幸せ家族計画 ◆M2vRopp80w氏

神無月の巫女 エロ総合投下もの

幸せ家族計画 ◆M2vRopp80w氏

 

―神無月の巫女―              
輪廻転生を繰り返し、悲しい宿命を背負った二人の巫女。
陽の巫女と月の巫女。
世界を再生する為、剣神アメノムラクモによって引き裂かれ月の社に封印されるが、再び転生し月の巫女は陽の巫女と再会を果たす。
そんな二人に、アメノムラクモは贖罪としてある特別な力を授けた。
それは…。                            
穏やかな風と、温かな日差しが差す昼下がり。
高級マンションや住宅が並ぶ住宅街。
ある高級マンションの一室から、慌ただしい音が聞こえる。                 
「こらっ!雛子、待ちなさい!」
紅茶色の髪をしたひとりの女性が、小さな女の子を追いかけている。
「やだ~!」
女性と同じ紅茶色の髪をした小さな女の子は、元気に部屋を走り回っていた。
「ほら、捕まえたっ!」
女性の腕の中で、捕まえられた女の子は楽しそうにはしゃぐ。
子供の元気な様子に、女性は穏やかで優しい微笑みを浮かべている。
来栖川 姫子。
彼女は嘗ての陽の巫女である。
「もう、雛子。ちゃんといい子にしていないと駄目ってママに言われたでしょう?」
女の子を腕から解放すると、真っ正面を向かせて女の子を叱った。
「わかった?雛子。」
雛子と呼ばれた女の子。千歌音と姫子の間に生まれた娘である。
雛子は下を俯いていたが、隙を見て姫子の腕からすり抜けて再び走りだす。
「あっ、こらまた!」
二人でそんな事をしていたら、あっという間に、陽が沈む時間帯になってしまった。
「いけない!千歌音ちゃんが帰ってくる前に夕食の準備しなきゃ。」
姫子は時計を見て慌ただしくエプロンを身に付け、台所に立つ。
「ひなこもてつだう~。」
トコトコと台所まで走って来る。
「じゃあ、冷蔵庫からお野菜持ってきてくれる?」
「はぁい」
最初は見ていてハラハラしていたが、子供のうちから何でも経験させておくのも大事な事だ。
小さな体で一生懸命に母親の手伝いをする雛子を見て、姫子の顔が緩んだ。
「よし、これでいいかな。」
テーブルに並べられた豪華な食事、真ん中には今日買ってきた花を飾る。
今日は千歌音が出張先から帰ってくる予定だった。
《ピンポーン》
待ち人が帰って来た事を知らせるインターホンが鳴った。
「あ、ママだっ!」
雛子がいち早く、玄関の方へ走っていく。              


「は~い!」
姫子も玄関へと急ぐ。
雛子が精一杯、背伸びをしてカギを開けドアを開くとそこには千歌音が立っていた。
「ただいま、雛子。」
「ママ~」
雛子が千歌音に抱きつくと、千歌音は雛子を軽々と抱きかかえる。
「お帰りなさい。千歌音ちゃん。」
「ただいま、姫子。」
姫宮 千歌音。
彼女は嘗ての月の巫女である。
「ちゃんとお母さんの言うこと聞いていい子にしていた?」
雛子は姫子の事をお母さん。
千歌音の事はママと呼んでいた。
千歌音は抱きかかえた雛子に尋ねる。
「ひなこ、いいこにしてたよ。」
「おかしいなぁ?お昼の時は随分とお母さんを困らせたけど?」
姫子は小首を傾げてわざとらしくそう言った。
「してたもん!ごはんつくるときも、ひなこおてつだいしたもん!」
ムキになって反論する雛子が何だか可愛らしくて、姫子と千歌音は微笑み合った。
「じゃあ、いい子にしてた雛子にママからお土産。」
千歌音は雛子を降ろすと、手に持っていた紙袋を渡した。
「わぁ、ケーキだ!ありがとうママ!」
嬉しそうに紙袋を持って、雛子はパタパタとリビングへ走っていく。
「ふふっ、雛子は元気がいいわね。」
その様子を見ていた千歌音がクスクスと笑った。
「元気なのはいいけど、もう大変だよ。」
苦笑いする姫子。
「ごめんなさいね。大変だったでしょう?姫子ひとりで。姫宮の家に帰っていてもよかったのに…。」
仕事で出張に行かなければならなかった千歌音は、姫子ひとりで雛子の世話をするのは大変だろうと心配して姫宮邸に帰るように言ったのだが…。
「大丈夫だよ。雛子おてんばだから乙羽さんに迷惑かける思うし…それに大変だけど楽しいしね。」
結局、姫子はマンションで千歌音の帰りを待つ事にしたのだ。
「そう?でもあまり無理をしては駄目よ。」
心配そうに姫子を見つめる千歌音。
姫子はそんな千歌音の手を握った。
「うん、分かってる。千歌音ちゃん、それより…」
姫子は千歌音を見上げて目を閉じる。
「姫子…」
千歌音は頬を微かに赤くして、姫子の唇に自分の唇を近づけていく。
「あ~ママたち、ちゅーしてる!」
二人の唇が重なろうとした瞬間、リビングのドアから雛子がこちらを覗きながらそんな事を言った。
「ひ、雛子…!」
「な…もう、雛子っ!」
姫子は顔を赤くして、自分達をからかう雛子に声をあげた。                 
                 
「千歌音ちゃん、お風呂空いたよ。」
「ええ、じゃあ私もお風呂済ませてくるわね。」
先に雛子と一緒に風呂を済ませた姫子は、帰ってきてからも自室で仕事を続ける千歌音に声をかけた。
千歌音は姫宮邸から出て、ここに住んではいるが姫宮家の一人娘には変わりない。
いまでは姫宮を支えている大事な後継者だ。
毎日忙しい日々を送っている。
家に居る時くらいは、千歌音にゆっくりと過ごして欲しい姫子はなるべく一人で家事などをこなしている。
それでも優しい千歌音は、姫子を心配して色々と手伝ってくれるのだが。
「雛子は?」
自室から出て、リビングに出るとソファーの上で眠そうに目を擦る雛子の姿があった。
「もう眠いみたい。私が寝かしつけるから千歌音ちゃんはゆっくりお風呂に入って。」
「…いいの、私が寝かしつけてもいいけれど。」
「大丈夫だよ。千歌音ちゃんは明日も忙しいんだからゆっくりしていて。」
雛子を溺愛している千歌音は自分が寝かしつけたかったのか少し残念そうな顔をしたが、また明日も仕事が控えている。
ちゃんと体を休ませて欲しくて、姫子は千歌音をお風呂へと行かせた。
「ん~…」
「雛子おいで。絵本読んであげるから。」
雛子の手をひいて子供部屋に連れていく。
姫子は本棚から沢山ある絵本の中から、一冊を選んでベッドの横に座った。
絵本を途中まで読み聞かせ、雛子がウトウトと今にも瞼が閉じそうになっていた時だった。
「ねぇ、おかあさん…」
「なぁに?」
「なんでひなこには、きょうだいがいないの?」
雛子は何故だか、突然そんな事を言いだした。
「どうして?」
「だってひなこのおともだちは、いもうとがいるんだよ。」
そういえば雛子には、最近近所に出来た友達に妹が産まれたのを羨ましがっていた事を思いだした。
「でもみんないる訳じゃないでしょ?」
「うん…でもひなこもいもうとほしい…よ。」
姫子は今にも眠りにおちそうな雛子に布団をかけてやる。
「ほら、もう寝ねようね。雛子。」
「はぁ…ぃ‥」
「おやすみ。」
「おや‥すみなさぁ…ぃ」
姫子は、スウスウと静かな寝息を立て始めた雛子の寝顔を見つめた。
雛子が寝たのを確認し、絵本を本棚に直して子供部屋を出る。
「妹かぁ…」     姫子は雛子が言った事を思い出しながら、姫子はリビングへと戻って行った。                    


姫子がリビングのソファーに座ってお茶を飲みながらくつろいでいると、お風呂を済ませた千歌音がやってきた。
「あ、千歌音ちゃんもお茶飲む?それともお酒のほうがいいかな?」
「ありがとう、姫子と同じでいいわ。」
「うん。」
姫子は千歌音と一緒にソファーに座り、千歌音が居なかった数日間の出来事を話した。
「それでね…あ、ごめんね、なんか私ばっかり話してるよね。千歌音ちゃん疲れてるのに…」
「そんなことないわ、お話し楽しいから。」
千歌音の優しい笑顔を見て、姫子は雛子と話した先ほどの会話を思い出した。
「‥…ねぇ、千歌音ちゃん。ひとつ聞いてもいい?」
「なに?」
「あのね、千歌音ちゃんは一人っ子でしょ?」
「ええ…」
「千歌音ちゃんは兄弟とか居なくて、寂しいって思った事…ある?」
「え…?…そうね、確かに思った事がないわけでもないけれど…どうしたの、突然そんな事?」
「あのね…実は…」
姫子は雛子が妹を欲しがっている事を千歌音に話した。
「そう…雛子が…」
「だから雛子の願いを叶えてあげたいって思ったの。」
姫子も一人っ子で、雛子の気持ちが分かる。
ましてや両親を幼い頃に亡くした姫子はきっと寂しかっただろう。
雛子にはそんな思いをさせたくはない。
「そうね…あの力を使えばもうひとりくらいは…」
自分達には、普通では有り得ない特別な力を授かっている。
それは神であるアメノムラクモから貰った互いの子供を授かる力。
女同士でも身体を交わせるだけで子供を作る事ができる、二人だけにしかできない特別な力だ。
「それでね、千歌音ちゃん。今度は私が産みたいの。」
「えっ…姫子が?」
雛子を産んだのは千歌音だ。
子供はどちらでも授かる事ができる。
以前、雛子を授かる時も千歌音が姫子に心身ともに負担がかかる妊娠をさせる事を頑固として譲らなかったのだ。
その時、姫子は本当は自分が産みたかったのだが、あまり千歌音が拒否するので渋々諦めた。
「ね、お願い。千歌音ちゃん…今度は私に産ませて。」
「そんな…だめよ。姫子にあんな辛い事させたくないわ。」
千歌音はまたも頑なに拒否をする。
自分が経験しているからなおさらだった。
「私も産んであげたいの、千歌音ちゃんの子を‥ううん、産みたい。千歌音ちゃんの子が欲しいの。」
「姫子…」                 


「お願い、千歌音ちゃん。」
「……分かったわ、姫子。」
姫子の真剣な眼差しに、千歌音はやっと頷いてくれた。
「ありがとう、千歌音ちゃん‥!」
笑顔になった姫子を見て、千歌音は自分の決意の弱さに呆れた。
(だめね、私ったら‥姫子の笑顔にはかなわないわね…)
あれほど姫子には産ませないよう決意していたのに、いざあんなふうにお願いされたらあっさりと許してしまった。
結局のところ、千歌音は姫子には子供の雛子以上に弱いのだ。
「でも大変よ、子供を産むのは…」
「うん、分かってる。」
千歌音が妊娠して出産するまでずっと側で見てきた。
大変なのは百も承知している。
「じゃあ、千歌音ちゃん…ベッドに行こう…もう雛子は眠ってるし。」
姫子が千歌音の腕に手を絡ませ、肩に頭を寄せた。
「姫子…」
身体を重ねるのは久しぶりだった。
ここのところ忙しくて、二人っきりで過ごす事がない。
ましてや雛子がいるので、そんな事をするのさえ躊躇ってしまっていた。
千歌音は姫子の肩に手を回して自分達の寝室へと向かった。

「あ…千歌音ちゃん‥」
シーツの擦れる音が聞こえる寝室で、二人の呼吸がやけに大きく聞こえる。
「姫子…」
ひとつの生命をつくりだす神秘的な行為。
それを自分達に与えられるなんて。
千歌音と姫子は、残酷な宿命を背負わせたアメノムラクモに感謝をしていた。
「どんな子が産まれるかなぁ‥」
二人で愛し合った後、姫子は嬉しそうに千歌音に微笑みかけた。
「そうだ、名前考えないと。千歌音ちゃんはどんな名前がいいと思う?」
まだ見ぬ子供に、姫子は想いを馳せる。
元気で健康に産まれてくれさえすればそれでいい。
「あ、でも…」
「なぁに?」
「千歌音ちゃん似の子がいいなぁ…」
「姫子…」
姫子の言葉に頬を赤くしながら、千歌音も優しく微笑みかえした。

それから数ヶ月後、姫子と千歌音の子が姫子のお腹に宿る。
姫子の思いが通じたのか、千歌音にそっくりな女の子が産まれ千羽と名付けられた。

最終更新:2008年08月31日 17:52
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