私はいつもその御方を見上げていた
高い木に登り、その真っ直ぐな瞳で遠くの風景を見つめていたその御方
貴女は幼いながらもその時から自分に課せられた運命を感じとっていらしたのでしょうか?
そしてその澄んだ瞳でまだ見ぬ「ただひとりの人」を探し求めていたのでしょうか?
上を見上げ、手を伸ばしても決して届かない絶望的な距離感…
私はただ見上げることしか出来なかった
私より少し年下のその御方は、歴史のある名家のひとり娘として華のようにお育ちになられていた
村人を始め周囲の人々からある種の信仰と偶像の対象とされ、崇められ尊敬され愛される存在…
誰もがその御方には幼い頃より一目を置いていた
あの日…私は高い木の上に居た貴女のお姿を拝見したその時から、特別な感情を抱いていたのですよ
いつかは…貴女の隣りに並んで遠くの風景を見渡してみたいと…
貴女はいつでもご自分の意思で、ご自分で決めたことを貫き通しましたね
それがどんなに苦しくて辛いことであっても、貴女はただご自分だけが傷を負い前に進むことを選びました
…それもこれも「ただひとりの人」の為になされた事と知りました
そんな貴女を私はお側に仕え、ただ見守ることしか出来ませんでした
本当は貴女の抱えた痛みも傷も私に分けて欲しかったのに、貴女の力になれるのにはあまりにも私は無力でした
貴女はそんな無力で弱い私にも感謝の言葉をかけてくれました
そして一度だけ優しく抱きしめてくれた貴女のその温もりを私は生涯忘れることはないでしょう
私は今またこうしてあの木を見上げています
あの日の幻を追い求めて…
再びこの世界に生を受け、「ただひとりの人」と巡りあえた今、貴女は幸せですか?
そうですよね、幸せなはずに決まっていますね
私も幸せです…貴女が幸せでいてくれるだけで…
コホン…その、色々と報告を受けているのですが…
最近のお嬢様の言動が少し…壊れ気味かと、い、いいえ少しやんちゃすぎるというか…
自重自戒なさってくださいまし…(´・ω・`)
おわり