優春

神無月の巫女 エロ総合投下もの

優春

 

天火明村(あまほのあかりむら)。この自然が豊かで静かな村に何か特徴があるとするなら、
いにしえからの伝承が数多く伝えられている事と、
村の面積の多くを「姫宮」という地元の名家が所有している事だろう。
その姫宮家の邸宅は地方の旧家としては珍しく本格的な洋館で、その規模は庶民の感覚からはかけ離れた巨大な屋敷だった。
しかし、今この家にはまるで人の気配が感じられない。
これだけの屋敷を管理するには相当の数の人間を雇わなければならないはずだが、
まるで雨の日の墓地のように不気味に静まり返っていた。
それでもまったくの無人というわけではなかった。現在この屋敷には二人の少女が居住している。
一人は館の主である姫宮千歌音。もう一人は元は客人であった来栖川姫子。
二人は無二の親友であると同時に、世界を破滅から救う使命を背負った「月の巫女」「陽の巫女」
として肉親以上の強い絆で結ばれていた。
しかし困難を乗り越え、使命を果たしたとしても、その後の自分を待っているのは
姫子のいない底知れぬ暗闇だけという事実に絶望した千歌音は狂気へと走り、
世界を滅する邪悪である「オロチ」へと転じてしまう。
闇の住人となった千歌音は姫子を凌辱し、姫子の危機に駆けつけた学友・大神ソウマを一蹴した。
今の千歌音にとってソウマは命を奪うだけの価値すらない無力な虫けらにすぎず、
巨大な邪神のしもべ「タケノヤミカズチ」を使って彼を敷地から放り出すと、千歌音は姫宮の領地を囲む結界を張った。
これで屋敷へは千歌音の認めた者しか出入りできなくなる。
姫子はこの館に囚われ、千歌音も外に出ることはなくなった。
オロチとしての勤めを果たすためか屋敷から姿を消すことはあったが、いつの間にかいなくなり、
いつの間にか戻っているといった次第で、門から外へと出かける様子はみられない。
こうして不可視の結界に守られた姫宮邸への人の出入りは途絶え、
村人はもちろん、千歌音と姫子を訪ねて来た者さえ門扉の前に立つだけで異様な空気に気圧されてしまい近づかなくなっていった。
世界は救世の巫女を失い滅亡へと転がり始めていく。
そしてこの外界とは隔絶した屋敷で、使命を放棄した千歌音と、放棄させられた姫子の二人は彼女たちだけの暮らしを始めた。

姫宮千歌音は自室で本を読んでいた。だが彼女がこの部屋を使い始めたのはつい最近のことである。
もともとの自室は千歌音と大神ソウマとの争いの際に破壊されてしまった。
今では片づける者もいないのでその部屋はそのまま廃棄された形になっている。
そのため滞在する客のために用意したあった空き部屋を代わりの私室として使用していた。
無心に本の文面を追っている様子の千歌音だったが、実は彼女の意識は背後にいる人物に向けられていた。
先ほどから半開きのドアの向こうで、部屋の中に入ろうか何十分も迷い続けているオドオドした少女。
「ち、千歌音ちゃん、あの……相談があるんだけど……」
千歌音が読んでいた本を閉じた時、ようやくその少女――来栖川姫子は部屋に入り声をかけてきた。
「相談って、何かしら?」
千歌音は椅子に座ったまま後ろを振り返り姫子を見る。
「あの、あたし最近体の調子が良くなくて、それで、あの……」
「あら、それはいけないわね。私の家のかかりつけの医者に来てもらいましょうか?」
「う、うん。お願い!」
ホッとした表情の姫子に千歌音は感情の読めない笑みを浮かべる。
「もっとも、最終的には医者に診てもらうとしても、もっと手っ取り早い方法があるわよ」
「えっ?」
千歌音は椅子から立ち上がると、部屋のはしの机へと歩いていく。
以前の自室にあった机にくらべるとはるかに小さいが、それでも「女子高生が使う」というイメージからはほど遠い豪華な品だ。
彼女は机の引き出しから小さな紙袋を取り出すと、姫子の前まで歩いて行きそれを手渡した。
「もし必要なら、これをお使いなさい」
いぶかしげな顔で袋を受け取る姫子が封を開ける。中には小さな紙の箱がひとつだけ。
それを袋から出して箱の正体を確かめた姫子は「ヒッ」と小さな悲鳴をあげた。
「妊娠検査薬……?」

「あなたの相談って、このことではないのかしら?」
「そんな……わ、私、違、ちがう…」
「そんなに動揺してて違うもないでしょう。いつもの姫子だったらこんな時、
顔を真っ赤にして『もう、冗談はやめてよ』とか言ってくるのではなくて?」
「うっ……」
姫子は言葉につまった。ここまで確信を持った態度で言われてしまっては、ごまかしようがない。
「その……ずっと生理が来なくて、あたし規則正しい方だったのに。そ
れで本で調べたら赤ちゃんができた時の症状にあてはまってるし……」
「ふぅん」
こんな重大な告白をしているというのに、関心のなさげな千歌音の反応で
かえって感情をたかぶらせた姫子は一転して早口で言葉をまくしたてた。
「で、でもそんなことあるわけがないの! ソ、大神君とはキスまでしかしてないし…」
「でも姫子だって処女ってわけじゃないでしょう?」
「そ、それは千歌音ちゃんが無理矢理あたしを……!」
姫子の脳裏に凌辱の忌まわしい記憶がよみがえる。
「でも姫子が体を許したのは私一人なんでしょう? だったらあなたのお腹の子は私の子供よね」
千歌音の思いがけない言葉を、姫子はどう解釈していいかわからず、次の言葉を発することができなかった。
今、自分の体におきている異変について姫子はすでに答えを出していた。
世の中には「想像妊娠」というものがあるらしいから、異変の正体はおそらくそれだろう。
しかし陽の巫女となってからは様々な危険に翻弄され、命まで何度も狙われてきた身としては、
意識を失っている間に何かがあったという最悪の可能性もある。
だからそんな不安を払うために一応の検査を受けようと、
千歌音に姫宮家かかりつけの秘密を守れる医師を紹介してもらおうというのが姫子の相談の内容だった。

ところが話を聞いた千歌音は姫子の懐妊をあっさり認めただけではなくそれが自分の子であるとまで言う。
女同士の交わりでできた子供――そんな悪質な冗談としか思えないことを、
確信のあるような口調で言われて姫子はただ混乱するしかなかった。
まさかお嬢様育ちの彼女は子供の作り方も知らないのではないか、そんな事さえ考えてしまう。
「そんな、だって私も千歌音ちゃんも女の子同士だよ。そんなはずないよ。これは何かの間違いなの! 
だから間違いだって確かめるために検査がしたいの!」
「姫子、忘れたの? あなたは世界を救うはずだった陽の巫女、私は世界を滅する力を持ったオロチ。
私たちの存在はすでに常識の物差しで測れるものではないのよ」
「……」
「何もない空間から巨大なロボットを召還するのと同性で子供を作るのと、
事情を知らない人間が聞いたらどちらもバカげた冗談としか思えないでしょうね」
「千歌音ちゃん……」
「どうして子供ができたのか理屈はわからないわ。でも理由ならわかる。それを私が望んだから」
もう姫子には反論の言葉もなく千歌音の言葉を聞く事しかできない。
「姫子、本当はあなたが妊娠していたこと、言われる前から気づいていたの。
妊娠検査薬なんてものが私の机にあったのもそれを知っていたからよ。
これもオロチの能力なのかしら? なぜかわたしにはわかるの。
目に見えなくとも人が聴覚や触覚で風の存在を認識できるのと同じように、私には姫子の体に何が起きているかわかるのよ」
「私のお腹の中に千歌音ちゃんの赤ちゃんが……」
姫子のかたく握られた手のひらの中で妊娠検査薬の紙箱が無惨につぶれていく。
ショックで千歌音の言葉も、耳鳴りのように遠くで何かがうねっている風にしか聞こえない。
「もうやめて! 聞きたくない! 千歌音ちゃんは嘘をついているのよ。私の困った顔を見るのが楽しいんだわ! 
今の千歌音ちゃんはオロチだから平気で嘘がつけるんだ!」
姫子は顔を上げると、千歌音を見つめて発作的に叫んだ。

「いいえ、オロチになってからの私は嘘をついたことは一度もないわ。
むしろ以前の私の方が嘘ばかりついていた偽善者だったのよ。社交界の名士に囲まれた空虚な誕生会に喜んでみせたり、
あなたと大神君の仲を取り持とうとしたり。
今思えばなんて愚かだったのかしら。
あなただって本当は私が嘘をついているかいないか、わかっているのでしょう? ただ認めるのが怖いから否定しているだけで」
「私は、私は…」
貧血を起こした時のように体は平衡感覚を失い、まっすぐ立っていることが出来ない。
ひざから力が抜けてその場に崩れ落ちそうになる姫子の体をすばやく千歌音の腕が伸びて支える。
「姫子! 気をつけて」
「あたし……もう、わからないよ……なにがなんだかわからない。もう、もう……あたし、どうしたらいいの?」
それまでこらえていた涙がせきを切ったようにあふれ出す。大きな瞳から涙の粒が次から次へとこぼれてカーペットにしみを作った。
「あなたがどうしたらいいかは私が教えてあげる。姫子、あなたは私のそばにいればいいの」
千歌音は身をかがめて自力では立っていられない姫子をそっと床に座らせた。
「私を愛してくれなくていい。私を憎んでくれていい。その方があなたも楽でしょう? 
ただ世界が滅ぶまでの時間をこの暗闇の底で私の隣にい続けてくれればいいの」
うつむいていた顔をゆっくりと上げて姫子は潤んだ瞳で千歌音を見上げる。
「あたしたち、もう世界を救うことも、平凡だけどそれが幸せと思えた頃に戻ることもできないの? 
もう何もかも取り戻すことはできないの?」
「そうよ姫子、過ぎた時間を巻き戻すことは……できないわ」

胸の奥からこみ上げてくる感情に声をふるわせる姫子の瞳を、千歌音は迷いのない澄んだ目で見つめ続けた。
見下ろす千歌音の顔がゆっくりと近づいてくる。姫子はそっとまぶたを閉じて唇と唇が重なる瞬間を待った。
千歌音の裏切りを許したわけではない。それでも姫子は罪人に堕ちた彼女のキスを拒まなかった。
それは自由を取り戻すことをあきらめたからか、それとも「一緒にいたい」
というあまりにも小さな願いさえ大罪と引き替えでなければ手に入れられなかった少女が哀れに思えたからか、
姫子自身にもわからなかった。
唇を割って口内に侵入してくる他人の器官におびえるように縮こまる姫子の舌に千歌音のそれが追いすがり、からみつく。
「んっ……」
下に降ろしていた姫子の両手がおずおずと千歌音の背後にまわり、背中を抱きしめた。
千歌音は唇を離すと甘い息を吐く。そしてそのまま姫子の体を押し倒した。
「姫子……」
長い黒髪が美しい少女は同性の恋人のブラウスのボタンを手際よく外していき、服の前を大きく開く。
飾り気のないシンプルな下着に覆われた控えめな胸の隆起。その中央に外の肌とは色の異なる部分がある。
陽の巫女の刻印。もしこれがなければ彼女たちは仲のいい友人同士で終わっていただろう。
これがあったから二人はより近づき、より近づいたから歯止めを失い破滅へと転落した。
その刻印に千歌音は唇を寄せる。そしてキスの跡で刻印を見えなくしてしまうかのようにその周囲に何度も何度も口づけをした。
「姫子、少し背中を浮かせて」
「うん」
千歌音の意図をさとった姫子は頬を染めながら従う。
千歌音は上体をわずかに持ち上げた姫子の背中の下に手を入れると、
見えないにもかかわらず器用にブラジャーの留め金を外し、相手の体から取り去った。

再び姫子の体を床に寝かせると千歌音は露わになった胸に手をのばす。
柔らかい肌の感触を味わいながら、膨らみのふもとから頂へと指がはいあがっていった。
指の動きが胸の頂点にある縮こまった薄紅色の乳首に達すると円を描くようになでていく。
「あっ……」
姫子の口から甘い声が漏れる。今度は人差し指と親指の間に乳首を挟み揉みこむように刺激を加えた。
「姫子、気持ちがいいの? 胸の先、固くなってるわ」
「ああっ、そんな……」
自分の体の恥ずかしい反応を指摘されて姫子は顔を横に向けた。
千歌音はそのまま指での愛撫を続けながら、もう一方の乳房に口づけをする。
「あぁ……」
色の薄い乳輪の周りに五回、六回とそれを繰り返す。こちらはまだ充血してない乳首を上下の唇で挟み込む。
すると唇に乳首が固く、立ち上がっていく感触がはっきりと伝わってきた。
「う、んんっ」
気を抜くとあられもない声が漏れてしまいそうで姫子は口を閉じたまま顔を左右に振って快感に耐えた。
「フフッ、まだ母乳は出ないのね」
ようやく乳頭から口を離した千歌音は淫蕩な表情で微笑む。
その千歌音の手が胸から腹へとすべり降りていく。かわいらしい臍の横を通って下腹へとたどり着いた。
「ここに私と姫子の子供がいるのね」
だが二人の間に子ができたからといって、今更世界を救う月の巫女に戻れるわけでもない。
この子が産声を上げる前にこの世界は滅ぶだろう。
二人には過去も未来もなく、今、この時しかないのだ。
ままごとのような家族ごっこをしている自分たちを想像してみてもそれは幻にすぎない。

感傷を断ち切って千歌音は指を下腹からさらに下へと降ろしていく。
スカートの側面のファスナーを下げてそこから手を入れる。
「あら、姫子の下着、湿っているわ。胸を愛されただけで、もう欲しくなったの?」
「い、いやぁ、恥ずかしいよぉ~」
「恥ずかしがる必要はないわ。ほら、私だって……」
千歌音は姫子の手をとると、それを自分のスカートの下へと持っていった。
「うわぁ!」
姫子は指先に伝わる感触に思わず驚きの声を上げた。
千歌音の下着は湿っているどころではない。布越しだとは思えないくらいその部分はぬるぬるとしていた。
目の前のりりしい顔立ちの少女がまるで淫乱女のように欲情している。
それが信じられず姫子は再度確かめるように指を動かした。
「あっ!」
その途端、千歌音の体が電気に触れたようにビクッと震えた。
「千歌音ちゃん……」
姫子の指がさらに激しく動く。濡れた下着の中央に走る縦の裂け目にそって上下にこする。
「うぅっ、くっ!、んんっ……」
欲望のままに生きるオロチになった今でも、はしたない声をあげるのに抵抗があるのか、
千歌音は固く目をつむって声が漏れるのを耐えている。
そんな彼女の様子が、少しだけ姫子に意地の悪い気持ちを起こさせる。
それまで布越しに秘裂をまさぐっていた指をいったん横にどけると、下着の脇からその下へもぐりこませ、
直接指先で過敏な器官に愛撫を加えていった。
「あっ! ああっ!」
突然激しさを増した刺激の前に千歌音の自制はあっけなく崩れ、反射的に浅ましい嬌声をあげてしまった。

しかし今度は千歌音が攻勢に転ずる。下着の上からの愛撫をひとまず止めると、指を姫子のショーツの中へと侵入させていく。
恥丘を飾る柔らかな縮れ毛の間を抜け、わずかにほころんだ肉の裂け目にたどりついた。
下着を濡らす乙女の樹液を指にからめ、恥孔の入り口をこする。
「い、いやっ! ダメェェッ!」
性的な経験は少ないが元々豊かな感受性を持っていたらしく、姫子は下腹部からこみ上げてくる官能に敏感に反応して体を震わせる。
主導権を取り戻そうと姫子は指を千歌音の秘裂が始まる部分に身を潜めている肉の突起へと移動させた。
クリトリスを保護する包皮の上に指の腹をのせて、そこを優しくなでさすっていく。
「くうっ、うぁぁ……」
女体の中でもっとも敏感な器官なだけに痛みを与えないよう注意しながら巧みにバイブレーションを加えると、
陰核が充血してみるみる固く膨らんでいく。
「ひ、姫子、そこは……」
快感の中枢を直に刺激されて、痺れるような感覚が背筋を駆け上がる。
全身の力が抜けてしまいそうになるのをなんとかこらえると、千歌音は姫子の膣口を愛撫していた指先をさらにその中へと進ませた。
細い指が潤んだとば口につぷっと侵入する。
「あぁっ、指、入れちゃ、ダメッ!」
「姫子こそ、私、そこをさすられると……あっ、ああっ!」
陽の少女の指は千歌音の制止も聞かず執拗に固くなった肉芽をこすり続ける。
一方、月の少女もピンクの秘孔に激しく指を出し入れさせた。
薄暗い部屋を二人の少女の喘ぎ声と、濡れた肉と肉がこすれあう卑猥な音が支配した。

「千歌音ちゃん、あたし、あたし、もう……」
「姫子、待って、私も一緒に……」
千歌音は肉孔に突き入れた指を二本に増やし、より激しく媚肉をえぐる。
「ああっ! くぅぅ、ダ、ダメェ!」
姫子の体に潜む女の本能が千歌音の指をキュウッと締め付けさせる。
一方、それまでは包皮の上からさすっていた陽の少女だったが、指技をさらにエスカレートさせ、
陰核を覆う皮を剥いて、神経がむき出しになった無防備なクリトリスに直接愛撫を加えた。
「ヒッ! あうっ! ああぁ!」
たまらず千歌音は浅ましい声をあげる。
ついに快感のレベルが限界を越えた。二人の少女は一気に快楽の頂上へと駆け上がっていく。
「あ、あ・あ・あ。ちかねちゃ……あああああーーーーっ!」
「ひ、ひめ……こ、ぉぉ、うあ! あ、あぁあーーーーっ!」
ひときわ高い声を発して二人は絶頂へと達した。
悦楽の頂点を極めた体が弓反りの形でブルブルふるえる。
しばらくその状態が続いた後、熱い吐息とともに浮き上がった腰が床へ落ちた。
「う、あ、あぁぁ……」
「はっ、はっ、はっ……」
ぐったりとした体がときおり快感の余韻でビクッ、ビクッと痙攣する。
そのたびに膣口からは押し出されるように愛液があふれ出て太ももを濡らした。
しばしの間、そのまま気だるい解放感にひたる。
「千歌音ちゃ…ん」
姫子は目の前の少女の胸に顔をうずめる。
「姫子……」
腕をまわして陽の巫女の体を抱きしめながら、千歌音は他の言葉を忘れてしまったかのように、ただ恋人の名前だけをつぶやいた。

女同士の契りは場所をベッドの上に変えて続いていた。
今、二人は生まれたままの姿を晒している。
夫婦で寝るにしてもまだ充分余裕のある寝台に横になった少女達は発情した動物のように互いの唇をむさぼりあう。
さらにその下ではつやのある白い太ももをからめて恥丘に恥丘をこすりつけていた。
千歌音の濃密な漆黒の繊毛が姫子のまだ生えそろわない栗色の茂みを求めて上下する。
乙女らしい恥じらいをかなぐり捨てた二人の激しい動きに合わせて頑丈なベッドがギシギシと音を立ててきしんだ。
「ふ、あぁっ……」
長い長いキスが終わると千歌音は片方の手で自分の髪を一房つかみ、姫子の目の前に差し出した。
「姫子。私の髪の毛、見ていて」
姫子には千歌音の意図する所はわからなかったが、言われたままかつて全校生徒の憧れだった長い黒髪を見た。
すると奇怪な事が起こった。繊細な髪の毛の先端から約40センチくらいまでの部分がみるみる針金の様に太くなっていく。
「えっ?」
その変化はさらに続く。髪はその太さを増す一方、色の方はどんどん薄くなり黒から濃い茶へ、濃い茶からカフェオレの色へ、
そして濃いめの肌色へと変わっていく。
太さはやがて茹でる前のパスタくらいにまでなり、ついに茹でた後ほどの太さになって変化は終わった。
一本一本がその太さなので手にした一房の髪の毛全体ではかなりボリュームが増えている。
「千歌音ちゃん、これは……?」
「フフ、驚いた? 手品ではないわ。これもオロチの力みたい」
変化した髪をよく見ると、まるで生き物の様にヒクヒク脈動している。美しい少女の体の一部とは思えない形態だ。

と、次の瞬間、太さが茹でたパスタ程になった三、四十本の髪の毛がいっせいにビクッとふるえたかと思うと、
二倍、三倍の太さに膨らみ、内部からの圧力に負けたようにビチッと音を立てて弾けた。
「キャッ!」
それをすぐそばで見ていた姫子は、顔一面に飛び散った白い頭髪の残骸をあびて悲鳴をあげる。
それは元は髪の毛だったとは思えない、熱い白濁の粘液となって姫子の愛くるしい顔を汚した。
「ああ、ごめんなさい。これ、私の気持ちが高ぶると勝手に膨らんで弾けてしまうの。
姫子の顔を見てたらどうしても気持ちが抑えられなくなってしまって……」
謝罪しながら千歌音は左右の手で両方から姫子の頬を挟むと自分の顔を近づけ、
のばした舌で恋人の顔から糸を引いて垂れ落ちる粘液を舐め取っていく。
そして口の中に溜めたそれをピチャピチャとしばらく音をたてて味わった後、喉をならして飲み下す。
だがそれでも唇の端に残った一かたまりの白濁液は、トロリとこぼれて唇からあごへ、
そしてシーツの上に糸を引きながら落ちていった。
ふぅ、と息を一つ吐き出すと千歌音は再び自分の黒い髪を手に取り、そこに念を送った。
すると先ほどと同じように頭髪の先端が再び太く肌色に変化していく。
しかし今度の変化はそれだけでは終わらなかった。太くなった髪は自分の意志があるかのごとくうごめき、
互いに寄り合い、絡み合い、やがて太さ4センチ・長さ30センチを越える肉色の一本の棒状のかたまりになった。
「姫子、私たちはどうして二つの体に分かれて生きなければならないの? そんなのは間違っている。
私、あなたと一つになりたい。あなたの中に入ってあなたを直に感じたい。お願い、私を受け入れて」
千歌音はそう訴えると、手にした肉色の固まりを姫子の前に差し出した。
「千歌音ちゃん、でも……私、怖いよ」
目の前の太い肉塊に姫子はおびえた声を出す。

「大丈夫、優しくする。約束するわ。だから私にまかせて」
「う、うん」
千歌音は毛先が肉柱に変化しているそれを後ろから両足の間を通して前へとまわした。
つまり黒い髪の束の上をまたぐ形になる。
肉塊と化した髪の毛の先端は少し黒ずんだ肌色をしているため、
見ようによっては裸身を晒す千歌音の股間から長大な男根が生えているように見えなくもない。
千歌音は姫子の体に身を寄せると、手にした自分の体の一部を、この世でもっとも大切な人の女の部分に触れさせる。
手に力を入れて挿入を試みるが、性体験のほとんどない体の中に異物が侵入してくる感覚に姫子の体はこわばり、うまくいかない。
「姫子、体の力を抜いて」
「う、うん」
あせらず、ゆっくりとその感触に慣れさせていく。
根気よく筋肉をほぐし続けたのが功を奏したらしく、姫子の扉は徐々に千歌音の一部を受け入れていった。
最初は注意深く静かに出し入れを繰り返し、なじんでくるのを見計らってより深い部分までえぐりこんでいく。
「あ、あ、ああぁぁっ!」
千歌音の責めを受けて姫子は顔をのけぞらせて喘いだ。
彼女にとってこれほどの性的快感を味わったのは生まれて初めてだった。
年頃の少女らしい好奇心で何度か試してみた自慰の真似事など今の悦楽に比べたら児戯でしかない。
「あっ、あぁ、ち、千歌音ちゃん!」

千歌音は一方の手で肉塊を操りながら、空いた方の手で姫子のよく手入れされた栗色の髪をすくい上げる。
その手の中の頭髪にオロチの念を送ると、それは三度同じ変化を見せた。
細い髪の毛が太さを増し、色が抜けていく。
そして千歌音の時と同じように一本の太い棒状に姿を変える。
ほんの数十秒で蛇の頭のような形の肌色のかたまりになった。
棒と言っても何十本ものひも状の物が絡まりあって形を作っているため、表面はゴツゴツと節くれ立っている。
月の刻印を持つ少女はその髪のかたまりだった物に口を寄せると、舌にたっぷりと唾液をのせてそれにからめていった。
口の中に唾液をためてから舌を使ってそれにまぶしていく。
やがて表面がすっかり濡れて、光を反射するようになった。
「姫子、見て。これ、あなたの髪の毛で作ったの。今、あなたの胎内を犯しているのと同じ物よ」
「私の……髪……、私の体の……一部?」
「そうよ、姫子。私もあなたのものが欲しい。あなたの体の一部で貫かれたい……だから……お願い」
「うん、千歌音ちゃん、あたしも千歌音ちゃんの中に入りたい」
姫子は千歌音から自分の髪でできた肉色のかたまりを受け取ると、おまじないをするかのようにそれにそっとキスをする。
そして千歌音にならって背中に垂れ落ちる髪の先端を後ろから股の下をくぐらせて前へと出す。
姫子は手にした自分の肉茎を千歌音の秘孔へと押し当てた。
しかしすぐには挿入せず左右の陰唇の間をそれで上下になぞる。
「あ、ああっ!」
さらに極限まで膨らみ、肉の莢から顔をのぞかせている陰核の表面をその先端でねちっこくねぶる。
「姫子、そんな……」

「うん、じゃあ、いくよ」
相手の官能が充分高まっているのを確かめると、ぐっと力をこめて押し進める。
だが千歌音もまた姫子と体を重ねるまでは純潔な乙女だった。
性感が開発されてない肉体が挿入に対してどうしても緊張してしまう。
「千歌音ちゃん、リラックスして」
「え、ええ」
常に毅然とした態度で、何かにおびえる表情など決して人に見せることのない千歌音が小さな子供の様に身を固くしている。
その姿に姫子の中にあらためて彼女を愛おしいと思う気持ちがこみ上げてきた。
姫子が再び彼女の体の一部を挿入しようとすると、千歌音の濡れそぼった膣口はためらいながらも恋人の体を受け入れていく。
蛇の頭のような所まで沈んだ所でいったん進むのをやめる。
姫子が感動したような口振りで言った。
「不思議だよ。これ、髪の毛が形を変えた物なのに神経が通っているみたい。
千歌音ちゃんのここがキュッと締め付けてくるのがちゃんとわかるよ」
「ええ、私も、私の体の先が姫子の体に入っていて、そこからあなたの体温が伝わってくるのがわかる。
姫子の中は柔らかくて、熱いくらいに温かいわ」
千歌音は姫子の体の中に入ったままだった髪のかたまりをグッと押し出した。
「ああっ!」
姫子もまた千歌音の胎内に挿入されたそれを、いったんとば口まで引き抜くと再び奥まで突き入れる。
「あんっ!」

ズプッ、ズプッ、ズチュッ……。
グチュ、クチュ、グチュッ……。
「あん、あん、ああっ!」
「う、あふっ、くぅぅ~」
二つの膣口が卑猥な音をたて、白い二匹の性獣が淫らな喘ぎ声をもらす。
「姫子、姫子……」
ふだんの知的なまなざしからは想像もつかないほど、とろけた表情で千歌音は愛しい人の名前を呼んだ。
汗に濡れて光る体を寄せ合い、乳房と乳房を押しつけ合う。
固くとがった乳首同士がこすれて、そこから痺れるような快美感が広がっていった。
千歌音のたわわに実った柔らかい胸が、姫子のなだらかな膨らみに押し潰され変形する。
千歌音は陽の巫女の首筋に唇を這わせ、むさぼる様に何度も何度もその白い肌を吸った。
汗がにじんだ額や頬に、ほつれた髪が何本も貼りついている。
その様が彼女たちの容貌を、いっそう淫らな顔に化粧していた。
「ああ、千歌音ちゃん、千歌音ちゃん」
「好きよ、好きよ、姫子!」
愛しい人の敏感な器官が自分の肉茎を甘く、熱く、締め付ける。
その感覚で、挿入した部分が今にも弾けてしまいそうだった。
そして同時に自分の胎内に潜り込んだ相手のモノが出し入れされるたびに、ゴツゴツした表面が濡れた肉ヒダをめくり上げる。
ひと突きされるごとに、腰がはね上がって快感を訴えた。
入れる感覚と、入れられる感覚。
本来なら片方しか受け取れない快感を同時に味わう。
それは通常のセックスをはるかに越える未知の快楽。
そしてこの味を知ってしまったら二度と引き返せない禁断の果実だった。

無意識に肉塊をもっと深くまで受け入れようとして、貪欲に腰がベッドの上ではねる。
少女達は相手の胎内深くに入り込んだ自分の部位がビクッ、ビクッと大きく脈打つのを感じた。
この時間をもっと感じていたいと願いながらも、頂点に向かって急速に高まっていく官能は、もう自分でも抑えようがない。
限界がすぐ目の前に来ている。
千歌音の空いている方の手が恋人を求める。
姫子はそれに応え、二人の細い指と指がからみあい、手と手が固く結びついた。
「ひ、姫子! だ、駄目っ、わたし、も、う……」
「ちか、ね……ちゃ……あっ、あ、あ……いっ、くぅ……」
二つの豊かな乳房を激しく上下に揺らして身悶える千歌音の奥底で、姫子の肉柱がひときわ大きく膨らんだ。
「ああっ!」
姫子の体内でも最奥まで肉塊が達すると同時に、それが大きく膨張する。
「くはぁっ!」
次の瞬間、それは極限まで膨らんで弾けた。
一瞬にしてドロドロの溶岩と化し、飛び散った熱い粘液が女体のもっとも深い部分を叩く。
感度を増した肉洞の底に、大量の熱した体液をぶちまけられる感覚が脳髄を貫き、二人は一気に絶頂を極めた。
「あ、ああ…、ああああぁぁーーーーーーっ!」
「あっ、あうっ、くううううぅーーーーーっ!」
断末魔の叫びをあげて、少女達は昇りつめた。
汗に濡れた体が反り返り、硬直する。
弓なりになったまま全身が激しく痙攣し、くびれた腰がしゃくりあげる様にふるえた。
つなぎあわせた手を通して、共鳴する音叉の様に、相手の愉悦の深さが伝わってくる。
やがてエクスタシーの波がゆっくりと引いて行くと、こわばった筋肉から力が抜け落ちて、
もちあがった双臀がドサッとベッドの上に沈んだ。

「はあっ、はあっ、はあっ……」
薄暗い部屋の中で聞こえるのは、少女たちが漏らす甘い吐息だけ。
すっかり弛緩しきった体をベッドの上に投げ出して、姫子は快楽の余韻にひたっていた。
しどけなく開かれた両足の付け根を飾る淡い草むらは激しい摩擦でそそけだっている。
その下に位置する女の源泉が荒い呼吸にあわせて開閉をくりかえし、
そのたびに注ぎ込まれた白濁液が内側からトロリと押し出されてしたたり落ち、太ももを汚した。
一方の千歌音も浜に打ち上げられた流木のように正体を無くし、汗と体液で湿ったシーツの上にうつ伏せになっている。
閉じたまぶたが絶頂の残響で小さくふるえていた。
自慢の黒髪はおどろに乱れ、波打ちながら放射状に広がっている。
そのため、普段なら隠れている背中が露わになっていた。
熱い息に合わせて上下する左右の肩甲骨の中央に浮かんだ運命の刻印。
月の巫女の証である三日月形のアザ。
千歌音を表すその三日月はこれから満ちてゆくそれではなく、
少しずつ欠けていき、やがて何もない闇へ飲み込まれていく滅びの月だった。

その日、姫子はまだ朝も早い時刻だというのに何となく目が覚めてしまい、
寝直す気にもなれずベッドの上に上半身だけ起こしてぼんやりとしていた。
あれからどれだけの時間が過ぎたのだろうか。今、壁にかかっているカレンダーは今月のものなのか、先月のものなのか。
いや、もしかしたらもっと前からそのままになっていたのかも知れない。
少女は視線を下へと落とした。
(さすがにお腹、目立ってきたなあ。学校へ通っていた頃だったら大騒ぎになってたよね。マコちゃんが知ったらどんな顔で驚くかな?)
姫子は寝床から出ると着替えて屋外へ出てみた。
早朝のこの時間なら本来、外は澄んだ空気が心地よいはずだったが、結界の中では風もなく、どこかよどんでいるように感じる。
朝の空を見上げると、西の方角に薄く白い月が浮かんでいた。
明けた空に浮かぶ月を名残の月、または有明の月・残月などという。
(千歌音ちゃん……月は時間とともに欠けていって最後はまったく光を失ってしまうけど
、それを乗り越えればまた光を取り戻していくんだよ。
私、こんなことになっても、何もかも終わったとは思えない。
千歌音ちゃんと二人なら、何もない所からやり直せるような気がするんだ。
自分でもあきらめが悪いって思うけどね……)

「おはよう、姫子、体の調子はどう?」
自分の名を呼ぶ声に、姫子の意識が現実へと引き戻された。
いつの間にか、数歩離れた場所に千歌音が立っている。
朝の陽の光を浴びて、つやのある流れるような黒髪が輝いていた。
「おはよう、千歌音ちゃん、たぶん順調だと思う」
「そう、それは良かったわ。もし、何かあったら言ってね。すぐに医者を連れてくるから。
もっとも今のこの村に来たがる医者なんていないから、力ずくで連れてくることになるけど」
そう言うと千歌音はクスッと小さく笑った。
姫宮家の敷地を覆う結界はオロチの力で作られた物。
そこから発する瘴気が徐々に村を蝕み、住民の中には心身の不調や、言いしれぬ不安などを理由にここを出ていく者も少なくはなかった。
「それはそうと、時間はあるかしら? あなたに報告したいことがあるの」
「いいけど……何かな?」
「あの……ね」
彼女には珍しく口ごもった千歌音は自分の下腹に手を当てた。
そして少女は頬を紅潮させ、慈愛に満ちた微笑みを浮かべる。
千歌音は次の言葉を口にした。
「私にもできたの……」
「え?」
「今、このお腹の中に姫子の子供がいるのよ。姫子の赤ちゃんの兄弟。フフッ、これも異母兄弟って言うのかしらね」


〔終〕

最終更新:2007年04月20日 23:31
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