――その頃、校庭にて。
 「…………遅いですわね」
 クルミは、先程から出てこない愛媛蜜柑に対してイライラと呟く。もう、大好物のアセロラドリンクの缶をいくつ空けたかわからない。勿論、缶は持参のゴミ袋に捨てている。几帳面な性格なのでね。
 そんな神経が磨耗しそうな生き方をしているクルミの背後から、金魚蜂を逆さにしたようなヘルメットを被った、全身緑タイツの男達が現れる。クルミを襲おうとしている変質者ではない。彼女の手下――つまりはロボロボ団の団員である。
 「もしかして、休みってことは無いロボか?」
 「そんなことはないはずですわ。ジンの情報収集能力にはわたくしだって一目置いてるのですよ? その証拠に、愛媛蜜柑の血液型から趣味まで一晩でわかったんですから。いつまでもあいつが出てこないなら、スリーサイズを全校生徒に公表することだって出来ますのよ?」
 「ロボォオオッ?!! そっ、それは可哀想すぎるロボッ!!」
 「そうロボッ!! 若気の至りでやっちゃったとかあるロボッ!!」
 「もしかして、カッとなってやって今では反省しているかもしれないロボよッ!!」
 「おだまりなさいッ!!! 資料から読み取れる愛媛蜜柑の性格から考えて、それは絶対ありえませんわッ!!!」
 クルミさん、核心突いてます。
 「……でも、確かにスリーサイズは可哀想ですわね。それじゃあ、学業成績にしておきますか」

 「そんなもの、オレは全然気にしてないぜ、――じゃなくて、わよっ!!」

  突如、昇降口から響く声、
 「だ、誰ロボッ!!?」
 クルミ達が目を向けた先には、
 「――あたしよ」
 マスクとサングラスを見につけた少女が、

 「植物高校2年B組、愛媛蜜柑17歳よッ!!!」

 男子用ブレザーに身を包む銀髪の少女が、腰に手を当てたたずんでいた。



 「……なぁ~んで余計なことするかな~」
 体育用具室の窓から肯定の様子を伺いながら、蜜柑は頬をぷぅっと膨らませる。横には、セーラー服を着て恥ずかしげにうつむく少女が。いや、よく見ると少女じゃない。植物高校2年B組、成城磨智だ――って、なにやってるのあんた。
 「いや……師匠があまりに不憫だったから……」
 ああ、だから自分の制服を斗的に譲って、自分はセーラー服着たのね。なんとまぁ師匠思いだこと。
 「まぁ、似合ってるからいいけどね~♪ いっそ、これからセーラー服着て登校すれば?」
 「うぅ……勘弁してよぅ…………」
 磨智は顔を赤らめながら、スカートの前部分をキュッと引っ張る。内股になった子鹿のように細い足が、男の癖になんとも色っぽい。
 そんな磨智を尻目に、外の様子を再び伺う蜜柑の耳に飛び込んできたのは、
 「…………どちら様ですか?」
 クルミの呆れたような一言だった。


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最終更新:2007年11月09日 12:20