同時刻、大戸島付近。
そこでは、空と海からの連続攻撃がゴジラに行われていた。
「どわあ!!」
青白い火炎放射を回避する篠田の声が通信機から聞こえる。
轟天号内の瀬戸内は顎をなで、ポツリと呟く。
「やばい状況だな。相手を翻弄するのには成功しているが、効果的なダメージは与えられない」
「それほどの相手、ということですね……」
ひきつった笑顔を浮かべる窪田、その肌理細やかな肌には冷や汗が数滴流れている。
薩摩は渋い顔で腕組みをする。
やはり、あの時篠田がゴジラを攻撃していなければ……。
そのような考えを慌てて振り払う薩摩。
隊長が諦めてしまっては部隊は終わり。
冷静になって考えるんだ……冷たい?
「そうだ! 瀬戸内、冷線砲をゴジラに発射するんだ!!」
訝しげな表情をし、片目を開く瀬戸内。
「ハァ? 海中じゃあやつに攻撃当てるのは困難だぜ」
「いいからやれ!! やつに当たらなくてもだ!!」
「……了解」
渋々そう言って、レバーに手をかける瀬戸内。
ドリルの先端から放たれる青白いレーザー「冷線砲」。
それはゴジラを捉えようとするが、その両腕を前に突き出す。
瞬間、弾かれる光線。
「あの爪……あれでミサイルや魚雷が弾かれたんですよね……」
レーダーとモニターを交互に見る窪田。
「ひるむな!! 続けて右方向!! 左斜め!!」
次々と放たれる光線、やはりゴジラの爪に弾かれる。
「もうエネルギーも残り少ないぜ。どうするんだ、隊長さんよ?」
モニターから目を離し、瀬戸内は薩摩の顔を見る。
自然と、顔がほころんでくる。
頃合だ。
「見ろ、そろそろ奴も身動きが取れなくなってきている」
急ぎ、前のモニターを見る瀬戸内と窪田。
それは白く凍りついた氷の檻。
ゴジラはそれに周りを囲まれ、身動きが出来ない様子。
「そうか! ゴジラではなく、周りの海水を狙っていたのですね!」
満足そうにうなずく薩摩。
その横で瀬戸内は小さく舌打ちをする。
「さあ、一気に叩くぞ!! 全兵器、一斉発射!!」
薩摩がそう言った次の瞬間、轟天号とα号から次々と武器が発射された。
何千何万ものミサイルは、一斉に氷に命中する。
轟音と共に巻き起こる水しぶき。
それは天にも届かんばかりの勢い。
その水しぶきも、冷線砲によって凍りついてしまう。
「やりましたあ!!」
まつげの長い目を細め、喜ぶ窪田。
その場の全員に、安堵の表情が見える。
その時だった。
氷を突如青白い熱線が貫く。
熱線は一直線に、轟天号の黒々としたボディーを捉える。
次の瞬間、大きく振動する轟天号内。
まるで頭が割れんばかりの轟音が響き渡り、衝撃で首が折れそうになる。
「轟天号、損傷率28パーセント!!」
窪田の声を聞きながら、体制を起こす薩摩。
一体なにがどうなっているんだ?
混乱し、モニターに目を移す。
そして、思わず目を見開いた。
そこには黒々と立ち尽くす、ゴジラが。
覆っていたはずの氷は影も形もない。
ゴジラは低い唸り声を上げながら、その濁ったような目で轟天号を捉えていた……。
最終更新:2007年03月13日 19:22