付け加えの注意書き
1.エロあり
2.全員性格がおかしいです。あと言葉遣いはごめんなさい状態。
3.今回はバトル有り、拙いけど。武器は正直申し訳ない。ロボは出ません。
4.レーコロ好きは見ない方が無難。
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「きゃあっ!」
ずるずると乙羽に引き摺られながら乙羽の部屋に連れていかれた千歌音は部屋に入るなり弓を取り上げられ背中を強く押された。
そのまま勢いで広々とした部屋の真ん中に敷かれている布団に足を取られドサッ!と前のめりに倒れこみ、腰に提げていた矢筒から矢が零れる。
起き上がらなくてはと慌てて仰向けになるも、それよりも先に乙羽に強く押し倒されそのまま口を無理やり重ねられる。
「ん!?んふぁ!…ん、ぅむ!んぁ!」
驚き頭を振り必死に離そうとすると、結んでいた紙紐がパラっと解け千歌音の長い髪が布団に広がる。
必死に乙羽を退かそうともがくが、圧し掛かる乙羽の体は尋常じゃないほど重くビクともしない。
「っはぁ!お願いやめて!目を、目を覚まして乙羽さん…!!」
何とか口付けから逃れ訴えるが操られていると思われる乙羽は全く耳を貸さない。
両の手首を抵抗する間もなく解けた髪紐で拘束され片手で押さえつける。
自分を見下ろす目つきもいつもの穏やかなものではなく、血に飢えた獣のようだった。
「こんなの嫌っ!お願いやめ―――つっ!」
いつまでもいやいやと喚き大人しくならぬ千歌音に乙羽が無言でパシィ!と頬を叩いた。
一瞬何をされた分からなかったが、口の中が切れ口内に広がる血の味とじんじんと熱くなる頬の痛みで目頭が熱くなる。
「フフ。ダメですよ、じっとしていなくちゃ」
大人しくなった千歌音に薄ら笑いを浮かべるとその見たことも無い乙羽の笑顔に体が硬直する。
(違う…乙羽さんはこんな事…!)
しかし頭でそう思っていても迫り来る恐怖に体中が震えてどうにもならない。
「これは、診察には必要ないわね」
蛇に睨まれた蛙のように動かなくなった千歌音から提げていた矢筒を取り払った。
残っていた矢も取り上げられ完全に丸腰になりどこか心許なくなる。
「さて、どこから看て上げましょうか?」
息が掛かるほど顔を近づけられ、思わず目を閉じ顔を逸らしてしまう。
恐怖で口が震え、両目から涙が溢れ出る。
「た、助け…んんっ!」
小さく助けを求める声も乙羽に顎を掴まれ再び口を塞がれ封じられてしまう。
そのまま強引に口を割られ、ぬるっとした乙羽の舌が千歌音の口内に入り込む。
「ぁむ、はぁ…っ…ん…!」
舌を無理やり絡めさせられ呼吸も許さぬような濃厚な口付けを受ける。
息苦しくて眉間に皺を寄せ離そうとするが顎をしっかりと抑えられていて儘ならない。
ようやく乙羽が口を離すと、千歌音は咽ながら呼吸を整える。
頬を染め口の端から垂れてる互いの唾液を拭うことも出来ず肩で息をする姿に笑みが止まらない。
「誰も助けに来ないわ、皆気持ちよく眠ってもらってるもの」と耳元で楽しそうに囁いた。
「そんなどうし…やんっ!」
口答えしようにもそのままかぷっと耳を甘噛みされ甘い声が出てしまう。
「良い声、敏感なのね」
「っ…!」
乙羽の言葉に恥ずかしくて声を漏らすまいと唇を噛んで耐えようとする。
それを嘲笑うように耳に息を吹きかけ何度も軟骨を噛み、時折ねっとりと舐めてやる。
乙羽の息遣いが嫌というほど聞こえ、震えと涙が止まらない。
「だから、心行くまで楽しみましょ」
首筋を口付け体を起こし千歌音が耐えている隙に上着を強引に引き剥がすと仰向けでも形の良い豊満な2つの乳房がぷるんと外に晒される。
揺れる胸には真新しいと思う赤い小さな花が散りばめられている。
姫子との、愛の証。
「へえ、これはこれは…」
「やぁ!見ないで…あぁ!!」
胸に熱っぽく向けられる視線に顔を赤らめ身を捩るが、押さえつけられているため意味は無く、ぐにゅっ!と強く鷲掴みされた。
「昨晩も陽の巫女とお楽しみだったのね?」
痛みで仰け反る千歌音を無視し胸を上下左右に揉み扱く。
(陽の巫女…やはり誰かに操られてる…!)
さり気無く言った乙羽の言葉を千歌音は聞き逃さなかった。
しかしそう確信し歯を食いしばり耐える千歌音の意思とは裏腹に胸の突起は徐々に固くなり自己主張していく。
それを乙羽の指の腹でくりくりと擦られ、十分固くなった時きゅっと摘まれた。
「んん!…あぁん!」
走ったぴりりっとした刺激に懸命に耐えていた甲高い声が出てしまう。
艶かしさが増してきた声にニヤリと乙羽の口端があがる。
「美味しそうな果実…」
舌なめずりしながら胸をぎゅっと絞り千歌音の固くなった蕾に口を近づけ大きく開いていく。
桜色の先端に生温かい息が掛かり、千歌音は目を大きく見開いた。
「いや…いやああああああーーー!!」
桜色の先端に乙羽の生温かい舌が触れた瞬間響いた千歌音の悲鳴。
その声を覆い隠すように屋敷の上の空はどんよりとした雲に覆われていた。
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「うぅ…!」
突然胸の字が痛み、胸元を押さえチラッと黒い雲に覆われている村のほうを見た。
(間違いない、千歌音が襲われてる…!)
一刻も早く屋敷に戻らねばと焦る姫子は戦いに集中できないでいた。
「姫様っ!」
「っ!」
真琴の声に顔を上げるとコロナの投げた数本の簪が自分に向かって投げられていることに気づき寸でのところで躱した。
しかしギリギリで躱した為、着物を袖をざっくりと切り裂いた。
気ばかりが先走る姫子に慌てて駆け寄り落ち着かせるように肩に手を置く。
「姫様ダメです、今は戦いに集中しないと…」
「…分かってる!」
しかし防戦一方で打開策を見出せず、気ばかりが焦る。
「もうじれったいわね!とっとと殺られなさいよ!」
気が立ってるコロナは休む暇を与えず更に簪を投げ付け、 散り散りに飛んで避けた。
だがあくまでコロナの標的は姫子でどんなに真琴が牽制しても執拗に姫子だけを狙う。
姫子も懸命に避けながら何とか反撃のタイミングを図るが、しかしまた胸の痣が痛み一瞬足がよろめいてしまう。
「危ない!姫様っ!!」
「っ!?」
その瞬間を逃さなかったコロナが姫子との間合いを詰めすぐ目の前まで来ていた。
真琴が間に入ろうと駆け出すがとてもじゃないが間に合わない。
(不味い避けられない…!)
しかしそう思った時には時すでに遅し。コロナに着物を掴まれそのまま地面に叩きつけられた。
「ぐっ…!」
胸を強く打ち息が詰まる。
起き上がる間もなく胸倉を掴まれコロナに軽々と持ち上げられてしまう。
目線が同じ高さになり、半目を開くと勝ち誇ったコロナの顔が見える。
「ふふ、やっと捕まえたわよ」
そう言って先のよく尖った簪を取り出し喉に突きつけられた。
何とかしようにも体が痛くて動けず、自らの窮地に体が強張る。
「バイバイ、陽の巫女♪」
勝利を確信し満面の笑みを浮かべ簪を力を込めたとき、姫子はぎゅっと目を瞑った。
「――!」
しかしコロナの簪が姫子の喉を貫こうとした瞬間、木の陰からコロナに向かって何かが投げ込まれ咄嗟にコロナは後ろに跳び、手が離された姫子は地面にどさっと落ち真琴がすぐさま駆け寄る。
「大丈夫ですか!?」
「…え、ええ。…でも一体誰が?」
「誰よ!!」
不快さ丸出しで投げ込んできた木の方に向かって吼えると、その場に居た全員の視線がそこに注がれる。
「邪魔させてもらうわよ」
「レーコ!?」
木の影から現れたのは五ノ首のレーコだった。
新たなオロチの出現に慌てて身構える2人だが、眼鏡の奥のレーコの視線は鋭くコロナに向かれている。
「心配しなくいい。私が用があるのは69位の方だから」
「68位よ!それよりノコノコ現れてきて一体どういうつもりよ!」
「貴女の相手は私がしてあげる」
「あんた、まさかオロチ(私たち)を裏切るつもり…?」
「…かも知れないわね」
殺気立ちながら睨みあう両者。
場に付いていけず完全に蚊帳の外の2人は困惑する。
「…ど、どうなってんの?」
「わ、分かりません…。あ!姫様!お馬が!」
「え?」
真琴の指差すほうを見ると、手綱だけをつけた愛馬がこちらに向かって駆けてきている。
真琴の手を借りて立ち上がった姫子の前に着くと落ち着かぬようにぐるぐると姫子の周りを回り、後ろから頭を何度も姫子の脇に潜らせてくる。
それはまるで早く背に乗るよう急かしてるかのようだった。
「早く自分の屋敷へ戻りなさい」
「え?」
コロナと睨みあったままのレーコが短く言う。
「早く戻らないと、月の巫女が大変なことになってるわよ」
「……っ」
「姫様!急がないと…!」
また罠かもしれない…でも今は迷ってる暇は無い。
そう思うや組んだ真琴の手を台にし愛馬の背に飛び乗る。
「真琴、私は屋敷へ戻るから大神先生のところへ行ってもらえる?」
「はい!」
「逃がさないわよ!」
コロナが走りだそうとした姫子と真琴に向かって簪を投げつけるが、レーコが姫子の前に素早く移動しそれを全て払い落とす。
「ちょっとレーコ!邪魔しないでよ!」
「あ、ありがとう…」
敵だったはずの相手に礼を言うのもおかしかったが、思わず姫子の口から感謝の言葉がもれた。
しかしレーコは表情を変えずチラっと姫子を見てすぐ前を向く。
「別に陽の巫女(貴女)を助ける訳じゃない」
「え?」
「月の巫女を私が助けても貴女が傷つくと月の巫女が悲しむから。ただそれだけ」
元々コロナと違って感情を表に出さないレーコ。さらに淡々とした口調のせいで感情まで読み取れはしない。
しかし言葉の意味に姫子は困惑してしまう。
レーコと睨みあっているコロナも僅かに顔を顰めている。
何て返せばいいのか迷っていると「姫様!早く!」と真琴に促され、結局言葉を掛ける事無く姫子は馬を走らせその場から去った。
「レーコ、まさか月の巫女に情が移ったとでも言うつもり?」
地を蹴る蹄の音が遠ざかっていき、レーコと2人きりになったコロナは静かに問う。
「…さあ」
「白を切るつもり?」
「貴女が私に勝てば、教えてあげる…」
そう言ってレーコは口を閉ざし、両指に彫刻刀を構えた。
「………これ以上は問答無用って事ね」
さっきまで強気だったコロナが少し淋しげな目でレーコを見た。
しかしそれでもレーコは表情を変わらない。
しばらくの沈黙の後、コロナは諦めたように溜息をつき自分もまた両指に簪を構えた。
「行くわよっ!」
「……っ!」
味方同士だったはずの両者が激しくぶつかり合ったとき、ポツポツと空からは雨が降りはじめた。
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徐々に雨の音が強くなり、本格的に降り出そうとしていた。
雨が瓦を叩く音と、ちゅぱちゃぱと大きな音を立てながら胸をしゃぶる音がいやらしく響く。
「はぁ!…んあ、ああ!やぁ…」
乳首を強く吸われ乳房は形が歪むほど揉まれ、拒みながらも時折喘いでしまう千歌音。
それが逆に相手を楽しませていることに姫子との交わりしか知らぬ千歌音は分かるはずも無い。
「んああぁぁー!!――んむぅ!ん、ん、んぁ」
カリッと乳首を不意に歯を立てられ痛くて大きな声を上げるが、その口を再び乙羽の口によって封じられる。
さらに噛まれて痛む乳首を指で摘まれ、痛くて涙が止め処なく零れる。
しかしその痛みと同時に体に何かが登りつめていき背筋がぞくぞくして疼いてしまう。
それに気付いた乙羽が口を離すと、千歌音はくたぁっと脱力してしまう。
もう抑えられている腕に力は入らず千歌音に抵抗する力はもうほとんど残っていない。
「はぁ、はぁ…もう、もう止めて…」
痛くて苦しくて。
操られていると分かっていてもお願いだから届いてほしい…そう切に思いながら虚ろな目で哀願する。
「なぜ?まだまだこれからなのに」
「…やあぁん!だ、めえ…!!」
千歌音の股の間に手を入れ袴の上から秘所を手の平全体で撫でた。
途端千歌音の足が突っ張り大きくビクビクと下腹部が大きく反応する。
袴の上からでも分かるぐらい其処は熱を持ち潤いを持っているのが伝わる。
「凄いわね、私相手でもこんなに濡れてるだなんて。ぐしょぐしょじゃない。そんなに感じた?」
罵りながら袴の帯を解きはじめた乙羽に「はぁ!…く!ち、違うっ…!」と首を左右に振り震えた声で言う。
「貴女は…貴女は乙羽さんじゃないっ!」
自分の知る乙羽はこんな事などしない!と言うように怒り露にキッ!と睨みつけた。
「フフフ、反抗的な目だこと。でも残念、私は乙羽よ。貴女の良く知ってる如月乙羽」
「違う!乙羽さんは優し…いやああ!」
微笑み袴に手をかかり間髪いれず一気に脱がされ千歌音の短い抗議の声が響く。
履いている足袋の色と同じくらい真白いほっそりとした足、覆うものがなくなり剥き出しになった秘所がどんな状態かは考えたくもない。
(ダメ、どうにもならない…)
抵抗する気力をも使い果たし、肩で息をする千歌音の目からはただ涙が零れる。
「良い顔、もっと良い顔を見せて頂戴」
満足げにくびれた腰の曲線を撫で大人しくなった千歌音の閉じていた足を開かせた。
そして千歌音の下腹部へ顔を近づけようとした時途中で体を起こし外の方を見た。
「あら残念、お邪魔虫が来ちゃったわね」
途中雨に打たれながらようやく村へとつき屋敷の門を抜け、中庭まで進み馬から飛び降りた。
「お前は大神神社へお逃げ」
そう愛馬に告げ姫子は護身刀を鞘から抜き、草鞋を履いたまま静か過ぎる屋敷の中へと入るとあちこちに下女が倒れている姿が見えた。
(眠らされてる…)
その内の1人に近づき確認すると、不穏な空気が一番漂う乙羽の部屋へと一目散に走った。
自分の勘が間違っていなければそこにオロチは居るはず。
渡り廊下へと出て走り乙羽の部屋の前へと着く。
ガララッ!!
「千歌音!乙羽さん大丈夫!?……一体何をしてるの?」
勢いよく襖を開き、自分の目に飛び込んだ光景に愕然とした。
広い部屋の真ん中、乱れた着物の姿の乙羽が両手を縛られ下半身裸で上着だけを羽織っただけの千歌音を布団の上で抱き締めている。
涙でぐしゃぐしゃの顔で、涙が流れすぎて赤く充血した目の千歌音が痛々しい表情で自分を見ている。
一体何が起きたのかと理解しようとすればする程どんどん心拍数が上がっていく。
「うふふ、見て分からない?姫宮さんとお楽しみ中だったの。ねえ?」
「うぅ…あぁぁ!」
見せ付けるように千歌音の生の乳房を揉むと千歌音の口から悲鳴にも似た喘ぎ声が出る。
「あともうちょっとで気持ち良くさせてあげれたのに、フフフ」
煽る乙羽に全身の血が一気に遡る。
「っ!いいから千歌音を離して!!」
「ええ、いいわよ」
「きゃあ!」
頭に血が上る姫子を鼻で笑いながら立ち上がり千歌音の背中をドンと蹴った。
前につんのめる千歌音に姫子はすぐさま腕を取り抱き留め乙羽と十分間合いを取る。
とりあえず着ていた上着をかけてやり頬に張り付いてる髪を梳いてやりながら「大丈夫?」と問うと千歌音は姫子の胸でコクリと小さく頷いた。
「貴女自分が何したのか分かってるの!千歌音は貴女の事を信頼して――」
「ダメ姫子、乙羽さんは操られてるだけなの…!」
「え?」
怒りで我を忘れてしまいそうな姫子に千歌音が胸元を掴み止める。
すると乙羽の様子が一変する。
コロナが怒りを顕にしたと同じく体中に赤黒い瘴気を漂わせる。
『フフフ、そうよ。月の巫女――』
「っ!その声は…」
「ニノ首…」
乙羽の声に重なってミヤコの声が聞こえ、姫子と千歌音はハッと目を大きく見開いた。
千歌音の脳裏に血の気が引くような悪夢が甦る。
『お久しぶり、陽の巫女。相変わらず元気そうで何より』
「……全て貴女の仕業だったのね」
そう考えると全ての辻褄が合う。
重なるミヤコの声に冷静さを取り戻していく。
千歌音を庇うように乙羽に少しだけ背を向け、震えている千歌音を座らせた。
乙羽を警戒しながら固く結ばれた髪紐を刀で切りつつ小さな声で早口で言う。
「…千歌音、この部屋のどこかにオロチが隠れてるはず。私が時間を稼ぐから見つけて。一緒に乙羽さんを助けるわよ、いい?」
乙羽を助けるという言葉に千歌音は表情を変え相手に悟られぬ決心したように小さく頷いた。
乙羽を救いたい気持ちは姫子と同じだった。
目の色が変わった千歌音に一瞬だけ笑みを送り、姫子は再び片手で護身刀を構え乙羽と向き合う。
「返してもらうわよ、乙羽さんの体――」
『どうしようかしら?返してあげてもいいけど結構気に入ったのよね、このお嬢さんの体』
「なら、力づくでも返してもらうわ」
『どうやって?貴女がその立派な刀でこのお嬢さんの体を斬れば、この美しいお嬢さん自身に傷をつける事になるのよ?』
「……っ」
貴女にそれが出来るのかしら?と小馬鹿にした口調で返す乙羽に怒りで構える手に力が篭る。
楽しんでいる、こっちが手を出せないのを分かっていて。
例えここで乙羽を斬ったとしてもミヤコにダメージを与えることは出来ないはず。
だからこそわざと自分を煽り乙羽を斬らせようと仕向けているに違いない。
そう判断し相手の挑発に乗るのは思う壺だと、自分に言い聞かせ小さく深呼吸をする。
「それにしても随分と回りくどい事をしてくれるじゃない。偽の依頼状まで用意して。
それで自分は直接手を出さず、裏に隠れて他人を操るだなんて小癪な真似してくれるわね。
今回はなぜ巫女とオロチと何も関係のない乙羽さんの体を?」
『何故?フフ、月の巫女を誑かすのにこの女性が丁度良かっただけよ。とっても仲が良かったみたいだったし』
「…神経疑うわ」
『何とでも言ってくれて結構。全ては一ノ首ツバサ様の為。あの方がこの世界を手中にする為なら何だってするわ』
蔑む姫子だが乙羽はそれを誇りだと云わんばかりに言い、興奮しているのか自分の胸を弄り頬を染めうっとりと上気した表情になる。
(狂ってるわね…)
とてもじゃないが理解に苦しんだ。
しかしそう思う姫子が口に出すよりも先に後方から「…可哀相な人」と小さくも良く通る声が聞こえた。
『何…?』
「千歌音…」
ぼそっと呟いた千歌音の声に反応し顔を見ると、憐れむような表情に乙羽は眉を顰め、姫子も構えていた刀をすっと降ろした。
「それで自己犠牲のつもり?貴女のは単なる自己満足に過ぎないわ。そんなんじゃ愛されてる方もいい迷惑よ。
そんな見当違いな事言ってるようじゃ、さぞかし相手にされてないんでしょうね」
『だ、黙れ!お前に何が分かる!』
この場に似つかわしくないほど冷静で落ち着いた声で言う千歌音に図星なのか今までの余裕さを失くし明らかに動揺しながら言い返す。
『相手にされてないだなんてそんな事などない!この世の全てはツバサ様の為に存在する!ツバサ様こそ世界の支配者に相応しい!!だから私は…私は全てを捧げツバサ様に尽くしているのだ!!』
自分の考えは間違っていないと主張するようにダン!っと威嚇するように大きな足音を立て千歌音に近づこうとする。
「ダメやめて!千歌音に近寄らないで!」
これ以上千歌音には近寄らせないと乙羽に飛び掛り肩を掴みあいもつれ合う。
『邪魔をするな!陽の巫女!!』
「あああっ!」
しかしミヤコに操られた乙羽の力はすさまじく、簡単に腕を捻られ力でねじ伏せられてしまう。
手に持っていた護身刀も奪い取られてしまいそうになっている。
(このままじゃ姫子が危ない…!)
その時千歌音の目に乙羽の背後、部屋の一番隅にある化粧台の鏡に映る鬼のような形相のミヤコが見えた。
「っ!!姫子!下がって!」
「!」
『くっ!』
千歌音の言葉に振り返ると千歌音は座ったまま落ちてた弓と矢を取り構えていた。
鏡の存在に気付いた千歌音に乙羽の力が一瞬緩み、姫子はその隙をついて腕を振り払い後ろ跳びに千歌音の横へといく。
『させるかぁーーー!!』
逆上したミヤコが千歌音に向かって襲い掛かる。しかし千歌音が弓を射るほうが早い。
パキィィィーン!
乙羽の脇腹を通り抜け矢が鏡に映るミヤコの額に突き刺さり、大きな音をたて粉々に割れる。
『ああああああーーー!!』
すると乙羽もミヤコと同じく額を両手で押さえ、耳を劈くような絶叫を上げる。
体からは赤黒い大きな蛇のような瘴気の塊が抜けていく。
『おのれぇ…!月の巫女ぉぉー…!!』
そう叫ぶと瘴気は霧散し、ぴたりと絶叫が止むとぷつりと糸が切れたように乙羽の体は2人の目の前で崩れ落ちた。
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「…どうやら貴方達の計画は失敗に終わったようね」
「…そうね」
ミヤコの撤退を察したレーコの言葉に争うのを止め互いにすっと手にしていた武器をおろした。
「どうする?このまま決着つくまでやりあう?」
「……チッ」
実力はほぼ互角。しかし体力の消耗は前半姫子との戦いい時間を費やしたコロナの方が激しかった。
それを自覚しているコロナは手を握り締め悔しげに舌打ちする。
「覚えてなさい、私達を……私を裏切ったこと絶対に後悔させてやるから!」
憎しみに溢れた眼差しを向けそう捨て台詞を言い残し、コロナはレーコの前から姿を消した。
しかし去る直前コロナの目尻に涙が浮かんでいたのをレーコは見逃さなかった。
「……」
1人残されたレーコは無言で空を見上げた。
気が付くと雨はすっかり止み、太陽は沈みかけ反対側には月が輝き始めていた。
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騒ぎも静まり、来栖川の屋敷が落ち着きを取り戻す頃にはすっかり夜になっていた。
それでも屋敷の被害も怪我人も思った以上に少なかったのは不幸中の幸いであった。
後始末を終え千歌音が休んでいる離れへと着いたとき姫子の脳裏にレーコとの会話が過ぎる。
(あれは一体何だったのかしら、本当に裏切ったように見えたけど…)
結果的に助けてくれたとは言え味方だとも言いきれない。
しかし今はそれを考えるよりも心身ともに傷ついた千歌音を癒してやらねば。
そう思い襖を開け入っていった。
「姫子…乙羽さんは?」
自分の訪れを待っていた千歌音は心配げに尋ねた。
「大丈夫よ、酷く疲れてたけど意識もしっかりしてるし。でもやはり操られていたときのことは全く覚えてないみたい」
「…そう」
操られていたとは言え、互いにとっても記憶がない方が良かったと心底思う。
とは言えそう簡単に忘れられるとは言い難いが…。
俯き目を伏せた千歌音を姫子はそっと自分の胸元に抱き寄せた。
寝衣の袖から覗くほっそりとした手首には痛々しい痣が見えている。
「平気?痛かったでしょ」
労わる様に抱き締め優しく耳元で聞いてやる。
暖かな姫子の温もりに包まれると心が落ち着くのが分かる。
包み込む姫子の柔らかくて暖かい手に自分の手を重ねた。
「姫子、あのね…その…」
「分かってるわ、乙羽さんに何があったか話すつもりはないわ」
千歌音が全て言い切る前に姫子は優しく言う。
真実を知れば優しく責任感の強い乙羽の事である、きっと自分たちの前から姿を消してしまうだろう。
しかしそれは好ましい事とは言えないし、姫子も千歌音も望んではいない。
そもそも乙羽は加害者ではなく千歌音と同じく被害者である。
「怖い?」
「いいえ、大丈夫」
憎むべき相手を姫子も千歌音も互いに理解している。
「一刻も早くアメノムラクモ復活させましょ、今日みたいなことが2度と起きないように」
「…うん」
自分の胸元で笑顔で頷く以前に比べたくましくなった千歌音の額に優しく口付けた。
終