第15話 ジャジャウマ娘と殺戮者
『デット・クロス』入手から3日、破壊方法を未だにわからないままラックたちはイギリスのロンドンにいた。
ロンドンの歴史ある街の一角に車を停め、少し休憩を取っている。もちろんシンガポールからロンドンまでは魔術でここまでやってきた。
車の中でラックはヴァンサーの日記を読みふけり、バクスはこれでもかとラックが作ったサンドウィッチを湯水の如く食べ進んでいる。
ゲッシュは今日と昨日の新聞を読んで顔に疲労が出ていた。ゲッシュの頭を悩ませていたのはこのような記事だ。
『アフリカ州にも殺戮!』、『南アメリカでも殺戮!』、『ついに全世界で大規模な殺戮!』、『世界に革命を起こすクーデターか!?』
ここ3日間、狂戦士はアフリカ州、南アメリカ州で殺戮をした。ラックの話では今回は狂戦士に襲われていない地域の守備を強化していたたらしい。激しい戦闘の末、熟練の十数名のハンターで何とか狂戦士を退散させた。しかし、それでも民間、ハンター、動物の死者は少なくなかった。
正彦はどこかに連絡したいと言い、今はラックたちとは別行動をとっていた。もちろんラックたちにそんなことは聞こえてなかったが・・・。
ラックが読み飽き、日記を置いた。そして、車のエンジンをかけた。バクスも自分の分(普通の人の5倍)のサンドウィッチを食べ終え、空になった弁当箱をゴミ箱に捨てに行った。どうやら正彦が帰ってきたら出発するつもりらしい。
正彦が暗い面持ちで帰ってきた。見た限りでは良い話をされたわけじゃないとゲッシュは思った。正彦はゲッシュに話しかけた。
正彦「・・申し上げにくいこと何だが・・・俺達の部隊の隊長だったラベスタが、息を引き取った」
ラベスタは滅亡したフランスに来た正彦たちの部隊の隊長だったが、狂戦士との戦闘の最中、変えられたものは数日、地獄の如き幻覚を見る狂戦士の息をかけられ、フランスの戦闘から今日まで病院のベットにいた。
ラックの話では、狂戦士の幻覚は3日間ずっと地獄のような嫌な幻覚を見続けるが、見終えた後でも時々後遺症が残るらしい。
ラベスタの場合、3日間が過ぎ、後遺症が残っていて、ベットの上で後遺症と戦っていたが、途中、肺ガンにかかり手術もできないほどまで進行していたため、息を引き取った。
ラックが何処を目指すか話さないまま車を走らせていた。その間に正彦がラベスタの死について話していた。ゲッシュはそれを聞き、愕然としていた。何はともあれ、ラベスタは彼らの隊長だったためショックも大きかった。
しかし、ラックとバクスはそんなことはどうでもいいようだ。彼らはもう何百何千と人が死ぬのを見てきたため、人一人が死んでもあまり悲しくは無いようだ。
1時間ほど走り、ラックは車を停めた。そこはラックとバクスが住んでいる家だ。
正彦「ん?戻ってきたのか?」
ラック「・・・いや、違う。今日はここから少し歩いたところに用がある本当はあまり強力をさせたくないけど・・」
バクス「・・まさか・・ミルに助けを求めるの?・・・悪夢だ」
そんな簡単な話をして、ラックを先頭にどこかを目指して歩き始めた。ラックとバクスの家の周りには森林地帯があるだけで何も無いが、5分ほど歩くと小さな町についた。
その町は1階建ての家とカフェがほとんどで、店がカフェよりも少ない。町の周りは森林で覆われている。人はあまり外には出ていないが、若者が数名と中年の男達、老人が歩いているぐらいだ。あるところはカフェでゆっくりと時間を過ごしている人もいる。
ラックは1階立ての家に青い壁に赤い屋根というシンプルな家の玄関前にやってきた。そして、ラックがその家のインターホンを押す。
家から出てきたのはラックとバクスとは差ほど年が変わらない赤紙の長髪の女性だった。ミルと呼ばれる女性がラックとバクスを見ると、顔が笑みに包まれ、ラックとバクスに抱きついてきた。その光景を見た正彦とゲッシュはただ唖然とするばかりだ。
ミル「ラック!バクス!久しぶり!!」
ラック「ぐぇ・・・や、やぁミル。元気にしてた?」
ミル「うん、元気にしてたよ。バクスもまた髪伸びたんじゃない?今度私が切ってあげようか?」
ミルがそういっている間、ラックがミルの抱きつきから脱出し、抱きつき攻撃はバクスを中心に行なわれた。バクスも必死に攻撃から奪取しようとして何とか奪取した。バクスの顔は休まずに走り続けてもう息をすることしかできない状態に近かった。
バクス「ゼェ、ゼェ・・・。髪は・・もう少し伸ばす・・・よ」
へとへとである。
話がそらさないうちにラックが話しかけた。その手にはヴァンサーの日記を持っていた。
ラック「ミル。ちょいと俺らに力貸してくれないか?」
ミル「いいわよ。ところで・・・後ろの人たち、誰?」
ミルはやっと正彦とゲッシュの存在に気がついた。
ゲッシュ「へぇ~。じゃあミルはラックとバクスの幼馴染なんだ」
4人はミルの家に入り、ソファに座っていた。ミルがクッキーを持ってくると最初に手をつけたのはバクスであるのは言うまでも無い。
ミル「そ。ラックとバクスの父さんもハンターだったから、遠いところで悪魔退治に行くとき小さい頃のラックとバクスがよくうちに来て面倒見たの。私から見て、ラックが頼りになるおにいちゃんで、バクスは頭がいい弟みたいな存在だったかな」
昔のことの会話と今までの狂戦士について、『デット・クロス』についてを話した。話を聞き終えた後、ミルはヴァンサーの日記を読み進めた。
読み終えたのを見ると、ラックがミルに話しかけた。
ラック「お前は俺らと見方が違うからお前の意見を聞きたいと思ったんだ。俺らが悩んでいるのはさっき説明した通り。で、どう思う」
ミル「・・・自分だったらヴァンサーと同じで、『デット・クロス』だっけ?その十字架を壊す方法は書きにくいと思うなぁ」
バクス「書きにくい?」
ミル「そう。その十字架はヴァンサーが作ったんだよね?もし十字架が難しい方法で破壊するんだったら、自分は破壊方法は書くよ。でも書いていないってことは自分の考えでは理由は2つ」
ラック「2つの理由?」
ミル「1つはどんな武器でも破壊できること。でもラックとバクスがもうそのことを試したから可能は無い」
バクス「なるほどね。で、もう1つは?」
ミル「多分、ヴァンサーは『デット・クロス』はすぐ破壊されると思うんじゃないかな」
ラック「え?」
ミル「でも、ヴァンサーの考えどおりには行かず、十字架はそのままになった」
正彦「どういうことだい?」
ミル「ヴァンサーは多分、自分が死んでから十字架はすぐ破壊されると思って日記には書かなかった」
バクス「・・・・ちょっと待って・・・てことは・・」
ミル「破壊方法はすぐ近くにあったのよ。破壊方法はヴァンサーの所有する武器で破壊することよ」
ラック「そうか・・悪魔の命をなるものを作るには事細かに悪魔の命を作る特定の悪魔に注文しなければいけない。注文をし忘れると、悪魔が勝手に解釈して勝手に破壊方法を変えてしまうんだ。だから特定の武器で破壊することになったんだ」
ラックは日記をとり、パラパラとページをめくっていく。そして、見たいページを見つけ、探し求めた単語を指差した。
『レイピア』
続く
最終更新:2007年12月31日 17:40