「熱が下がらないわね…」
「ごめんなさい…姫子さまに迷惑をかけてしまって…私…」
今にも泣き出しそうな千歌音は熱のせいか、頬を赤らめ潤んだ瞳でこちらを見つめてくる。
「気にしなくていいのよ、…それより」
姫子は立ち上がると着ていた巫女服をいきなり脱ぎだした。
「え…ひ、姫子さま…?」
千歌音は突然の事に戸惑い、姫子の裸体から視線を逸らす。
姫子は布団の中に入り込み、千歌音の着物に手をかけた。
「やっ、姫子さまっ!?な、何を…」
「こうすれば熱が下がると聞いたの。大丈夫、恥ずかしがる事はないわ」そう言って千歌音を抱き寄せ…
姫子に抱き寄せられた千歌音の身体は、ぴったりと姫子の身体と重なった。
熱で千歌音の体温が高いため、姫子の身体はひんやりとして心地良かった。
千歌音がそっと姫子の顔を見上げると、こちらをじっと見つめていた。
恥ずかしくなって俯くとクスッと姫子の笑い声が聞こえる。
「あの、もう…大丈夫ですから…その…」
「駄目よ。まだこんなに熱があるもの。」
姫子はそう言ってさらに腰を引き寄せ密着させてくる。
千歌音の心臓の鼓動が高鳴ってる。
千歌音の頬に姫子の吐息がかかる。
それだけではない。
姫子のお日様の匂い、体温、柔らかな身体、眼差し。
その全てが千歌音をどきりとさせるのだ。
姫子は時折、千歌音の背中を優しくさすってくれていたのだが…。
「千歌音の肌は白くて滑らかで綺麗ね…。」
「そんなこと……んっ…!」
突然姫子が千歌音の腰を撫でた。
それは千歌音の肌を堪能するかのように触れてくる。
うわずった声を聞かれるのが恥ずかしくて、ぎゅっと唇を噛み締める千歌音。
「少し汗をかいてきたみたいね。」
言われたとおり千歌音の身体は少し汗ばんでいた。
でもそれは熱のせいだけではない事を姫子は知っていた。
「ねぇ、千歌音…もう少し汗をかいたら熱が下がるかもしれないわ…」
「えっ…?」
千歌音が顔を上げると、姫子の上気した顔が視界に入った。
ゆっくりと姫子の顔が近づいてくる。
「姫子…さま…」
千歌音は拒むことができず、姫子の唇を受け入れた。
「…んっ…ふ、ぁ…っ」
最初は優しかった口づけが、段々と深く濃厚な口づけに変わっていく。
少し開いた唇にするりと舌をいれると、千歌音の身体がビクッと震えた。
「んんっ…!ひ、ひめ…っ…ぁ…」
姫子にしがみついてくる千歌音が愛しくて、さらに舌を絡めた。
口づけから解放すると、千歌音は乱れた呼吸を落ち着かせようとしていた。
「はぁ…っ…はぁ…」
「大丈夫?千歌音。」
心配そうに顔を覗き込んでくる姫子は、全くと言っていいほど呼吸が乱れていなかった。
「だ、大丈夫…です…」
「そう…よかった。なら、続けても大丈夫ね?」
「えっ…!?」
姫子は優しく微笑むと、千歌音の上に覆いかぶさってきた。
姫子は千歌音に覆いかぶさると、首筋に唇を這わせた。
「っ…!やっ…姫子さまっ、駄目…」
「いや?」
「え…っ…」
「千歌音は私とこうゆうことするのはいや?私のこと嫌い?」
姫子は千歌音の瞳を真っ直ぐに見つめる。
「そんなことっ…嫌いなんて…」
嫌いなはずがない。
この世で一番大好きな人なのに。
「姫子さまは…みんなの憧れで、この村にとって大事な人だから…」
自分で自分の声が震えているのがわかる。
「私なんかが…なんの役にも立たない私なんかが、姫子さまに愛される資格なんて…」
「私は…」
まるで自分自身を責めるかのように続ける千歌音の言葉を姫子は遮る。
「私は千歌音が好きよ。千歌音がいるから、千歌音と一緒だから…どんな時でも頑張れるの」
「姫子さま…」
「だからそんなこと言わないで。そんな顔しないで。ね?お願い…」
お日様のように温かく、優しい笑顔がわずかに曇った。
私はいつだってこの人に救われてきた。
この人を悲しませたくない。
この人に笑顔でいて欲しい。
「…はい…姫子さま。」
千歌音がほんの少し笑顔を見せると、姫子もにっこりと笑ってくれた。
「…いいのね?」
先ほどの優しい姫子とは違って、熱がこもった眼差しと声で千歌音に尋ねてくる。
恥ずかしさの余り、言葉を返す事ができなくて小さく頷いた。
「千歌音…」
「あっ…」
姫子は千歌音の豊かな胸に、ためらわず触れてくる。
千歌音の顔や仕草は幼いのに、身体の方は徐々に少女から大人の女のように変化していく。
(千歌音の胸…こんなに大きかったかしら…)
何度も千歌音の裸を見ている姫子は、少しの変化さえ見逃さなかった。
「あ…っ…」
「もしかして、また大きくなっていない?」
姫子が鎖骨に口づけながら千歌音に聞いてくる。
「…姫子さまは、嫌いですか…?胸が大きいの…」
見当違いな答えに姫子は一瞬きょとんとしたが、そんな千歌音が可愛くて頬が緩んでしまう。
「そんなことないわ。そうね、ちょっと妬けてしまうけれど…好きよ、千歌音のは。」
そう言って胸の先端をそっと口に含んだ。
「…っ…ひゃっ…」
舌先で転がして、吸ってみると千歌音が可愛らしい声を上げる。
その声を聞きたくて、今度は歯で先端を優しく噛んだ。
「やんっ…!」
反対側を手で優しくもみしだく。
口に含んだそれは、先ほどより固くなってゆく。
「ん…千歌音…。」
姫子は夢中で千歌音の胸を味わった。
「ああっ…、や、駄目っ…そこは汚いからっ…」
「汚くなんてないわ。千歌音のだもの。」
千歌音の止める声も聞かず、姫子はそこへ優しく口づける。
千歌音の身体がびくんと揺れた。
「濡れてる…。」
「……っ!」
千歌音のそこは触れる前からもう既に熱く濡れていた。
割れ目にそって舐めると、とろりと千歌音の愛液が溢れてくる。
「…んっ…ふ…甘い。」
唇についた愛液をぺろっと舌で舐める。
「は…っ、あっ…姫子…さまっ…」
今度は指で広げると、愛液を塗りつけるように指で愛撫した。
「あ…ああっ!」
姫子は千歌音が乱れていく様を熱い眼差しで見つめていた。
自分達は巫女だ。
千歌音の処女を奪うわけにはいかない。
でももし巫女でなかったら、千歌音の全てを奪っていただろう。
少しだけ自分達の宿命を恨んだ。
「千歌音。」
姫子はそんなことを考えながら、千歌音の身体にかぶさり抱き締める。
手は休めることなく千歌音を責めたてた。
「んぁ…っ、はぁ…」
無意識になのか姫子の背中に手をまわす千歌音。
「好きよ千歌音…。」
不意に姫子が突起の部分を指で押した。
「――っ!!あ…あっ!」
千歌音の声が急に切羽詰まったような声に変わる。
限界に近いのだろう。
姫子は千歌音の唇を塞ぐ。
「んんっ…ん…ぅ。」
口づけをしながら瞳を開くと、千歌音の瞳の端から涙が光っているのが見えた。
(泣いている千歌音も綺麗…)
「ああっ!姫子さまぁ…っ!」
離れた唇から達した千歌音の綺麗な声を聞きながら、姫子は愛おしい少女を胸に抱き寄せた。
2人で裸のまま抱き合って布団の中に潜り込んでいたら、いつの間にか昼を過ぎていたらしい。
日差しが差し込み明るかった部屋が少しだけ薄暗く感じた。
千歌音が姫子を見つめると、姫子もまた見つめ返してくれた。
「もう熱は引いたみたいね。」
そう言って瞳を閉じ、額をくっつけてくる。
千歌音も釣られて瞳を閉じた。
愛する人に抱かれた幸福感が、じんわりと胸を温かくしてくれる。
だがそれは一瞬で吹き飛んだ。
「失礼します。姫子さま?」
突然の声に千歌音ばびくっと身体を強張らせた。
襖を隔てた向こう側に下女がいる。
(どうしよう…こんなとこ見られたら…)
村中に知れ渡ってしまうかもしれない。
それは自分にとっても、ましてや姫子に一番迷惑がかかる事は明白だった。
震える手から千歌音の不安を感じ取った姫子は、ぎゅっと千歌音を抱き締め囁いた。
「このままじっとしているのよ。」
そう言うと凛とした声で下女に声をかけた。
「千歌音が寝ているからそのまま待っていて。」
姫子は素早く布団から起き上がり、慣れた手つきで巫女を身につけ襖に手をかけた。
千歌音は慌てて頭まで布団をかぶる。
姫子はいつもと変わらない凛とした態度で下女を迎えた。
「何かしら?」
「もうすぐ日が暮れますが、食事の方はどうされますか?こちらにお運び致しましょうか?」
「いえ、千歌音の熱も下がったし…目を覚ましたら私が取りにいくわ。それまでここには誰も通さないで。」
「かしこまりました。失礼致します。」
襖が閉まる音がすると、姫子が優しく声をかけてきた。
「もう大丈夫よ。ここにはしばらく誰も来ないから。」
千歌音が布団から顔を出すと冷静で凛とした表情が、柔らかな顔に変わる。
「怖かった?」
姫子は千歌音の側に来て、安心させるように抱き寄せた。
まだ震えている千歌音の手を姫子の手が優しく包む。
まるで幼い子供をあやす母親のように、優しく、温かく、千歌音を包んでくれる。
「…姫子さまは平気なんですか?」
「あら、これでも内心は驚いていたのよ。千歌音と同じ…ほら。」
千歌音の手を姫子の胸元に当てると、心臓の鼓動が激しく動いていた。
その鼓動に姫子も同じ気持ちだった事を感じとり、千歌音は安堵した。
「さあ、もう少し横になった方がいいわ。熱がぶり返すといけないし…千歌音?」
返事が返ってこないかわりに、千歌音の安らかな寝息が聞こえてくる。
「千歌音?寝てしまったの?」
覗き込むと姫子の胸の中で、幸せそうに微笑んだ千歌音の寝顔がそこにはあった。
自然と姫子の顔が緩む。
たまにはこんなのもいいだろう。
ここの所、色々と忙しく2人で一緒にいる時間が少なかった。
千歌音のこんな幸せそうな顔を見たのは久しぶりだ。
姫子は千歌音が目を覚まさないように、額にそっと口づけた。
(お休みなさい…私のお月様…)
終わり。