私は、興奮していた。
胸は高鳴り頬は熱く顔にはにやつきが浮かんでいる。
とても人には見せられない姿だろう。
けれど仕方がない。
何故なら今、私は、夢の始まりにいるのだ。
目を向ける。
そこには多くの人たちがいる。
私が憧れ、敬い、愛する人たちが、そこには倒れ伏していた。
その間を、私は歩く。
こつこつと足音を立てて歩いても、誰一人目を覚まさない。
それでも私は、彼らが私の存在を認識していると知っていた。
何故なら、私は彼らが心血を注ぎ感情を込めて紡いだ全てを知っている。
私の心には彼らが紡いだ物語が溜めこまれている。私の脳には彼らが創り上げたシナリオが刻みつけられている。
私は、その全てを、心底から愛している。
その気持ちを通し、私は彼らと繋がることができるのだ。

「初めまして、敬愛する書き手の皆様」

語りかける。

「私、皆様が書かれた全てのSS<バトルロワイアル・パロディ>を読ませて頂いた者です」

弾む足取りで、

「様々な物語を、私は覚えています」

スキップをするようにして、

「楽しいお話がありました。笑ってしまうようなお話がありました」

尊敬する書き手さんたちの間を歩き、

「哀しくなってしまうお話がありました。胸が痛くなるお話がありました」

全員の顔を、姿を、一人一人確かめ、

「美しいお話がありました。手に汗握るお話がありました」

私は、語りかけるのだ。

「たくさんの物語に、私は感動をいただきました」

そうして、全ての書き手さんを眺めてから、足を止めた。
目を閉じれば、数え切れない物語が思い起こされる。

「けれど、私は欲張りだから」

大仰に両手を広げ、振り返る。

「もっと、もっと、もっと面白く、素敵で、刺激的な物語が欲しいのです!」

倒れ伏す多くの書き手さんたちが、私の視界に広がった。
背筋が、ぞくりと震えあがる。
彼らに対する尊敬と、畏怖と、そして。
これから彼らが見せてくれるであろう物語を想像して――興奮が、駆け巡るのだ。

「ですから、皆様。愛する書き手の皆様」

自分の言葉が熱っぽくなっているのが分かる。荒れ狂う期待は、一切抑えられない。

「私に、魅せて下さいませ」

溢れ出しそうな鼓動が言葉を彩り、興奮が体を大仰に動かしてくる。

「貴方様方の身を以って、最高の物語を、魅せて下さいませ!」

高らかに告げる私の声は、これまでの人生で最も満ち足りていた。
だってそうだろう。
大好きなパロロワ書き手さんたちに、大好きなパロロワを繰り広げて貰える。
数え切れないほどの素晴らしい物語を紡いできた彼らが、こうして一同に会し、実際にバトル・ロワイアルを行えば。
産出されるのは、きっと。
紛れもなく、極上の物語だ。
それはきっと、私の胸を満足させてくれる。
最高の感動を、私にもたらしてくれる。

書き手さんたちの生き様をこの見たい。
書き手さんたちの叫びをこの耳で聴きたい。
そして。
書き手さんたちの命が織り成す感動を、このこころで感じたいのだ。

そのために。

「これから皆様には」

幾度となく読み、心躍らされる物語の開始の合図を、今こそ宣言する。

「――殺し合いをして頂きますッ!」

それだけ告げられれば、充分だった。
書き手さんの前に、ルール説明も見せしめも必要ない。
私などよりも、彼らの方が現状をよく理解できるはずなのだから。
そうして、皆様の姿が光に包まれ、物語を紡ぐべき場所へと転移していく。

数多い光たちを眺めながら、私は、初めて本を読んだ時のときめきを思い出していたのだった。

【主催者:すべてのパロロワを愛すもの】

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最終更新:2013年04月07日 18:38