こんなにも弱いなんて、こんなにも非力だったなんて思わなかった
そうね、運動が苦手なあなたの事…武道の嗜みがある私と比べたら酷な話しかもしれないけれど…
泣きながら無茶苦茶に刀を振り回しているあなた…そんなんじゃいつまで経っても私を刺せないわよ
もっと力を込めて、私をよく見て、そして憎しみ以外の感情を捨てて向かってきなさい
私の見せた幻影を本物だと信じて憎しみをぶつけなさい
私はあなたの大事な人達の命を一瞬にして奪ったのよ、あなたの心を傷つけ犯したのよ
今、あなたの目の前にいる私はあなたが慕ってくれていた私じゃない
オロチに堕ちオロチに冒されて負の情念の塊しか持たない怪物なのよ
遠慮することはない ただ一突きでこの命を奪えばいい…
私の命が消えた後、あなたは私の存在しない世界を再生すればいい
私が輪廻の輪から外れる事で、あなたがもう二度と悲しい想いをしなくていいなら、私は喜んでこの身を捧げよう
あなたが幸せに生きていてくれれば、私はひとり月の社でオロチを永遠に封じていよう
この魂が朽ち果てるまで…
姫子…私は今心の中で血の涙を流している
大好きな、心から愛したただひとりの人との別れが近づいていると知ってるから…
もう私は大好きだったあなたの笑顔を見ることは出来ないだろう
再生された世界で、あなたはその笑顔をきっと違う人に向けているのだろうから…
…それでいい、それで…あなたが幸せに生きていてくれさえすればいい…
さあ…姫子、私を殺して…殺しなさい
あなたの剣でどうか私の血の涙を止めさせて…
第十一話~剣の舞踏会~より