君ノ声

闇ノ中
闇ノ向コウ
此処ハ何処ダ?
俺ハ何処ニ向カッテイル?


――君ノ声――


「うっひゃー…」
リックが城を見上げた。
「真っ黒だな、おい」
「まさにダークキャッスル…というわけか」
クーがぽつりと言った。
「…ここが…最後か…?」
途切れるように言ったのはカインだ。
「…うん…多分ね」
カービィは――今やダークキャッスルと化した――デデデ城を見上げた。
「…でも…デデデ、どうして…?こんなの…デデデらしくないよ…」



どぐんっ…

鼓動が響く。
遠い何処かで、誰かの泣く声。


………。


俺ハ何処ニ向カッテイル?


ダークキャッスル…最終エリア。
全ての虹の雫を揃え、カービィは城の――完全な左右対象にはなれなかったその城の――最上階に来ていた。
「…ここからは…僕一人で行くよ」
カービィはそう言って笑った。
「大丈夫なのか?」
リックが聞くとカービィは頷いて
「うん、大丈夫。それに、デデデと話がしたいんだ。どうして虹を消したのか…。彼らしくないもん」
と言って、階段に足をかけた。
「…気をつけろよ…カービィ」
「分かってるって」
カービィはわざとらしく笑い、階段の先へと消えた。
デデデ城――もといダークキャッスル――屋上…。
「…来たか…カービィ」
デデデ大王はハンマー片手に立っていた。
「デデデ…。どうして…!?どうして虹を消したの!?」
「お前に教える義理はねぇだろ?どうせ、お前は此処で死ぬんだしな…!」
言うと同時に大王はカービィに突っ込んで来た!
「うわっ!?」
寸前でカービィはそれを避けたが、衝撃で床が崩れた。
…何かがおかしい。
「クッ…避けるか…ならばっ…!」
続いて大王はハンマーを投げた。
カービィは瓦礫を吸い込み、吐き出して大王を牽制する。

…なんなのだろう?

この違和感は…。

いつもと違う…この感じ…。

…違う…違うよ!

…ねぇ、デデデ、君は悪くないんだろ!?

…また…またナイトメアみたいな黒幕がいて…それで虹を消したんでしょ?

…お願いだからそうだと言ってよ!


カービィは迫り来るハンマーを避けつつ叫んだ。
「ねぇ、デデデ!…君は悪くないんだろ…?どーせまた…黒幕が…」
「いねぇよ」
カービィの言葉を遮るように、大王は言った。
「今回の主犯は紛れも無く、この俺だ」
「…う…そ…?」
「生憎だが事実だ。カービィ…お前…邪魔なんだよ。だからここらで死んでくれ」
大王はそう言ってハンマーを振り上げた。
カービィは呆然としてしまい、動けない。
「死ね」
ハンマーが振り下ろされた。

そう思った。

カービィは思わず目を固く閉じた…が、衝撃は来なかった。

恐る恐る目を開きフと上を見れば…

「…デデデ…?」
カービィは呟いた。
ハンマーはカービィに当たる寸前で止まっている。
その体は小刻みに震えている。
「…何…してんだよ…カービィ…」
大王は絞り出すように言った。
「…え…?」
「…早く………せ」
「え?なんて?よく聞こえ…」
「早く俺を殺せ!!!」
大王は叫んだ。
が、その直後
「チィッ…!貴様…まだ…意識を…!」
と言って、頭を押さえた。
そしてまた
「カービィ!今の…う…ちにっ…!虹の雫……早くっ…!」
と、うずくまりながら叫んだ。
「え…し…雫を…?」
カービィは虹の雫を取り出した。
「早く…しろっ…!お…れ…もう…意…識が…………クッ…!」
大王はフラリと立ち上がった。
が、しかし、その目は赤く光っていた。
「愚かな…。我に刃向かいおってからに…」
その声も、明らかに大王のものではなかった。
「…で…デデデ…?」
カービィは雫の入った小瓶をにぎりしめた。
「…クッ…まだ…抵抗を続けるのか…貴様は…」
当の大王はわけの解らないことを呟いている。

…違う…デデデじゃない…!

「君…誰!?…誰なの!?」
カービィは叫んだ。
すると大王は赤い目を彼に向けた。
「…我が名は…ダークマター…」
「ダーク…マター…?」
「…左様…古より、世界に君臨し続けた壮大なる闇の一族…それが我ら、マター族だ」
「…デデデに…何をしたの…?」
カービィが聞くと大王…いや、ダークマターは微笑んだ。
「少し…体を借りているだけだ」
そして、そう一言。


ダークマターが動いた。


飛んでくる、瓦礫。
迫り来る、木槌。
かわして、かわして、かわし続ける。
「どうした?逃げてばかりでは埒があかんだろう!!!」
ダークマターはそう言いつつも、攻撃を止めない。
「デデデ…!」
カービィは歯を食いしばった。
攻撃なんて、できない。
できるわけがない。
だって…あの体は…!

カービィはギュッと拳を握った。

その時だ。
――馬鹿野郎…!なんで反撃しねぇんだ!?――
「…え?」
声がした。
――俺のことなんざ、気にするな…。さっさとその雫でダークマターを倒しやがれ!――
「…デデデ…?」
カービィは顔を上げた。
虹の雫を入れている小瓶がピシリと音を立てる。
「…死ねッ!」
ダークマターがハンマーを振り下ろした。



次の瞬間、決着はついた。



「…ガッ…」
ダークマターが、倒れた。
「………」
カービィの手には虹色の剣。
「…おの…れ…!」
うずくまるダークマター――体はデデデ大王だが――は叫んだ、そして…
『おのれ…!許さぬ、決して赦さぬぞ!永き歳月の中で、これ程の屈辱があったとでも云うのか!?いや、有り得ぬ、このような愚行があってなるものかッ!我が名はダークマター!この世を終焉へと導く、マター族の兵器…!兵器に失策は許されぬ!決して赦されぬぞ…!せめて我が弔いに、貴様をも地獄へと導いてくれるッ…!』
その体から、黒い霧が吹き出した。それはうねり、形をひとつに纏め、空へと打ち上がる。
カービィの持つ虹の剣が光り、霧を追うように、彼を空へと導いた。


そして――――




――…さ……――

……誰だ?

――……て……い……――

…ッ……体中が痛ぇ…。

「大王様!」
「起きて下さい!」
「…あン?」
目を開けると、そこは俺の城の屋上。
何故かあちこちが瓦礫の山と化しているが、間違いない。

………えーっと……

俺の名はデデデ。
ここ、ポップスターのプププランドの大王だ。
目の前にいるのは部下のポピーJr.とワドルディ…。
あれ?ポピーSr.は何処行ったんだ?

「大王様!」
ワドルディが叫んだ。
「起きたばっかのとこ、悪いけど、大変なの!」
「どうした?」
俺が聞くとワドルディが答えた。
「城が真っ黒な霧で溢れちゃってるんスよ!」
「何ィ!?」
思い出した、ダークマターだッ!
次の瞬間、記憶が溢れ出た。

チィッ…俺ともあろう男が操られちまうとはな…!

おそらく、城に溢れている連中はカービィを倒すための援護部隊か何かだろう。

………。

ったく、しゃーねーな…。

俺は引きずるように体を起こした。

カービィがでっけぇのブッ倒すまで、城での足止めくらいはしてやるか!
「行くぞ!ワドルディ!ポピー!」
「了解ッス!」
「なのっ!」

カービィがダークマターを打ち倒し、世界に光と虹が戻ってきたのはそれから数時間後のお話―――


<終わり>



ノリと勢いだけで携帯電話で書いた小説です。
『2』大好きだなー。
エンディングは泣いたな…。
最終更新:2010年02月19日 15:23
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