爆弾投下予告
注意
1.しつこくまた前世です。修羅場っぽいもの
2.申し訳ないがエロはなし
3.話が随分と無理やり
4.いつも通りベターなお話
5.乙羽さんと姫子、そして今回は千歌音ちゃんまでもがだいぶおかしい
6.期待はしてはならない
今回はもうはじめっから言わせてください
正直すまんかった…orz
紅葉も深まった秋の夕暮れ
「貴女ねえ!自分が何やったのか分かってるんですか!!?」
「そんな大きな声出さなくても分かってるわよ!五月蠅いわね!!」
いつも賑やかな来栖川の屋敷で、突如似つかわしくない屋敷中に響くような2人の大きな罵声が響いた
「な、何事ですか!?姫様!!」
「ひ、姫様!?それに乙羽様までどうされたんですの!??」
その声に何人かの下女達が姫子の部屋へと駆けつけると、険悪な表情で睨み合う2人の姿があった
「どうして私の言う事が聞けなかったんですか!」
「聞かなきゃいけない義務があるわけではないでしょう!」
この2人が言い合いになるのは何度かあったが、今日は周りに来た下女の存在が目に入らぬほど息巻いている
余りにも険悪な雰囲気の漂う2人に下女たちはどうしていいのか分からずうろたえてしまっている
乙羽は足元に置いてあった水の入った桶を掴み姫子にばしゃああ!っと掛け、下女たちの「きゃあああっ!」という悲鳴が響いた
「っ!な、何すんのよ!」
「言って分からぬなんて…頭を冷やしなさい!!」
全身に水を掛けられた姫子はキッ!と睨むが乙羽も負けじと腕を組んで睨み返す
「や、止めてください!姫様も乙羽様も!!」
「そうです!一体どうされたんですか!??」
「誰か旦那様を…旦那様を呼んできてっ!」
「は、はい…っ!」
今にも殴りかからんと頭に血が上ってる姫子に慌てて下女達が止めに掛かった
事の発端は数日前だった
「ありがとう、千歌音。今日も上手く描けたわ」
夜更け、いつものように絵を描き終えた姫子は満足げに筆についた墨を紙で拭き取りながら言った
「見せて、姫子っ」
絵が描き終えるまでじっと動かずにいた千歌音が服を整え姫子に擦り寄ってくる
絵の出来上がりを楽しみにしてたその笑顔に姫子も嬉しくて「はい、どうぞ」と笑顔で千歌音にも見えるように脇を空けてやった
「ねえ姫子、私の後ろに描いたこれって紅葉の木?」
姫子にくっつき絵を見ていた千歌音が指を刺しながら姫子に問いかけた
姫子は筆を拭くのを止め、一緒に絵を覗き込み頷いた
「えぇ、そうよ。秋だしいいかなって」
今日の姫子の絵の背景は紅葉の木が描かれてあった
千歌音はその紅葉の木をじっと食い入るように見つめていた
「どうかしたの?」
そのまま動かぬ千歌音の顔と絵を交互に見ながら不思議そうに声をかけた
「今日ね、仕事中にイズミさん達が言ってたの。姫子たちの通う学校の裏にある山の紅葉がとても綺麗だって」
絵から目を離すまま千歌音は答えた
「そういえばそうだったわね…」
毎年この時期になれば見れる光景なので特に意識はしてなかったが、確かにここ数日で学校の裏の山の紅葉が綺麗に色づいていた
あさっての方向を見ながらそんな事を思い出していると、千歌音が体を起こし目を細め開かれている障子の外を見ていた
「私体が弱くて余り外に出たことがないから。だからここら辺の山の紅葉しか分からない…」
「…千歌音」
生まれた頃から体の弱い千歌音はこの村から出た事が無い
その為村から少し離れたところにある学校にも通えないでいる
普段口には出さないが本当は…
千歌音の淋しげな横顔を見ているとそんな風に思える
すると、姫子は思いついたかのように両の手をパンと叩いた
「じゃあ、次のお休みに行きましょうか?」
「え?」
姫子の提案に千歌音は驚き目を見開いた
「見たいのでしょう?紅葉」
「あ、あの…私……」
優しく聞く姫子に千歌音はおろおろと動揺してしまっている
「大丈夫、最近体の調子も良いのでしょう?馬で連れて行ってあげるから安心なさい」
そんな千歌音に姫子は尚も笑顔で落ち着かせるように言い聞かせると、千歌音はパッと表情を明るくさせたが、「でも…次のお休みは祝詞の練習が…」と、思い出したかのように肩を落としてしまった
しかし、姫子はその肩に手をそっと置き、千歌音にくっつくように寄り添った
「祝詞の練習も大事だけど気分転換も必要よ。大神先生には私から言っておくし、
何よりも私が千歌音を連れて行ってあげたいの。だから行きましょう?」
「姫子…ありがとう」
こうして2人は出掛ける約束をしたのだった
しかし約束の日の前日…
「駄目です、これは医者としての判断よ」
千歌音が体調を崩してしまい、乙羽に診てもらったあと明日に迫った外出の話をした姫子に向けられた第一声がこれだった
「でも千歌音が…」
「なりません。単なる風邪の引き始めとはいえど、今外なんかに出してしまっては治る前にさらに悪化させてしまいますよ」
ショックを隠せない姫子が哀願するように片づけをしている乙羽に言うが、全部言い終える前に冷たく遮られてしまった
「そんな…!」
「くどいですよ!兎に角、駄目なものは駄目です!貴女も遊んでばかりいないで、他にやるべき事がたくさんあるでしょう?」
尚も諦めきれず口を開こうとする姫子に乙羽はビシッ!ときつく言い退け、怒ったまま薬箱を持って部屋から出て行ってしまった
ピシャッ!
「……っ!」
大きな音を立て閉められた襖を姫子は手を強く握り締め悔しそうに見ていた
「ごめんなさい…姫子。せっかく約束したのに」
静かになった部屋で布団に潜り込み泣き出してしまいそうな声で謝ってきた
その声に姫子は顔を緩め振り返り、千歌音の前髪を掻き分けてやった
「いいえ、千歌音は悪くないわよ」
「でも…あんなに楽しみにしてたのに…」
千歌音の責める気持ちなど毛頭も無い姫子、しかし千歌音は申し訳なさと残念な気持ちが隠せず姫子と目を合わす事が出来ない
それは明日を何よりも楽しみにしていたのは姫子よりも千歌音だったからに違いない
姫子は目尻に涙を浮かべる千歌音の頬を撫でた
「ねえ…千歌音」
「え…?」
そして翌日の朝、2人は早くに馬に乗り屋敷を出て行ってしまった
夕刻になり2人が戻ってきたとき、2人を待っていたのはカンカンに怒っていた乙羽だった
そして乙羽の忠告どおり、風邪を引き始めていた千歌音の容態は悪化していた
屋敷に入り「話はあとで私の部屋で」とだけ乙羽に告げ、直ぐに姫子は千歌音を抱え離れへと連れていき休ませた
そして自室に戻り乙羽と目が合った瞬間罵声が響いたのだった
数人掛りで抑え付けられながらも暴れもがく姫子と、腕を組んで姫子を睨み付ける乙羽の2人の興奮は収まらず益々エスカレートしていく
「私言いましたわよね!?外に出しては悪化してしまうって!だから外に出してはいけないって!!」
「だからって!そうやってあの子の自由を奪わないでよっ!!」
乙羽は千歌音の身を案じ、姫子は千歌音の意思を尊重している
お互いがそれぞれに千歌音を大切に想っているからこそ、2人の意見はすれ違ってしまっていた
言っても噛み付くように言い返す姫子に乙羽は桶を投げ捨て言い退ける
「でも!貴女のその我侭で姫宮さんの身に何かあったらどうするつもりですか!!」
「……っ!」
一番痛い所を突かれ、姫子は暴れるのをぴたりと止め口を閉じてしまった
「貴女はご自分が一番あの子の事を大事に想っていると思っているようですけど、とんだ思い違いですわよ!」
「……」
怒りの収まらない乙羽は吐き捨てるように言った
対する姫子は頭ごなしに怒鳴られるが言い返すことが出来ず、観念したかのように大人しくなった
「少し頭を冷やすことね!」
何も言わない姫子に乙羽は最後に大きくそう言い切った
その時、ガタンッ!と大きな音を立て襖が開き、その音にその場にいた全員が目を向けた
「お願いです…止めてください、2人とも…」
「姫宮さんっ!?」
「…千歌音」
2人の怒鳴り声に離れで休んでいた千歌音が居ても立ってもいられなくなり出て来ていた
しかし余り体が言うことを利かないのか、肩で息をつき襖にもたれ掛っている
そんな千歌音に乙羽が慌てて駆け寄る
「駄目ですよ!部屋で休んでいなくては…」
千歌音の肩を抱き、その場に座り込ませた。しかし千歌音は下を向き畳に両手をつき首を振り「いいんです…私のことなんて」と小さな声で言い、更に言葉を続けた
「それより、違うんです…乙羽さん。私が行きたいって、連れて行ってほしいって……姫様に、我侭を言ったんです」
「姫宮さん…」
肩で息をしながらも、声を震わせながら必死に弁明する
「千歌音…下がりなさい」
少し離れたところに立ち下女の束縛から解放された水浸しの姫子は静かな声で命令した
「いいんです…姫様」
千歌音は顔をあげ姫子に微かに笑顔を見せると、自分を庇おうとする千歌音に姫子は堪らず俯き手を握り締めた
「姫様は…私が、余り外に出たことがないから…だから…具合が悪くなるのを承知で…
自分が怒られると分かってて…姫様は私を馬に乗せて、お薬も持って…連れ出してくれたんです」
ぽた…ぽた…と、千歌音の目から涙が零れ畳を濡らしていく
「全部私がいけないんです…だから…これ以上姫様を責めないで…」
そこまで言い終えると、千歌音は手で顔を覆い声を押し堪えながらしゃくりあげた
「違うの乙羽さん、私がいけないの…私が勝手にその子を連れ出したの」
しばらく静まり返った部屋の中で、俯いたまま姫子が再度言った
その言葉に千歌音が顔をあげ「ち、違います…っ!」と声を上げた
しかし乙羽は千歌音の口元に手をやりそれ以上を制止し、千歌音をゆっくりと支えながら立たせた
「いいえ、お二人の気持ちは良く分かりました」
互いを庇いあう2人の気持ちが通じた乙羽は笑顔で姫子を見た
「来栖川さん、水をお掛けした事はお詫びします」
「いえ…」
自分に向かって頭を下げる乙羽に自分の非を認めている姫子は遠慮がちに顔を逸らした
しかし乙羽は頭を上げたあと、口元を緩めゆっくりと首を振った
「今回の件は姫宮さんに免じてもうこれ以上は咎めません」
乙羽は腕に抱える千歌音をちらりと横目で見ながら答え、千歌音は嬉しそうに「…乙羽さん」と呟いた
「ただ、これからは黙って行くのはお止めになって下さい。待つ方も気が気ではないのですから」
そう言って姫子に向かってにっこりと微笑んだ
「乙羽さん…はい、分かりました」
乙羽の優しい眼差しに、姫子も頷き笑顔で返した
近くに居た下女達も安心したのか、皆がほっと胸を撫で下ろした
そうして一時はどうなるかと心配された騒動がようやく収まり、屋敷内が安堵に包まれた
数日後…
「いいの?姫子。また祝詞の練習お休みしちゃって」
馬に跨り、村を出たあと姫子の前に座っている千歌音は振り返り小さな声で問う
「大丈夫よ、大神先生優しいし」
千歌音と出掛けられるのが嬉しい姫子は優しく答えた
「で、乙羽さん…貴女はそこで何を?」
背後で同じく馬に乗っている乙羽を振り返った
「決まっているでしょう、私も着いて行きます」
それが当然とでも言うような口調で返した
「…昨晩出掛けるって言いませんでしたっけ?」
「ええ、聞きましたよ」
「……」
先日の一件が落ち着き、もう一度仕切りなおしとして紅葉を見に行こうと2人して出掛けようと計画を立てた
そして行く前日に乙羽に告げ許可をもらえたのだが、どうも乙羽は待つ身になれなかったようである
せっかく今日はゆっくり楽しめると思ったのに…姫子はがっくりと肩を落とした
「どうかしました?来栖川さん」
「…いえ、何も…」
真横に並んだ乙羽に前回の乙羽との喧嘩の疲れがまだ残っている姫子は無念そうに首を振った
すると横向きで座っている千歌音に向かって乙羽は少し身を乗り出した
「姫宮さん、具合が悪くなったら直ぐに言ってくださいねw?」
「え?あ、はいっ」
声掛けられた千歌音は驚き、コクコクと頷いた
その後も今朝方用意したのかお弁当まで作っているらしく千歌音に見せている
やっぱり千歌音が己の目的か…
姫子は静かにぐっと手綱握り締めた
「千歌音、しっかり掴まってなさい…」
「え?姫さ……きゃああああっ!!」
小さな声で千歌音にそう言い、返事を聞く前に姫子は突然手綱を引いて馬の腹を蹴りあげ乙羽から逃げるように駆け出した
ドドドドドドドド……!!
砂埃を巻き上げ猛スピードでどんどんと遠ざかっていく姫子と千歌音の馬が見えなくなった頃、完璧に置いて行かれた事に気づいた乙羽はハッ!と我に返った
「ちょっ!来栖川さん!??お待ちなさい!!」
慌てて手綱を引き追いかけて行った
「ひ、姫子!いいの!?乙羽さん置いていっちゃって!」
「いいの!2人きりじゃないと出来ないことがあるでしょう?」
「/////っ!!」
「あら?追いかけてきたわね。しっかり掴まってるのよっ」
「え?あ・・・きゃああああっ!」
「お待ちなさーーいっ!私を置いてくなんて許しませんですわよぉー!!」
END