光の道を、姫子が息を切らして駆けてくるのが分かる。
それは凄く嬉しくて、でもそれと同じ位に悲しい。
姫子との避け得ない別れが、すぐそこだということだから。あの無邪気で綺麗な瞳は、
罪に塗れた私の後悔を、酷く引き立たせてしまうから……。
もし願いが叶うなら、いつまでも姫子と一緒にいたい。
オロチになって、人の世を滅ぼしてしまっても、姫子と一緒に暮らせるなら幸せだと。
「……馬鹿みたいね」
都合のいいことばかり考えて……と、自嘲の笑みを浮かべる。
そう、それは決して叶わない願い。
大神さん、早乙女さん、乙羽さん……いやイズミさんたちやオロチの面々でさえ気に
かけていそうな優しい姫子が、彼等のいない焦土なんて望む筈がない。
それに何より、女の子なのに姫子を好きになってしまった気持ち悪い私を、あの夜
姫子を無理矢理犯した酷い私を、かつて姫子を手にかけた私を、
受け入れてくれるわけがない……。
チカネチャンハ、ワルクナイヨ。
「…………」
姫子が来てくれる。自分の迷いや歪みを具現した足止めを、力強く払いながら。
その姿はあの臆病で、一人では何もできない女の子じゃない。
『宮様』なんかよりも、もっとずっとかっこよくて、とても優しくて……。
「もう、私なんかいなくても平気ね」
もしかしたら、姫子に強くなんてなって欲しくなかった。
いつまでも自分に依存していて欲しかった。自分を頼って欲しかった。
でも今は、全く逆。
姫子を護れなかった無力な頃とは違う、今の自分には世界を滅せる力がある。
それなのに、姫子に甘えたい。ちょっと前の姫子のように、いやもっと強く、姫子に
頭を撫でて貰ったり、優しく抱きしめて欲しいって思ってる。
……いや、違う。出逢った時から、姫子に甘えられるフリをして、私が姫子に……。
「…………」
私は内なるオロチと同調する。
姫子が私を殺せるように。私の半端な気持ちに、動揺したりしないように。
姫子が欲しいこと。姫子と繋がりたいこと。姫子と愛し合いたいこと。姫子を夢想して
何度も慰めたこと。姫子を独り占めしたいこと。姫子と関わる人達を妬んだこと。
姫子との恋を認めない世界が気に食わないこと……。
そう、それが私。姫子みたいに優しくて純粋にはなれない、穢い私。
それでもオロチのせいと偽って、躊躇いなく姫子の肉体を求めてしまう、酷い私。
そして今回も溺れる。あらざらむこの身に、いま一度あの快感を刻みたいから。
だから抗って。私を拒否して。私は欲望のままに、あなたを求める変態だから……。
死にたくない。姫子と別れたくない。姫子を傷つけたくなんかない。
でも、優しいお日様が欠けた世界にただ一人放り出される方が、あんな寂しい社に
姫子を置き去りにする方が嫌だから。
自分の過ちを償えるなら、姫子の未来が救えるなら、涸れ果てて消えてもいい。
私はまやかしの中で、冷たく彼女を出迎える。
想いを遮るように閉ざした目蓋から、まだ零れそうになる涙を拭って。
ちかね「やっときたわね。おめでとう! このパーティーに きてくれたのは あなたが はじめてよ
ひめこ「パーティー?
ちかね「わたしが しくんだ ひめこと ふたりだけの パーティーよ
ひめこ「どういうことなの ちかねちゃん?
ちかね「わたしは へいわなおままごとに あきあきしていたの。そこで オロチになったの
ひめこ「なに かんがえてるの‥?
ちかね「わたしは ソウマをけおとし おもしろくしてみたわ。でも それもつかのまのこと
あなたがいなくて たいくつしてきたの
ひめこ「そこで パーティー‥なの?
ちかね「そう!そのとうり!! わたしは あなたをかなでる えいえんのよるが ほしかったのよ!
ひめこ「なにもかも ちかねちゃんが かいた すじがきだったんだね
ちかね「なかなか りかいが はやいわね。おおくの モノたちが しあわせになれずに きえていったわ。
しすべき うんめいをせおった かわいそうなみこが ひっしに わたしをもとめる すがたは
わたしさえも かんどうさせるものが あった‥
わたしは おひさまのひかりを あたえてくれた ひめこがすきなの!
どんなふうにでも あいして あげるわ
ひめこ「そんなことのために ここまで きたんじゃない!
わたしは ちかねちゃんと おはなしを しにきたの!
ちかね「それが どうかしたのかしら? すべては わたしが のぞんだことなのよ。
ひめこ「いまの ちかねちゃんは ほんとうじゃない!
ちかね「まだ そんなこというなんて‥ どこまでも やさしい ひとね
どうしても しりたいというのね これも かんなづきのみこの サガか‥‥
わかったわ しぬまえに わたしのほんとう とくと からだに きざんでおきなさい!!
ひめこは ディープキスで ちかねにこくはく!
ひめこ「ごめんね。 もう わたしのために がまんなんか しないで!
つらいこと くるしいこと どんなことでも わたしにわけて!
ちかね「ひめこ‥」
ひめこ「ハッピーバースデー ちかねちゃん
ふたりはラブラブになった