姫子が宮様と親しい関係だということを知っているのは私だけ。
ルームメイトなので姫子のことはなんでも知り尽くしている。
大親友で、姫子の無邪気な笑顔にいつも癒される
護ってあげたい気分にさせる子。光を照らしてくれるお日様のような。
姫子は子犬のように素直で純粋な存在、人懐っこく、それでいて泣き虫。
宮様、何百年とも続く名家のお嬢様で才色兼備で学園内での人気は相当なもの
頭が良く美人で運動神経もよく非の打ち所のない所から宮様と皆から呼ばれている。
なにを隠そう自分も宮様には憧れてる一人だ。
肌も白くて胸も大きくてスタイルもよくて、黒長い髪も黒い瞳も月のように神秘に輝くほど美しくて。
どうしてこんな綺麗な人がこの世に存在するのかというくらい・・・。
その宮様から気に入られている姫子、いや・・・正確には溺愛されている。
2人が陰ながらの親友、いや恋人だというのも知っている。
宮様なんて私からしたら1日で一度お目にかかるだけでも幸せなことなのに。
話しかける勇気なんてとてもじゃないけどない。
あまりの人気で近寄りがたいのだ。
その宮様から愛されるほど姫子にはなにか魅力があるのだろう
そう、目に見えない魅力が。
「姫子・・」
私の気持ちなんて姫子は気付いてもいないだろう。
普通に仲良い友達としか私のことは見てないのかもしれない。
「なあ姫子、お昼一緒に食べようか」
お昼休みに告げる私の声。
親友としてでなく女として私を見て欲しい。
その気持ちは姫子に届くかな。
「ご、ごめんねマコちゃん、私・・その」
もじもじとその場に立ち尽くし申し訳なさそうに下を向く姫子。
「そか、うん・・行っておいで」宮様のところに・・・。
「う、うん・・じゃあまた教室で会おうねマコちゃん」
と私に頭を下げながら薔薇の園へ向かう姫子を遠くから見つめ・・・惨めになる。
勝てるわけないじゃん、相手は宮様だよ!?
容姿じゃとても勝てないし・・・とはいえ相手はなんでもできるお嬢様。
相手が悪すぎる、それにしても姫子、あんたいつから私に冷たくするようになってきたの?
宮様と出会ってから、あんた私に冷たいだろ。
でも宮様に惚れられる気持ち分かる気がする。
あんた可愛いもんね、ほんとに・・宮様好きそうだよね。
私にいつも懐いてたのにね。
いまは宮様に懐いてるんだね、そか、そんなに宮様の胸の中は温かいか。
最近は一緒に寝ようとしても拒否してくる。
抱き枕も断るよね、なんで!?
姫子・・あんたは私のもの。私の・・いままであんたを護ってきたのは私だよ。
憧れの宮様、その宮様を想像するたびなぜか苛立つ。
なんでだろ、姫子が宮様のものになるから?宮様の下へ行ってしまう気がするから?
嫉妬・・・そう、私は宮様に嫉妬していた。
深夜12時。
「なあ姫子、一緒に寝るぞ」
「ええ、でも私・・」
乙橘学園寮内。
2段ベッドの1段で姫子を誘っているマコト。
ベッド内で横になっている姫子に問いかける。
「私、今日は1人で寝れるよ、そんなに寒くないし」
と誤魔化す姫子に苛立ちが積る。
「姫子、私と寝るのがそんなに嫌か」
「え?そ、そういうわけじゃないよ・・」
「そか、だったらいいじゃん」
と強引にベッドに入り込む。
「やっ!!ちょ、ちょっとマコちゃんやめて・・」
と抵抗する姫子に私は・・堪忍袋の尾が切れるのを感じた。
「宮様か・・宮様だろ」
「え?マコちゃん・・ちか・・宮様は関係ないよ」
「宮様だなんて呼ばずにさ、2人のときのようにちゃんと呼べばいいじゃん、『千歌音ちゃん』ってさ」
「マコちゃん・・」
「宮様だってそうだよ、私達の前ではあんたのこと『来栖川さん』だなんて他人行儀で呼んでるけどさ、ほんとは『姫子』って呼ばれてんだろ?違うか姫子」
「え?・・・んんっ!?」
ベッドに乗り込んだ私は姫子に無理矢理キスした。
「や、やだっ!!」
慌てて離そうとした姫子を捕まえるとそのままベッドに押し倒す。
姫子の両手をシーツに押さえつける、肘に体重を乗せ、姫子を身動きを完全に封じた。
姫子は非力で腕の力などたかが知れている。
陸上部に所属し、毎日鉄アレイやダンベルで鍛えているマコトとは力の差は歴然としていた。
「ま、マコちゃん・・」
「姫子、あんたは私のものだよ」
戸惑い声を出せないでいる姫子の唇を、マコトが再び強引に塞ぐ
姫子。私のほんとうのお姫様で光を照らしてくれるお日様。
「お嬢様、屋敷の見回りを全て終えました」
「わかったわ」
乙羽の声に簡単に答えると黒長い髪を窓の外にかざす
「お嬢様、ご友人のことをお考えでいらっしゃいますか?」
「・・」
交差点で再会した幻の想い人、来栖川姫子・・。
千歌音は月が照らす夜空を静かに見上げていた・・。
「姫子・・」
「ん・・」
両腕を押さえつけられ、さらにマコトの体重が加わって身動きが取れず。
さらに唇をガッチリ塞がれているため声を発すことができない様子だ。
マコトは目を閉じ姫子とのキスの感触を味わっていた。
「!?」
姫子の頬を流れる一筋の光に気付いたマコトは姫子をキスから解放する。
「マコちゃん、どうしてこんな・・・」
「姫子、私のこと好きか?」
「え?う、うん・・マコちゃんのことは好きだよ」
「そか、ならなんで泣いてんの?キスは宮様じゃなきゃ嫌か?私とはそんなにキスしたくないってか?」
姫子は頬から涙を流していた。大神ソウマとキスしたときと同じだ。
「姫子、いままでずっとあんたを護ってきたのは私だよ、ジン様でも宮様でもなく私・・」
「マコちゃ・・・んん!?」
姫子の言葉を遮るようにキスした。
唇の端から端までガッチリ塞ぐ。
姫子が声を上げられないほど完璧に塞いだ。
そのまま舌を姫子の口内へ無理矢理押し込む。
固まっている姫子の舌、頬の裏、歯茎など嘗め回す。
「ん・・・」
「!?」
ピンクの二枚貝に象られたペンダントが激しく揺れている・・。
姫宮邸内。
千歌音はなにか嫌な予感がした。とてつもなく嫌な予感が・・。
姫子とお揃いの首飾り、交差点で再会できたのもこのペンダントのお陰だ。
ピンク色、二枚貝のペンダントが激しく揺れている
「なにか嫌な予感がするわ・・」
消え行く月・・・その光景を直視していた千歌音は・・。
「姫子・・・・・・姫子!!」
慌てて自室を飛び出す。
ロビーに飛び出した千歌音。
その様子にただならぬことを感じた乙羽が慌てて声をかける。
「お嬢様、いかがなられました・・・?」
「乙羽さん、ごめんなさい、急で悪いけれど・・出かけるわ」
「お嬢様・・・!?このような時間にどちらへ・・・!?危険です」
「私のことは心配ないわ、場所は言えないけれど、なにか嫌な予感がするの・・・」
「・・・かしこまりました、どうかお気をつけて・・」
屋敷を飛び出した千歌音は愛馬の下へ向かった。
「姫子・・・姫子!!」
愛する来栖川姫子の名を呼び続け・・・息を切らしながらも愛馬の下へ急いだ。
千歌音の乗馬の腕なら学園寮まで10分かからずだろうが・・。
END・・・?