「わっぴー」
オレがそう呼ぶ『アイツ』は、一度たりとも笑ったことがなかった。
<弱点擽君之引攣笑顔>
「わっぴー、何やってんだー?」
サーキブルに声をかけられ、ワドルドゥは酷く不機嫌な顔で振り返るや否や
「わっぴーって呼ぶな」
と吐き捨てるように言った。
「いいじゃねぇか。わっぴーはわっぴーなんだから」
サーキブルはそう言って笑いながらワドルドゥの隣に座る。
「あン?本…読んでたのか?」
彼はそう言って身をかがめ、ワドルドゥの読んでいる本の背表紙をまじまじと見た。
「…別になんだっていいだろ?見るな」
「…『殺意の時間割』…まーた物騒なタイトルだな」
「黙れ」
ワドルドゥはそう言ってサーキブルの腹に蹴りを入れた。
サーキブルは吹っ飛び、部屋の壁に叩きつけられる。
「くはぁ~…効くなぁ、わっぴーの蹴り」
「馬鹿か?あとわっぴーって呼ぶなと何度言ったら…」
「何度言われてもやめねぇよ」
ワドルドゥの言葉を遮るように、サーキブルは笑って言った。
「…お前に常識を求めたオレが馬鹿だったようだな…」
ワドルドゥはそう言って本を閉じると、そのまま立ち上がり部屋をあとにしようとした、が。
「待てよ、わっぴー」
サーキブルに止められた。
「…まだなんかあんのか?」
ワドルドゥは振り返りもしない。
「んっと…大した用じゃねぇんだけど…」
サーキブルは懐から猫じゃらしを取り出して、ワドルドゥの脇を思いっきりくすぐった。
「ひゃあっ!?」
普段は絶対に出さないような高い声でワドルドゥが悲鳴を上げて振り返る。
「てっ…てめぇ何考えてんだ!?」
「あ、やっぱわっぴーもこそばいもんはこそばいんだ?」
「………っ!…ったりめーだろッ!!!」
どうやら知られたくない弱点だったらしい。
ワドルドゥは顔を真っ赤にしながら再び踵を返した。
が、再び猫じゃらしで脇をくすぐられて、今度は前のめりに転んだ。
「はははっ。やっぱ可愛いなぁ、わっぴー」
サーキブルは腹を抱えて笑い転げた。
「~~~ッ!!!」
ワドルドゥは拳を固め、額に青筋を浮かばせ立ち上がった。
「…歯ァ食いしばれ…!」
その目が、光を吸収し始める。
が
「ほれ」
三度猫じゃらしが脇の下に入った。
「ひゃっ!?だ…だからそれをやめろ!!!」
ワドルドゥは大きく仰け反った。
「いいじゃん、たまにはさ」
サーキブルはワドルドゥに飛びついた。
「こ…こら!離れろ!この変態!」
「最高のほめ言葉だな、わっぴー」
「だからわっぴーって呼ぶなッ!!!」
「ほれ」
「ひゃっ…!だ…だからくすぐるのはやめっ…ひゃあっ!おい…っお前…人のはな…ひゃあぁっ!!!」
その後、くすぐられ過ぎて全身痙攣を起こしたワドルドゥと、そんな彼を膝の上に寝かしながら昼寝をしていたサーキブルが発見されたのは2時間後のことだった。
<FIN>
康作員さんへの相互記念小説です。
サーキブルとワドルドゥのお話。
わっぴーはさっちゃんの嫁です(ぉぃ)
最終更新:2010年02月19日 16:00