爆弾投下予告
注意
1.流れぶった切って申し訳ないがしつこくまた前世です
2.前回投下の話の続き、長くなってもうた
3.エロはほんの少し
4.姫子が男前過ぎる
それではいってみよー
森で千歌音を見つけた後、馬に跨った2人は村へと戻り、たくさんの明りを灯したままの来栖川の屋敷へと向かった
「ひ、姫様っ!」
「お帰りなさいませ!姫様!」
「皆っ!姫様が戻られたわよっ!」
屋敷の敷地に入ると屋敷で主人の帰りを待っていた下女らに出迎えられた
「ごめんね、無事見つけたから」
馬を降り心配そうな表情の下女らを安心させるように言い、千歌音を降ろしてやった
「誰か大神先生やまだ探してる者達に知らせの花火を打ち上げておいてもらえる?」
手綱を預け、そう言い残して少し疲れた表情の千歌音を取り共に屋敷の中へと入った
「乙羽さんは怪我人の治療に追われて手が離せないから部屋まで頑張ってね」
「入るわよ、乙羽さん」
乙羽の部屋につき、襖を開くとたくさんの医療器具に包帯と脱脂綿、消毒に使った焼酎の入ってる壷を片付けている乙羽がいた
「あ、お帰りなさい…ひ、姫宮さん!?」
姫子の声に振り返った乙羽は姫子の背後にいる千歌音を見て慌てて2人に駆け寄った
「あぁ良かった…!ご無事だったんですね 」
「すいません、乙羽さん…ご心配お掛けしました」
心底安心し、泣いてしまいそうな乙羽に千歌音は申し訳なさそうに小さく笑顔で返した
姫子は千歌音の肩を抱き「外傷は無いわ、だけど念のため診てもらってもよいかしら?」そう言って乙羽に千歌音を託した
千歌音を預かった乙羽は深く頷き「えぇ、勿論です」と真剣な表情で返し、姫子も任せたと軽く頷き返した
「落ち着いたようね」
「えぇ、ひとまず怪我人の治療は一通り済みました。重傷者がいなかったのは幸いですね…」
溜息をつきながら乙羽が言ったあと、千歌音の捜索から戻ってきた真琴が「失礼します姫様」と、姫子の傍に来た
「ご苦労様、真琴。どうしたの?」
「はい、大神先生がお見えになられてます。姫様にお話があると仰ってました」
「ありがとう、今行くわ。それより足の具合はどう?私を庇って切られた後簡単な処置しかしてないでしょう?」
心配そうに問う姫子に真琴は「こんなの大した事ありませんよっ」と言って怪我してる足をぺしぺし叩いておどけてみせた
「そう、でも後で乙羽さんに診てもらってね?貴女が怪我してると1人五月蝿いのがいるでしょう?」
自分に心配かけまいと振舞う真琴に微笑み少しからかうように言うと始め真琴は目を丸くしたが
「あぁ~イズミですね…」とニコニコと笑顔を浮かべてる姫子から目を逸らし困ってる様にもはにかんでる様にもとれる苦笑いを浮かべながら後頭部を描いた
「んと~~、えへへ。はい、分かりました」
「ふふ。乙羽さん、悪いけど後で真琴の足ももう一度診てもらえる?」
「えぇ大丈夫、分かってますよ」
真琴の何とも分かり易い反応に乙羽もクスクス笑いながら頷いた
「じゃあまた後でお願いします、乙羽さん。では姫様、私は一度詰め所に戻ります」
そう言って一礼しそのまま去ろうとする真琴を姫子は「待って、真琴」と一度呼び止めた
「はい?」
「迷惑ついでに一つ頼まれてもらえるかしら?詰め所に戻ったら今日は皆色々と疲れただろうから全員にもう休むよう伝えて。
あと千歌音は休息が必要だわ。離れには誰も近づかせないでもらえる?」
「はい、分かりました」
振り返り笑顔で頷き去っていった真琴を見送った後、じっと自分を見ていた千歌音の肩に手を置いて微笑んだ
「じゃあ千歌音、私は大神先生と話しをしてくるから乙羽さんにちゃんと診てもらうのよ?
それから乙羽さん。診察が終わったらそのまま千歌音に湯に浸からせて休ませてあげて」
「貴女も疲れているのだから湯に入らないと…」
笑顔で言う姫子だが、今日一番に疲れているのは間違いなく姫子だった
オロチと戦い追い払ったあと怪我人を運び動ける者に指示を与え、すぐさま大神神社へと行き千歌音を見つけるまで休まず動きっぱなしだったからだ
「えぇ、落ち着いたら浸かるわ。千歌音を宜しく頼むわね、乙羽さん」
それを分かってる乙羽に姫子は心配かけぬよう返した
「…姫様」
去ろうとする姫子に近寄り淋しげな目で見つめる千歌音に「先に休んでなさい、千歌音」と優しく言い姫子は乙羽の部屋から去っていった
「遅くなってしまったわね…」
あれからカズキと会い千歌音を見つけ出し無事を告げ礼を述べ、今後の段取りを話し合い終わった頃には屋敷の中は暗くすっかり静まり返っていた
さっと湯につかり巫女服から寝衣に着替えた姫子が離れの方に足を運ぶと部屋の中は微かに明かりが灯っているのが見えた
ふと空を見上げると綺麗な今夜は三日月が夜空を照らしている
次の満月まで、もうあと少しね…
一度深呼吸してから千歌音の顔を一目見ようと離れの襖に手を掛けた
もうとっくに寝ているだろうと静かに襖を開くと、風呂を済ませ寝衣を纏った千歌音は俯き布団の上で体を起こしていた
「千歌音?ずっと起きていたの?」
少し驚いた感じの姫子の声に疲れた目をした千歌音が「姫子…」と姫子の方を見た
「どうしたの?横にならなくては駄目じゃない」
近寄り千歌音の脇に座りながら言うと千歌音は「うん…」と小さく頷いた
姫子に見守られおずおずと布団の中に潜り込み、横になり姫子の顔を見た
「安心なさい、千歌音が眠るまで傍にいるわ」
心配そうな千歌音の目に姫子はにっこりと微笑んだ
酷い一日だったわね…
千歌音から視線を外し目を伏せ、今日一日の出来事を振り返り顔を顰めた
とりあえず大した被害も無く何よりも千歌音が無事だったのだから喜ぶべきか…
『でもひょっとしたら、陽の巫女にとっては望んでいることかも知れないわね…』
脳裏をかすめるミヤコの最後の言葉
千歌音が恐れ、自分が望んでいること、か…
でも今はその事を考えるのは止そう…
雑念を振り払うように小さく顔を振り、瞼を開き千歌音を見た
ところが当の千歌音は眠るどころか目を閉じておらずさっきより少し目を伏せただけで黙り込んでいただけだった
「どうしたの?眠らないと疲れは取れないわよ?蝋燭が眩しいのではない?」
腕を伸ばし千歌音の枕元にある蝋燭を消そうとした
すると「…待って、姫子」と目の前に伸びた姫子の手首を掴んだ
そのまま布団から出て姫子に縋りつき抱きついた
「お願い、消さないで…」
「千歌音…泣いてるの?」
疲れているはずなのに…
抱きつかれ戸惑う姫子だったがカタカタと小刻みに震えている千歌音にもしやと思い、千歌音の背を抱き返し「眠るのが怖いの?」と肩に顔を押し沈めている千歌音に声を掛けた
すると、千歌音は強く抱きつき頷いた
「眠ったら、さっき…オロチに見せられた幻を、見ちゃうんじゃないかって…」
啜り泣きながら言う千歌音、肩に伝い着物を濡らす千歌音の涙が痛い
内容は聞かなくてもその幻に自分が絡んでいる事ぐらいは分かる
あの尋常じゃない魘され方と自分を見たときのことを怯え方を思い出し、姫子は悔しそうに眉を潜めた
しばらく黙り込んだ後、千歌音は体を離し向かい合う姫子に「姫子…」と名前を呼んでからそっと姫子の唇に自分のを重ね合わせた
千歌音…?
そのまま千歌音は姫子の首にすっと腕を回し、角度を変え優しく噛むような涙で濡れた口付けはほんのりしょっぱく、何よりも愛しくて姫子はゆっくりと目を閉じ受け入れた
何度かそんなゆっくりと顔を交差しながらの口付けを繰り返し、千歌音が口を開いてそのもう一つ先へと事を進めようとしたとき、姫子は一度口を離した
「駄目よ、今の千歌音には負担が大き過ぎる…」
少し寝衣が乱れ白い肩が肌蹴て見えている頬を染め目を潤ませた千歌音に、熱く込み上げかけてる自分の気持ちを押し殺し言い聞かせるように言う
そんな顔をしないで欲しい…
千歌音から求められ応えてあげたい思いと、千歌音の体の事を考えれば抑えなくてはいけない感情の葛藤が姫子を苦しめる
「大神先生がね、明日の朝私と千歌音の力でまたオロチに襲われないように村一帯に結界を張らなければならないって仰ってたの。とても体力を使うわ、だから今日は休まなきゃ…」
そう言って応えたい思いを断ち切るように姫子は固く目を閉じた
しかしそれでも千歌音はぎゅっと姫子の柔らかな肌に抱きついてくる
「ごめんなさい…でもっ!私…私は…!…忘れたいの。だからお願い、姫子…っ」
抱いて…と、小さく耳元で求められた
ぞくっと全身が粟立つような背筋を駆け上がる感情に、抑えていた姫子ももう駄目だった
ハァっと小さく熱い吐息が漏れる
「…分かった、でも辛くなったら言うのよ?」
そう言って千歌音を抱き返すと千歌音は力を緩め姫子の顔を見つめ涙を流したままコクリと頷いた
「千歌音…」
「んっ……」
2人の傍にある蝋燭の火が2つの影が一つになるのを映し出していた
揺らめく蝋燭の火が灯る冷えた部屋の真ん中で、布団の中の2人は美しい裸体をゆったりと絡み合わせていた
「はぁ…んっ…ふぁ……」
「…ん、千歌音……」
少し何時もと違う今宵の2人の営み
どこがと問われれば千歌音は絶えず目から涙を零し、いつもよりも姫子にしがみついて離れようとしなくて
その姫子もいつもなら泣くその理由を聞くのに、何も聞かずにいつも以上に千歌音に触れる手が優しい事だろう
「ひめ、こ…ぁ、っ…」
胸や秘所を優しく愛撫し千歌音の形の良い口から漏れる甘い声、焦点の合わぬ自分を見つめる目、紅潮した頬が自分の知るこの世の誰よりも美しい
姫子は千歌音の頬を伝う涙を口で拭ってやる
「…大丈夫?」
水の音がする秘部を愛する手の動きは止めず、空いてる手で髪を撫で聞いてみると猫のように体をしならせている千歌音は口元を緩め小さく頷いた
姫子は満足そうに微笑み、そっと千歌音の唇に口付けをするとそれに応えるように千歌音は姫子の背に置いていた手を滑らせた
「好きよ…愛してるわ、千歌音」
「ぁ…私もよ、姫子…ん…っ」
抱き締めあい、体を擦らせお互いの温もりを分け合いながら2人は誰にも邪魔される事無く愛を確かめ合った
「平気?辛くなかった?」
「…うん、平気よ」
少し乱れた千歌音の息が整ったあと、優しく問うと脱力した千歌音は目を細め笑顔で返した
「これで眠れる?」
その顔に姫子も安心し笑顔になり、頷き今にも瞼が閉じてしまいそうな千歌音に軽く口付けし体を起こした
「じゃあ体が暖まってる今の内に眠ってしまいなさい」
脱がした千歌音の寝衣を取って掛けたあと、布団から出て立ち上がり自分の寝衣を手に取った
「ごめんなさい…。今はこんな事してる場合じゃないのに…」
綺麗な背中の姫子の後姿に千歌音は少し後悔しながら言った
自分の我儘なのは分かってた。そして姫子に依存してしまってる自分の弱さにも
だからこそ応えてくれた姫子に対しての後ろめたさや、自分の無事を心配していた乙羽や怪我をしてしまった仲間たちへ罪悪感もあった
「いいの、千歌音に泣かれる方が堪えるもの」
しかし姫子は求めた千歌音の我儘を肯定するように笑って返した
「辛いことも悲しいことも分け合うって約束したでしょ?」
その優しさと包みこむような笑顔に千歌音は頬が染め、姫子は笑みを浮かべながら寝衣を羽織り帯を締め枕元に座った
「さ、早くお休みなさい。千歌音の寝顔を見ないと気になって部屋に戻れないわ」
優しく言い、よしよしと髪を撫でてやると急に千歌音が淋しげな表情を見せる
「…行ってしまうのは今だけ?」
「え?」
言葉の意味が分からなかった姫子が首を傾げると、千歌音は重い口を開いた
「練習を重ねて、一緒にアメノムラクモを復活させてね…」
「ヤマタノオロチとの戦いが終わったあと…そのまま姫子がどこか遠くに行ってしまうんじゃないかって―――」
思い掛けない千歌音の言葉に姫子の表情が強張り動きがピタリと止まる
「ご、ごめんなさい…縁起でも無いこと言って、私ったら何言ってるのかしら…」
口走った事に自分でも驚き口元に手をあて慌てて自分の言った言葉に対し謝罪の言葉を付け足した
「姫子は何処にも行ったりなんてしないよね?」
「……」
「姫子?」
何も言い返さず俯いたままの姫子の顔を覗き込むと、姫子は顔をあげにっこりと笑みを浮かべた
「えぇ大丈夫、私は何処にも行かないわ」
たとえ、月の社に封印されても千歌音を思う気持ちは、いつもそばに…
「もし離れてしまったとしても私たちの気持ちは繋がっているでしょう?」
運命に翻弄されても、きっとそうなのだと信じたい…
自分を見つめる千歌音の目にズキズキと胸の奥が痛む
目にこみ上げる熱いものをぐっと堪え、悟られぬよう精一杯笑った
すると千歌音も連られて笑顔になる
「うん、そうよね。ごめんなさい、もう寝るわ」
「えぇ、ゆっくりとお休み」
微笑んでそっと唇を重ね合わせると、千歌音は目を閉じ瞬く間に眠りへとついた
ごめんなさい…
千歌音が眠ったのを確かめたあと蝋燭を消し、手を握り締めそっと離れを出て行った
バシャアアァァァー
離れを出た姫子は屋敷の隅にある井戸に立ち、桶で掬った水を頭から何度も被っていた
水浴びには既に寒い季節
冷たい水で体を清めても、胸の奥の罪悪感は洗い流されないか…
全身水浸しになった姫子は浮かない表情で「ふう…」と白い溜息をついた
「この寒い中で身清めだなんて風邪引くわよ」
突然背後から聞こえた声。しかし姫子は微動だにせず濡れた前髪を掻き分けた
「貴女も途中までといえ聞き耳とは余り良い趣味とは言えないわよ…乙羽さん」
目を瞑ったまま振り返りもせず返すと、声の主の乙羽はすっと姫子に近付き月夜に姿を現した
「…気付いていたのね」
姫子が離れへと入っていったとき、気配を消した乙羽が物音立てずに襖の外で会話を聞いていたことに姫子は気づいていた
「離れには誰にも近づかぬよう言ったはずだけど?」
「私は貴女の下女ではないし、ここの屋敷の者ではないもの」
そう返す乙羽に、ごもっともと言わんばかりにクスっと笑みを零し振り返った
「そうだったわね。他の皆はもう寝た?」
「貴方と私以外は皆寝てるわ」
「そう」
持っていた桶を置き、水を切ろうと濡れた髪を絞るいつもと変わらぬ姫子に厚手の上着を差し出し「怒ってないのね」と話を戻した
すると姫子は上着を受け取って羽織り、ひょいと大きく肩を竦めた
「別に聞かれてはいけない事を話してた訳ではないもの。下女の誰かなら注意するけど、貴女は口が固いし」
薄々姫子と千歌音の関係に気づいてた乙羽に姫子は隠しもせずあっけらかんと答えた
その潔のよさと自分を信じてる純粋さに乙羽も「ごめんなさいね、そういうつもりではなかったのだけど。そう言ってもらえると助かるわ」と笑顔になる
しかし直ぐに深刻そうな表情に顔を戻した
「今一時的に癒してあげたとは言え、あの子の心の傷は相当深いわよ」
乙羽の言葉に溜息をつき、辛そうに頷き額をおさえた
「…えぇ、そうでしょうね。それでもあの子には乗り越えてもらわなくてはならないもの」
癒したり支えてやることは幾らでもできる。しかし最後は千歌音自身で何とかせねばならない
そうでなければアメノムラクモは復活せず甦ったヤマタノオロチに世界は破壊される…
それは世界の命運を託された姫子も千歌音も嫌でも分かっている
「でも今のあの子の精神状態では復活の儀を成功させる事は困難よ?」
姫子と千歌音が運命の巫女と知る乙羽は眉間にしわを寄せ警告するように言う
すると姫子は目を閉じ「大丈夫よ、何とかして見せるわ」と迷いなく力強く答えた
「それに…」
「それに?」
羽織った上着をぎゅっと握りしめ決意に満ちた目で夜空に浮かぶ月を見上げた
「いざとなったら例え私一人でもアメノムラクモを復活させて見せるわよ―――」
END