爆弾投下予告
注意
1.前世です。設定はいつも通り
(姫子=村長の娘、千歌音=病弱且つ姫子の下女
真琴=姫子の付き人、乙羽=医者の卵・姫子とは2つ年上のお友達・色々理由をつけて姫子の屋敷に居候中)
2.エロはほんの少しだけ(姫マコなので受け入れられん人はスルーで)
3.途中色んな視点から書いてるのでややこしいかも
4.ここに書いてある注意書きが少ない
「はぁ…!はぁ…!」
さんさんと雪が降り積もる夜、苦しそうな呼吸が響く来栖川家の離れの一室。
「大丈夫、千歌音?」
「はぃ…何、とか…」
姫子に見守られながら布団に寝かされている千歌音。
連日大雪が降るほどの寒さに体調を崩してしまっていた。
「…おかしいわね、全く薬が効かないだなんて」
同じく付き添っている乙羽も千歌音の額に手をあて険しい表情をする。
付きっ切りで乙羽が看病してくれているのにも関わらず、以前熱が高い状態が続いていた。
手ぬぐいを絞り額に置いてやると乙羽が口を開いた。
「ここではダメね」
「え?」
「ここまで酷くなるなんて。今日は姫宮さんを私の部屋で寝かせるわ、目が離せないもの」
「…そうね、その方が良さそうね」
やや複雑な気持ちだが、この状態の千歌音を離れで1人寝かせるよりかは看病できるものの傍に居るほうが遥かにましだろう。
「…今、布団用意させるわね」
そう言って立ち上がり重い足取りで襖の方へと向かうと「待って」と乙羽が声を掛けた。
「それと、明日の朝もっと酷くなるようなら大おば様の所まで連れて行くから。いいわね?」
「…っ」
その言葉にピタリと姫子の足が止まった。
―連れて行く…千歌音を……。
立ち尽くす姫子の脳裏にその断片的な言葉が何度も響く。
「私では知恵が足りないもの。…ってちょっと、聞いてるの?」
「…ええ、聞いてるわ。とりあえず今は部屋の移動をしましょ」
振り向くことなく素っ気無い返事を返し、そのまま姫子は離れを出ていった。
乙羽の顔を見ることが出来なかった…。
悔しさで唇を噛み俯いたまま屋敷へと戻ると、たまたま通り過ぎた下女に声を掛けられた。
「…姫様?」
「?あ、真琴――」
しばらくして準備を済ませ真琴と共に離れに戻り乙羽に声を掛けた。
「乙羽さん、用意できたわよ」
「ありがとう。立てる?姫宮さん?」
「あ、私も手伝います!」
真琴と協力して肩を貸しながら意識が朦朧としてる千歌音を立たせ、ゆっくりと乙羽達が姫子の目の前を通り過ぎていく。
「…(…千歌音)」
―本当は自分が看てやりたい。
―苦しいのを取り払ってやりたい。
―でも、自分にその力は無い…。
そう思う気持ちがいつもなら千歌音の為なら率先として動く姫子を動かせずにいた。
「…(本当に辛いときに何もしてやれないだなんて…)」
でも今千歌音に触れてしまうと離れたくなくて涙が溢れてしまいそうで。
伸ばそうとした手を固く握り締め、屋敷の中へと入ってく千歌音の後姿を…姫子はただただ見ていた。
あれから離れを出て自室へと戻った姫子。
何かするわけでもなく固く口を閉ざし布団の上に座っていた。
そのまま座っていると背後にある襖の向こうで人の気配がした。
「姫様、入りますよ?」
「ん…いいわよ」
乙羽と共に千歌音を運んだ真琴が部屋に入ってきた。
「千歌音は?」
振り返らず背後に座った真琴に尋ねた。
「はい、何とか落ち着いて寝ました」
「そう…」
「いいんですか?見舞いに行ってやらなくて」
千歌音が乙羽の部屋へと運ばれてから一度も様子を見に行ってはいない。
いや、見に行くことが出来ないでいた。
「…私が行っても何も力になれないもの」
そう力無く言うと姫子はふと顔をあげ天井を見上げた。
「も~、そんな事ない……姫様?泣いてらっしゃるんですか?」
宥めようと姫子の横に並んだ真琴は真上を見ている姫子の目にキラリと光るものが見えた。
さっき屋敷で会ったときも様子がおかしいと思ったけれど…。
答えぬ姫子はあふれんばかりの涙を溜め、真琴の前で涙を流すまいと堪えている。
その姿に真琴の胸が詰まる。
そっと手を伸ばし姫子の肩を抱き寄せ、ぎゅっと抱きしめた。
「姫様、泣きたい時は泣くものですよ…」
「真琴…」
「あ…///姫、さ……ま」
一頻り泣き終えるまで姫子を抱きしめていた真琴は布団の上に押し倒され組み伏せられた。
しゅるると帯が解かれ、そのまま着ていた着物を脱がされても、真琴は抵抗することなく覆いかぶさる姫子を受け入れた。
姫子の部屋に小さな艶かしい声だけが聞こえる。
「はぁ…んっ…ひゃう…!」
口と指で胸を愛撫され姫子の頭を抱きしめるが、姫子はそれをすり抜け腹まで下がり口付ける。
―分かってる、姫様は愛してる者にしか接吻をしてはくれない。
「あっ…!」
姫子の指が下腹部へと伸び陰裂を広げ、指にたっぷりと溢れている愛液を絡めながらなぞりあげていく。
―千歌音がこの屋敷に来て姫様が彼女に向ける眼差しに気づいてから自分の想いは永遠に届かぬものだと悟っていた。
「く…っ!ふぁ!はぁ…あ!」
くちゅくちゅと水音を響かせながら花芯を攻められ、自然と足が開き受け入れ態勢になる。
―でもそれで他の下女らのように千歌音を疎ましく思ったりはしない、自分の立場を良く理解している。
―自分とて千歌音ほどではないがお側役や良き相談役として姫様に優遇されているから。
「あっ…!んん!…あ、あ、あ…!!」
蜜壷に2本指が滑り込むと、圧迫感で背中が仰け反り甲高いあられもない声が止まらなくなる。
―姫様がそっと教えてくれた、千歌音は陽の巫女である自分と対になる月の巫女なのだと。
―純潔でなければならない彼女は処女を失うわけにはいかない。
―ならば自分がと思い、千歌音を想う姫様の気持ちを逆手にとって処女を捧げた。
「はぁ!ひ、め、さま!あん!あああ!」
咥え込んだ指で膣内を掻き乱され、親指で花芯を執拗に弄られ全身が強張っていく。
―駄目だと始めは拒まれた。自分が愛しているのは今もずっとこの先も千歌音だけだと。
―分かってる、痛いくらいに。
―どんなに想っても尽くしても、決して姫様のその気持ちが揺らぐことはない。
―でもそれでも良いと思った。
「あぁぁぁぁぁ…!!!」
指を痛いくらいに締め付けて、真琴は達した。
―こんな時しか求められなくても、心から愛されていなくてもいい。
―それでも自分の体を姫様に委ねることで少しでも姫様の気持ちが楽になるのならば…。
「姫様…」
脱力した腕で姫子の頬に手を差し伸べるが、姫子はその手の甲に感謝の意を込めて口付けしてくれるだけで。
脱がした着物を手渡し、自分の乱れた着物を整えてしまう。
―でも、どんなに姫様が優しくて体を重ねることは許されても、心が重なることはない。
―それでも良いからと姫様に抱かれたいと思う自分は滑稽でしかなくても、私は姫様を……
「ごめんね、真琴…」
情事を終え、着物を正す真琴に背を向け布団に横になっている姫子が謝ってきた。
謝ってほしくなんかない、そんな哀しい声なんか聞きたくない。
…後悔してるなんて、思ってほしくない。
「いいえ、元気出してくださいね」
だけど口に出してはいけない、表情にも出してはいけない。
始めに誘ったのは自分自身なのだから。
立ち上がり、襖へと歩いていく。
「お休みなさい、姫様」
思いを断ち切るように襖を閉め部屋を出て行った。
その頃乙羽の部屋へと運ばれた千歌音は…。
「はぁ…!はぁ…っ!ううぅ…!」
「っ!姫宮さん!大丈夫!?」
大人しく寝ていた千歌音が急に苦しそうに呻きだし隣で寝ていた乙羽が慌てて起き上がった。
「はぁ…!み、水……!」
高熱のせいで動かぬ体で必死に水を求める。
乙羽は千歌音を抱き起こし枕元に用意していた水の入った竹筒を千歌音の力なく開いている口へとあてる。
しかし…。
「…ごふっ!」
衰弱している体で上手く水を飲み込むことが出来ず、口の端から水が漏れ咽返ってしまう。
「…仕方ないわね」
そう言って乙羽は千歌音の口にあてていた竹筒の中の水を自分の口に含んだ。
「はぁ、はぁ…んっ」
熱で火照っている千歌音の唇に自分の唇を重ねた。
瞬間千歌音の体が強張るが、乙羽は構わず水が溢れぬようゆっくりと口移しで水を飲ませた。
千歌音の喉からこく、こくと水を飲み込めてる音が聞こえる。
口の中の水が無くなり、もう一度口に含み再度口移しで水を飲ませる頃には千歌音の体も力が抜けていた。
「柔らかいのね、貴女の唇は…」
しばらく口移しを繰り返し最後の水を飲ませる前に愛しげにポツリと言う。
この言葉はきっと意識の無い今の千歌音には聞こえてはいないだろう。
さっきまで苦悶に満ちていた顔も水を飲んでからは幾分和らいだ。
その儚げな表情にあの姫子が溺愛する理由が良く分かる、羨ましく思えるほど。
2人の中を邪魔しようものならば何をしでかすか分からないくらいなのだから。
そう思うと可笑しくてクスっと笑ってしまう。
そして再び唇を重ね最後の水を飲ませた。
―でも、ほんの少しだけなら大丈夫かしら…?
そして飲み終えたあと、乙羽はそのまま千歌音の口内を割って入り舌を絡め合わせ始めた。
すると千歌音の舌は抵抗せず、絡める乙羽の舌にほんの少しだけ反応をみせた。
深い口付けの合間に乙羽と千歌音の熱い吐息が漏れる。
あともう少しだけ…と思ったが千歌音が苦しそうに「うっ…」と呻き乙羽は口を離した。
「あ…」
口が離れ眠っている千歌音の顔を見ると閉ざしている両方の眼から涙が零れていた。
「…参ったわね、泣かれちゃうなんて」
意識が無いから…と思ってたのにまさか泣かれてしまうなんてね…。
自嘲するように微笑み寝衣の袖で千歌音の目元と口元をぬぐってやり布団に寝かした。
「ひ…め……」
寝返りを打ち小さく想い人の名を切なげに呼んでいる。
あれから姫子が来なかったからか、夢でも探しているのだろうか。
「ごめんなさいね。好きな人以外は受け入れられない。って事なのよね」
―分かってはいたけれど…、興味本位でもこんな事しては駄目ね。
頭を掻き少し反省しながら布団に潜り込み溜息をついた。
翌朝。
振り続けていた雪も止み、空はすっきりと晴れ渡っている。
「姫様~、朝ですよーっ!」
勢いよく襖が開き、いつものように真琴が姫子を起こしにきた。
「って、あれ…?」
しかしいつも真琴が起こしにいくまで寝ている姫子の姿はそこになく、布団はもぬけの殻だった。
どこに行ってしまったのかと思い渡り廊下に出ると馬小屋のほうに人影が見えた。
間違いないあの後姿は姫子である。
「姫様ー!」
「…ん?」
積もった雪の上を駆け姫子の元に行くと馬に餌を与えていた姫子が振り返った。
「お早うございます、姫様!」
姫子の前に立ちまずは朝のご挨拶。
昨晩のことなど微塵も感じさせない真琴の元気な笑顔。
姫子も笑顔を作り「お早う、真琴」と返し再び馬に餌を与えた。
「良く眠れた?」
「はい。姫様は眠れ……なかったんですね」
真琴の返しに馬の鼻筋を撫でていた姫子の手が一瞬止まる。
「…まあ、ね」
「………」
昨夜と変わらず元気のない返事に真琴は掛ける言葉が思い浮かばず俯いてしまった。
「それより千歌音の容態は?」
「あ、そうでした。それが―――」
やはり千歌音の容態は良くはならなかった。
幸い雪も夜のうちに止み晴れているため、千歌音は乙羽と共に乙羽の祖母の元へと連れて行かれることになった。
部屋で仕度をする乙羽の様子を眠れぬ夜を過ごした姫子は襖に寄り掛かりながら立ち黙って見ていた。
乙羽が大きな風呂敷に荷物を纏めたとき、ようやく口を開いた。
「…準備は出来た?」
「えぇ、もういつでも行けるわ」
「ん…」
するとずっと寝ていた千歌音が目を覚まし、姫子を見つけた。
目が合う2人。昨日千歌音の離れを出てから初めて顔を合わせる。
「姫、さ…ま」
縋るような眼差し。高熱のせいで潤んでる瞳がいつも以上に千歌音の儚さを引き立たせている。
「千歌音…」
名前を呼ぶと微かにだが笑ってくれる。
辛いのに、千歌音は姫子だけを見ている。
でも次に何て声を掛けてやればいいのか…。
必要以上に負い目を感じ言葉に迷っている姫子の脇から突然真琴がひょっこり現れた。
「乙羽さん、お馬の用意が出来たのでちょっとこちらに」
「ありがとう。今行くわ」
ちょいちょいと手招きする真琴に呼ばれ乙羽は荷物を持ちそそくさと歩いていった。
そして姫子の横に並ぶと小さな声で真剣に言う。
「何で昨晩あれから見舞いに来てやらなかったの?少しだけ時間をあげるわ。私じゃなくて、貴女にしか出来ないことがあるはずよ」
それだけ告げ、ハッと目を開いた姫子を置いて襖を閉め部屋に2人きりにさせられた。
自分だって会いに行きたかった…。でも一体私に何が出来るというのか…?
自分にしか出来ないこと…?
「姫子…?」
答えが見つけられず俯き立ち尽くしたまま動かない姫子に千歌音は横向きに寝転がってもう一度声を掛けた。
千歌音の声掛けに反応し、とりあえず枕元までいき座った。
じっと疑問の眼差しを向けている千歌音に悟られぬよう首を傾げてみせる。
「なあに?」
「どうしたの?元気ない、みたい…」
「……」
隠してるつもりが逆に心配されてしまった。
バレバレか…。
ふっと鼻で笑ったあと横たわる千歌音の額を撫でてやる。
「今日ね、乙羽さんが千歌音を大おば様のところに連れていってくれるって。
だから乙羽さんの言うことをちゃんと聞くのよ?」
「……」
しかし今度は千歌音の顔が曇ってしまう。
自分でも多少連れて行かれることを予想はしていたのか、掛かってる布団を肩まで引き寄せ隠れようとする。
「どうしたの?行きたくないの?」
布団に潜ってしまった千歌音の様子に姫子が問いかけると、顔をあげ涙声でこう言った。
「離れたくない…」
「…っ!」
真っ直ぐな千歌音の言葉に姫子は大きく胸を打たれた。
離れたくないのは千歌音も同じだった。
それなのに、私は…。
ようやっと乙羽が自分に言った言葉が分かった。
千歌音のために自分にしか出来ないこと、それは…。
迷いがなくなった姫子は「私もよ、千歌音」と言いながら手を取り包み込んでやる。
「でもね、ここにいては体は良くならないわ。乙羽さんでも駄目ならちゃんと診てもらわなきゃ」
千歌音自身もそれが分かっているのか、眉をひそめてはいるが頷いた。
体が弱ってるせいか少し幼く見える今の千歌音の仕草に笑みがこぼれる。
「元気になって帰ってきたらまた千歌音の絵を描いてあげる」
姫子の言葉に千歌音が瞬時に反応する。
「本当?」
「ええ。だから早く帰って来てね、待ってるから」
そこまで言うとさっきまで衰弱していた千歌音の表情が嘘だったかのように明るくなる。
千歌音の傍にいて励ましてやる。
姫子がすべき事はたったこれだけで良かったのだ。
それはどんな医学の知恵を用いた治療よりも病に効果があり、乙羽が姫子にしか出来ないと言ったのは千歌音が姫子の言葉を待っているからであって。
そこらへんの事を医者の卵である乙羽は本人達以上に良く分かっている。
「姫子…」
甘えるように名を呼び姫子の頬に手を伸ばす。
千歌音が口付けを求めるときのクセ。姫子は千歌音の手に引き寄せられるまま顔を近づけた。
こんなにも求められているのに、ちょっとした嫉妬のせいもあるが始めから姫子が負い目など感じる必要などなかったのだ。
千歌音の澄んだ蒼い目は自分自身だけを見ているのに。
「好きよ、千歌音」
「ん…」
お詫びの気持ちとありったけの愛情を込め、この世で一番愛しい者に口付けを送った。
その頃襖の外では…。
「…何とかなりましたね」
「…本当。これでも駄目ならその場に乗り込んで説教してやるところだったわ」
気配を殺し2人の会話の一部始終を外でずっと聞いてた真琴と乙羽はほっと息をついた。
もう大丈夫だろうと立ち上がり、スタスタと渡り廊下を歩く。
「…(やっぱいーなぁ、姫様の接吻…)」
「…(しかしあの唇一人占めって随分と贅沢よね…)」
お互いあさっての方向を見ながらやや解せない表情で歩く。
「…乙羽さん、私たちは人が良過ぎるのでしょうか?」
「…ん~惚れた弱みじゃないかしらねぇ」
少し凹む真琴、苦笑する乙羽。想い人を支える側にいる似たもの同士の会話がほんの少しだけ痛い。
「乙羽さん、帰ってきたら今度甘いものでも食べに行きませんか?」
「そうね、姫子を置いて皆で食べに行きましょうか」
そう言ってくすくすと笑い声をあげ、こちらでも乙女らしい楽しい会話が弾んでいだ。
終