「美月、こっちこっち、この公園だよたしか」
「………なんだかさびしいところね」
やってきたのは二人の少女。
金髪碧眼の『美空』、黒髪で栗色の瞳の『美月』。
黄昏時の公園。
さびついた滑り台やジャングルジムが、橙色に沈んでいる。
人の気配は感じられない。 風さえ止まっている。
「で、なんでこんなところに連れてきたのよ?」
美月は振り向いたが、そこに、同行者の姿はなかった。
「あれ、美空?」
返事はない。
「ちょっと美空、どこにいったのよ?」
黄昏時、逢う魔が時、トワイライト。 危険な時間。
背筋に寒いものを感じて、美月は大声を上げた。
「いるんでしょ? 隠れてないで出てきなさいよ!」
きぃ。
ブランコのきしむ音が、背後から聞こえたような気がした。
振り向いちゃいけない………
本能的に危険を感じて、美月はいよいよ真剣に呼んだ。
「美空! いい加減にしなさい!」
きぃこ。
「美空! おねがい! 出てきて!」
きぃぃぃこ。
「美空! ほんとにいないの? ねえ!」
きぃいいこ。 きぃいいいこ。
そうだ、きっと美空がブランコに乗ってるんだ。
どうして始めにそう思わなかったんだろう。
美月は、振り向いた。
「みそら………」
ブランコは、揺れていた。 美空は、乗っていなかった。
代わりに、鞠のような影が、ゆっくり揺れる板に………。
こちらを、振り向いた。 目がある。 鼻がある。 口元が、ゆがむ。
女の、生首だ。 ふわりと、浮かび上がった。
「きゃああああああああっ」
心の底から悲鳴を上げた美月の前に、赤い着物の少女が、突如立ちはだかった!
美空が横手の茂みの影から飛び出す。
赤い着物の少女は、二人ににこっと笑いかけて、生首少女に向けて………
(戦闘シーンは本編でお楽しみくださいませ!)
………そして少女は、赤い風のように去っていった。
「美月、見た? やっぱかっこいいよね、メイデンズ!」
「ぐすっ、えっ、ひっく………。」
「しかも夏っちゃんだよ? あたし大ファンなんだ、来て良かったねえ?」
「………もと彼女が泣いてるのに、完全無視? 真剣に怖かったんだからね!?」
「ん、だって泣くことないわよ、ちゃんと退治してくれたじゃない。」
すっく、と美月は立ち上がった。
さっきと逆に、美空の手を引いて歩き出す。
「美月? 帰り道はそっちじゃないよ?」
「そんなに会いたいなら、花子のトイレに一晩閉じ込めてやるから、勝手に待ってろ!」
「あ、それいい! ね、次はアキちゃん来てくれるかな?」
「………あんたのバカはいっぺん死なないと直らないみたいね」
「ね、学校もそっちじゃないよ?」
「踏み切りに放り込んでテケテケにしてやるから、存分に退治されてこいっ!」
「それは、JRのひとに迷惑だよ?」
「あんたは存在自体が迷惑なんだから、たいして変わんないわよっ!」
「そっか、じゃあしょうがない、世界一あかるいテケテケを目指します!」
「よーしよく言った、骨は拾ってあげるわ、さあ死んで来い!」
「や、ちょっと美月、もしかして本気? きゃぁ列車来てるって、やめてぇ!」
最終更新:2007年04月11日 12:13