意識が白くなっていく。
…なんだ、俺…結局負けたのか。
…ブライアの奴…ちゃんと逃げたかなぁ?
………。
……………。
… … … … … … 。
愛≒友情
ハルバートの装甲を修理し終え、グラッグは軽く伸びをした。
「………」
空も海も…眩しい程澄んでいる。
ブライアはまだ眠っているのだろう。
長年の付き合いから言えば起きるのはきっと2時間は後だ。
「グラッグ、ご苦労さん」
そう言って元気ドリンクを放り投げて来たのはアックスナイトだった。
「…おぅ」
グラッグはドリンクの蓋をぐいっと捻ると、喉が渇いていたのか、中身を一気に飲み干した。
「♪…守ろうとした掌で…握り潰してしまうよ…」
そしてポツリとこんな歌を歌う。
「…あン?」
アスが首を傾げた。
「なんだなんだぁ?いきなりしみったれた歌なんか歌いだしやがって…」
「…俺さ、こう見えて一応族長の付き人やってんだ」
急にグラッグはこんなことを言い出した。
「まぁ…付き人というかお世話係というか保護者というかベビーシッターというか近衛兵というか…。とにかく族長を守るのが俺の役目なんだ」
「…族長ってブライアのことか?」
「あぁ」
グラッグは苦笑した。
「笑っちまうだろ?あれで一族の長だぜ?」
「まぁ、笑いはしないけどさ」
アスは微笑んだ。
「…なのに俺…守れなかった」
グラッグは空を見上げる。
「それどころか助けられた。守らなきゃならない奴に…」
彼は自嘲気味に笑う「ダメな奴だよな、俺」
「…んなことねーよ。お前、それだけ自分を責められるんならたいしたもんだ」
アスはグラッグの肩を叩いた。
「誰もお前のこと…ダメな奴なんて思ってねーよ」
「そう…なのか…?」
「そんなもんだって。あんまり自分を責めんなよ」
アスは笑った。
「………」
グラッグはまた空を見上げる。
「ふわぁ…」
ブライアは目を覚ました。
寝ぼけ眼をこすっていると…
「起きたか?寝ぼすけな族長さん」
グラッグが笑っていた。
「……あ」
ブライアの頬を涙が伝う。
「…って、何で泣くんだよ…」
グラッグが言う「そんなに俺が嫌いか?」
「違う。逆だ」
ブライアはグラッグに飛び付いた。
「なっ…!?ぶ…ブライア…?」
「…怖かったんだ」
「は…?」
「独りっきりがあんなに怖いだなんて…俺…知らなかったから…。だいたい…俺がもっとしっかりしてれば…こんなことには…」
「馬鹿野郎」
グラッグはブライアにデコピンをした。
「族長たるお前がそんな弱気でどーする?こんなことになっちまった以上どーにかするしかねーんだから…もっと胸張れ」
「…分かった」
ブライアはギュウゥッとグラッグを抱きしめる。
「…そのかわり…もう何処にも行くな。俺の傍に…ずっと居ろ」
「はいはい。分かってるって。…まったく…淋しがり屋な族長さんだな?」
「うるせーよ…」
「………」
グラッグは優しくブライアを撫でた。
「ぶーちゃんとぉ、ぐーちゃんってぇ…口ではぁ言い表せないぃ~微妙なぁ関係ぃ?」
ピューレは隣にいたメイに言った。
「いや…あの会話だけじゃなんとも言えねぇだスよ…」
「…いわゆるボーイズラヴって奴かしら?」
「ぼーいずらぶ?」
ルルナの言葉にメイは首をひねる。
「るーちゃん、なんかぁ…嬉しそうだよぉ?」
「やぁねぇ、ピューレってばぁ、何にもないわよ、な・ん・に・も」
「………怪しいぃなぁ~…」
ピューレはそう言って再び扉の隙間から室内を覗いた。
泣き疲れて再び眠ってしまったブライアの背中を、グラッグが優しく叩いていた。
<FIN>
最終更新:2010年02月19日 15:55