爆弾投下予告
注意
1.しつこくまた前世です
2.待ってました?銀月の嵐の逆転ヴァ-ジョン
3.とゆーことなのでレイープ。千歌音ちゃん襲われます
4.あまり鬱にならないようなENDにしましたが、読み手次第かも・・・
5.まさかのオロチ衆登場。全員ではないけども
6.ちょい役でカズキ兄さんも登場。初の男出現
それではいってみよー
「千歌音ー、準備は出来た?」
玄関先で草鞋を履いた姫子は廊下に向かって千歌音を呼んだ
すると「はい、姫様」と、同じく準備をした千歌音が廊下から出てきた
そのままいそいそと姫子の隣で草鞋を履き、立ち上がった千歌音に姫子は満足そうに頷いた
「じゃあ大神神社に行って来るわね」
見送りの下女らにそう笑顔で告げ、玄関を後にした
今日は大神神社で祝詞の練習の日だった
姫子と千歌音の2人は村を出ていつもと変わらず談笑しながら大神神社に続く道を歩いた
祝詞の練習前に2人は手を繋ぎリラックスしながら歩くのが決まりだった
大神神社までだいたい半分くらいまで歩いただろうか、千歌音は視線の先に何かを見つけ、ピタリと足を止め「ねえ、姫子あそこ…」とその方向を指差した
「え?…あっ」
その指差した先に姫子も目をやると、道の傍らに蹲っている女性がいた
姫子は慌てて駆け寄り、千歌音もその後を追った
「貴女、大丈夫?」
「は、はい…少し、胸が、苦しくて…」
自分らとそう歳の変わらなさそうな髪を左右2つに結んでいるその女性は胸元を掴みながら苦しそうに答えた
額に大粒の汗を浮かべ、顔色が青ざめている
「そう…」
姫子は眉間を険しくした
素人目で見てもその様子はこのままでは具合が良くなるとは思えない
「姫子…」
心配そうに自分を見つめる千歌音に姫子は笑顔で振り返り「大丈夫よ、分かってるわ」と頷き、女性の肩に手を置いた
「あともう少し歩けば私の村に着くわ、そこに乙羽というまだ医者の卵なのだけど腕の良い者がいるわ。そこまで頑張れる?」
「はい…すいません」
女性が申し訳無さそうに頷いたのを確認した後、姫子は女性の腕を自分の肩にかけ女性の体を支えながらゆっくりと立たせ千歌音を見た
「千歌音、一旦私はこの人を村まで連れて行くわ。悪いのだけれど先に行って大神先生に説明しておいてもらえる?」
困ってる人を放っておくことが出来ない姫子の優しさに嬉しそうに頷いた
「ええ、分かったわ」
「すぐに馬で行くから」
「うん、待ってる」
笑顔の千歌音に姫子も笑顔で返し、女性を支えながら来た道をゆっくりと戻っていった
しばらくその姿を見守った後、千歌音は踵を返し一人大神神社へと続く道を歩いていった
しばらく歩いていると急に空がゴロゴロ…と低い音をたて鳴り、千歌音は空を見上げた
「一雨来そうね…」
さっきまであんなに晴れていたのに…青い空はどんよりと黒い雲に覆われつつあった
千歌音は歩く速度早め、大神神社へと急いだ
「こんにちわ、大神先生」
大神神社へ着き、境内で2人を待っていた大神神社の神主大神カズキに挨拶を交わす
「やあ、こんにちわ。おや?来栖川君はどうしたいんだい?」
「それが……」
姫子の姿見えず一人で来た千歌音に問うカズキに先ほど道端で会った女性の話を説明した
すると納得したカズキは頷き笑顔になる
「ふむ、そうか。来栖川君らしいな。じゃあ来栖川君が来るまで姫宮君は部屋で休んでなさい」
「はい、分かりました」
千歌音はペコリと頭を下げ言葉に甘えることにし、着替えるために用意されている部屋で姫子を待つ事にした
「大丈夫かしら、姫子…」
大神神社の縁側を歩き、ポツ…ポツ…と空から雨が降るのを見てぽつりと呟いた
ザァーーーーッ
襖の向こうの外から聞こえる雨音、時折ドォーン!と雷の音まで聞こえていた
とうとう本格的に振り出してしまった雨、静まり返っている大神神社の部屋の片隅でやけにその音が良く聞こえた
風邪も強く襖をきっちり閉じていもばたばたと揺れている
巫女服に着替え一人蝋燭を灯した部屋で姫子を待つ千歌音は心細く小さくなっていた
「姫子…」
この雨で立ち往生してるのかも…
季節外れの嵐に胸騒ぎがしてならない。自分の背にある三日月の痣が妙に疼く
その不安を覆い隠すように目を瞑りぎゅっと自分の体を自分の体を抱いた
その瞬間、冷たい風が吹きふっと部屋の蝋燭が消え、暗くなってしまった部屋で千歌音は顔を上げた
それと同時に背後の襖が突然スッと開き「お待たせ、千歌音…」と姫子の声がした
まさかの姫子の声に千歌音は驚き振り返り、縁側に立っている姫子の姿を目にした途端愕然とした
「姫子っ!?まさかこの雨の中駆けてきたの?びしょ濡れじゃない…っ!」
屋敷で着替えてきたのか紅い陽の巫女服を着た姫子は全身ずぶ濡れだった
床に雨が滴り落ち、髪は乱れ雨で頬に貼りついてしまい下を向いているので表情は良く見えないが、雨に打たれたせいなのか髪の隙間から見える肌が蝋のようにやけに白い
布を手に取り慌てて姫子に近寄り「早く体拭かなくては…!」と焦る千歌音に俯いたままの姫子はガッと両肩を強く掴んだ
そのあまりの握力に千歌音は顔を歪め、様子のおかしい姫子に「ひ、姫子…」と声を震わせながら名を呼んだ
すると姫子はそのまま千歌音にぐっと顔を近付けた
「ねえ…千歌音…」
「な…何?」
あと少しで口付けしてしまいそうなほど雨で冷え切った顔を近付けられ、千歌音は思わず頬が染まり顎を引きながら答えた
その表情に姫子はにやあっと口元に笑みを浮かべた
「私のこと好き…?」
「え…?」
突然の問いに千歌音は目を丸くした。姫子は楽しそうに千歌音の背に手を回し逃がさぬよう腰を抱いた
姫子の濡れた巫女服の水滴が密着する千歌音の巫女服につたい、ひんやりとした感触が千歌音の肌に広がっていく
巫女服が濡れていく不快感に千歌音は気持ち悪くて目を閉じてしまう
しかしそれはお構いなしと言わんばかりに姫子は千歌音の腰を抱く力を強め「ねえ教えて?…私のこと好き?」と、千歌音の耳元に問いかけた
「ぁ…う、うん。もちろん好きよ…」
うっすらと目を開き、きつく抱き締めてくる姫子に答えると姫子は抱く力を緩め、「そう、良かった…」とうっとりと千歌音を見下ろした
「それがどうした…んふっ!」
言いながら姫子から離れようと肩に手を置いた瞬間強く口を塞がれた
雨に濡れた冷たい唇を重ねられ背中がゾクッとし、千歌音の体が強張った
背中に回されていた手が千歌音の後頭部を押さえ、そのまま舌で千歌音の口を割っていき、千歌音の舌と強引に絡めあわされていく
「あむ…んふぁ…っ!…」
息つく間も許さないような濃厚な口付けに千歌音の姫子の肩に手を置いた力が強くなる
しかし姫子はビクともせず千歌音の巫女服の帯に手をかけた
「や…っ!やだ!姫子こんな所で…っ!」
無理やり姫子から口を離し、帯を解き脱がそうとする姫子の手を止めようと掴む
しかし姫子の力は強く、そのまま押され後ずさりしていき縺れ合いながら部屋の真ん中でドサッ!と大きな音を立て押し倒されてしまった
「っ…!」
背中に強い衝撃を受け一瞬千歌音の息が詰まる。倒れた拍子に結んでいた髪紐が切れた
そのまま千歌音の上に圧し掛かった姫子は千歌音の下半身に手が伸び、少し脱げた袴下の上から千歌音の大事な秘所を擦りあげた
「んっ…やあっ!ひ、姫子っ…!」
突然触れた刺激に腰を震わせ、何とか暴走する姫子をどかそうと千歌音は手に力を込めるが、素早く姫子にその両の手首をダンッ!と押さえつけられる
「うぅっ!!」
手首が折れそうになるほど掴まれ痛みで千歌音が目に涙を浮かべ呻き声をあげる
姫子はそのまま千歌音を押さえつけ開きつつある胸元の隙間に潜り込み、柔らかな胸元にちゅう!っと口付ける
「ぁ…!いやあっ!やめて…やめてっ姫子ぉ!!こんなの嫌っ!嫌ぁっー!!」
頭の整理がつかぬ内に次々と始まる姫子の行為に耐えかねた千歌音は胸に感じたぬるっとした冷たい舌の感触にジタバタと精一杯もがき涙声で姫子に大声で訴えた
すると一度姫子の動きがピタリと止まったが、上に圧し掛かっている姫子は慌てもせず、にぃっと口元に笑みを浮かべたまま少し体を起こした
「…大きな声出しても誰も来ないわよ」
このまま騒いでは大神先生が来てしまう…そんな千歌音の心を読み取った姫子が勝ち誇ったように言った
「なっ…!」っと息を飲む千歌音。未だかつてない姫子の豹変振りに千歌音は恐怖でカタカタと体が震えだし、その姿に更に姫子の口端が上がる
「どうして?って顔ね、大神先生には少し寝てもらっているわ。私達の邪魔されないように…」
目を細め言う姫子の欲望に満ちた目に千歌音は蛇に睨まれた蛙の如く息を呑んだ。そのままガバッ!と凍りついている千歌音の巫女服を左右に開いた
露になった揺れ動く豊満な乳房に舌なめずりをし、顔を近づけた
「だから…たっぷり愛してあげるわ、千歌音…」
「…いやぁぁ!いやああああああーー!!」
泣き叫ぶ千歌音の声は虚しくも雷雨の音によってかき消されてた
「ぁっ!はぁん!やあぁ…くふぅ!…んんっ!」
濡れた巫女服のまま動けぬようしっかりと覆いかぶさる姫子に乱暴に胸を両手で揉まれ、固くなってゆく先端を舌で強く吸い付かれ涙が止まらない
止めてほしい…こんなの、こんなの姫子じゃない…っ!
嫌がる自分に姫子は今まで決してこんな事をしたことがない
肌のぬくもりも感じられない冷たく一方的な行為に混乱する千歌音
その上で姫子は足を閉じられないように千歌音の両足の間に膝をおき、自分の指を舐めたっぷり濡らした後、袴下の中に手を滑り込ませ、まだ濡れ始めたばかりの千歌音の秘所に直接触れてきた
「ぁ!?あああぁ!いや!やだ!やだぁー!!やめてよぉっ!」
不意に秘裂を撫でられ腰が浮き、望んでいない行為を悲鳴をあげながら掴んでいた姫子の肩を歯を食い縛って一生懸命押しのけようとするが岩のように重い
その手を邪魔そうに姫子はぐっ!っと捻り上げた
「…うぅ!」
「往生際が悪いわよ、千歌音」
無駄な抵抗と言わんばかりに頭の上で細い千歌音の両手首を片手一つで押さえ嘲笑った
ポロポロと涙が零れ落ちる千歌音の目に絶望感が漂う
「本当…いい体してるわね」
乱れた月の巫女服、雪のように白い素肌、露になり自分の唾液で濡れる乳房、暴れもがき膝まで脱げ落ちた袴下、くびれた腰、唾液と愛液でゆらゆらと濡れた秘所…
上から順に舐めるように見る姫子の視線が恥ずかしくて、目を背けた千歌音の顔がかあっと熱くなる
途端、姫子は千歌音の割れ目をくちゅくちゅ!と強く攻めた
「んぁ!いやあっ!…んっ!…くふっ」
身を捻りながら抵抗するも、もがけばもがくほど姫子に強く攻められてしまう
力一杯抵抗していたせいか息がはぁはぁと絶え絶えになっていく
「もうこんなに濡れて、畳が汚れてしまったわ…淫乱な子ね」
「…っ!ち、違う!!」
言われた事もない恥ずかしい言葉を投げられ軽蔑するような眼差しに千歌音は必死に首を振る
しかし姫子は「そう?ここはこんなに大きく固くなってるのに?」と千歌音の秘核を親指でくりくりと弄る
「ぁあ!や、やめてっ!…んあっ!」
抵抗できず身動きの取れない受身の千歌音はそれに何とか耐えようとするが、姫子の指の動きは止まることなく攻め続け
ひくひくと千歌音の下腹部が痙攣していく
このままじゃまずい…!
しかし千歌音の体は心とは裏腹に快感を受け突っ張っていく
「っ!ああ!もう…ダメェェーーーー!!」
抵抗虚しく顎が上がり大きな声をあげ簡単に千歌音は姫子に絶頂に上り詰めさせられてしまった
「はぁ、はぁ…うぅ…うっ…ぐすっ…」
くたぁっと脱力した体、荒い呼吸を繰り返しながら悔しくて唇をかみ締め泣いてしまう
両手首を捻られたまま涙を拭うことも出来ず、姫子から顔を逸らすことしか出来ない
「ここまで濡れたらもう大丈夫かしら…」
「…っ!な、何をする気なの…!」
体を起こして千歌音を見下ろしていた姫子のよからぬ発言に千歌音は足を閉じようとするが、その前に姫子に股の間に体割り込まれ袴下を剥ぎ取られ膝を立たせられてしまう
そして、姫子が取り出したものを見た瞬間戦慄が走る
「頂くわね、貴女の純潔を」
そう言って護身用に持っている短刀の鞘に口付けした
「っ!?だ、駄目!!私たち巫女は純潔じゃなきゃ…!!」
それを何に使おうとしてるのか分かった瞬間腰を引き、大きな声で必死に抵抗をする
世界を救うべく姫子と2人で課せられた陽と月の巫女の使命のために今までずっと守ってきた処女
どんなに愛し合っても、どんなに求め合ってもそこだけは大切に守ってきた
それは姫子が一番分かっているはずなのに…っ!
「もうどうでもいいではない…そんな使命のことなんて」
「え…?」
「私は千歌音だけがいればいい、世界なんてどうでもいいわ」
「正気なの…?」
いつも自分を引っ張って支え続けてくれた姫子がそんな事を言うなんて…
ゆっくりと言う姫子の疲れ切っている目が信じられない
「私はいつでも正気よ。このまま千歌音の全てが欲しいの
千歌音の純潔を奪えばもう千歌音は巫女の運命なんかから解放されるのよ?」
そう言って、短刀を千歌音の濡れた秘所にあてた
秘所にあてられた異物に感じたこともない圧迫感をうけ恐怖に駆られる千歌音の体が一気に固くなる
「だから…我慢してね」
「いや!ひめ…ぅっ痛っ…!あああああーーッ!!」
「千歌音、大丈夫!千歌音っ!!」
誰かに抱きかかえられながら耳元で大きく名前を呼ばれ、頬を叩かれ千歌音はパッと瞼を開いた
「はぁ!はぁ!……ひめ、こ…?」
額に汗を浮かべ、肩で息をつき泣いていた頬は涙で濡れていた
ぼやけて見える視界の先に泣きそうなほど心配そうな顔をしている姫子の顔が見えた
瞬間千歌音の意識がハッキリとし先程までの惨事が脳裏を巡り裏切った姫子の暴行を思い出して「い、いやあああ!!」と、姫子から離れようと肩を掴んだ
気が狂ったかのようなの悲鳴とあらんばかりの力で拒絶する千歌音、しかし姫子はそれよりも強い力でぎゅっと覆うように抱き締めた
「大丈夫よ、落ち着いて」
さっきの力づくとは違い、包まれるような姫子の抱擁と優しい口調
姫子の巫女服も濡れておらず、太陽のように暖かい温もりを感じ千歌音は困惑した
「貴女は私と離れたあとオロチに襲われて幻覚を見せられていたの」
落ち着かせるように優しく言う姫子に千歌音はもがくのを止めた
じゃあさっきまでのは全て幻…?
良く周りを見てみれば自分は大神神社ではなく、月の巫女の巫女服も着てなく出掛けたときのままの格好で見知らぬ森の中にいた
姫子と別れたあと大神神社に真っ直ぐいったはずなのに…
嵐を呼んだ真っ暗な雲もなく、日はとうに暮れ満天の星空が広がっていた
「本当に…姫子なの?」
「えぇ、本物よ。ほら、触ってごらん」
泣きそうな千歌音の手を取り、自分の巫女服を少し開いて胸にある太陽の痣に直に触れさせた
触れた指先から冷たかった自分の体が温まっていくのを感じ、千歌音は目の前にいる姫子が本物だと確信し力を抜いた
自分だと分かってくれた千歌音に姫子は笑顔で頷き、
「私たちは罠に掛かったの、あの私が助けた女はオロチだったのよ」
「…そんなっ」
姫子の言葉に耳を疑い絶句した
あの女性がオロチ…?
信じられない千歌音に姫子は認めざるを得ないというように悲痛そうに頷いた
「屋敷に着いた途端暴れだして私の村も襲われたけど何とか食い止めたわ。それで急いで馬で大神神社まで行ったのだけど千歌音はいなかった
大神先生や真琴達総勢で手分けして行方が分からなくなった貴女を探していたの
胸の痣が疼く先を頼りにして千歌音を探し回ってようやくここで倒れて魘されている千歌音を見つけたの」
悔しそうに言う姫子、瞳の奥がゆらゆらと濡れている
「一人にしてごめんね。手遅れにならなくて良かった…」
生きてる千歌音を確かめるように声を震わせ強く抱き締めた
「こんばんわ、陽の巫女」
突如背後から聞こえた落ち着いた女の声
姫子は顔をあげ怒りに満ちた目で振り返った
「…貴女が千歌音に幻を見せていたオロチね」
振り返ったその視線の先に黒い異国の服に身を包み、手に小さな十字架を持ち闇のように漆黒の髪のすらりとした肌の黒い眼鏡をかけた長身の女性が立っていた
「えぇ。私はオロチ二ノ首、ミヤコ。貴女が此処に来たということは、四ノ首はしくじったのね」
「あともう一歩ってところで五ノ首とやらが助けに来たわ」
殺気に満ちた姫子とは対照的にミヤコは「フフフ」とせせら笑いを浮かべている
そのミヤコの背後にぼんやりと3つ人影がぼんやりと浮かび上がった
「も~あともう少しだったのにコロちんだらしないにゃーの~」
「う、うっさいわね!ちょっと油断してただけよっ!」
「…役立たず」
喧しく騒ぐ3人に姫子は脇からサッと護身刀を取り出し、鞘を抜こうとした
しかし対峙しているミヤコは身動き一つせず「もう今日はこれ以上貴方達と一戦交えるつもりはないわ」と言った
その言葉と共に浮かび上がっていた3人のオロチ達の姿もパッと消えた
そして姫子に抱きかかえられている千歌音に目をやり、数かに笑みを浮かべ目を細めた
「気に入ったわ、月の巫女…また良い夢を見させてあげる」
「……っ!!」
ミヤコの言葉に千歌音の顔が一気に青ざめ身を竦める
「貴女、千歌音に何を見せたの!?」
震える千歌音の肩を強く抱き、声を荒げた
するとクスクスと笑いながらミヤコの体が闇と同化していき姿を消えてゆく
逃げようとするミヤコに向かって「答えなさいっ!」と更に声を荒げた
「ふふ、月の巫女が一番恐れていることよ…」
静かな声で楽しそうに答え腕にいる千歌音がそのミヤコの言葉に悪夢を思い出し、目を瞑り縋るように姫子の巫女服をぎゅっと掴んだ
その姿を確認した後「ではまた、陽と月の巫女…」そう言い残してミヤコの姿は闇に溶け見えなくなった
「何よ…それ…」
訳が分からず、しんと静まりかえった森の中で千歌音を抱きながら呆然とする姫子は呟いた
「姫子…私、私ね、あのさっき…」
腕にいた千歌音が口を震わせながら事情の分からぬ姫子に自分の見せられた幻覚を話そうとした
しかし姫子は首を振り人差し指で口を開こうとする千歌音を制した
「いいわ、無理に話さなくて。ひとまず屋敷に戻りましょう。皆心配してるわ」
心に傷を負ったであろう今の怯えている千歌音から聞く必要はなかったし、ここに駆けつけ自分を見たときに見せた絶望した千歌音の顔を思い出すと逆に聞きたくなかった
笑顔で言う姫子に千歌音は安心したように頷き、姫子に体を支えながら立ちあがり、乗ってきた馬に先に乗せられた
千歌音を乗せた後、姫子は馬に乗る前に松明に火を点けた
『でもひょっとしたら、陽の巫女にとっては望んでいることかも知れないわね…』
突然聞こえたミヤコの声は耳ではなく、直接姫子の脳に響いた
驚き、まだどこかに身を潜めているのかと振り返り松明を掲げ虚空を見上げミヤコの気配を探った
「どうしたの?姫子…」
空を見上げどこか警戒してる姫子に不安げに声を掛け、姫子はそのまま上を向いたまま目を走らせながら返した
「千歌音、今何か聞こえた?」
「え?…な、何も聞こえなかったけど…」
自分にだけ聞こえたか…
姫子は張り詰めていた肩の力を抜いた
辺りにミヤコの気配はなく、本当に姿を消したようだった
「大丈夫?」
「ん?大丈夫よ、気のせいだったみたい」
心配そうに声をかける千歌音に姫子はにこっと笑顔で返した
そのまま松明を千歌音に渡し、馬に跨った
千歌音が恐れ私が望んでいる事…か
自分に向け絶対的な信頼を寄せる千歌音、その千歌音が巫女の最後の運命から逃れ生き残ることが私の望み…
ミヤコの言葉に心の奥底に隠している真意に触れられた気がして複雑な気持ちのままゆっくりと馬を歩かせた
END