Now2 夢と匣と願いと。
「だんちょ、だんちょ」
「団長!…ね…団長ってば!」
「…だん…ちょ…」
「ドロッチェや、起きなさい」
「…む…?」
目を覚ますと、不安げで心配そうで安堵したような複雑な表情の団員たちが、私を見下ろしていた。
「団長ォ――――ッ!!!」
途端にスピンが飛びついてくる。
「うわっ!?」
らしくもなく後ろに転んでしまった。
「団長!頭とか痛くないッスか!?怪我とかないッスか!?」
「あ?…あ、あぁ…別になんともないが…」
ダークゼロとか言ったか、あの黒い星は。
…まったく、大王閣下の言うことは始めから正しかったのだな。
―― この城に…『大いなる力が得られる秘宝』がある…という噂です ――
―― そんなもんはねぇ。ここには…そんなものありゃしねぇよ ――
それを信じなかった結果がこれだ。思わず苦笑してしまう。
…まったく私はとんだ大馬鹿者だな。
「団長。…何がおかしいんスか?ひょっとしてどっか打ったとか?」
「いや…大丈夫だ」
…くだらない意地から…『夢』と偽ったつまらぬ幻想を追い求めていたのかもな…。
そのせいで大切なことを忘れていた。
「あ、そうだ団長。あのカービィって奴、案外すげぇ奴だったんスよ。団長の体を乗っ取ったへんちくりんな黒星も倒しちゃうし。…でも、アイツ結局なんで追っかけてきてたんスかね?」
スピンが首をひねった。
言われれば確かに…とも思う。
彼は匣の中身を知らなかったのだ。
「だんちょ、だんちょ」
緑チューリンが不意に言葉を発した。
「あいつ、言ってた。『ケーキ、ケーキ』って言ってた」
続いて黄チューリン。
「そういえばアイツ、宝箱の中身がショートケーキだと思ってたみたいッス」
スピンが言う。
…ショートケーキ?
「…オデが…くったやつ…かも」
ストロンがポツリと言った。
「………」
沈黙する一同。
しかし私だけは、何故か笑いがこみ上げてきた。
「クッ…ハハハハハッ!」
「だ…団長!?何がおかしいんスか?」
「クッ…いや何…。私が盗んだ匣が巻き起こしたこの騒動を鎮める原因をストロンが作っていたかと思うとおかしくてね…」
「…へ?」
「つまり、だ」
首をひねるスピンに対して私は説明を始めた。
「私が匣を盗んだのが、この事件の始まりだろう?それを鎮めたのは先程のカービィとやらだ。そして、そのカービィとやらが我々を追うきっかけを作ったのはストロンが彼のケーキを盗んだからであろう?おかしいとは思わんか?」
「はぁ…そうですかね?」
「なんにせよ…怪盗ドロッチェの名に懸け、借りはあまり作りたくはない。そこでだ」
私はにやりと微笑んだ。
最終更新:2010年02月19日 15:32