こんにちは、真城華代です。
最近は本当に心の寂しい人ばかり。
そんな皆さんの為に私は活動しています。まだまだ未熟ですけれども、たまたま私が通りかかりましたとき、お悩みなどございましたら是非ともお申し付け下さい。
私に出来る範囲で依頼人の方のお悩みを露散させてご覧に入れましょう。どうぞお気軽にお申し付け下さいませ。
報酬ですか?
いえ、お金は頂いておりません。
お客様が満足頂ければ、それが何よりの報酬でございます。
さて、今回は果たし状をいただきました。
少年少女文庫の先輩として、今からぶちのめ――いえいえ、お灸をすえにまいります。
「華代ちゃんに果たし状!!?」
思わず叫ぶ俺は、花子。
おかっぱと赤い吊りスカートがチャームポイントの美少女。
元男子中学生で、今は幽霊やってる。
なんでこんなことになったかというと、ある日突然女の子になってたっていうわけ。
その後、クラスメイトの視線に耐えられなくて自殺したんだけど……今思えばこの体を使ってもう少しなにかできたかもと思う。
まあ、トイレで生徒達の噂話聞いたり、今はなんとか楽しくやって……たのは遠い過去。
「はい! ここで少年少女文庫を乗っ取ろうかと思って」
さらりと恐れ多いことを言う眼鏡の青服女。
俺の妹「ブキミ」だ。
「お前、何百人倒せば済むと思ってるんだ!! それに、華代ちゃんだぞ!! レベルが違いすぎるっての!! 最初にメイデンズをやるのが妥当だっての!!」
「……諦めたら、そこで試合終了だよ」
「バスケが……したいです……。じゃなくて!!」
危ない危ない。
思わずこいつのペースにはまるところだった。
「まあ、いざとなったら2人で滅多打ちにしようよ!」
そう言って、モップを掃除用具入れから出すブキミ。
俺の脳裏に「小学生女児 滅多打ち!」という見出しが過ぎる。
そんな時、俺の背後で響く透き通るような声。
「お姉ちゃんですか、果たし状を出したのは?」
思わず振り返ると、そこには蝶々のように真っ白な服を着た女の子が。
ああ、華代ちゃんだ……。
噂には聞いていたが、思わず拝んでしまうくらいの神々しさ。
その黒真珠みたいに綺麗な瞳には、ひとかけらの邪気もない。
まともに直視できない俺は、相当穢れているな。
そんな俺に構わず、ブキミはモップを振り上げる。
「ぬおりゃびちゅあっっ!!」
どんな掛け声だよ!?
華代ちゃんは、舞い上がるかのようにそれを避ける。
「うふふ……華代ちゃん。私達のために死んで」
目をありえないくらい見開くブキミ。
どうやら、華代ちゃんの神々しさがわからないほど腐りきっているらしい。
ていうか、俺を共犯みたいに言うな!!
「私は、お姉様のために仕方なくやってるんだから」
って、俺が主犯かよ!?
「んー、そういう態度に出るなら仕方ないですねえ……ソーレ!!」
思い切り両手を上げる華代ちゃん。
しかし、辺りはシーンとしてなにも起きない。
なんだ、なにをやったんだ?
その時だった。
廊下から響く、ぱたぱたという無数の足音。
やがて、トイレの戸が開け放たれる。
そこには、何十人もの華代ちゃんが。
手には、出刃包丁やら釘バットやら思い思いの武器を持っている。
カタカタと震えが止まらない。
まさか……全校生徒が?
「それじゃあ、やっちゃってくださーい!」
一斉に飛び掛る華代ちゃんズ。
俺はその瞬間、天使と悪魔は紙一重だと認識した……。
こうして、華代ちゃんは去っていった。
あとには、傷だらけの俺達が残されているのみ。
「いてて……あいつらって霊体にも攻撃できるんだ……」
全身がひりひりする。
命ばかりは助かった……って、もともと死んでるけど。
そんな俺の顔を、心配そうに覗き込むブキミ。
眼鏡の奥にある、透き通るような瞳。
俺と同じ顔だけど、思わずドキッとする。
「大丈夫ですか、お姉様?」
「ん……まあ、かすり傷だし!」
そう言って、恥ずかしさを誤魔化す俺。
「駄目よ! 口の中も切ってるみたいだし。ちゃんと消毒しないと……舌でね」
一転して、禍々しい光を宿すブキミ。
結局それかよ!!
なんてつっこむ前に、唇と唇が重なり合う。
「んんっ!! ん―――っっ!!」
抱擁しあう、小さな舌と舌。
やばい、柔らかくてきもひいい。
思わずされるがままになる俺。
ううっ、どんどん堕落していく気がする……。
今回は、結構楽なミッションでした。
こうやって教育的指導を加えるのも、先輩としての役目!
これにめげず、がんばってくださいませ!
それにしても、仲がよくて羨ましいですねえ。
私も、魅夜子ちゃんと……。
なんでもありません。
では、今度はあなた達の街にお伺いするかもしれません!
その時は、真城華代まで!
最終更新:2007年03月12日 22:31