Before その匣の秘密。
デデデ城の地下3階。
ここには、大王しか知らない秘密の部屋がある。
「大王様、なんスか?この箱」
部下のワドルディが大王に問う。
彼は少し大きめの宝箱を抱えていた。
「あぁ、これか。…何でもねぇよ」
彼はそう言ってその箱を持って地下へと向かう。
「あれ?地下室に片付けちゃうんスか?その箱…」
「あぁ。ここらに置いとくと何かと物騒だからな。…まぁ、あそこだったら俺以外は入らねぇし」
大王はニッと笑った。
「………」
ワドルディは箱の中身が気になってしかたなかった。
「え?大きな宝箱…ですか?」
大王の右腕ともいうべき存在の男…ポピーブラザーズシニア、通称ブロスは本を読む手を止めてワドルディを見た。
「そうッス。大王様が地下に持ってったんスけど…。何が入ってるんスか?」
「あぁ…その箱のことでしたか…」
ブロスは本にしおりをはさみ、続けた。
「あの箱はですね、開けてはならないんですよ」
「へ?」
「中に…とんでもないものが入ってるんです」
「とんでもないもの?」
「ゼロは知ってますよね?」
「当然ッス」
ワドルディは近くの椅子に腰を下ろした。
「あの箱には…ゼロとは似て非なる闇の塊が入っているのですよ。…まぁ、ダークゼロ、とでも申しますか」
ブロスはフッとため息をついた。
「昔の話なんですけどね。貴方がまだ幼い頃です。宇宙から飛来した『それ』は国の端っこの方に落っこちたんです。私は、大王様と共に、その飛来物を見に行きました。すると、そこにあったのは、巨大な巨大な闇でした」
彼は天井を見上げる。
「私は思わず足がすくんでしまって…動けませんでした。それほどまでに恐ろしかったんです。『それ』はこの世に存在するありとあらゆるエネルギーを操ることが出来たらしく…炎だの電撃だの、多種多様な攻撃を仕掛けてきました。…下手したら死んでいたかもしれませんね。と、言いますか、大王様の放った『鬼殺し火炎ハンマー』がヒットしなければ、間違いなくこの国自体が終わっていますね。それほどまでに手強い存在だったんですよ。まぁ、結局、死闘の末に『それ』は沈黙しました。大王様は動かなくなった『それ』を宝箱に封じ込めて、その場所の地中深くに埋めたんです」
「それが…さっきの宝箱ッスか?」
「おそらくそうでしょうね」
ワドルディの言葉にブロスは頷いた。
「なんで掘り起こしたりしたんスか?」
「先日…地震があったでしょう?その時にその場所が崩れてしまったんです。だから大王様はきっと、宝箱が破損する前に城に持ってきたんじゃないですかね?」
「ははーん…納得ッス」
ワドルディは少しだけ身震いした。
『デデデ城の地下にあるその宝箱は決して開けてはならない。その匣には、恐ろしい魔物が封じ込められているのだから…』
その話は宇宙を渡った。
しかし、宇宙を渡り語り継がれるうちに、その話は歪められた。
『プププランドには大いなる力を手に入れられる秘宝がある』
いつしかそう言われるようになった。
そして『その日』
その匣は、遂に開けられることとなる――――
最終更新:2010年02月19日 15:30