声を掛けたものの、
蟹座氏は速筆魔王LXをスルーしてずんずん先に進んでいってしまう。
一瞬無視されたのかと思ったが、通り過ぎた瞬間何か呟いていたのを思い出し、
おそらくは何か考え事をしていたのだろうと納得する。
(う~ん、こういう時は声掛けない方がいいかな?)
考え事をしている相手に対し話しかけるなど、あまりよろしい態度とは思えない。
そう結論付けたLXは、少し離れた状態から蟹座氏を見守る事に決めた。
こうしていれば、悩みが終わった瞬間を即座に判別できるし、襲われても助けてあげられる。
頭を抱えながら歩き続ける蟹座氏を、LXはゆっくりと追いかけることに決めた。
「……じゃない……座じゃないもん……」
(ちょっと遠過ぎたかな。もちっと近くにいかないと何を考えてるか聞こえないし)
そう思って距離を詰め様とした時、上空から放送の声が聞こえてきた。
チェックを入れたいが、もたもたしていると前に置いて行かれてしまう。
が、幸いな事に前を歩いていた蟹座氏も、これに気付いたのかピタリと足を止めた。
(よし。これなら余裕でチェック出来るよ)
地図が無いのは不便だが、放送は聴いておいて損はない。
そう考えて放送に耳を傾けていると、突然魔法のように地図が出現した。
これには、流石のLXも少しだけ驚いてしまう。
そっと地面に落ちた地図を手に取ると、その内容と現在地を照らし合わせる。
やはり地図があるのと無いとだとでは雲泥の差だ。
「しかし、ちょっとマズい状況になっちゃったなぁ」
地図はありがたいが、予想外の事が起きたのがかなり手痛い。
探しているはずの
美形元帥が既に死亡していたからだ。
こうなってしまうと、サンプルを入手するのが難しくなる。
(ただ、この死者数を考えるに、最悪他の死体からでも回収できるかな)
出来ればそういう事はしたくないが、万が一の事も考えておかなければならない。
どちらにせよ、今は目の前の蟹座氏に声を書けるのが先決だ。
と、前方を見たところで目標が居なくなっている事に気付く。
「え?あれ?どこいったの?」
目を離したほんの一瞬で、蟹座氏はLXの目の前からいなくなっていた。
◆
放送を聴き終わった蟹座氏は、安堵の表情を浮かべていた。
ギャルゲロワの仲間は二人散ってしまったが、探し人である
バトルマスターはまだ生きている。
少しばかり不謹慎かもしれないが、それだけが不幸中の幸いだった。
「っとと、安心したら緊張の糸が切れちゃったよ」
ついお腹に力を込めて聞いていたためか、膀胱が刺激されたようだ。
周囲を確認するが、タイミング悪く周囲の建物はみんなシャッターが下りている。
せめてコンビニかファミレスみたいな場所があればよかったのだが、
店どころか町全体がゴーストタウンの様に静まり返っているため、そんな施設など見当たらない。
さらに間の悪い事に、今まで忘れていた分の尿意までもが込み上げてきたのだ。
いっそ窓でも割ってどこか入り込もうかと考えたが、下手に力むと漏れてしまいそうになる。
もう既に一歩進むだけでも危険な状態だと、蟹座氏の腹部はキリキリ訴えかけていた。
覚悟を決めた蟹座氏は、よろよろと壁に手を伝わせながら物陰に隠れる。
「うぅ……こ、この場合しかたないよね」
こんな所で致してしまうなど、羞恥プレイもいいところだが、幸いな事に誰も見ていない。
生理的欲求に逆らえなくなってきている蟹座氏は震える手つきでパンティを下ろしていく。
(ちなみに柄は蟹でなく普通のストライプだった。ここまで来たなら蟹にすればいいのにね)
太腿までずり下げた所で膀胱からの第一波が来るが、足をハの字にして要求を拒む。
数秒間その状態で耐えると、危険を伝える波がゆっくり過ぎ去っていくのが分かる。
これで、次の第二波が来るまでかなりの安全が確保されたと言えよう。
くるぶしまで一気にパンティを下ろすと、蟹座氏はゆっくりとその場に腰を下ろした。
下手に膀胱を刺激しないように。溜まった水分が波打たないように、慎重に事を進める。
緊張で足が震える中、その剥き出しの小さな尻が、静かに地面へと迫っていく。
そこへ、本能の決壊を求める第二波が彼女の腹部で雄叫びを挙げる。
縦横無尽に駆けずり回るその痛みに、蟹座氏は額に脂汗をかきながら必死で耐えた。
(も、もう少し我慢すれば……せめて足は広げないとッ)
顎から滴り落ちる汗を見下ろしながら、蟹座氏は両手を隣の壁に当てて最後の戦いに挑む。
ここを過ぎれば天国がある。ここさえ乗り越えれば、あとは開放の鐘が鳴る。
震える足を丁寧に外側に移動させ、太腿がゆっくりとハの字に変化させる。
ようやく見えてきたゴールライン。長い長い戦いも、ここでようやく完結するのだ。
膀胱から押し出されていく本能を肌で感じながら、蟹座氏は達成感に満ちた表情で空を見上げた。
(もう、ゴールしてもいいよね――)
「お嬢さん。あっちにちゃんとしたトイレがあるよ」
「ほぇ?」
頬桁表情で発射準備に入っていた蟹座氏の眼前に、上空からLXが飛び降りてくる。
いきなりの登場に、蟹座氏はその場に尻餅をついてしまう。
陽の当たっていないアスファルトは、やけに冷たくザラザラしていた。
「さっき屋根伝いにお嬢さんを追ってた時、そこで公園を見つけたんです。
あそこなら扉もあるし、しかも紙もウォシュレットも完備でしたよ。
ともかく、こんな所で花など摘まずに、もっと文明の利の働く所で致しましょうよ」
「ぃ……に……」
「に?」
「かにゃあああああああああああああ!!」
頭の回転だけが戻った蟹座氏は、現在の状況と自分の状況と尿意とで、パニック状態を引き起こした。
それでも本能でLXから逃れようとするが、焦ったため下げていたパンティが足に絡まって転倒してしまう。
この衝撃が、膀胱からの予期せぬ第三波を引き寄せてしまった。
トドメとばかりに猛攻を仕掛けてくる腹部に、蟹座氏は大粒の涙を浮かべて耐える。
そして、意を決してその場から全速力で逃げ去った。
ちなみにその瞬間、脱ぎかけのパンティが完全に両足から外れて宙を舞ったが、気付く余裕はない。
今、彼女の頭にあるのは一つ。早くこの男から逃げて、安全なトイレに向かう事。
すでにちょびっと漏らしてしまっているが、まだ全部出し切った訳じゃない。
真人間として越えちゃいけない線を越えないため、蟹座氏は痛みに耐えて走り続けた。
ふと、突然現れたLXが追ってきていないか確認するため振り返る。振り返って後悔した。
視界の先に居たのは、脱げてしまったパンティを握り締め、真面目な顔で追いかけてくるLXの姿だった。
それと、見たくなかったが道すがら、自分の通った後に水で一筆書きしたような跡を発見してしまう。
なるほど負担が軽くなっていたのは、こう言うカラクリがあったからか。
「うわぁあああああああぁぁあああんっ!!!!」
「待って、待ってくれパンツの君!」
「うわぁああああああああああああああああぁぁあああんっ!!!!」
蟹座氏の通った道は、朝日を浴びてきらきら輝いていた。
【朝】【B-5 町外れ】
【チーム蟹座】
【速筆魔王LX@アニロワ2nd】
【状態】健康
【装備】虎竹刀with千年パズル。蟹座氏のパンティ(紺と白のストライプ)
【道具】支給品一式
【思考・行動】
1:まってパンツの君!
2:死んだ参加者から首輪を奪って脱出フラグを積む
3:でも別に何エンドでもおっけー
※容姿は相羽シンヤ。声子安。
※虎竹刀with千年パズル:今までパロロワに参加したことのある作品の原作で登場、紹介された
全てのゲームを召喚できる。ただしこちらから選択はできない。賭ける対象は武器使用者が選ぶ。
合意は不必要。
※蟹座氏の秘部を見ましたが、紳士なので公言しません。
【蟹座氏@ギャルゲロワ】
【状態】逃走(闘争)中、へこみ、ノーパン、ちびっと放尿中、Lv4.5
【装備】鉈
【道具】支給品一式、蟹座の黄金聖闘衣、最高ボタン、富竹時報
【思考・行動】
基本:仲間と共に主催者を倒す
0:うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!
1:とにかく逃げる!逃げて文明の理を利用させて!
2:蟹座じゃない、蟹座じゃないもんね……蟹座じゃないんだってば!
3:バトルマスターを始めとした、自ロワの参加者を捜索する
※外見はつよきすの蟹沢きぬ(カニ)です
※最高ボタンには『いやっほぉぉぉおおおう、蟹座のONiぃ様、最高ーーーーーっ!!!!!』というハクオロの声が流れます。
シークレットボイスにも何かあるかも?
※自分の心がキャラに影響されていることに気付きましたが、キャラに抵抗するため無駄な努力をしています。
※まだ結構尿意が残っています。
最終更新:2008年04月06日 00:15