キュルキュルキュルキュル戦車の音
ゴウゴウゴウゴウ炎の音
ギラギラギラギラ太陽の下
冷たくお前は人形になった
ヘーワのテーギ。
テープを巻く音がどうにも苦手だった。
キュルキュルと音が鳴る度に呼吸が荒くなってしまう。
暖炉もどうにも苦手だった。
焚火も苦手だから、多分赤い炎が嫌いなのだろう。
そんな俺を気遣ったのか最近台所がオール電化になった。
ガスコンロは平気だったけれど。
夏の暑い日がどうしても好きになれなかった。
だって、あの日と同じだから…。
「ごめんね」
そう言い残して、冷たくアイツは人形になった。
何も言わない肉塊になった。
ギラギラ暑い夏の日の
ゴウゴウ燃える炎の中
キュルキュル走る戦車の放った『それ』により
冷たくお前は人形になった。
「シグナル、どーした?」
『いや…何でも…何でもない』
「………?」
ナックルジョーは戦争を知らない。
あんなもの、知らない方が幸せだろう。
でも、それがあったという事実は消せない。
消しちゃいけない。
だから
事実は残して、その上でもうあんなことが起こらないように努めるのが
生き残った俺達の役目なんじゃないかと思う。
<fin>
僕たちは、戦争を知らない。
最終更新:2010年02月19日 15:55