千歌音の部屋を掃除しながら思いに拭ける如月乙羽。
最近の千歌音お嬢様は様子が変だ、心の底から楽しそうな笑顔を見せている
今朝はなんとお嬢様直々に調理場に出てきてお弁当を作ってらっしゃった
『お嬢様、そのようなことは私が!!』『いいの、今朝は私に作らせて・・・乙羽さん』
という会話があったくらいだ
ほんとに明るくなられた、そう・・・あの木に登っていた頃のようなあの笑顔だ・・・
最近は車でのお送りも拒否され、歩いて登校している
お嬢様が積極的になられた、ピアノと弓道の腕も上がってらっちゃる
もちろんお嬢様が上機嫌なのは侍女としても喜ばしいことなのだが、なぜそうまで楽しいのか理由が知りたい
登校時もほんとに楽しそうで・・・そんなに最近の学校が楽しいのだろうか?
お嬢様が学園内で宮様と呼ばれ、生徒に人気があることは知っている
でもお嬢様は人付き合いが得意ではない、成績優秀で運動神経は人より飛びぬけてはいるものの
友達がいるのかどうか心配だったのだが・・・これなら心配ない
乙羽は千歌音のベッドに顔を寄せるとついベッドに頭も寝させた・・・その時
「乙羽さん、そんなところでどうしたの?」
「!?」
ドアの先には入浴上がりの千歌音が立っていた
寝支度をしたのかネグリジェを袖に通している
相変わらず綺麗な美貌だ・・・侍女が見とれるほど・・・
「いま上がったわ」
慌ててベッドから起き上がる乙羽
千歌音のベッドに顔を寄せて寝ていた、それを見られるとは・・・
「こ、これはお嬢様!!か、勝手なことをして申し訳ありません!!」
「いいえ、構わないわ、疲れていたんでしょう?」
「い、いえ、勝手なことをして申し訳ありませんでした」
千歌音は表情を変えずに部屋に入ってくるとベッドに寄り添った
そしてベッドに入りシーツを被る
そして、ふと乙羽を見上げる
「そうだわ、乙羽さん、今夜は一緒に寝ましょう」
私は一瞬耳を疑った。
「え・・・?で、ですがそのような差し出がましいことは」
「あら、私は構わないわ、ね?いいでしょ乙羽さん」
「で、ですが。。。」
「ふふ、私がそうしたいんだからいいでしょ、せっかくだから・・・」
千歌音のはっきりとした口調に・・・
「お、お嬢様がそこまでおっしゃられるのでしたら、し、失礼致します」
乙羽は頭を下げるとゆっくりとベッドに入った
「そんなにかしこまる必要はないわ」
背後から乙羽を優しく抱き寄せる千歌音
「お、お嬢様!?」
「ふふ、こうしたほうが温まるわ」
乙羽は頬を紅潮させた
密かに想いを寄せる相手に抱き締められているのだから緊張しないというほうが難しいだろう
「お嬢様、無礼を承知で申し上げます」
「そんなにかしこまらないで頂戴、で、なにかしら」
「最近のお嬢様はとても楽しそうで、輝いておいでです、学校でなにか楽しいことでもあるのでしょうか」
「・・・」
「も、申し訳ありません、差し出がましいことを・・・!!」
「いいわ、ふふ・・・」
「・・・?好きな相手でもできたのかと・・・」
「そうね、好きよ、彼女のこと」
「!?」
私は驚愕した、屋敷以外の人に関心を寄せることの少ないお嬢様がお慕いする相手が・・・それも女性
「失礼ですが、どのようなお方で・・・」
「そうね、太陽・・・かしらね」
「太陽?」
「ええ、そう・・・私に光を照らしてくれるお日様、私の一番で本当のお姫様」
そのような魅力的なお方がいらっしゃるとは。
それもお嬢様が心を奪われる相手、見てみたい・・・私は関心に囚われた
「そのお方のことを、お嬢様が好きなのですね・・・」
「ええ、大好きよ・・・愛しているの、とっても・・・」
囁くように話す千歌音に複雑な心境になる乙羽
お嬢様・・・好きです、心から・・・
それにしてもお嬢様のような方をここまで夢中にさせる女性は一体どのようなお方なのか
太陽のような・・・光り輝く女性とは一体
「それで、そのお方はお嬢様のことをどのように想われているのでしょうか」
「・・・そうね、ずっと私の気持ちに気付いてくれなかったわ、だけれど、つい最近私の気持ちに気付いてくれたわ」
「そうですか、ではお嬢様はそのお方とお付き合いを」
千歌音は頷いた
「ええ、好きだって、愛してるって言ってくれたわ、なにより・・・その子だけなのよ、私のことを『千歌音ちゃん』って呼んでくれたのは」
そうか、つまりお嬢様はその方のことをそこまで
千歌音に見えないように涙を流す乙羽
「泣いているの?乙羽さん」
「!?」
「泣いているのね・・・」
「ごめんなさいね、このような話を・・・」
「いえ、こちらこそ差し出がましいことを、申し訳ありませんでした」
「いいの」
「!?」
乙羽を振り向かせると両腕でしっかり抱き締める千歌音
美人で頭がよく強くて優しくて人気もありなんでもできる千歌音
その彼女を虜にしてしまう謎の少女、どんな子なのか
「乙羽さん、ね、いいでしょ・・・」
唇を寄せてくる千歌音に乙羽は・・・
「お嬢さ・・・・・・ちかね」
2人は見つめ合い、自然とキスを交わした
「乙羽さん、朝よ・・・乙羽さん」眩しい明かりと共に目を覚ます乙羽
「疲れていたみたいね、朝起きても貴女が起きないものだから・・・食事はもう取ったわ」
よく見ると、乙橘学園制服に袖を通した千歌音がそこに居た
学校に行く準備も終えているようだった
「お・・・お嬢様!?お、おはようございます千歌音お嬢様・・・は!?」
自分の格好を見て驚愕する乙羽、主人より眠っていたなんて
「も、申し訳ありません!!このようなはしたない格好を」
「いいの、ふふ・・・今朝も自分でお弁当作ってみたの、使用人に仕事は伝えてあるから貴女は休んでで構わないわ」
「た、ただいまお送りのお車を・・・!!」
「よくってよ、歩いて登校させて頂戴」
姫宮邸の門を出る千歌音、それを見送る乙羽
「いってらっしゃいませ、お嬢様、どうかご無事で・・・」
「心配ないわ、では・・・行ってくるわね」
そう告げ学校に向けて歩きだす千歌音を見送りながら・・・寂しく表情を曇らす乙羽
「千歌音・・・」
そう呟き首を振った、駄目・・・私はお嬢様の侍女、お嬢様のために尽くすのが私の仕事
そう、私の想いなんて二の次・・・好きですお嬢様、愛しております、ですが・・・私は見守っておりますね
どのような方がご存知ありませんが、どうか千歌音お嬢様を・・・よろしくお願いいたします
涙を流しながらそう願う乙羽、姫宮邸を静かな風が包み込んでいた
| l |*゚ ー゚ノ!| 「・・・(ふふ、付き合い出して一週間、さあ私の愛しい姫子、そろそろキスしましょう、お昼休みが楽しみね、愛しているわハアハア)」
END