「うーん…」
カービィは目を覚ました。
「ゲホッ…」
と、同時に咳き込んだ、かなり空気が悪い。
「…あれ…?」
カービィは目をこすった。
空気が悪いせいで見にくかったと言うのもあるが、それ以上に、ここが何処だか分からなかったからだ。
空を多い尽くさんばかりの摩天楼。
入り組んだレール。
明らかにポップスターではないし、此所とよく似ているメックアイでもなかった。
カービィは、ワープスターで、宇宙を飛んでいる最中に隕石に激突して…、どうやら見知らぬ星に落ちたらしい。
「ゲホッ…ゲホッ…」
再び、彼はむせた。
意識はハッキリしているが、気を抜けば気絶しそうなくらい空気が悪い。
人気はない。
無数のレールにも、摩天楼にも人影はなかった。
『ピピッ』
短い電子音。
よく見ると、ビルの入り口に機械があった。
四角い機械だ。
『ピピピッ』
機械はカービィの周りをグルグルと飛んだ。
『ピピッ…生命反応アリ。分析結果、ポップスターノ生命体』
機械は言う。
『ピピピッ…危険、危険、生命、ココニイテハイケナイ』
「え…?」
カービィが言うと機械は続けた。
『ココハ、グランネスト。機械惑星グランネスト』
「機械…惑星…?」
『ソウ、主ハ、ココヲ捨テテ、脱出シタ、空気汚染度MAX、ヨッテ、モウ住メナイカラ』
………かいつまんで書くと、この星は元々、機械工学が盛んだったらしい、けれども、過度の空気汚染のために彼等が言う『主』つまりこの星の『生命体』は皆、星を捨てて宇宙へと脱出したらしい。
彼等はAIを搭載した自立機械。
今では彼等がこの機械惑星『グランネスト』の住人だと言う…。
「…でも…僕、ワープスターってのに乗ってきたんだけど…。失くしちゃって…見なかった?」
カービィが聞くと、機械は
『コッチ』
と言って動き始めた。
「あ、うん」
ワープスターはコンクリートの道に半分ほど埋まっていた。
「あ、これだ!」
しかし、なかなか抜けない。
『………』
見兼ねた機械はワイヤーを降ろして、それで引き上げてくれた。
「ありがとう。何かお礼できないかな?」
カービィが聞くと機械は別の機械たちと相談を始めた。
『…メテオス…』
「え?」
『メテオスヲ、倒ス。手伝ッテクレ』
「メテオス?」
『ソウ、暴走ヲ繰リ返ス、悲劇ノ惑星。他ノ星ヲ飲ミ込ミ、圧殺スル星』
カービィは『星を倒す』と言われてもイマイチ実感が湧かなかった。
メテオスの暴走を見るまでは。
それは突然の出来事だった。
無数の煌めく流星が、グランネストに降り注ぎはじめたのだ。
流星は、止まらない。
機械たちがワイヤーを張り巡らせ、流星を逆に打ち上げた。
『コッチ』
機械がカービィを呼んだ。
そこには大きな大きな艦があった。
『巨大宇宙戦艦メタモアーク。我々ノ、最後ノ希望』
「最後の…?」
『ソウ、早クシナイト、メテオスノ犠牲ニナルカラ』
流星は止まるどころか量を増している。
カービィは、ワープスターに乗って宇宙へと向かった。
そこには、巨大な金色の瞳のような惑星があった。
『アレガ、メテオス』
「惑星…!?あれが…!?」
メテオスは、流星を放出し続ける。
『メテオ…。同ジ物質同士ヲ連結サセルト、核融合起コシテ、打チ上ガル。ソノ力デ、メテオスヲ倒ス』
「じゃあ…僕は何をしたらいいの?」
『メテオヲ…誘導シテホシイ。コノ戦艦ノトコロマデ』
「分かった」
『礼ヲイウ…』
カービィは飛び立つ。
あの機械たちは、今でも主を待っている。
帰らないと知っていながらも待っている。
だから、星を壊すわけには行かないのだろう。
主がいつ帰ってきてもいいように、ずっとあの星を守っているのだから。
メテオスは流星を放出し続ける。
カービィは流星の間をくぐり抜け、流星を引き寄せた。
流星は軌道を変える。
メタモアークから、無数のワイヤーが伸びてきた。
流星をつかみ、無理矢理連結させる。
流星が打ちあがり、メテオスへと逆戻りした。
カービィは、それを見ている。
メテオの量が増えてきた。
それでもグランネストの民は諦めない。
諦めれば、それは滅亡の時だ。
宇宙に浮かぶ邪眼、メテオスはメテオの放出を続ける。
グランネストの民は、それを打ち上げ続ける。
どれくらい経っただろう?
実際はそんなに長くはなかったのかもしれない。
それでも長い時間だった。
メテオスが、軌道を変えた。
「ねぇ…倒したの…?」
カービィが聞くとグランネストの民は一言。
『分カラナイ』
と答えた。
『メテオス、マタ来ルカモ知レナイ。ケド、我々ハ戦ウ』
そう言って機械はカービィを見た。
『礼ヲ言ウ。協力感謝スル。ケレドモ早ク帰レ。生命、ココニイテハイケナイ!』
機械は、叫んだ。
「あの…さ…」
カービィはワープスターに乗り込みながら、言った。
「君たちが言うほど、ここの空気、汚くないよ。まだちょっと苦しいけど、死んじゃうほどじゃない。だから、きっと君たちの主も帰ってくるよ、いつか…いつかきっと…」
『………アリガトウ』
機械はそう言って笑った。
機械が笑うと言うのも可笑しいが、あれはきっと笑ったんだと思う。
カービィは微笑みを返して宇宙へ飛んだ。
今も、宇宙の片隅で、主を待ってる機械がいる。
<FIN>
打ーちー上げーろーメーテーオースー。
続編でないかなー。
最終更新:2010年02月19日 15:21