※真面目に考えてませんので突っ込みどころ満載
※全キャラ崩壊。特に前世姫子はCOOL!な人と思ってる方はスルー推奨
※設定はもう色々と無視
あの襲撃から数日。
操られていた乙羽も無事回復し、千歌音もまだ休ませているが順調に回復していた。
「もう大丈夫ですね。明日から普段どおりに生活してもいいですよ、姫宮さん」
「はい。ありがとうございます、乙羽さん」
微笑みあう2人。
はじめ心にも傷を負った千歌音と乙羽との間に溝が出来てしまうのではと姫子は懸念していた。
しかしあの行為自体が乙羽の意思では無いのだと分かってるし、何より千歌音が自分自身にとって良き理解者である乙羽を信頼してるため何事も無かったように接している。
その2人の様子に千歌音の少し後ろに座って見守っていた姫子は安心し頬の筋肉が緩んだ。
しかし…。
「…で、なんでそこに貴女がいるのかしら?」
診療も一通り終え乙羽がいそいそと片付け始めたとき、首だけ振り返り部屋の片隅に同じくその一部始終を茶を啜りながら見守っていた人物に思いっきり顔を引きつらせながら問いかける。
「…いいじゃない、別に」
座布団の上に正座しながら自称元オロチのレーコがぼそっと返した。
その図々しい様な態度に姫子の頭の中でぶちっと何かが切れる音がした。
「全然良くないわよ!貴女オロチでしょうが!そもそもなんでうちにいんのよ!」
あの日姫子を助けてからレーコは勝手に姫子の屋敷に住み着いてしまったのだ。
つまりは居候。
「だって部屋空いてるし」
本人曰く帰るところがなくなってしまったらしい。けれど絶対にそれだけの理由じゃないと姫子は分かっている。
「私はまだ貴女を信用したわけじゃないのよ!」
裏切ったとは言え、レーコを信用し安心したところでいきなり寝首を掻くという事も考えられる。
その事を勝手に居座ったあの日からずっと主張し続けてる姫子だが、わざわざレーコから千歌音が見えない位置に座っているところを見ると、多分姫子が気にしてるのはそこじゃないだろうと乙羽は呆れながら見ていた。
「ふーん。でもあの日、陽の巫女を助けたのはどこの誰だったかしら?」
「……ぅ」
自分に向かって唸る姫子にレーコはこぽこぽとお茶を注ぎ足しながら一撃で黙らせる。
実際殺されそうになるところを助けてくれたのがレーコなだけにそこはオロチとは言え姫子は言い返すことができない。
それのせいで屋敷から追い出せないでいたりもするからレーコもだいぶ性質が悪い。
痛いところを突かれ小さく呻く姫子だが、しかしここでやられっぱなしになる訳にはいかない。
「分かったわ、じゃあ千歌音に決めてもらいましょう」
「え?」
姫子が言い出したことに千歌音が目を丸くした。
なぜここで私?
レーコが居座る原因をいまいち理解していない千歌音が「あ、あのー…」と声かけるが、その前にレーコが「いいわよ」とこっくりと頷いてしまった。
「で、千歌音はどう思う?五ノ首がこの屋敷に居ても良いの?」
「……」
ど、どうしよう…。
真剣な姫子の無茶振りに答えに困った千歌音は助け舟を求めるようにちらっと乙羽を見るが、「私はどっちでもいいです」と言うように小さくひょいっと肩を竦めるだけだった。
投げやりな乙羽にえー!っと内心慌てるが姫子は無言で回答を催促してくる。
「え、えーと私はその…どっちでも…」
「ほら、いいって言ってるじゃない」
「い、言ってないわよ!」
苦笑いを浮かべながら千歌音の出したどっちつかずの答えに姫子完全に動揺。
どうにかしてぎゃふんと言わせたいのだが言葉が見つからずあたふたする。
「ま、どちらにしても私貴女より強いし」
マイペースに茶を啜りながらさらっとレーコが付け加えると、姫子の様子が一変し部屋の中がゴゴゴゴゴ…といや~な空気が流れる。
俯き懸命に怒りを堪えている姫子の指がわなわなと動いてるのを見て、また始まったかと乙羽の横でオロオロしている千歌音をそ~っと自分の方に引き寄せた。
「月の巫女も、私が傍にいてくれた方が安心だと思ってるんじゃないかしら」
ぶち!
「あーもう腹の立つ!」
淡々と言うレーコの発言に我慢していた堪忍袋の緒が切れた姫子は勢いよく立ち上がり、護身刀を抜いて切っ先をビシッとレーコに向けた。
「貴女がいてくれなくたって千歌音は私が守ってみせるわよ!」
「やれやれ…一度痛い目に合わないと分からないようね」
それに対しレーコも面倒くさそうに立ち上がり眼鏡を掛けなおしながら鋭い目つきで睨み返す。
「…ごめんなさいって謝るなら今のうちよ、五ノ首」
「…その言葉そっくり返すわ、陽の巫女」
2人の間に走る緊張、正に一触即発の雰囲気。
しかしこの数日で何度目かのこの光景。争うレベルとしては小学生並み。
案外仲良いんじゃないかしら?
2人を止めようとあたふたしてる千歌音を引っ張りながら乙羽はそう思わずにいられなかった。
と、ここでその2人の衝突を予期して乙羽の部屋の近くに待機していた真琴ら数人の下女が慌てて部屋に乱入する。
「わー!いけません姫様!落ち着いて!」
「そうです屋敷が壊れてしまいますわ!」
「きゃあ!ちょ!ちょっと何するのよ!」
わあー!っと雪崩れ込んできた自分に仕える下女らに一斉に取り押さえられる哀れ姫子。
護身刀を取られ、畳に押さえつけられる姿はまるで立てこもり犯の現行犯逮捕のようである。
「離せー!」とキーキーと騒ぎながらもがく姫子らを横目にレーコはよっこらしょっと座布団に座りなおし再び茶を啜り始めた。
「ああ!今笑ったわね!」
茶を啜るときレーコの口元がほくそ笑んだのを見逃さなかった姫子は顔を真っ赤にする。
「ふう、弱い犬ほどよく吼える…」
「~~~~!!」
「あー!もう止めてくださいぃぃ!!」
一方乙羽と千歌音はと言うと、その日常茶飯事と化したどったんばったん暴れまわる部屋からさっさと抜け出していた。
「はーい、早く離れに戻りましょうね~」
「い、いいんですか?あのままにしといて…」
時折がしゃーん!だとかどかーん!だのと大きな音が聞こえる乙羽の部屋を振り返りながら、千歌音の肩を押しそそくさと離れへと向かおうとする乙羽に戸惑いながら尋ねる。
「いいわ、後で来栖川のお嬢様に片付けさせるから」
「はぁ…」
お部屋じゃなくて姫子のことなんだけど…。
居候も増え更に賑やかになった来栖川の屋敷。
姫子の受難は続く。
了