転生後 真夏のデート ◆M2vRopp80w氏

神無月の巫女 エロ総合投下もの

転生後 真夏のデート ◆M2vRopp80w氏

 

夏休みに入り、訪れた水族館は大勢の家族連れやカップルで賑わっていた。
「わぁ…さすがに人が多いね。」
「そうね。」
色違いのお揃いのワンピースを着た姫子と千歌音は、うるさいくらい賑わう水族館の入り口でその様子を見つめる。
隣町の水族館まで来たのだが、まさかこんなに人が多いなんて思わなかった。
天火明村には遊園地くらいしかないので隣町までやって来たのだが…。
「はぐれないようにしなきゃね、千歌音ちゃん。」
そう言って姫子は躊躇う事なく千歌音の手をとった。
「あ……」
繋いだ手から姫子の温もりが伝わってくる。
千歌音はとっさに、紅く染まった頬を見られないように俯いた。
「行こう、千歌音ちゃん。」
「ええ…」
とびっきりの笑顔を向ける姫子。
千歌音の胸がとくんとくんと鼓動を打った。
二人がエスカレーターに乗ると、水槽トンネルの中の魚たちが出迎えてくれる。
上から光が差し込んだ水の中はキラキラと反射して綺麗だった。
エスカレーターを登りきると、大きな水槽に様々な色とりどりの魚たちが気持ち良さそうに泳いでいる。
「うわぁ、すごい…!綺麗だね…千歌音ちゃん。」
千歌音より年上の姫子は、まるで子供ようにはしゃいでいる。
(姫子、まるで子供みたい…)
千歌音はそんな姫子が可愛くてクスッと微笑んだ。

一通り水族館の館内を回っていたら、ちょうどお昼時だった事に気づいた。
「千歌音ちゃん、お腹空かない?」
水族館の館内の中には、軽めの食事が取れる売店もあったが、姫子は朝早くに起きてお弁当を用意していた。
実は数日前から、乙羽さんにお願いして美味しい卵焼きの作り方を教わっていたのだ。
もちろん千歌音には内緒で。
何度か甘すぎたり、焦げてしまったり失敗したが、デートの前日にやっと乙羽からOKをもらえた。
他にも千歌音が好きな物も沢山入れて来た。
「そうね、もうお昼だし…どこかで何か食べる?」
「あのね、今日はお弁当作って来たの。良かったら食べない?」               

館内の外に出ると、売店の近くに休憩所のベンチがひとつ空いていたのでそこで食べる事にした。
そこは食べ物の持ち込みもいいらしく、場所も日陰になっていてちょうどよかった。
辺りを見ると、他のベンチに座った数人の家族連れやカップルがお弁当などを食べている。
「ここで食べよっか?」
風呂敷をほどき二段に重なったお弁当箱を開けると、彩り鮮やかで美味しそうなおかずが沢山入っていた。
「これ姫子がひとりで作ったの?」
「う、うん、千歌音ちゃんの口に合えばいいんだけど…」
千歌音は姫子が自分のために、一生懸命お弁当を作ってくれた事が嬉しかった。
「いいえ、姫子が私のために作ってくれたんでしょう?頂いてもいい?」
「うん!沢山食べてね。」
千歌音の言葉に安心した姫子は、さっそくフォークを取り出した。
「千歌音ちゃんは何から食べたい?」
「そうね…じゃあ、姫子のおすすめを。」
「おすすめだったら…卵焼きかな。」
姫子が一番苦労して作った、乙羽さんのお墨付きの卵焼き。
姫子は卵焼きをフォークに刺して、千歌音の口元へ運ぶ。
「はい、千歌音ちゃん。」
「え…あ…の、姫子?」
姫子は周りを気にせずに、千歌音に食べさせようとするが、千歌音は恥ずかしくて少し戸惑った。
「千歌音ちゃん?」
そんな事も気にせずに卵焼きを差し出したまま、首を傾げて千歌音を見る姫子。
(でも…せっかく姫子が私のために作ってくれたのだから…)
さすがに人前で恥ずかしかったが、千歌音は姫子が作った卵焼きを口に入れた。
「どうかな…?」
甘過ぎず、ふんわりと柔らかい卵焼きはとても美味しくて千歌音の好みの味だった。
「美味しいわ、とても。」
「本当に?」
「ええ、本当よ。」
姫子は、胸に手を当てほっと息をついた。
「よかったぁ…!」
二人で笑い合って食べるお弁当は、とても美味しくて何よりのご馳走になった。


お昼を済ませた二人は、午後からの水族館のメインであるイルカのショーを楽しんだ。

夕暮れ時。
あれほど賑わっていた館内は人がまばらに居るくらいで、しんと静まり返っている。
「楽しかったね。イルカの写真もいっぱい撮れたし。」
姫子はショーの間、かわいいイルカ達の姿をカメラで撮影していた。
千歌音はイルカ達より、一生懸命カメラを構える姫子の方が微笑ましくてそちらの方ばかり見とれていたのだが…。
「…姫子、今日はありがとう。」
千歌音は姫子にお礼を言いたかった。
こんなに素敵で楽しい1日をくれた事に。
「千歌音ちゃんが一緒だからだよ…。」
姫子は千歌音の正面に回り手を握った。
「千歌音ちゃんと一緒だから楽しかったの。だから千歌音ちゃんのお陰でもあるんだよ。」
「姫子…」
見つめ合う二人。
少し薄暗い、館内の大きな水槽の前でゆっくりと二人の唇が重なった。
他の客は水槽の中の魚に視線を向けている。
二人を見ているのは魚たちだけだ。
唇を離し微笑み合う姫子と千歌音。
「またいつか二人で来ようね、千歌音ちゃん。」
「ええ…きっと。」
                      
「ねぇ、姫子。」
「なぁに?千歌音ちゃん。」
「今度ね、姫宮邸の別荘に行く事になったんだけど…良かったら姫子も一緒に行かない?」
「えっ…私も?いいの、千歌音ちゃん?」
「ええ、それにお返しさせて。今日の素敵なデートの。」
水族館から天火明村に帰る電車の中で約束したデートのお返し。
数日後、姫子は姫宮家の別荘でとびきりに甘い二人だけの時間をお返しされる事になる…。

最終更新:2008年08月31日 17:50
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