昼下がりの来栖川邸。
姫子は珍しく自室に篭っていた。
古そうなややくたびれた巻物と睨めっこし「うむむむ……」と低く呻いていると、部屋に真琴が入ってきた。
「姫様、お茶が入りましたよ。って何をそんなに真剣な顔でお読みになられてるんですか?」
いつになく真剣かつどこか怪しい主人に声を掛けると、姫子はそれを無視してパン!と突然両手をついた。
「分かったわ!」
「?」
何が?と首を傾げると姫子は嬉しそうに真琴を見た。
「真琴、今すぐ千歌音をここに連れて来てもらえる?」
そして待つことしばしば。
「姫様、千歌音を連れてきましたよ?」と千歌音を連れた真琴が部屋に戻ってきた。
「ありがとう」
待っていた姫子は部屋の中央の畳に和紙を何枚も重ねて広げ、何かの準備をしていた。
「千歌音、入ってきていいわよ」
そう言って手招きすると「は、はい」と少し緊張した様子で千歌音が姫子の部屋に入る。
「悪いのだけど千歌音と2人きりにしてもらってもいい?」
ぼけ~っと何するんだろう?と見ていた真琴に言うとこっくりと頷き襖を閉めようと手を掛けた。
「待って」
「え?」
「それと、しばらく誰も部屋に近づかせないでくれる?」
「はあ、分かりました…」
姫子の再三のお願いにやや首を傾げてしまったが、大人しく出て行きすうっと襖を閉めた。
変なの…。
そう思いつつも真琴は頭をぽりぽり掻きながら仕事へと戻っていった。
「仕事中に悪かったわね、ここに座ってくれる?」
真琴の足音が遠ざかったのを確認してから姫子は傍に立っていた千歌音を見上げ広げた和紙を指差した。
「こ、ここにですか?」
突然呼び出された上、読めない姫子の思惑に千歌音の不安倍増。
挙動不審な千歌音に姫子はにっこりと笑う。
「いいからいいからw」
全然よかない!
そう思っても「今は2人きりだからいつも通り接して?」だなんて甘えた声で言われてしまうと、渋々言うこと聞いてしまうところが姫子に対して甘いところである。
ガサッ。
何重にも重ねられた畳1畳分の大きさの和紙の上に座る。
「姫子、一体何を始めるの…?」
2人きりとは言え昼間の屋敷。寝静まっている夜とは違い仕事中の下女が多い。
屋敷から離れている自分用の離れとは違い、姫子の部屋は屋敷の中にある。
ため口を誰かに聞かれてはまずいと内心怯えながら小さな声で訊ねると姫子はお構いなしに口を開く。
「じゃあ脱いでw」
「は?」
一瞬姫子が何を言ったのか分からなかった。
「だーかーら、着物脱いでw」
そう言って千歌音の着物に手を掛け、千歌音は慌てて身を捩った。
「や、やだ!昼間っから…///」
「違う違う、これを見て」
良からぬ行為を連想する千歌音を落ち着かせながら脇に置いてあった巻物を広げる。
「?」
「ここにね、オロチ避けの呪文が書いてあるの。うちには一人居候オロチがいるでしょ?
私が千歌音の傍にいるときは良いけど、どうしても傍にいられない時もあるじゃない?」
首を傾げる正座していた足を横に崩した千歌音に「これがその呪文でね」と巻物を指しながら親切に説明する。
「それで、それを私の体に書こうと…?」
「うんw」
そんなにレーコから私を引き離したいのか…。
あの人そんな事しないと思うんだけど。と言ってはまた延々と「レーコは危険!危険なの!」と熱弁を聞かされる羽目になる。
それに姫子と違って自分は戦闘が得意でないはないし、それで姫子が安心すると言うのならば致し方ない。……のだと思う、たぶん。
「わ、分かったわ……///」
墨汁が畳に零れないように和紙の上に座らされたのだと理由も分かりこっくりと頷いた。
まだ昼間なせいもあって部屋の中が明るくてこっ恥ずかしいが、帯を緩めするりと着物を脱いだ。
「恥ずかしいからあまり見ないでね…///」
頬をこれでもかと赤く染め、視線を逸らし上半身裸になり胸元をしっかり手で押さえているが、姫子からの返事が無い。
「姫子…?」
「え!?あ、あぁ…ごめん///」
ぼ~っと千歌音を見つめていた姫子は千歌音と目が合うと慌てて視線を逸らした。
晒け出された透き通るような白い肌が夜とはまた違ってすごく綺麗で、頬を染めながら胸を隠すその仕草がまた初めて千歌音と交わったときのように初々しくて。
しかもその胸は腕でも押さえ切れないほどなものだから釘付けになってしまってて、本来の目的をすっかり忘れそうになる。
用意していた筆達と墨壷を引き寄せながら、ちらっと千歌音を見ると首筋から鎖骨のラインも艶かしい。
その千歌音はと言うと、恥ずかしくて目をぎゅうっと瞑っている。
その姿に…少しくらいなら、いいかな。と、悪戯心で手に取った筆に墨ではなく水をつけ千歌音と向き合う。
「手、外して頂戴」
そう言うと、千歌音はそっと胸を押さえていた手を離した。華奢な体には不釣合いなほど豊満な胸を目の前に姫子は満足げに目を細めた。
姫子が近づくとガサッと和紙が音を立て、ビク!っと千歌音が驚くが「大丈夫」と全然嘘っぱちなことを囁く。
「じゃ、いくわよ」
書くと言ってない所が酷い。
しかし死ぬほど恥ずかしがって目を瞑っている千歌音は疑うはずも無く小さく頷いた。
ぴと。
濡れた筆を千歌音の鎖骨と胸の間らへんにつけると冷たさで「ん…っ!」と千歌音が小さく息を飲む。
そのまま筆を桜色の乳首の方へ文字を書いてるかのようにすらすら~となぞっていく。
何とも言い難い筆の毛触りに千歌音はぎゅうっと脱いだ着物を握り締め、声を漏らすまいとそれに耐える。
その可愛らしい姿にうっかりいけない感覚が芽生えてしまいそうな姫子の筆は止まらない。
「ちょっと、我慢してね」
興奮を抑えながら今度はたっぷり水をつけワザと千歌音の胸を濡らしていく。
そうとは知らず懸命に耐えている千歌音に姫子のいけない感覚は悪さを続ける。
休むことなく筆を動かし続け、まあるい両の乳房のラインに沿って伝う水滴に思わず舌なめずりをしてしまう。
そのままお腹にも筆を滑らすと、くすぐったくて千歌音は後ろに仰け反りそうになってしまうが何とか片手を後ろについて体を支えた。
冷たい水に何だかやらしい筆の動きに千歌音の意思とは関係なく、晒されている乳首がほんの少しずつ硬く姫子の好きな形へと変化していく。
その吸い付きたくなるような乳首に姫子は、にやっと口元を緩めこちょこちょと筆で弄りだす。
「っあ…!」
思わず声が出てしまい千歌音はパッと自分の口元を押さえた。
体が熱い、おかしくなっちゃう…!
顔を歪めふるふると体が震えだすのを必死に堪える。
しかし姫子の筆は執拗に乳首ばかり弄くる。
な、何でそこばかり…??
さすがに不審に思い目をほんの少し開くと、にやついてる姫子が自分の胸を見ていた。
そのまま視線を落とし自分の体を見ると真白いままで水浸しになっている。
「やん!ちょっと!全然書いてないじゃない…///!」
ようやく姫子の悪行に気付いた千歌音が胸を慌てて隠そうとするが、姫子はその腕を掴みそれを邪魔する。
「あ…///!だめ、ちゃんと、書い、てよ!やぁ!は…!んん…!」
いやいやと抵抗してみるが、仰け反る体勢なせいで身動きが思うように取れない。
「いいじゃない、たまにはこういうのも」
それをいい事に熱っぽい声で言いながら筆先で千歌音の乳首を堪能する。
舌の動きにも似たその動きに「はぁっ…!」とちょっと大きな喘ぎ声が出てしまう。
「ほら、もっと声抑えないと部屋から漏れちゃうわよ」
そ、そうじゃなくて私が言いたいのは…!
そう言い返したくてもそんな楽しそうな笑顔で言われては何故か言い返せない。
「…いじわる!」
赤く染めた頬で恨めしそうに目に涙を浮かべて小さく言い返す千歌音がまた可愛い。
姫子はくすりと笑ったあと甘い息が漏れている千歌音の口元に顔を近づける。
「じゃあ、手伝ってあげる…」
「……んっ」
ぐっと千歌音の腰を抱き寄せてやると姫子に縋りつくような体勢になり肩にしがみ付いた。
そのまま姫子は声が漏れないように深く口付けてやる。
「んっ…んっ…ふっ…んんっ」
ちゅ、ちゅ、と何度も角度を変え舌を絡ませてやりながら筆を置いて今度はゆっくりと濡れた乳房を揉みしだいていく。
優しい口付けと胸に受ける愛撫にいつの間にか流されてると分かりつつも千歌音の頭はぼうっとしていく。
そうと分かって一生懸命姫子の口付けに応えてる最中に不意に指できゅっと乳首を摘んでやると「んんっ」と、分かり易い反応が返ってくる。
そのまま姫子の手はするっと下半身に伸び、着物の隙間に手を入れ茂みを掻き分け中指の腹で割れ目をつ、となぞる。
「ああっ…そ、それダメ……っ」
それに反応して口を離した千歌音がぎゅうっと肩を強く掴み返す。
しかしそれで姫子が止める筈もなく、たっぷり溢れている愛液を絡めた指をゆっくりと動かし、腰をピクピクと震わせ昂ぶっていく千歌音の表情を横目でしばらく楽しんだ。
「ぁっ……あ、あ…んん、ん~っ!」
しかし緩慢なその指の動きでは千歌音はいつまで経っても満たされず、もどかしさが募っていく。
無意識にねだる様な声を出し始めた千歌音が愛しくて抱いていた腰を更にぎゅっと引き寄せる。
「……指と舌どっちがいい?それとも筆?」
「はっ、そんなの、分かんな、ぁ…」
恥ずかしい問いを耳元で受け首を振ると、くすっと姫子が笑ったような気がした。
しかしそれを確かめる余裕も無く再び千歌音は姫子に口を塞がれ、くちゅくちゅと音を立てながら秘裂をさっきよりも早く撫でられながら同時に固くなった陰核を親指でぐっと押された。
「ん!ん、んぁ…!――――っ!」
その指の動きに一気に上り詰めていき、大きく体を震わせ絶頂を迎えた。
その後。
結局今日は呪文を書くのを止める事にしたらしい姫子は、部屋の隅でぐったりとしている千歌音に着物を掛けてやり頭をよしよしと撫でてやる。
「和紙、敷いておいて良かったわね」
「~~~///!」
違う意味で汚れた和紙の後始末してるときの嬉しそうな姫子を思い出し、千歌音は今日一番顔が真っ赤になった。
そしてその晩、食事当番だった千歌音の手によって姫子の茶碗蒸しの中にだけ大量の椎茸が仕込まれていましたとさ。
悪戯もほどほどに。
了