地球防衛軍日本基地本部内は騒然としている。
地底怪獣出現の振動で、多数のけが人が出てしまったのだ。
壁際には、あちこちに血を流している隊員たちが蠢いている。
慌ただしく走り回る医師、看護師、そして隊員達。
「巨大生物が地下から出現!! 一体はアジアに生息している地底怪獣「バルト」。
もう一体のクラゲ型の生物は、出現経験がありません!」
声を大にして叫ぶ通信隊員。
眉間にしわを寄せる上村。
地震の原因が、まさか地底怪獣だったとは。
いくら陸海空での戦力を誇る地球防衛軍でも、地下からの攻撃には全く無力だったのだ。
「轟天号を呼び戻せ!」
「駄目です! 大戸島の巨大生物と戦闘中!」
唇を噛み締める上村。
とにかく今は、ある戦力で対処するしかない。
「メーサー殺獣光線車を中心とし、全力で対処せよ!! 東京がやられては、日本がやられたことと同じだ!!」

クラゲ型の巨大生物は奇声を上げ、レンズ状の目から虹色の光線を放つ。
オーロラのような光線が辺りを包み込んだ途端、火花を散らして破裂する教会。
瞬く間に炎上し、ビル街を火の海に変える「発火光線」。
その光がデズリーの透明な体に映し出され、美しいプリズムを作る。
焔にライトアップされた夜の街並みはさらがら地獄。
そのデズリーに雄叫びを上げながら突っ込んでいくバルト。
押されてよろめき、近くのビルに崩れるデズリー。
ガラガラと崩れ落ちる瓦礫。
バルトはそのまま踏みつけ、ハサミを食い込ませようとする。
だがその時、アスファルトを突き破って現れる触手。
ところてんのような細長いそれは、バルトを縛りつけた。
そのままそれを難なく振り回そうとするデズリー。
バルトはハサミについたのこぎりのような返し刃で、それを切断する。
甲高い奇声を上げるデズリー。
バルトは刃のついたその尾で次々と触手を切り刻んでいく。

次々と崩れ落ちるマンションや学校、寺院。
崩れ落ちる教会の十字架。
恐怖に怯え、リュックを背負って右往左往する人々。
防空頭巾を被り、泣き叫ぶ子ども。
それはまさに、日本の終わりを予感させる光景。
誘導する隊員達の顔にも、絶望の色が浮かんでいる。
その横を、銀色をしたパラボラ状の兵器を乗せ、
牽引車に引かれた戦車が信号をかすめて逆方向に走っていく。
66式メーサー殺獣光線車だ。
メーサー車はそのパラボラ状の砲塔を怪獣に向ける。
バチバチという音を立て、ほとばしる10万ボルト紫外線レーザー。
その青白い光線は、バルトの皮膚を捉えた。
もだえ苦しみ、体をはげしくゆするバルト。
どうやら効いているようだ。
それに追い討ちをかける戦車部隊。
74式戦車の砲門が次々と火を噴き、デズリーを火達磨にしようとする。
デズリーの透明な体に次々とつく火。
鈴のような啼き声を上げ、発火光線を放とうとするデズリー。
だが、航空からの攻撃がデズリーに襲い掛かる。
疾風のごとく夜空を通り過ぎるF-15。
その隙に後方へと下がり、別な場所からデズリーを狙い撃ちするメーサー部隊。
甲高い雄叫びを上げるデズリー。
やった――誰もがそう思った。
その途端、アスファルトを突き破って現れる無数の触手。
何千何万という触手の先端についている銀色の槍。
西洋のランスを思わせるそれは、真っ二つに開く。
次の瞬間、そこから紅いドリル状のミサイルが発射される。
まるで雨のように降り注ぐ紅いミサイル。
それは戦車の分厚い装甲を、まるでボール紙のように貫く。
たちまち串刺しとなる戦車や戦闘機。
バルトも例外ではなく、ハリネズミのようになり、立ったまま絶命している。
まるで空が割れんばかりの轟音が響き渡り、ミサイルは大爆発を起こした。
瓦礫、粉塵、爆煙――爆風によってそれらがゴミくずのように舞い、辺りは白一色に包まれる。
廃墟と化した東京。
原型を留めていないビル街や東京タワー。
立ち上る焔に彩られ、立っているのはデズリーのみ。
奇声を上げ、ゆっくりゆっくりとその巨体を移動させていくデズリー。
焔をその体に映し出し、進んでいく様は一種の幻想を感じさせる。
災魔の目指す先はただ1つ……地球防衛軍日本基地。
今、全ての希望の芽が摘まれようとしていた……。


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最終更新:2007年03月13日 19:20