注意
1.前世です。設定は下記の通り
(姫子=村長の娘、千歌音=病弱且つ姫子の下女)
(真琴=姫子の付き人、乙羽=医者の卵・姫子とは2つ年上のお友達・色々理由をつけて姫子の屋敷に居候中)
2.エロは前半はなし、エロパロ板なのにすまない。
3.オロチ衆はミヤコ・コロナ・レーコの3人が出ます。
4.バトル有り。拙いけど。武器は正直申し訳ない。
5.前に投下してあるオロチに襲われた話が少し混じってる。
6.それぞれの言葉遣いは生温かい目でお願いしたい。
もはやどうにでもなってしまえ!参ります。
『はい。もう大丈夫ですよ、姫宮さん』
『ありがとうございます、乙羽さん。いつもすいません』
『フフフ。いいんですよ、別に。じゃあお薬を…』
「へえ、これはこれは…」
オロチ衆のアジトにてミヤコは自分の鳥居の上で姫子の屋敷の乙羽の部屋で診療中の千歌音の様子を鏡を通して窺っていた。
鏡に映る2人は姉妹のように仲が良い。しかしそれに対しミヤコは何故か顎を擦りながら薄笑いを浮かべていた。
「ちょっと二ノ首、何鏡覗いてニヤニヤしてるの?ってな~んだ、月の巫女じゃん」
そのミヤコの背後からコロナが覗き込んできた。
しかし見ていたのが千歌音だと分かるとつまんないとでも言うように肩を竦めた。
だが鏡から目を離さないでいるミヤコの笑みは益々深くなっていく。
「なあに…ちょっといい事思いついただけよ」
うっとりとそう言うとコロナも目を細め「…へえ、また何かやらかすの?」と再び興味を持ち、ミヤコの横へと並ぶ。
「でも勝手なことしたらマズイんじゃないの?」
「いいえ、私が直接手を下す訳ではないわ。この美しい医者の卵さんにお手伝いしてもらうの」
そう言って鏡に映る乙羽の髪を愛しげに撫でた。
その異様なミヤコを横目で見つつコロナが「相変わらず考える事が悪趣味ね」と零すと、ミヤコはピタリと撫でるのを止めアジトの中で一番高い位置にある鳥居を恍惚と見上げた。
「ええ。でもそれもこれも全てはツバサ様の為、その為ならどんな手段だって選ばないわ」
(大した忠誠心だこと…)
コロナは冷ややかな視線を送りつつ理解し難いわと首を捻った。
「…でも、それなら面白そうだし私も手伝ってあげてもいいわよ」
しかし手段を選ばないとなると面白いかもと思い遊びに行くノリで賛同すると、ミヤコはコロナに視線を戻した。
「そう。じゃあ、陽の巫女の相手でもしてもらおうかしらね。陽の巫女がいると邪魔だし」
「OK」
親指を立て了解すると、ミヤコは「じゃあ、はいこれ」と紙切れを渡してきた。
「何よこれ?」
「その偽の手紙で陽の巫女を誘き出すの」
「ふ~ん、ここまで用意するなんて感心するわね」
「何事も下準備が肝心よ、私は無計画な弟とは違うから」
なるほど納得と頷き、少し離れたところにある鳥居の上で黙々と筆を進めているレーコに声を掛ける。
「ヲタク先生聞いてたんでしょー?あんたも手伝ってよ」
「……っ」
コロナの呼びかけにレーコは目だけチラッと2人に向け、再び視線を落とした。
「私はいい」
「はあ!?何でよ!」
素っ気無く断るレーコにコロナが食って掛かろうとしたがミヤコは「いいわ、今回は私と貴女だけで」と制した。
「必要以上に人数を集めることは無いし。それに貴女1人で陽の巫女を相手にするなんてどうって事ないでしょ?」
「フン!まあね。陽の巫女には借りがあるし丁度いいわ」
ミヤコの問いにレーコに振られてイライラしているのか腕を組んでそっぽ向きながら荒々しく答えた。
しかしミヤコはコロナの態度を気にする事無く言葉を続ける。
「でもうっかり殺しちゃダメよ、ツバサ様には内緒だから。とにかく時間を稼げるだけ稼いでほしいの」
そして再び鏡に視線を戻すと、今度は姫子と向き合い口元に手をあててクスクスと楽しそうに笑っている千歌音が映っている。
「そう、月の巫女が絶望する時間をね―――」
**********************
翌日。
「姫様ぁ?準備出来ましたか?」
「ええ、今行くから先に外に出てて」
昨日急遽隣の村から巫女の仕事の依頼状を受けこれから出発するところだった。
何でこんな急に?と始めは思ったが依頼主が大神神社の大神先生ならいた仕方なしと行くことにした。
「じゃあ乙羽さん、行ってきます」
「はい、お勤めいってらっしゃい」
草鞋を履き荷物を持って玄関まで見送りの乙羽に挨拶を交わす。
「千歌音、こっち向いて」
すると、「はい…」と乙羽のやや後ろにいた元気の無い千歌音が顔を上げた。
「乙羽さんの言うことちゃんと聞くのよ?」
本来ならば同じく巫女である千歌音も行くはずなのだが、つい最近まで体調を崩し寝込んでいたため今日は大事をとって家に残るようにと姫子に言われてしまったのだ。
(せっかく姫子と出掛けられると思ったのに…)
急だったから仕方無いとはいえ、元々は自分の軟弱さのせいなのだと思うと残念で仕方ない。
「はい…」と小さく答えると、姫子が少し困った笑みを浮かべる。
「千歌音がそんな顔してると出掛けられないわ、だから笑って」
そう言い最後に「ね?」と顔を覗き込みながら付け加えると、その笑顔に千歌音もつられて頬をほんの少し緩めた。
千歌音が笑顔になると満足げに顔をあげ、再び乙羽を見て「乙羽さん、千歌音を宜しくお願いしますね」と言おうとした時、大事なことを言うのを忘れていた事を思い出した。
「そういえば言い忘れたけど乙羽さん」
「え?」
キョトンとした乙羽にズイっと一歩詰めより、小さな声で低く言う。
「千歌音に手出したらただじゃおかないわよ」
「真剣な顔して何を言うかと思えば…。私をどういう目で見てるんですか、貴女は…」
「はは…」
千歌音でさえ反応に困ってるのに真剣そのものの姫子に流石の乙羽も少々呆れてしまう。
(しかしまあ嫉妬深いというか独占欲が強いというか…)
そう頭で思っても心の内ではそれほど千歌音が大切なのだろうと分かっている。
だが、それを素直に認めては面白くないと肩を竦め毅然とした態度を取る。
「ご心配なく、私は誰かさんと違って病み上がりの患者に手を出したりしませんから」
「~~っ!!」
「……///」
姫子が真剣だからこそついこうやって意地悪してしまう。
あっけらかんと答える乙羽にムキになって言い返そうと口を開こうとする。
しかしそんなこんなで玄関でもたもたしていたせいで外で待つ真琴が痺れを切らしてしまい「姫様ぁー!早く行きましょうよ~」と外から訴えてきてしまった。
「くすwほら早く行かなきゃ。早乙女さんが寒いのに外で待ってるわよ?」
勝ったと言わんばかりに余裕な乙羽に姫子今日も完全敗北。
(勝てない、何故か勝てない…!)
「―っ!行ってきます!」
手を握り締め悔しそうに頬を膨らませたままピシャッ!音を立て玄関から出て行った
「ふう、やっと行ったわね。私に口で勝とうなんて10年早いわよ」
「ははは…(真琴さん八つ当たりされなきゃいいけど…)」
静かになった玄関で腰に手をあて無駄に勝ち誇ったあと乙羽はいつものやさしい表情に戻る。
「じゃあ姫宮さん、私はとりあえず部屋に戻るから何かあったら声を掛けてくださいね?」
「はい、私も今日はお休みをもらってるのでこれから弓道場に行きます」
千歌音はいつも守られてばかりではいけないと武道を始めていた。
剣技も護身の為と姫子や真琴から習い上達も早かったのだが、接近戦は体力の消耗が激しく元々体力の無い千歌音には不向きだった。
ならば弓ならどうかと試し打ちをしてみると意外な才能が開花した。
生まれながらの器用さと集中力の高さで見る見る内に腕を上げていったのだ。
「熱心なのは結構だけど、病み上がりなのだから余り無理しては駄目ですよ」
「大丈夫です、感覚が鈍ってないかどうか試すだけにしますから」
「分かりました、一息ついたら私の部屋で一緒にお茶でも飲みましょう」
「はいっ」
乙羽の誘いに嬉しそうに頷き、屋敷に残った千歌音は弓道場へ、乙羽は自室へとそれぞれ歩いていった。
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オロチ衆アジト。
その一連の様子をミヤコとコロナは鏡を通し見ていた。
「手筈どおり陽の巫女が離れたわね。じゃ私はそろそろ行くわよ」
「ええ、余り熱くならないようにね。あと、油断は禁物よ」
「はいはい。分かってるわよ、油断禁物はお互い様よ。じゃ、よろしくねぇー」
ミヤコの忠告も軽く受け止め、手を振りながら自分の鳥居へと戻っていく。
自分の鳥居に戻らなくともその場で空間を渡って移動できるのだが、わざわざ一度戻りすぐ隣のレーコの鳥居を見る。
「レーコ、本当に行かないの?」
「…行かない」
コロナの再度の呼び掛けに未だ机に噛り付いて筆を走らせているレーコは答える。
見向きもしないレーコの態度に「チッ!」と舌打ちをし、不機嫌そうに背を向けそれ以上言葉を発することなくコロナは姿を消した。
コロナが去り、しん…とアジト内が静かになるとレーコは筆をぴたりと止めた。
「……」
そのまま口を閉ざし、物思いに耽けるかのようにコロナがさっきまで立っていた場所をじっと見ていた。
「さあ、そろそろ頃合ね」
そう言って1人鏡の前で様子を窺っていたミヤコが眼鏡を掛け直す。
「楽しませてもらおうかしら、お美しい操り人形さん――」
鏡に映った乙羽を見るミヤコの瞳が赤く光った。
********************
「ふう。さてと、そろそろお茶の用意でもしましょうか」
そう言って読んでいた本をパタンと閉じ、「今日は何を飲もうかしら~♪」っと鼻歌交じりで立ち上がろうとした。
すると、どこからか視線を感じ何だろうと化粧台の方を見たとき、乙羽は目を見開き息を飲んだ。
「っ――――!」
ストン!!
的の真ん中に勢いよく矢が刺さると練習着用の袴を着た千歌音は構えていた弓を下ろした。
「ふう…良かった。あまり鈍ってなくって」
寝込んだ分を取り戻そうと気の済むまで矢を射ると予想以上の出来にほっと一安心した。
今日はここまでにしようと胸当てと?を外し棚に弓を掛けようとしたとき、良く見ると弦が緩んでいた。
(ちょっと、練習し過ぎたかしら?)
あとで離れで直そうと矢筒と弓を持ち道場から出た。
一区切り付いたと乙羽に一声掛けようと渡り廊下を歩くと、中庭に1頭の栗毛の馬が歩いてるのが見えた。
姫子の愛馬だ。
千歌音は口元を緩め廊下を降りて馬へと近づくと、馬もまた千歌音に気づき近づく。
「もう、また抜け出したのね」
人懐っこく脱走癖のある姫子の馬の鼻筋をよしよしと撫でてやると甘えるように頭を摺り寄せてくる。
口元を見ると手綱を咥えていて、走るのが好きな姫子の馬は馬小屋から脱走するときは必ず口に手綱を咥えている。
遊びに行こうと催促するように千歌音に手綱を渡すが、勝手に下女の自分が主人の愛馬に乗るわけにいかず、馬を操ることも出来ないため「ごめんね、姫子は出掛けてるの」と申し訳なさそうに謝り馬小屋に連れ戻そうとした。
すると突然「きゃああああーっ!!」と屋敷の中から声が響いた。
(何今の…悲鳴!?)
声がした方を見た瞬間、背中にある三日月の痣が突如ビリビリっと疼く。
「うっ…!」
痺れるような痛みで一瞬よろめくが姫子の馬がそれを支える。
(間違いない、この感じ…オロチ!)
そう直感した千歌音は姫子の馬に持っていた手綱を手早く付けてやり、ぎゅっと顔を抱きしめてやる。
「お願い、姫子を連れ戻してきて…!隣の村に行ったの。まだそんなに遠くには行ってないはず。それまで頑張るから…!」
思いを込めてお願いし、首を撫でながら離れると馬は聞き分けたのか前足をあげ声高く嘶き、砂埃をあげ開けた門へと駆けていった。
(姫子が戻るまで何とか持ち応えなきゃ…!)
その姿を見送り気持ちを引き締めたとき、急に背後から視線を感じ慌てて振り返った。
「乙羽さん…?」
するといつの間にそこにいたのか縁側に乙羽が立ちこっちを見ていた。
「だ、大丈夫ですか…!?」と千歌音が慌てて駆け寄ると、乙羽はにっこりと微笑み「ええ、大丈夫ですよ」と落ち着いた様子で返した。
「乙羽さんっ!近くにオロチがいます!早く…!」
慌てて乙羽の腕を掴んで避難させようとするが乙羽は「そんな事よりも…」と遮り、逆に千歌音の手首を掴み引き寄せた。
「いっ…!」
骨が折れるのではと思うほど強く掴まれ小さく声をあげ顔を歪める。
「ダメじゃないですか、病み上がりなのに外に出ては」
ぞっとするほど冷たい氷のような乙羽の声に様子がおかしいと顔を上げた瞬間、赤く光っている乙羽の目の奥にゆらゆらと動いてる蛇のような物が見えた。
「お、乙羽さんまさか…あああぁぁーーっ!」
全部言い切る前に今度は「こんなに冷えちゃって」と手首をぎりぎりと捻り上げられ絶叫する。
目尻に涙を浮かべ叫ぶ千歌音に、乙羽はにいっと口端を緩めた。
「私の部屋で、じっくり看て差し上げますからね――」
***************
「……!」
突然胸の痣がズキン!と疼き足を止めた。
(何…?この感じ…!)
胸元を押さえ以前も似たような疼きを感じたことがあった気がしてならない。
「そしたらイズミがね、姫様…って、どうされました?」
話してる途中で立ち止まり、来た道を振り返っている緊張した様子の姫子に声を掛けた。
「すぐ戻るわよ、真琴」
「え?え?わわ!」
「胸騒ぎがするの、早く!」
訳が分かってない真琴の腕を掴んで急ぎ足で戻ろうとするが、突如行く手を遮るように人影が現れる。
「こんにちわ、陽の巫女」
「あー!あんたいつぞやのオロチ!」
目の前に現れたコロナに驚きながら真琴が指差す。
「確か四ノ首の……あら?名前なんだっけ?」
さっと身構えるが名前が思い出せず首を傾げた姫子に思わずコロナはずっこける。
「く…!コロナよ!コ、ロ、ナ!!これでも都じゃ有名なんだから!これだから田舎もんの小娘は!!」
「ちょ!あんたねえ!姫様に向かって何て口叩いてんのよ!!」
コロナの言葉に怒った真琴が飛び掛ろうとした瞬間、コロナの目が赤く光るのが見えた姫子が慌てて「ダメ!真琴!!」と腕を伸ばすが届かない。
「うるさい!雑魚は引っ込め!」
「きゃあああー!」
「大丈夫!?真琴!」
腕を払い風圧で吹き飛ばされた真琴に駆け寄って抱き起こし、キッと睨むがコロナは「ったくどいつもこいつも本当に気に食わないわ…」と言いながら睨み返してくる。
「悪いけど昨日からちょっと機嫌が悪いのよ、私は。…時間稼ぎだけだって言われてたけど気が変わったわ」
「時間稼ぎ…?って事はまさかあの依頼状は…」
「偽物って事よ」
ぶつけた頭を押さえながら言う真琴を立たせ、姫子は分かりきってるようにさらっと言い退けた。
「ご名答、さすが陽の巫女。察しが早くて助かるわ」
「つまり…私はまんまと誘きだされたって訳ね」
不自然だとは思っていたが悔やんだところで現況が変わる訳ではない。
良く考えれば分かることだったのに自分の迂闊さにぎりっと奥歯を噛み締めた。
「そういう事、月の巫女からあんたを離せれば良かったの。
でも今更それに気づいても遅いわ。ここから先へは行かせないわよ陽の巫女。あんたはここで私が――」
コロナから涌き出る赤黒い瘴気に姫子と真琴もそれぞれ護身刀を取り出し身構える。
「――ぶっ殺す!!」
続