ちび姫子ちゃん

神無月の巫女 エロ総合投下もの

ちび姫子ちゃん

 

   推定年齢4歳くらいのちび姫子と千歌音ちゃんがピクニックに出掛けるそうです。


    「千歌音ちゃん、準備まだあ?」
    姫宮邸玄関。小さい子犬の顔のリュックを背負った姫子がピョンピョン跳ねる。
    「ごめんね、姫子。お待たせ」
    姫子に急かされ早歩きで玄関へと向かう千歌音。
    自分を見上げる姫子にしゃがんで目線を合わせて「はい、じゃあ帽子かぶって」と千歌音のお揃いのツバ付きの帽子を被せてやると姫子も嬉しそうにニッコリと笑った。
    「じゃあ乙羽さん、行って来るわね」
    「いってきまーす!」
    「はい、お気をつけていってらっしゃいませ、お嬢様。それに来栖川のお嬢様も」
    乙羽や大勢のメイドに見送られ、千歌音と姫子は親子のように手を繋いで出て行った


    「ねえ姫子、リュックの中には何を入れてきたの?」
    バス停へと向かう途中、小さなリュックに荷物をパンパンに詰めた姫子に聞いてみる。
    昼食に食べるお弁当や飲み物、レジャーシート類は全部千歌音のショルダーバッグに入っている。
    一体何を詰めてきたのか不思議だった。
    すると姫子は口元に人差し指をあて楽しそうに千歌音を見た。
    「ひみつぅw」
    「えー?秘密なの?」
    教えてくれない姫子に困ったように首を傾げても「うん、ひみつだよっ」と返される。
    そんな楽しそうに言われてしまったら余計気になってしまう。
    「どうしても?」
    「どうしても!」
    「じゃあ向こうに着いたら教えてくれる?」
    「うん!」

    そう約束し、笑顔の2人は手を繋ぎなおし更に歩いていった。


    バスに乗って数時間、だだっ広い草原へと着いた2人。
    少々早いがひとまず昼食をとろうとレジャーシートを一緒広げ、カバンの中から今朝早起きして乙羽と3人で一緒に用意したお弁当を取り出す。
    姫子の好きなものがたくさん詰められたお弁当が美味しくて食も進む。
    あっという間に食べ終え、後片付けをしている最中に姫子が千歌音のブラウスをちょいちょいと引っ張る。
    「千歌音ちゃん、私お花の冠作りたい!」
    目をキラキラさせ、白い花がたくさん咲いている方を指差す。
    「ええ、いいわよ。いっておいで」
    そう言ってやると姫子は「わあ~いw」とはしゃぎながら走っていった。


    読書を楽しみながらそろそろお茶の準備でもしようかと考えていると、頭の上にぽふっと何かが置かれた。
    何だろうと取ってみると、背後から声が。
    「それ千歌音ちゃんの分ね」
    頭の上に花冠をのせた姫子が笑う。
    「ありがとう、とっても上手に出来たのね」
    作ってくれた白い花冠を被りなおし笑顔を送る。
    「千歌音ちゃん絵本に出てくるお姫さまみたい」
    その笑顔に幼いながらにも少し頬を染めた姫子が言う。
    「姫子も。本物のお姫様みたいよ」
    千歌音にそう言われると嬉しいのと恥ずかしいのが混じったような笑顔になる。
    その笑顔がまた姫子の可愛らしさを際立てる。
    「そろそろお茶にする?」
    「うん!」
    そして2人はお茶の準備を始めた。


    お茶を楽しんでいると姫子が目を擦りだした。
    「眠くなってきた?」
    朝もいつもより早かったせいか目をしょぼしょぼさせ小さく頷く姫子に腕時計を見てみると、そろそろ姫子の昼寝の時間である。
    姫子からカップを取り「さ、少し寝ましょうか」と言って、姫子を横にさせた。
    上着を掛けてやり、添い寝してやると姫子は瞬く間に夢の中へと行ってしまっていた。
    すうすうと規則正しい寝息に可愛らしい寝顔、張りのあるぷにぷにのほっぺはいつもついつい突付いてしまう。

    愛しくて小さな姫子を抱き締めるととても暖かく、頬を撫でる風の心地よさに千歌音もまた夢の中へと落ちていった。


    それからしばしば、ふと千歌音は目を覚ました。
    眠りについてからそう時間は経過はしていない。
    しかし腕の中にいたはずの姫子がいなくて、姫子に掛けていたはずの上着は自分に掛けられていた。
    「姫子…?」
    どこに行ってしまったのだろうと体を起こす。
    すると目の前にお絵描き帳を広げ色鉛筆を手にした姫子が「あ、お早う千歌音ちゃん」と気づいた。
    「お早う姫子」
    すると姫子の横にある口の開いた小さなリュックに気づいた。
    「リュックに色鉛筆を詰めてたの?」
    「うん、クレヨンもクレパスも持ってきたんだよ!」
    がさごそとリュックの中からクレヨンとクレパスを取り出し「ほらっ」と見せてくれた。
    屈託のない太陽のような笑顔。
    こっちまで笑顔にならずにはいられない。
    「何を描いてたの?」
    「あのね、千歌音ちゃんの絵を描いてたの」
    「私を?」
    姫子に近づきお絵描き帳を覗き込むと、幼いにしては上出来なほど自分の寝顔が上手く描かれていた。
    「上手ね、嬉しいわ」
    笑ってよしよしと髪を撫でてやると姫子が笑顔で抱きついてきた。
    「千歌音ちゃん大好き!」
    大好きと言う言葉に高鳴る胸。ぎゅっと小さな体を抱き返してやる。
    「私もよ、姫子」
    思いを込め、小さな彼女の小さな額にキスをした。


    巫女の運命とか関係ないw


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    姫子とお散歩中。
    公園に行くと、大きなゴールデンレトリーバー発見。
    「あ、見てみて千歌音ちゃん。大きいワンちゃんがいるよ」
    動物好きの姫子に手を引かれ犬に近づく2人。
    「わあ、可愛いねえ」
    「…う、うん」
    しゃがんでお座りしている犬の頭を撫でる姫子。
    しかし千歌音は自分よりも体の大きな犬が恐くて姫子の後ろに隠れていた。
    「大丈夫だよ、とても大人しいから」
    そう言われ片方の手は姫子の服を握り締め、ビクビクしながら犬の頭に手を伸ばす。
    すると触れる直前突然「ワンッ」と吼えられてしまった。
    「…っ!」
    驚いて慌てて手を引っ込め姫子の後ろに隠れる。
    (やっぱり恐い…!)
    ぎゅっと目を閉じ恐くて震えている千歌音の肩を姫子は抱いてやりクスクスと笑う。
    「違うよ恐くないよ、ワンちゃんは千歌音ちゃんと遊びたいんだよ。ほらっ」
    おずおず目を開いて犬を見ると上機嫌そうに尻尾をパタパタと振りテニスボールを口に咥えていた。
    そのまま犬は千歌音に近づき目の前でぽてっとボールを落とし、その場に再び座る。
    「?」
    テニスボールを拾い犬を見ると、期待に満ちた目で犬は千歌音を見ている。
    「ほら千歌音ちゃん、あっちに向かってボールを投げてあげて」
    「…う、うん。分かった」
    犬と姫子を交互に見た後、姫子に言われるまま姫子の指差す方に向かってえいっ!と思い切りボールを投げた。
    すると犬は飛んでいったボールを元気よく追いかけていく。
    そしてボールを拾い軽快に千歌音の前まで戻ってきた。
    「わあ、すごい…!」
    「お利口さんだね、頭撫でてやると喜ぶよ」
    感動しながら犬からボールを受け取り、笑顔の姫子の言う通りに再度犬の頭に手をやると吼えられることも無く撫でることができた。
    「可愛いね、ワンちゃん」
    「うん!」
    ニコニコと笑う姫子に向かって嬉しそうに頷く千歌音。
    すると犬が千歌音の白いマシュマロのような頬をぺろっと舐めてきた。
    「きゃあ!はは、くすぐったい!」
    恐怖心も消え引き攣っていた笑顔がすっかり綻んでいる。

    楽しそうに笑い声をあげ犬とじゃれ合う千歌音の姿を姫子は目を細め満足げに見ていた。



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    引っ込み思案で小さくても姫子優先の千歌音ちゃん妄想してみた。
    小さいお嬢さんの口調って、大人の口調を真似する子しか近くに居なかったから変かも…

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    「ふわぁぁ…一休みしようかな?」
    姫子は小さく伸びをして読んでいた本を閉じた。
    ついつい夢中になって、随分と時間が経っていたようだ。

    昼食が終わった後、千歌音はピアノを習うと言うことで、姫子は自室に帰ってきた。
    それからずっと聞こえていたはずのピアノ音が何時の間に聞こえなくなっている。
    まだまだ幼い千歌音のことだから、そんなに長くレッスンの時間はないだろう。
    しかし、終わった後に姫子の部屋に来ると言うはずなのに、来ていない。
    続けてまた他の習い事をやっているのかもしれない。

    「でも、そろそろお茶の時間だから、呼びに行こうかな?」
    あのくらいの子供だったら、遊ぶほうに時間をとることが大事だし。
    稽古事よりも大切なことも沢山ある。
    姫子が教えてあげられるのは、人に甘えることくらいだけど。

    千歌音が姫子に何か希望を言うことは、ほとんどない。
    何かを聞くと「姫子お姉さんは?」と聞いて、こちらが希望を言うと「私もそれがいいの」
    とはにかんだ笑顔で同意する。

    遊ぶのも、姫子が見本を見せてから。
    そうでなければ、一人で静かに本を読んでいる。
    一言で言ってしまえば、子供らしくない。

    余りに反応が大人びていて、思わず大学で育児の本や幼稚園の先生を目指す人のための教
    育論なんか大量に借りて真琴にあきれられたくらいだ。

    部屋には暖房が効いているが、廊下はそれほどでもない。
    椅子にかけてあったカーディガンを羽織って、廊下に出ようとしたところ、目的の人がそ
    こに大きな本を抱えて立っていた。
    「千歌音ちゃん?」
    掛けたその声にほっとしたように、千歌音は顔を見上げた。
    「姫子お姉さん…お仕事終わったの?」
    姫子は視線を合わせるように膝を着いてから、千歌音がびっくりしないようにゆっくりと
    抱きしめてその体が冷たいのに気がついた。
    なかなか部屋から出てこない姫子の邪魔をしないように、出てくるのを待っていたのだろ
    う。
    「ごめんね。気がつかなくて。待っててくれたんだよね」
    その声に小さく千歌音がうなずいた。
    こういうところは昔の千歌音とまったく変わらない。何でも姫子を優先してくれる。
    それがちょっとだけ姫子には哀しい。


    「あのね…絶対、お仕事の邪魔はしないから…おとなしくしてるから…姫子お姉さんのお
    部屋に居てもいい?」
    千歌音は読む本だと言って、大事そうに抱えていた本を姫子に見せる。
    本当に小さなお願い事なのに、それをなんと言おうかと迷ってドアの前で立っていたのだ
    ろう。
    そんなことは、幾らでも言ってもいいのに。もっと一杯わがままを言ってもいいのに。
    「…駄目だよ、千歌音ちゃん」
    姫子の言葉に、千歌音がしかられたように身体をこわばらせる。できるだけ優しく言った
    つもりだったのに、やっぱり怖がらせてしまったみたいで。
    「私のお仕事は、千歌音ちゃんと一杯遊ぶことなんだから。お仕事取り上げちゃ駄目」
    「…姫子お姉さん?」
    「千歌音ちゃんの時間があるときは、私の部屋に来ること。一緒に遊んでくれること。約
    束できる?」
    千歌音がおひさまの笑顔と言い、一番好きだと言ってくれた笑顔を作って、眼をぱちくり
    している千歌音の頭をなでて約束させる。
    姫子の言った言葉を、そのまま口に出して言い直して、やっと意味を理解したらしい千歌
    音が先ほどの不安そうな顔から、満面の笑顔に表情を変える。
    「うん。約束。絶対守るから」
    今は約束することでしか、遠慮してしまって来てくれないだろうけれど。
    でも、約束したからには千歌音は必ず守ってくれる。
    少しずつ約束を積み重ねて、いつか約束がなくても居心地がいいから傍にいる。姫子の傍
    にいたいといってもらえるようにしよう。
    そう、もう一度心に決めて、まずは千歌音の冷え切った身体を暖めるべく、部屋の中に招
    き入れた。



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    ちび姫子と千歌音ちゃんは一緒に入浴中のようです。


    体を洗い頭をわしゃわしゃと洗ってもらいながら千歌音が留守中今日一日何をしてたか一生懸命話す姫子。
    「でね、乙羽さんがね『好き嫌いはダメですよ』って言ったの」
    「フフ、それで姫子はちゃんと椎茸食べれたの?」
    「うん!」
    得意げに頷く姫子が可愛いくて仕方がない。
    「良く頑張ったわね、偉いわ」と褒めてやると満更でもなさそうに体をくねらせている。
    ここで頭を流そうとシャワーを取り「目を閉じて」と言ってから泡を流した。
    泡を全て流し終え紅茶色の髪を軽く絞ってタオルで束ねてやり、手を繋いで浴槽へと行く。
    ちゃぷんと湯に浸かると広い浴槽なのに姫子は千歌音に抱っこを求めた。
    千歌音は甘える姫子を軽々と抱き上げ、向かい合うように自分の体を跨らせる。
    「でも何で今日は椎茸全部食べれたの?」
    自分の首にくっついてた姫子に聞く。
    普段も頑張って食べるのだがどうしても残してしまっていた。
    千歌音も良くないな~と思いつつも、いつか食べれるようになるだろうとついそれを許してしまっていた。
    すると、姫子は体を起こし千歌音と向き合う。
    「だってね、『好き嫌いしてると千歌音お嬢さまのようにキレイになれませんよ』って」
    その理由に千歌音は目を丸くしてしまった。
    しかし真顔の姫子にすぐ表情を緩める。
    「今でも十分姫子は綺麗よ」
    そう言ってスベスベの肌を抱き締めた。


    「お風呂でたらアイス食べる?」
    「食べるー!」
    楽しそうな大浴場の会話。


    更衣室でスタンバイしてる乙羽は姫子が羨ましくて涙していた。


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    千歌音ちゃんがちび姫子を寝かしつけるようです。

    湯冷めしないうちに姫子をベッドに入れ、何冊か絵本を読んでやると姫子の目がとろんとしてきた。
    ちょうど区切りも良く絵本を閉じ、「じゃ、電気消すわね」と枕もとの間接照明に手を伸ばすと「ねえ、千歌音ちゃん」と声を掛けてきた。
    「私も大きくなったら千歌音ちゃんみたくキレイになれる?」
    「え?どうしたの、今日に?」
    上目遣いで聞いてくる姫子に首を傾げた。
    「私ね、もっともっとキレイになってね、でね、大人になったらね―――」
    眠気を堪えて一生懸命言う姫子にうんうんと相槌を打ってやりながら聞いてやる。

    「――千歌音ちゃんのお嫁さんになりたいの」

    ちっちゃい姫子からのプロポーズ。
    思いもよらぬ告白に一瞬驚いたが、胸がきゅんとなり嬉しくて口元が綻ぶ。
    「いいの?私で。姫子がお嫁さんにいける歳になる頃には結構な歳よ?」
    恥ずかしそうに頬を染める姫子の前髪を指で掻き分けてやりながら尋ねる。
    「私は千歌音ちゃんじゃなきゃやだ」
    まっすぐ自分を見据え首を小さく振り答える。
    「千歌音ちゃんは私がお嫁さんじゃいや?」
    逆に心配そうに尋ねられてしまった。
    嫌なわけあるはずもなく、ニッコリと笑う。
    「いいえ、こんなに素敵なお嫁さんがきてくれるなんて嬉しいわ」
    頬を撫でてやると姫子もニッコリと笑った。
    「さ、もうお休み」
    そう言って布団を掛けなおしてやると「お休みなさい」と言って姫子は目を閉じた。

    寝つきの良い姫子はすぐ夢の中へ。
    幸せそうな寝顔。
    この子もまた記憶の片隅にあるかつての姫子と同じく、太陽のような輝きを放つ美しい女性に成長するのだろうと思う。
    そしてその姿を目に浮かべるとその日が待ち遠しくて堪らなくなる。
    しかしその反面今の姫子も子供らしくゆっくりでいいからスクスクと育ってほしいとも思う。
    「好きよ、姫子」
    そんな幸せを噛み締めながら、眠る幼い姫子の頬に口付けた。


    甘ーーーい!


--

    ちび姫子の妄想は止まらない…。


    屋敷も静まり返った夜更け。
    仕事を終えた乙羽は自室でその日の仕事の日報を纏めていた。
    すると、トントンとノックする音が。
    「乙羽さん、入っても大丈夫かしら?」
    「え?あ、はい。大丈夫ですよ、お嬢様」
    千歌音の声にペンを止め、振り返ると千歌音が部屋へと入ってきた。
    「どうなさいましたか?」
    「ちょっと手伝ってもらいたいのだけど良いかしら?」
    そして千歌音の後ろを連いて歩くと着いたのは厨房だった。


    「え?ケーキ…ですか?」
    こんな真夜中になんだろうと尋ねると千歌音の返事に驚いた。
    用意された材料を見てみれば確かに所狭しとケーキの材料たちが。
    「ええ、今日街に出て姫子に言われてしまったの。私と一緒に手作りケーキを作りたいって。
     でも私お菓子作りはいつも乙羽さんに任せていたから、上手く作れるか不安で」
    困ったように笑いながら乙羽と向き合う。
    一瞬姫子という名にぴくっと反応するが、千歌音のその表情に「ああ、この方はいつもそうだ…」と、乙羽は思う。
    「本当は1人で練習しようかと思ったんだけど…乙羽さんがいてくれた方が安心かなって」
    表では文武両道、才色兼備の誰もが羨む完璧な人だと思われてる。
    でも、その裏ではその期待に応える為に人目のつかないところで地道にコツコツと努力が出来る方なのだと。
    「だから、手伝ってもらっても良いかしら?」
    だから今回もあの小さな想い人の期待にこうやって私を頼りにしてきたのだろう。
    それをとても誇らしく思える。
    両手を合わせて恥ずかしそうにお願いする千歌音に、乙羽は我欲を捨て「はい、勿論です」と嬉しそうに頷いた。


    翌日…。

    「じゃあ、姫子ここにバニラエッセンス入れてくれる?」
    「はーい♪」
    仲良く肩を肩を並べてケーキ作りに励む2人を乙羽は影からじっと見守っていた。
    我欲を捨てたとは言え、親子のような2人の後姿を見てるのは少々複雑な気分だった。
    手際よく作っていき、厨房にスポンジケーキの焼けた甘い匂いが漂う。
    千歌音がキレイにホイップクリームを塗り、姫子がフルーツを盛っていく。
    最後に慎重に板チョコと動物の飴細工をのせようやく完成した。
    「わぁーい!出来たぁw」
    両手をあげ喜ぶ姫子。
    そんな姫子を「良かったわね」と千歌音は頭を撫でてやる。
    何事もなく無事に作り終え 、乙羽はため息をつきそっとその場から離れようとした。
    すると「私乙羽さん呼んでくるー!」と姫子の声が。
    慌てて偶然ちょうど厨房の傍を通り掛かったように振舞う。
    「あ、乙羽さん!」
    「あら、どうなさいましたか?来栖川様」
    「こっち来て!こっち!」
    グイグイと小さな手に引かれ厨房へ。
    千歌音と目が合いちょっと気まずそうに苦笑いをするが、千歌音はニコニコと笑っている。
    「見て見て!千歌音ちゃんと一緒に作ったの!」
    さっきまで完成までを見守っていた2段重ねのケーキの前まで連れてかれ、「まぁ、とてもお上手に出来たんですね」と言おうと口を開いたがケーキを見た瞬間驚き口元を押さえた。
    白いケーキにのせられた板チョコ。そこには…。


    『いつもありがとう。乙羽さん』


    とカクカクだが頑張って書いた痕跡のある姫子の字で書かれていた。
    「千歌音ちゃんと一緒に乙羽さんのために作ったのぉ!」
    ぴょんぴょん跳ねながら言う姫子。
    予想してなかった自分へのサプライズに嬉しいのと驚いているのが合わさって思わず目頭が熱くなる。
    すると千歌音がそっと言葉の出ない乙羽に近づき耳打ちをする。
    「ごめんね乙羽さん、手伝ってもらったのに。姫子が初めて作るケーキは乙羽さんにって決めてたみたいなの」
    「え?来栖川様が?」
    「ええ」
    千歌音が頷くと姫子が心配そうな顔で自分を見上げている。
    「…乙羽さんケーキ嫌い?」
    涙する乙羽に勘違いしてしまっているようだ。
    乙羽は涙を拭いて「いいえ、大好きですよ」と返すと姫子の顔がぱあっと明るくなる。
    手に用意していたフォークを渡し「食べてみて!」とお願いする。
    乙羽はケーキの端っこをフォークで掬い上げ、ぱくりと口に含む。
    噛めば噛むほど口の中に広がるクリームの味。
    「おいしーい?」
    千歌音に抱っこされ、わくわくしながら聞いてくる姫子。
    昨晩千歌音に教えたとおりに作られたケーキ。美味しくないわけがない。
    だけど、2人の気持ちの込められた分だけ甘みがましてとても美味しく感じる。

    「ええ、とっても美味しいですよ」


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    ちび姫子が千歌音ちゃんに質問があるそうです。

    自室で読書中。
    乙羽に淹れてもらった紅茶を啜っていると、トコトコと小さな足音が。
    「ねーねー千歌音ちゃん」
    「ん?なあに?姫子」
    姫子の呼びかけに読んでいた本を閉じ、姫子を抱き上げ自分の膝に置いた。
    自分を見つめるくりくりした目に思わず笑顔になる。
    「『けっこん』ってなあに?」
    「え?結婚?」
    驚く千歌音にこくんと姫子は頷く。
    読んでいた絵本にでも書いてあったのだろうか?
    しばし窓の方を見ながら幼い姫子にも分かり易い言葉を言葉を考える。
    「結婚はね、『好きな人とずっと一緒にいてください』ってお約束することよ」
    そう向き合って言うと千歌音の言葉に姫子は「へえ~!」ときらきらと目を輝かせる。
    「姫子は誰と結婚したい?」
    そんな素敵な顔を見せられてはこう聞かずにはいられない。
    すると姫子は両手をあげ「千歌音ちゃあん!」とすぐ答えた。
    子供らしい素直な反応。
    期待してたとは言え実際にそう言われ嬉しさの余り自分の頬が熱くなるのが分かる。
    姫子が大きかろうが小さかろうが姫子は千歌音の大事な姫子に変わりない。
    ああ、幸せだなぁ…
    そう千歌音が感動の海に浸っていると姫子は笑顔のまま話を聞いてとばかりに両手をぶんぶん振りだす。

    「あと乙羽さんもー!」
    「…え?」

    姫子の言葉に一気に現実に戻された。
    なぜ乙羽さんの名まで?そう思っていると姫子の暴走はさらに続く。
    「あとマコちゃんも!」
    満面の笑みで言う姫子。
    おろおろと「あのー姫子…?」と声を掛けるが、幼女姫子は実に楽しそうである。
    「あとねー、んとねー!」
    「……」
    指を折りながら一生懸命お友達の名前を挙げる姫子に千歌音完全に沈黙。
    どうやら結婚は1人の人としか出来ない事を言い忘れてしまったせいで自分の好きな人の名前をいっぱいあげてるようだ。

    「あとさんじぇすととねー。あれ?千歌音ちゃんどおしたの?」
    「いや、いいのよ…優しい子に育ってくれて嬉しいわ」

    自分の名前を一番に挙げてくれたとは言え、少々肩を落とす千歌音ちゃんなのでした。


    頑張れ千歌音ちゃん!



 

最終更新:2009年02月19日 17:34
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