「ベンは剣よりも強し」……もとい、「ペンは剣よりも強し」。蓋し名言である。

だが、昨今とある創作界隈ではペンで殴り掛かるような風潮が見られなくもない。
「初めてのSSでした」と告白すれば、「殺すぞ」と煽られ。
少しでも名が通った者に対しては、煽ってでも自らの領域に引き込んでしまおうとし。
煽り行為を咎められては、「反省するくらいなら最初からしねーし」と居直ろうとし。

そんな現状に強い憂いを持つ者がいた。

――『創作者たるもの、作品のみで語るべき』――

そんな信条を持つ彼女からすれば、場外乱闘に勤しむ創作者など許せるはずもなかった。
あまつさえ、近頃は彼女をも勝手に巻き込んで創作をしているとも聞いていた。

「所詮は生命の扱いを違えた戯け者どもというわけか」

手にしたマックスコーヒーを一口嚥下したのは、一見すればゴスロリ服に身を包んだただの少女だった。
しかし、その少女が放つ威圧感はとても無垢な少女のものではなく、まるで修羅そのもの。

生命のやり取りをする創作など古来より存在するものであり、今更目くじらを立てるようなものではなかった。
だが、ここ最近のこの界隈での風潮は、最早見過ごせるものではない、そう彼女は考えていた。

「奴らも創作者の端くれと今までは見過ごしていたが、少々悪ふざけがすぎたようだな……
 いいだろう、そんなに殺し合いを書くのが好きならば、実際にその身を以て味わってもらおうではないか」

傍らの机にコーヒー缶をそっと置くと、少女は立ち上がった。

「そのための舞台を創り上げてやるとするかな。よかったではないか、実地取材が出来て……もっとも」

そこまで呟いた少女が小さく、そして歪んだ微笑みを湛えた。

「――それを創作に生かせるのはただ一人だけ、だがな」





例年に比べて早咲きだった桜の散る頃に、各地で失踪事件が発生した。
ある者は自宅のPC前から、ある者は学校のPC室から、ある者は会社のデスクから。
ついにはカラオケボックスの一室で歌っていた集団が忽然と消え失せたという事例まで起こった。

姿を消した者たちに共通する点はたった一つ。
"パロロワ"という果実に手をつけてしまったことであった。



【書き手バトルロワイアル4th 開幕】
【主催 ハルトシュラー】

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最終更新:2013年04月07日 17:59