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春画ネタ

神無月の巫女 エロ総合投下もの

 春画ネタ

    はらりと何かが、廊下を歩いていた姫子の目の前を舞った。

    それは白い紙だった。
    和紙に何かを書き付けてやめた、いわゆる反故の紙。
    普段から巫女修行もおろそかに、野山で遊び歩いている姫子の動体視力が、その書きかけ
    の紙に何が書いてあるか瞬時に判断し、紙が床に触れる前にとっさに掴み取った。

    それを確認したかのように、今度はもう少し先にまた一枚、はらりと紙が舞う。
    今度はちょっと飛び込むように掴んだ。
    今度はもう少し遠くに落ちてくるはずで。
    予想しながら、すでに廊下を駆け足で予想地点に向かっている。

    その間に、姫子は掴んでいた紙に目を通す。
    それは反故なんかではなく、きちんとした[作品]だった。

    それも「人にはおおっぴらに見せるのをはばかれる」作品で、連作になっている。

    [昨日の姫子と千歌音の逢瀬を時系列順]に描いている絵。

    普段陽の巫女として、厳しく作法を仕込まれている彼女には珍しく、道標のように降って
    くる紙を来栖川邸の長い廊下を走りながら、その元凶である人の部屋にたどり着く。

    相手の都合を確認しようともせず、怒鳴り込むべく息を吸って、勢いよく、襖を開けた途
    端。予想していたかのようににこやかに姫子を見つめる瞳とぶつかった
    「…五ノ首…昨日の夜中、貴女どこにいたの?」
    呼ばれた相手は、それには返事をせず、姫子の後ろを…今姫子が通ってきた廊下を指差し
    た。

    瞬間的に姫子は握っていた紙の束に視線を落し、青ざめて後ろを向く。
    手元には、最後の場面が一枚足りない。
    姫子自身も戯れに筆を取るから、場面の作り方はわかる。
    それに問い詰めたい相手の作品は全作、売り出し日に手に入れているほどの読者だから、
    作品の傾向はわかっている。
    で、なんで一枚残していたかは、廊下の先に見えた人影で確認した。

    最後の一枚を姫子が取り落として、廊下の先の人に拾わせたいのだ。
    姫子が溺愛している黒髪の少女。月の巫女 姫宮 千歌音に。

    紙が舞っているのは、数間先。ほぼ少女と姫子の間。少女はそれに気がつかず歩いてくる。
    迷っている暇はない。
    「千歌音!そこを動かないでっ」
    言うのと同時に、駆け出して落下地点に飛び込む。
    紙を触ったのと、廊下の冷たい感触が伝わってくるのはほぼ同時。
    一瞬遅れて、千歌音の小さな悲鳴と大きな音が姫子の耳に入ってきた。
    「…姫子さま?」
    「ごめんね、千歌音っ。私もすぐに準備をするから、先に彼女たちに祭祀の説明をお願い
    できる?」
    「わかりました。巫女様たちには広間に集まっていただくよう伝えておきます」
    少々目の前で起きた巫女らしからぬ姫子の振る舞いに、怪訝な表情をした千歌音だったが、
    それ以上の追求をせず的確な返答を返して一礼をし、きびすを返す。
    大神神社と巫女たちが集まるこの館の連絡役というお役目に忠実な千歌音は、巫女の仕事
    のほうが優先なのである。少なくとも夜になるまでは。

110 :名無しさん@ピンキー:2009/02/16(月) 21:34:01 ID:6Ods2WVB

    すぐ行くからと再度千歌音の背中に声を掛けて、今度は静かに廊下を歩くと先ほど襖を開
    けた部屋に入り込む。
    「お疲れ様…はい、お茶」
    先ほどの一連を見ていたのだろう、座ったとたんに湯飲みを置かれた。
    そして、また興味が途切れたように文机に向かって筆を走らせている。
    「先ほどの答えを聞いていないのだけど」
    「昨日の夜は…真琴と呑んでた…彼女に聞いてみたら?」
    その答えには、姫子も文句が告げられなかった。確かに千歌音の部屋に行くときに早乙女
     真琴とレーコが話し込んでいる声が聞こえていたのを確認して安堵した覚えがあるから。

    「…私が…覗き見をして、それで描いたと?」
    今度はレーコのほうが、楽しげに問い詰める。それに姫子が答えないと、ちょっとだけ何
    かを思い出すような眼をした。
    「……岩屋の饗宴…36ページ」
    その言葉に姫子がぎくりとする。
    「67頁、85頁……136頁…後……」
    「………」
    次々に何かの呪いでもそらんじているかのように、レーコの口が開く。
    レーコの新作の絵集の題名とそのページ数だ。読み上げられているうちに、姫子の肩が震えた。
    「…欲しいと思って…書き直してあげただけだけど?」
    「………」
    姫子が黙ったと見るや、レーコは姫子にしかわからぬほど小さく口角をあげて笑みを作る。
    つまり、レーコの本を読んだ姫子が、どれを参考にして千歌音に手を出したか予想して、
    描いたといっているのだろう。
    「…愛読者が傍にいて、わかりやすい反応返してくれるから、助かる…」
    違う言葉で言うのなら、姫子は読者の反応を一番に返してくれる人だとレーコは言ってい
    るのだ。
    春画を含めて風俗物と言うものは、見た人の反応など返ってくることのないもの。
    それを見て、実行してみたくなったと言われたら、それは絵師冥利に尽きるということだ
    ろう。
    「で、あの姿勢……無理はなかった?」
    「…すこしだけ、手の位置が辛いのが…」

    どんなに普段は月の巫女を間に挟んで口調はきつくても、真摯に聞かれればきちんと答え
    るのは、陽の巫女のいいところ。
    最高の読み手と最も描きたい人。オロチになる前にはどう欲しても手に入らなかったのが、
    オロチになって、裏切ってから手に入れた。
    どんな代償を払っても、手に入れてよかったと思うもの。
    だから、呪いがかかっても、大切だった人に恨まれても、この二人を護り続ける。
    「できたら、貴女も来て欲しかったけどね…コロナ」
    姫子が拾った駄賃代わりの紙束を持って、閉じていった襖を見ながら、レーコはそうつぶ
    やいた。

    以上です。

最終更新:2010年02月16日 20:21
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