまうかもしれない、という思いは持っていた。 
東アジア選手権の中国戦の前、ジーコ監督に「精神的疲労があるからメンバーを全員入れ替える」 
と言われた時は、自覚はなくても、外からはそのように見えるんだなと思った。 
長い間試合が続き、気が張っていた。気持ちを休ませ、外から試合をみることもだ必要だと感じた。 
そうみた時、心身ともフレッシュになったのにイラン戦で結果を出さなければ、休んだ意味がなくなる。 
だから、気合がかなり入っていた。 

試合に出るか出ないかは、あまりたいした問題ではない。まずは、自分がやることをしっかりやること。 
その結果出ろと言われれば出るし、休めと言われれば休む。 
代表に呼ばれている限り、そういうことがあるのは当たり前だ。 
ただ、ワールドカップ(W杯)までに、心身の疲労がたまっても、90分間フルに動ける体を作ることが大事だ。 
自分の中の理想と比べると、現状はまだ5、6割程度しか出来上がっていない。 

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8月30日 朝日新聞朝刊
【コンフェデ杯】世界で戦える実感得た 

6月のコンフェデレーションズカップ(ドイツ)は、今のレベルを測るにはいい大会だった。 
海外の高いレベルのチームは、肌で感じるスピード感も違う。 
ワールドカップ(W杯)に出る国と、たくさんは試合ができない。 
実際に対戦できたことが大きかった。 

1-2で敗れたメキシコはうまさがあり、驚いた。 
一人一人の技術レベルやスピードは日本と変らない。でも、チームとしてまとまっていた。 
パスワークでも、パスが一つ出ればスペースに次の人が動き、 
さらに生じたスペースにまた次の人が動いた。 
こっちは後手後手になってマークしきれなかった。 

それに個人個人嫌な所に位置する。 
僕とボランチのどちらがマークすればいいのか、判断しにくいポジショニングをわざととってくる。 
誰がつけばいいのかが、難しかった。日本がとても参考になるチームだった。 

1-0で勝ったギリシャは、昨年の欧州王者という割には、かみ合っていなかった。 
もともとつなぐチームではなく、球を放り込んでくる。 
カウンターを抑えれば怖くなかった。 

2-2で引き分けたブラジルは、手を抜いていたとはいわないけど、7,8割くらいの力で戦っていた。 
本気でやっていたのかわからないので、何ともいえない。 

結局、1勝1敗1分けで1次リーグ敗退。W杯である程度はやれるという実感は持てた。 
ただ、90分通してフルでやれないといけない。まだ動きの質が衰える時間帯がある。 

 W杯は優勝を目指さなければいけない。出るだけでは意味がないと思っている。 
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9月6日 朝日新聞朝刊
【ジーコ監督】指示は単純、選手に自覚 

自分にとってポイントになる試合は、昨年3月のワールドカップ(以下W杯)1次予選のシンガポール戦だった。 
2月の無断外出の一件で外された選手に代わり、運良く先発が回ってきた。 
蒸し暑く、後半はスタミナが落ちた。一度は同点にされるなど流れは良くなかったが2-1で勝った。 
勝っていなかったら、W杯出場はなかったかもしれない。 
それからレギュラーに定着し始めたけど、ジーコ監督に試合に出してもらっていたという感じがする。 
自分よりうまい人はいくらでもいると思うから。 

ジーコ監督はチームを家族のように思っている。 
試合に出ている選手も出ていない選手も、一丸となって盛り上がれるのは、 
ジーコ監督が持っている雰囲気ならではなのだと思う。 
もっとも、チームがまとまることが普通ではある。控えであろうが腐らずやることが当たり前。 
モチベーションの維持が難しいという問題以前に、試合に出ても出なくても、 
プロであり、日の丸を背負っている限り、責任はある。 

ジーコ監督の指示は単純でわかりやすい。 
自由にやらせてくれるというか、今まで体験した監督の中では、最も何も言わない。 
指示もポジショニングの基本だけだ。守備のバランスはいつも言われている。 
左サイドの三都主が攻め上がれば、右サイドの自分が中に絞ってスペースをカバーすること。 
ただ、これはサイドの鉄則ではある。 

あとは一人一人に任せ、選手たちが話し合い、チームを作る。今までの日本にはないスタイルだ。 
でも、勝っている。勝てばいいのだと思う。 
何も言われないからこそ、選手が危機感を覚え、逆に良いのかもしれない。 

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