始まりはあの時だった。
それまで敵だった月の巫女が、オロチ二の首・ミヤコの奸計で寝返り、私たちの一員になったあの時――
私は元々、月の巫女のお高くとまった態度(と、やたら自己主張するデカい胸)が気にくわなかったのだけれど、
どうせこんな新参者、使い捨ての駒にされるだけと思って我慢してた。
ところがあの女は味方となったはずの私たちに牙を向けてきたのだ。
まず手始めに三の首・ギロチが、手の甲のオロチの刻印を小刀で貫かれて石に変えられた。
ギロチが石にされるのを見た次の瞬間、私の体は考えるより早く動いていた。
月の巫女を私の攻撃が襲う。
五の首・レーコと六の首・ネココもそれに続いた。
こうして私たち3人と月の巫女の戦いは―― 始まらなかった。
ミヤコと一の首はともかく、私たち3人は瞬殺、完敗だった。
月の巫女の矢で、胸のオロチの刻印を射抜かれて石になっていく刹那の時間に私は思った。
(あの巫女、「殺しはしない」とか言っていたけど私は断言するね。
あの女、確かに殺しはしてないけど私たちを甦らせるつもりなんかこれっぽっちもない。
私たちは石になったまま永遠に放っておかれるに決まってるんだ。それじゃあ死ぬのと同じじゃん)
もう体が動かない。じわじわと全身が石になっていく冷たい感覚が背筋を凍らせる。次第に意識が遠くなってきた。
(なんでこんな事になっちゃったんだろう? ギロチがやられたのを見たら反射的に……
そっか、私ギロチの事……、こんな時になって気がつくなんてバッカみたい。でも、もしやり直せたら、やり直せたら……)
そして私は物言わぬ石となった。
それからどれくらい時間がたったのか。
まったく期待していなかった復活の時は、ある日突然おとずれた。
その時にはすべての事件は終わっていて、私は「これじゃあ、ただのピエロじゃん」と自分の立場に呆然とするだけだった。
私は今さら世の中を呪いなおす気力も起きず、唯一の居場所である退屈な日常に戻っていくしかなかった。
あいも変わらず、日常は私の神経を逆撫ですることばかり。
確かやり直せたなら、したいことがあったはずなのに、それは味気ない、そのくせやたら忙しい日々の中に埋もれていった。
そんな時、街角でレーコと会った。
珍しい事にいつもなら街ですれ違っても、こっちを無視して行ってしまうレーコが自分から声をかけてきた。
「あーら、オタ先生、珍しいじゃない、アンタから話しかけてくるなんて」
「ミヤコ、国へ帰るんだって……」
「えっ?」
「知ってるでしょ? 何十年も戦争をやってる国。何のつもりか知らないけど帰るんだって……」
「そんな! ギロチは? あいつも一緒に帰るの?」
「さあ、そこまでは知らない……」
「……」
「じゃ、伝えたから……」
言うだけ言うとレーコは去ってしまった。しかし私にとってはレーコなんてどうでもよかった。
(ウソでしょ! ギロチが外国へ行く?)
通行の邪魔になるのもかまわず、私は歩道に立ちつくしていた。
(何で? なんでいつもこうなるのよ。石にされた時も、今回も。気がついた時はいつも間に合わない……)
私の左右を見知らぬ人々が通り過ぎてゆく。
(間に合わない? ううん、違う! 今の私は石になったわけじゃない。動くことも話すこともできる。まだ間に合う!)
私はその足でギロチに会いに行った。
結論から言ってしまうと私は彼に告白し、つきあうことになった。
あとでわかった事だがミヤコは最初から自分一人で帰国し、ギロチは残していくつもりだったらしい。
一時期ほど戦いは激しくはなくなったとはいえ、その国はけっして安全な所ではないし、ギロチはあれでも中学生だ。
姉として、つれていく気にはならなかったんだろう。
一方ギロチにしてみれば、おっかない姉貴と離れられるということで、もちろん異存はない……
という展開を予想してたけど、実際には彼はかなり強く反対したらしい。
それでも止めることはできなかったのだ。
もっともミヤコにしても、別にあっちに永住する気ではないと言う。
いまだ行方不明の一の首は、弟の七の首に会いに必ず帰ってくる。
その時、何があってもあのお方をお迎えしなくては、ということだ。
こうして私はギロチとつきあいはじめた。
そして普通の男女が普通に順を追うように、ほどなくして私たちは結ばれた。
当然、経験者の私がリードしたのだけど、好きでもない男とは何度も寝てきたのに、好意を抱いた男との関係はこれが初めて。
私はなんだか初体験みたいにドキドキしてしまった。
初めてと言えば、てっきりケダモノのようにがむしゃらに求めてくると思ってたギロチは、予想に反して優しかった。
本か何かで女の扱い方の勉強でもしてきたのだろう。
手順が教科書通りという印象のやり方だったが、あいつにしちゃあ、上出来よね。
いずれは私たちなりのスタイルができてくるんだろうけど、初心者は基本が第一。
これがアダルトビデオなんて見まくって、「フィニッシュの時は女の顔にかけるもの!」なんて
現実とAVを混同した、間違った勉強をしてきた日には、アッパーをくらわせてアゴを砕いてやる所だったけど。
……
もっとも、その後で、ギロチが以前から抱いていた「恋人ができた時の夢」が
「女を裸にして首に鎖を巻き、夜の公園とかを四つん這いで散歩させること」と聞かされた時は、
怒りの右フックがアイツのテンプルを貫いていたけどね。
それにしてもおかしなもので、ギロチとつきあいだしてから気持ちに余裕ができてきた気がする。
振り返ってみれば、今までの私はすぐに答えを求めすぎていたんじゃないだろうか?
なにか仕事をしたら、すぐに結果が目に見える形になって返ってこなければ、ダメだったのかと失望してしまう。
その繰り返しにあせっていたのかも知れない。
でも本当は結果なんてそんなにすぐ形になるもんじゃない。
それがわかったのは、これまで毛嫌いしていたアニメの仕事にも再び取り組んだ時だった。
「あたしのブレーメンラブ」以来避けていたアニメの仕事を再びやりだしたのだけど、
それはプライドを捨てて仕事ならなんでもやります、と妥協したわけじゃない。
今回はむこうから「この役は是非、コロナさんに」とオファーがあったのだ。
なんでも、その七人の人魚姫が出る子供向けアニメはメインキャラすべてに歌うシーンがあり、
中でも「私に」というキャラは他の六人の人魚姫がタバになってもかなわない最強の実力の持ち主。
だから、それに見合った歌唱力がないと役が成り立たないと言うのだ。
でも、私が引き受けた理由は向こうから頼んできたからというだけではなかった。
そのキャラは本来、主人公の味方側のはずが、過去にあった事件により
絶望のあまり世界のすべてを滅ぼしてしまおうとする悪役。
つまり、私のオロチとしての過去をなぞるような設定だったのだ。
おかげで私は役に感情が入りまくり。
元々本職の声優ではない私なんかは、こういった自分が投影できる役でないと芝居ができないのだろう。
音響監督がOKを出しても、納得がいかないと自分からもう一回録り直しを願い出る私を
「ブレーメンラブ」で競演した声優が信じられない物を見るような目で見ていたのがおかしかった。
今回の仕事も、嫌々出演した「ブレーメン~」がなければ、起用されなかったわけで、
結果がこんな回りくどい形で出てくることもある。
すぐに結果が出るのを求めていたら、大して走らないうちに気持ちが疲れてしまう。
そんな風に思えるようになったのは余裕が出てきたからだろうか?
私たちがつきあい始めて数ヶ月がすぎた。
明日は休日で、私もオフ。だから当然の様にギロチは私のマンションに泊まりに来ていた。
マンションと言ってもこんな田舎の村にあるものだからアパートよりは少し上レベルでしかないけど。
そして今、私は湯気の立ちこめたバスルームに立っている。
まず熱いシャワーで体を温めると、ボディソープをスポンジで泡立てて、白いシャボンを全身に塗った。
そして覚悟を決めると、こみ上げてくる羞恥心に耐えて、両方の手の平を胸の上に置く。
そのまま外から内側へ円を描くようにふたつの膨らみを揉みこむ。
「あっ…、はぁ……」
泡にまみれた指先が乳首に触れるたび、そこは敏感に反応し、充血して固くなっていった。
バスルームでオナニーを始めた私の目の前には、ギロチが座っている。
ギロチの、女が一人でやってる所をどうしても見たいという要求を、当然最初は断固拒否していた私だったが、
結局根負けしてこんな風に彼の目の前で独りエッチの実演を晒しているというわけだ。
どうも「首に鎖で散歩」発言から察するに、コイツ、羞恥系のプレイに関心があるんだろうか?
そりゃあ、わからなくもないよ。
陽の巫女みたいにオドオドして無意識の内に「いじめて光線」を出してる女っていうのは、つい責めたくなる。
だけど、私みたいに気が強い系が恥じらっている姿もまた、男にとってたまらなくそそる光景だ。
それは、私だって見られるのが商売である芸能人のはしくれ、理解してるさ。
でも、やけっぱちでやることになったものの、実際やってみると人前でのオナニーがこれほど恥ずかしい物とは思わなかった。
彼の視線を意識すると、羞恥心で頭の中が沸騰し、のぼせてしまいそうだ。
私は指の先を固くなった乳首に当てると、コロコロと転がすように刺激を与えた。
人によっては充血すると乳輪の部分がプックリふくらんだり、乳首が豆つぶの様に球型になったりする事もあるらしいが、
私のそれは縮こまっていた物がピンッととがって突き出した形になる程度の変化しかおきない。
でも見た目の変化が少ないからといって、そこの感覚が鈍いわけではなかった。
むしろ私の体に点在する性感帯の中では乳首は過敏な方で、こうしていじっているだけで、早くも息が荒くなり始めているくらいだ。
「ん……ふっ……」
私は右手で乳首への愛撫を続けながら、左手でシャワーを取ると水流の強さを最大にした。
そしてお湯を噴き出しているシャワーを股間に持っていく。
乳頭をいじっていた右手を、お湯とシャボンで濡れて肌にぺったりと貼りついた茂みの下まで伸ばすと、指先をクリトリスの上に置いた。
敏感な部分を守っている肉のカバーをそっとめくって、剥き出しにする。
そして程よい熱さのお湯を噴出しているシャワーをそこに当てた。
「あっ、ああっ……」
ほとばしる水流が過敏な神経核に当たる感覚で、脳がしびれていく。
私は左手でシャワーを支えながら、右手の指の腹で水しぶきに叩かれているクリトリスをなでさすった。
ふと横を向くと浴室の鏡に欲情しきった淫乱な女の顔がこっちを見ている。
言うまでもなくそれは私自身の顔だった。
華やかな衣装を着てスポットライトを浴びることを日常としている私が、今は娼婦の様な淫らな表情をしている。
(私、こんないやらしい顔を好きな男の前でしてるんだ……)
そう自覚するとなんだか自分がひどく猥褻な女に思えてくる。
いや、男の目の前でオナニーにふけっているなんて、実際、私は充分に淫乱な女なんだ……
鏡の向こうの顔に、そう心の中で語りかけると、私はクリトリスを嬲る指の動きをいっそう激しくした。
「なあ、もっと指で開いて中を見せてくれよ」
水しぶきで肝心な所がよく見えないのがもどかしいのか、ギロチがそんな要求をしてきた。
私は水流を止めてシャワーを壁のフックにかけると、自分のその部分に左右から両手をそえる。
そして二本の人差し指で肉の亀裂をぐっと両側に割り開いた。
「ああ……」
自分でさえまじまじと見た事のない場所を他人の目に晒している。
今の自分の姿を意識すると耐え難い恥ずかしさを感じると同時に、視姦による倒錯した愉悦がこみ上げてきた。
露出することで胸の鼓動が激しくなっていくのが自分でもわかる。
縦長の裂け目を割り開く役目を片方の手にまかせると、私は右手の人差し指を肉口の中に潜り込ませる。
「うっ、ううっ……」
爪で内部を傷つけないよう注意しながら、指を出し入れする。
激しさを増す指技に反応して、体の奥から粘りけのある体液がどっとあふれ出てきた。
「コロナ、ここを濡らしてるの、シャワーのお湯だけじゃ、ねぇよな」
「バカ……」
私はギロチの指摘にあおられたように、指を二本に増やして自慰行為をエスカレートさせた。
濡れた肉と肉がこすりあわされて、何とも言い難い卑猥な水音がバスルームに響く。
さっきまで割れ目を押し開いていた左手の指を剥き出しのクリトリスの上に移動させ、そこに微妙なバイブレーションを加える。
「あ、あぁ~っ」
私の口から、他の男にはとても聞かせられない、いやらしい声が漏れた。
「コロナ、次は向こうをむいて、やってくれないか?」
ギロチの言葉に、思考能力を失った私は何の疑いもなく従った。
壁に向かい合わせになり、彼の方にお尻を向ける姿勢をとると、私は再び指を濡れた肉の間に入れて、中を掻き回す行為を再開した。
ふと、官能に麻痺した意識の表面に理性のかけらが浮かんできて、私にあることを気づかせる。
(! この格好、後ろの穴まで丸見えなんじゃあ……)
気づいてしまうと、すでに上気していた私の顔は羞恥でさらに真っ赤に染まった。
さすがにこんなポーズを他人に晒すなんて耐えられない。
「ギロチ、もう、いいで……きゃっ!」
言葉を言い終わる前に、それは短い悲鳴に変わった。
ギロチが後ろから抱きつき、腕を前に回して私の泡まみれの胸をわしづかみにしてきたのだ。
「あー、も~、見てるだけじゃ、ガマンできね~っ」
大きな手の平で揉みしだかれて、私のシャボンまみれのふくらみが様々に形を変えた。
「やっぱ、コロナのおっぱい、いーよなーっ。柔らかくて小さくて、俺、こういうのが好きなんだよな~」
うう~っ。今、NGワードを言ったーっ。
そこは「小さいのが好き」じゃなくて「大きいのは嫌い」って言わなきゃダメだろー。
そんな内心むくれている私の気持ちなどお構いなしに、ギロチは柔らかい双丘の感触を楽しみ続けた。
「あうっ!」
ギロチが片方の手を胸から離して、太ももの内側をそっとなであげる。
それだけで、胸が小さいと言われた事への不満など霧散してしまった。
「指が止まってるぜ……」
その言葉を耳にして、私は催眠術にかかったかのようにオナニーを再開する。
「あ、ああ…、はぁあ~」
自らの行為に自然と私の裸身が反り返っていく。
歯を噛みしめてはしたない声があがるのをこらえるが、それでも抑えきれず、歯の間から甘いうめき声が漏れてしまう。
「ひゃうっ!」
何か指より太くて熱いモノが私の股の下をくぐって内ももに触れきて、私は妙な声をあげてしまった。
これって……背中から私に覆いかぶさっているギロチの……?
「コロナの肌はスベスベで、い~よな~」
ギロチの熱く脈打つ長いモノが、泡まみれの私の太ももの内側にこすりつけられ前後している。
いわゆる「素股」というやつだ。
(バ、バカッ! ダメだって! ああ……、もう、いくら自分の指を使っても足りないよ……)
「ギロチ……、それ……」
「あん?」
私は顔を後ろに向けて、潤んだ目で彼を見る。
自分からねだる言葉を口にするなんて、恥ずかしくておかしくなりそう。でも……
「お願い。それ、ちょうだい……」
「欲しいのか?」
「うん、欲しい。私の中に、入れて……」
「コロナはスケベなアイドルだな。自分から欲しがるなんて」
「だってぇ……」
私にここまで言わせておいて、まだ、じらし足りないのか、ギロチは腰を前後に振る。
灼ける様に熱くて長いそれが、泡でぬめる太ももの内側をこすりあげる。
そのたびに、私の上体から力が抜け、もう両手を壁につけなければ体を支えることができなかった。
その姿勢になったため、私のお尻はますます上へ突き出すような破廉恥な格好になる。
ギロチの右手が下に降りてきて、下腹へと移動していく。
肌に貼りつく濡れた草むらをかき分けるようにして表皮をなでながら進み、
ついに彼を受け入れたくてジンジンとうずいている器官にたどりついた。
ギロチの手のひらが、私の盛り上がった部分に重ねられる。
人差し指と中指をそれぞれ左右の陰唇の上に置くと、指を開いて入り口を開けさせた。
彼が二本の指を開いたり閉じたりをくりかえすと、それに従って私の肉口もぱくぱくと開閉をし、
そのたびに内側からお湯とは違う熱い粘液があふれて内股をしたたり流れた。
「コロナ、ドコに欲しいんだ?」
「そんなこと……」
とても口にできないような言葉をギロチが求めてくる。頬を赤らめてためらう私のとば口に彼の指が入ってきた。
「あっ……」
でも深くは入れずに、あくまで浅瀬をピチャピチャとかき回すだけだ。
「じらさないで……」
「ドコに欲しいか言ったら、入れてやるさ」
「ううっ……」
「いらないのか?」
「う、うぅ…、お…に、入れて……」
「あん? 今、何か言ったか?」
膣口をもてあそんでいる手とは別の手も、私の下半身に忍び寄って来た。
さっき私がオナニーで見せたのをお手本にして、彼はクリトリスの上に指を置くと、
その過敏な器官に小刻みに震動を加えてくる。
「ひゃっ、ああ、そこっ、ダメ! い、入れて、お願い!! 私のお○んこに入れてェッ!!!」
ついに私はAV女優の様な卑猥な言葉を口にしてしまった。
そして一度口にしたことで、あっけなく理性の堤防が決壊した。
私の情欲は一気に狂おしく燃え上がり、もうそれを受け入れないことには、一時もいられないほどになってしまう。
「欲しいんだな?」
「欲しいっ、お○んこに欲しいのっ!!」
内股にこすりつけられていたモノが後退する。
そして、それまで入り口の内側をかき回していた指が抜かれ、愛液に濡れた陰唇を割り開いた。
ぽっかりと口を開けたそこに、固い先端が押し当てられる。
「早く、来て……」
せがむ私の言葉に応えて、彼の長大なモノがメリメリと狭い肉の道へ押し入って来た。
「くうぅ……」
彼と会うまで日本人の体しか知らなかった私にとって、ギロチのモノは想像を越える大きさで、
今それが私の胎内をみっちりと満たしていた。
体の大きい方ではない私は、内側から拡張される感覚を、ただ全身をわななかせて耐えるしかなかった。
それでも彼の腰と私のお尻はまだ接していない。
ギロチのそれは、まだ私の中に根本まで入りきっておらず、一握りほど余していたからだ。
「動くぞ?」
「う、うん……」
ズブッ!
「あうっ!」
ギロチの先端が私の奥底にぶつかってくる。
ズッ、ズッ……
彼の固いモノが一番深い部分を二度・三度、ノックしたかと思うと……
ドチュッ!!
渾身の力をこめて最深部に叩きつけられる。
それが繰り返されるたびに、衝撃で頭の中に電流が走り、意識が持っていかれそうになった。
ギロチが激しく腰を使うのに合わせて、私の体は前後にゆさぶられ、
下向きになって、ややボリュームを増して見える二つの胸がふるふると揺れていた。
「コロナ、すげぇな、根本までくわえこんでるぜ」
「えっ……?」
彼に指摘されて下を見てみると、いつの間にか床にスタンド式の鏡が置かれていた。
そして、そこに映し出されているのは、彼の巨大なモノを飲み込んでいる私のアソコ……
挿入された直後は収まりきらなかったのに、執拗な抽送をくりかえされている内に、その部分はすっかりなじんで
今では深々とこわばりを受け入れていた。
赤黒くて、表面が濡れてテラテラと光っている節くれ立った男の器官が、肉の穴の中にズブズブと出入りをくりかえしている。
これ以上ないくらい、いやらしい光景がハッキリと鏡に映し出されていた。
「い、いやぁ……」
思わず恥ずかしさに眉をたわめながらも、私はどうしても鏡から目をそらすことができない。
興奮と羞恥心が私の肌を火照らせ、桜色に染めた。
「あうっ……」
それまで私のくびれた細い腰をつかんでいたギロチの手が胸へと移動してきた。
重力に引かれて逆さまの円錐状になったふくらみの先端を、無骨な指でつまんでひねりを加えるようにもてあそぶ。
「ん、んん……」
敏感な乳首への愛撫に、私の閉じた口から甘い吐息がこぼれる。
そしてギロチのもう一方の手は、置いてあったボディソープのボトルをつかむと、
逆さにしてその中身を私の背中からお尻にかけて垂らした。
「あんっ……」
突然の冷たい感触に私の腰がビクッと震える。
私が何のつもりかと、とまどっていると、ボトルを置いたギロチは
ボディソープでぬるぬるになった私のお尻を手のひらでなでさすってきた。
そのまましばらく柔らかい肌触りを楽しんだあと、私の髪の毛に残っていた泡のかたまりを手ですくう。
そして、それをお尻の割れ目の間に塗りつけてきた。
「あ、嫌っ、そこは……」
「心配するな、まだオマエの許しをもらってないからな。指を入れるのはやめとくわ」
(バ、バカ! お尻の穴をさわるのだって許しちゃいないわよ!!)
そんな私の内心の叫びもかまわず、ギロチの太い指が後ろの穴の上で円を描くように動く。
「はぁ、うう~~っ」
未知の感覚に内ももの筋が引きつり、極太のモノを受け入れている筋肉がキュ、キュッと彼をしめつけた。
その反応でギロチは、私の体が排泄する器官への刺激を拒絶していないと判断したのだろう。
後ろの穴をなでさすっていた指の動きがさらに大胆になった。
そんな所、触るなんて。
ああ、でも普段なら絶対に嫌だけど、今なら、せっけんをつけた指でていねいにそこを洗われているようなものだし、
汚れてなければ触る位は許してもいいかも……
そんな風に自分自身を納得させながら、私は初めての快感を受け入れ始めていた。
後ろへの愛撫に対する私の抵抗が薄らいできたのをみてとると、ギロチがゆっくりと指先に力をこめてきた。
「ちょ、そんな…!」
まさか、さらに行為をエスカレートさせてくるとは思ってもいなかった私はあせった。
指の力に負けて、充分に揉みほぐされていたその部分は、ためらいながらも徐々に口を開いていく……
(このままじゃ、指が入ってきちゃう!)
私はあわててそこの筋肉に力を入れて固くし、指の侵入を阻もうとした。
ところが、さっきまでとがった乳首をいじりまわしていたはずのギロチのもう一方の手が、気がつけば私の下腹部に移動している。
そして彼の指が、充血してすっかり膨らみきった、むき出しのクリトリスをキュッとつまんだ。
「ああっ!」
鋭い刺激に、私の裸体が電流に触れた時の様に、大きくはねる。
後ろの穴に攻め入ろうとしている指への防除体勢は、一瞬で総崩れになってしまった。
その時を待っていた彼の指がズブズブと排泄する器官にめりこんできた。
(ああ……、指は入れないって、言ってた…、くせ、に……)
「ああ、はぁ、はぁ……」
わたしはもう何も考えられず、だらしなく開いた口からよだれを垂らして喘ぐだけだった。
お尻の中で指がモゾモゾと動くだけで頭の中が真っ白になり、何がなんだか、わからなくなっていく。
もちろんその間もギロチの腰は動くのをやめたわけではない。
後ろの穴を嬲られて悶えながら、前の穴は激しく出入りしている彼の太いモノを貪欲に飲み込んでいる。
せっけんでぬめったギロチの指が後ろの穴の中を掻き回すと、体の内側をゾクゾクするような痺れが走り、歯がカチカチと鳴った。
ギロチの動きが単純なピストン運動から、腰を回しながらの突き入れに変わる。
彼の長大な肉柱が、熱くぐずぐずに溶けただれた私の奥底を攪拌した。
「あっ、奥に……当たって、るぅ……」
私はもう恥も外聞もなく、甘え泣きの声をあげた。
剛直で肉道をこすりあげられる快感。
後門を犯す指がもたらす愉悦。
前後の急所を同時に責められる、生まれて初めての感覚で、すでに私は自分が何をしているのかさえわからなくなっていた。
「ああっ、ギ、ギロチ、私、もう……、ダメ、お願い……」
私はもう、まともな言葉を話すこともできず、支離滅裂に単語を並べてギロチに限界が近いことを訴えた。
「よし、一緒にイこうな!」
私の願いに応えて、ギロチが腰の動きを加速させた。
一気にラストスパートの体勢に入る。
パンッ、パンッと肉と肉がぶつかり合う音がバスルームにこだました。
亀頭のくびれの張り出した部分が、内側の肉ヒダを根こそぎ掻き出していくみたい。
「あ、ああ……、あ、ひぃ……」
はしたないよがり声がもう止まらない。
私は息も絶え絶えに喘ぎながら、朱に染まった体をうねらせた。
ズンッ!
ギロチの先端が私の奥底に叩きつけられる。
「はうっ!」
次の瞬間、胎内を埋め尽くす極太のモノがグググッと膨らんだ。
狭い肉道が、ふくれあがった剛直に圧迫される。
「うっ!!」
ギロチが噛みしめた歯の間から、くぐもったうめきを漏らす。
そして腰をいったん引くと、もう一度、子宮口をこじ開けるくらいに、ひときわ深く貫いてきた。
それが奥に当たった瞬間、彼は灼けるくらい熱いしぶきをドバッと最奥に噴き上げた。
「あヒッ!!」
熱くとろけた肉の中に灼熱の白濁液を叩きこまれる感覚に押し上げられて、私もまた一気に頂点に達してしまう。
「あ、あああ…、ああああぁぁーーーーーーっ!!!」
絶頂を極めて弓なりに反り返った私の体がビクッ、ビクッと痙攣する。
すると昇りつめた瞬間、私の中から何かが噴き出した。
(ああ……、これが話に聞く潮吹き?)
麻痺した頭をそんな卑猥な単語がよぎる。
獣が交わる格好のまま、全身を震わせる私の恥穴から、さらにピュ、ピュッと熱い果汁がほとばしった。
かたや胎内では、肉柱が内側にたまっていた精液を最後の一滴まで残らず吐き出そうとして、二度・三度と脈動している。
ドクッ、ドクッ……
彼の放った灼熱の体液が、じんわりと胎内に広がっていくのを私は感じていた。
はっ、はっ、はっ、と小刻みに漏れていた私の息が、次第に落ち着いてきた。
「はあぁ~~っ」
胸の中の空気を吐き出したすと、ぶり返してきた余波で最後にもう一回ブルブルッと大きく身震いをする。
全身から切ないオーガズムの波が引いて行くに従って、壁について体重を支えていた両手から力が抜けていった。
手のひらがずるずると壁を滑り、裸体が崩れ落ちていく。
私とギロチの腰の結合が解かれて、まだ半分堅さを残した彼のモノが白濁の糸を引きながらズルッと私の肉穴から抜け落ちた。
「はあっ、はあっ……」
私はバスルームの床にへたりこみ、脱力した体を壁によりかからせて、かろうじて自分の体重を支えた。
半開きの唇から、いまだに熱い息が漏れている。
私はトロンと溶けきった目で宙を見つめて、絶頂の余韻にどっぷりとひたっていた。
(あ…、あふれてる……)
霧がかかったような意識の片隅で、ギロチが注ぎ込んだ大量の体液が開きっぱなしの膣口からあふれ出し、
浴室の床に垂れ落ちて、白く広がっていくのをぼんやりと感じていた。
(あ~あ、ゆうべはムチャしたなぁ……)
私は鏡の前で寝起きの髪を整えながら、昨晩の事を振り返り、自分の乱れように赤面していた。
でも鏡の中の自分をよく見てみると、人目につく場所には一つもキスマークがついていない。
やってる最中はガムシャラなくせに、考えてくれてるんだ、あいつ……
言葉には出さないギロチの心づかいに気がついた私の胸の中に、何か温かい物が満ちてくる。
鏡の中の私は自分でも照れくさいくらい、優しい目をしていた。
私たちは今、休日の商店街を歩いていた。
私の村は田舎だが、隣の街まで足を延ばせばウィンドウショッピングができるくらいの繁華街はある。
横を歩くギロチが思い出したように話題を振ってきた。
「オレ、この前出たおまえの新しいCD、買ってみたんだ」
「はァ?」
私はギロチの言葉に喜ぶよりも、むしろ疑問符を口にしてしまった。
だってコイツは、私が以前お義理であげたCDをブーメランにして遊んだのだ。
あんな屈辱を味あわされて、今さらCDを買ってくれたからといって感謝する気にはなれないのも当然だろう。
「あの、オレ、音楽のことはよくわかんねーんだけどさ」
(はいはい、アンタに知的な感想は求めちゃいないさ)
私は心の中でギロチの言葉をスルーしようとした。
私の考えてる事がわかる筈もなく、ギロチは呑気に言葉を続けた。
「中でも三曲目、いいな、俺、気に入ったぜ。なんか詩がよォ、オマエのこと言ってるみたいで」
「えっ!」
驚いた。実は今回のミニアルバムの三曲目は私の初めての作詞曲なのだ。
プロの作詞家のアドバイスを受けて何回も手直しをしたものの、
結果的には、今の私のレベルの中では最大限、伝えたいことが表現できたと思っている。
でもペンネームを使っているので、私が作詞をしたことは関係者しか知らないはずだ。
それをこのギロチが曲を聞いて、あれが私の事を歌った物だって、わかったって言うの?
この脳ミソまで筋肉でできているバカが、バカが……、バカ……
「あん? オメー、何か今、すげー失礼なこと考えてねーか?」
体をかがめてギロチが私の顔をのぞきこんでくる。
でも一つの考えにとらわれていた私の耳にはその言葉は入ってこなかった。
あの歌詞……
誰かに私をわかってほしいと思って作った詩。
それをわかってくれた人がここにいる。
「ギロチ……」
「えっ……? おいっ! なんだ? 目ェ、ウルウルさせて、オレ何か泣かすようなこと言ったか!?
ゴメン! あやまる! 謝るから許せ! なっ!」
やだ、こんな往来で涙腺ゆるませるなんて。
照れくささで自分の顔が真っ赤になっているのがわかる。
「バカッ、男がこんな事でうろたえるな」
私は強がってみせたが、声が震えているのがバレバレだ。
うわーっ、路上で男の言葉に目を潤ませているなんて。
こんな場面、あの女に見られたらなんて言われるか……
そう、あの性格が極悪な……
「バカップル……」
「ぎゃあああああああーーーーーっ!!」
ちょうど頭に思い描いていた人物の声がすぐ背後から聞こえてきて、私は思わずみっともない叫び声をあげてしまった。
「レーコ! あんた、いつの間に!」
「ギロチ、その様子だとうまくいってるようね……」
かみつく様な私の言葉を無視してレーコはギロチに話しかけた。
「そりゃー、もう! レーコ、いやレーコさんからもらった本のおかげっス」
あん? 何の話してんだ?
他の女とギロチが私の知らない話題を口にしているのは、やっぱり面白くない。
そりゃ、疎外感を感じるほどの事ではないとはわかっているけど。
「本って、何のことよ?」
「私がギロチに本をあげたの……」
レーコがいつも通り、無表情に答える。
ギロチと本? ありえない組み合わせだ。
どーせ、古くさい番長マンガだろうけど……
「何の本よ?」
「フッ……」
私の問いに、レーコが少し頭を下げて意味ありげな笑いをもらす。
顔の角度が変わったため、光がメガネに反射して、レンズの奥の目がどんな表情をしているか読めない。
一拍、間を置いてレーコが口を開いた。
「How To Sex ……」
「……」
「……」
「はいィっ?」
思わず私はすっとんきょうな声をあげてしまった。
「つまり初心者向けに書かれたセックスのやり方の本……私が選んでギロチにあげた……」
「……」
「どうやら役に立ったようね……」
「もう、バッチリっスよ!」
横からギロチがヘラヘラした笑顔でレーコに答える。
「なるほど、あんた達はあの本にあった通りのやりかたで……フッ……」
「だよなっ、コロナ」
ギロチが私の顔をのぞきこんで同意を求めてきた。
「……」
「ん? コロナ、どうした?」
「コ……」
「コ?」
「コロナ・パァァァァンチィーーーーーッ!!」
「ぐばぎゃあぁぁぁぁぁーーーーー!!」
不意打ちの顔面パンチをあびて、ギロチの巨体が目の前の交差点から一つ先の信号機の下までふっとんだ。
返す刀でレーコのメガネをコナゴナにしてやろうと、ふりかえりざま拳を振り上げるが、すでにそこには誰もいない。
周囲を見回してみると、レーコの走り去る後ろ姿が、四つ先の信号の向こうに小さく見えるだけだった。
「チッ……」
あげた拳を虚しく降ろして、私は呆然とその場に立ちつくした。
最悪だ……
迂闊だった。
そりゃあ、ギロチにとっての初エッチがうまくいった事に関しては、レーコのおかげもあると言えなくもない。
最初の頃、彼がやけにベッドの上で優しかったのについては、感謝すべきなんだろうけど……
でも、ギロチが最近妙にマニアックなプレイを求めてくるようになったのも、すべてレーコの入れ知恵と考えると……
あああ~!
私とギロチの行為は、本を通してとは言え、すべてレーコにプロデュースされていたってこと?
ゆうべのあの公開オナニーショーも? 後ろの穴を責めてきたのも?
さっき嫌な笑いを浮かべていた時、アイツの脳内では二人の夜の再現映像が流れていたんだ。
そう考えると恥ずかしさで体中の血液が沸騰して、こめかみの血管が破裂しそうになった。
ああーっ! この場で腹をかっさばいて果ててしまいたい!
もーっ、最悪だーーっ!
しばらくの間、ひとしきり怒りまくったおかげで、ようやく頭が冷えてきた私は、
しょんぼりと肩を落として街をトボトボ歩いていた。
私の人生、なんでこうなるんだろう?
思い返せばケチのつき始めは、あの時負けてからだ。あの……
「胸がデカいだけの、ド変態巫女に……!」
おっと、忌々しくて、つい思っていたことが口に出てしまった。
その時、後ろから小さくささやく声が聞こえた。
「……ねちゃん…、だめだよ…、おち…いて……」
いけない、背後に誰かいたんだ。今の下品な独り言を聞かれたかな?
でもこの妙にオドオドした声には、聞き覚えがあるような?
すると突然、背後から刺すような怒気が、いや殺気が私の体を貫いた。
本能が命の危険を感じ取り、一気に全身が総毛立つ。
「コロナさん……。今、大変面白い事、おっしゃってましたね」
この声は……!
心当たりがありまくりな声で話しかけられて、私は恐る恐る背後を振り返る。
油がきれて錆びたロボットのように首がギギギ…と、きしみながら後ろを向いた。
いたっ!
鬼がいたッ!!
長いストレートの黒髪が全身から噴き上がる怒りのオーラで、風もないのに波打ってなびいていた。
復学したのか、休日の外出まで学校の制服姿とはさすが優等生だが、
その制服も内側から放出されるエネルギーで、髪の毛同様バタバタとはためいている。
そして切れ長の二つの目は、血のように赤い光を放ち、まるで岩でも貫きそうな鋭い眼光が私の顔に突き刺さっていた。
あああ…、女としか交わらないくせに無駄にデカいあの胸は……
まさしく奴だッ!
その後ろでは、つがいの陽の巫女が、主人に叱られた小型犬のようにおびえた表情でオロオロしていた。
アスファルトの上に仁王立ちしている女夜叉の方に視線を戻すと、奴の手に、どこから出したのか、
いつの間にか月の巫女の太刀が握られていた。
右手で刀のつかを持ち、左手で刀身を覆うさやを握っている。
そしてそれを体の前に突き出すと、パチンッと小さな音を立てて鯉口を切った。
鯉口を切るとは、いつでも抜刀して斬りかかれるようにすることだ。
つまり……、殺る気、満々?
「ねえ、さっきの言葉。胸がデカいだけの、ド 変 態 って……」
「あ、あ、あぁ……」
逃げられない。
全身が硬直して足が動かない。
私は矢で刻印を射抜かれたわけでもないのに、再び石になっていた。
「だ れ の こ と か し ら ?」
「ぎゃああああぁぁぁぁーーーーーーっ!!」
END