視聴者の皆様、こんばんわ。ご愛顧頂きまことに有難うございます。
インターネット百合脳大河ドラマ 「神無月の巫女:番外編―忘れえぬ接吻―」のお時間です(違
ぶっちゃけ、前回のEpisode 1で姫子が千歌音と絡まないまま気絶したので、
宮様は 欲 求 不 満 です!
今回は第二部3分の2までを投下。13レスほど1時間以上を予定しております。
合言葉は「千歌音ちゃん、>>710からの続き、受け取って!」
(冒頭の一文は710の最終行の訂正です)
↓では、どーぞ。
姫子は、この唇の記憶に貪欲になり始めていた―――。
千歌音は姫子の上体を寝かしつけると、薬とコップを片付けはじめた。
その様子をぼんやりと眺めながら、姫子の悶々とした想いは募る。
しかし自分の思惑とは裏腹に、薬の解熱作用のせいで体中が重くなってゆく。
全身が徐々に火照りかえる。
千歌音に自分の心の中のしこりをぶつけてみたいのだけれど、熱とけだるさの
せいで頭がうまく回らないし、言葉がうまく紡ぎだせないでいる。
姫子は普段から決して理路整然と喋れるほうではなかったし、感情をぽんぽん
ストレートに口にしてしまうタイプだ。
けれど、このときばかりは慎重に言葉を選んだほうがいいように思われた。
こんなことを聞くのは不躾かな…?
もし千歌音ちゃんに変に思われたりしたら…
でも…。
と思って右腕をおずおずとさし伸ばす。
千歌音は、サイドのテーブルから盆を手にとって立ち上がろうとしたその刹那、
自分の服の袖をぎゅっと引っ張る力に気がつく。
それは姫子にできる精一杯の訴えだった。
千歌音が振り返ると姫子が口をパクパクさせている。
声にならないけれど、姫子の唇の動きは千歌音にも読み取れる。
「待って」
と。
千歌音は黙ってはいたが、その目元が嬉しさで緩んでいた。
姫子の右手の甲を包み込むように、掴んでやさしく振り払う。
すくっと立ち上がって盆を持って、だだっ広い部屋の奥にある、扉の向こうに
消えていった。
――…行かないで、…千歌音ちゃん、……私をおいていかないで……。
永遠の別れでもないのに、なぜ今そんな想いに囚われたのか、姫子にも分からない。
遠ざかる千歌音の背中を目で追いながら、姫子の後悔は憔悴に変わってゆく。
千歌音がいない、このがらんとした空間にただ一人残されて、全身を覆ってくる
不安と寂しさ。
――この感情を打ち消すために、何かに縋りたい……。
さきほど千歌音が腰掛けていた部分のシーツを片手で手繰り寄せて、まだ残っている
彼女の温もりで心落ち着かせようとした。
鼻は彼女の残り香を、目は優しい笑顔を、待ち焦がれている。
姫子の耳は、扉の開かれる瞬間を期待して鋭く研ぎ澄まされてゆく。
身体が異常に、熱い。
薬の効果で体内の発熱が促進されているのだろう。
まるで、灼熱の砂漠に寝かされているよう。
汗ばめば汗ばむほど、全体内から水分が搾り取られていくようだ。
「…んんっ……っ…あっ…ちか…ね、ちゃ…ん…」
喉に並々ならぬ渇きを感じて、姫子は千歌音の艶やかで弾みのある唇との接触を夢想した。
そして、その懸想がとたんに禁忌なもののように思われて、シーツの端を口に含んだ。
押さえられた情動が下腹部に移動して、そこにうず痒い、不思議な感覚を溜め込んでいる。
じわりと染み込んだのはシーツへの唾液か、それとも下半身の体液なのか分からない。
姫子が寝転がって身悶えするにつれ、いつもの赤リボンで結われていない、ストレートに
下ろされた腰の丈まである髪の毛が、ベッド上で扇のように広がっては、振り乱れてゆく。
今度は心の中で叫んでいた。
――……早く、早く帰ってきてよ……千歌音ちゃん!
千歌音がいなくなったのは僅か数分にしか過ぎないのだが、姫子にはそれが異常に長く、
狂おしく、永遠に続く拷問の時間のように感じられた。
――カチャリ!
ほどなくして、静寂を突き破るかのようにドアノブの回る音がした。
姫子の視界に飛び込んでくる、薄暗い室内に隣室から差し込む一条の光と、次第に
スーッと伸びてゆく長身の少女のシルエット……。
千歌音が両腕に、何やら携えて戻ってきたのだ。
「着替えをもってきたの。汗をかいて、気持ち悪いんじゃないかと思って」
姫子は、今の自分が淫らな姿態を晒している気がした。
潔癖そうな友人が、ゆったりとした足取りで近づいてくるのだ。
千歌音からは見えないほうの後ろ手で慌てて、乱れた衣服や寝具を直そうとする。
千歌音は、淋しがらせてごめんね、とでもいように、姫子の顔を覗き込みながら、
紅茶色の髪の頭をなでなでする。
そして、さっきは振り払った姫子の右手を軽く握り締めた。
自己の妄想に気後れを感じつつ、千歌音の心遣いが嬉しくて、そしてなにより
千歌音を身近に感じられることが嬉しくて。
姫子は熱と倦怠感で衰弱しきったはずの体に鞭打って、屈みこんだ千歌音の
首っ丈に、すがりつくように両腕を回してきた。
千歌音は大胆な姫子に、思わず目を見張る。
求めに応じて、床に膝をついて立ち、上体だけ姫子のほうに身を寄せて抱きしめる。
姫子は期待を込めて瞳を閉じる。
誘い受けるように上向き加減なその口元。
千歌音は、姫子の右手に五本の指を綿密に絡み合わせながら、けれども今度は、
唇というよりは口角に程近い、皮膚の表面に軽く触れるような接吻をした。
再び瞳を開けた姫子の目に入ったのは、既に立ち上がって、赤子をあやすかの
ようになだめ、諭すような表情で俯瞰している千歌音。
「じゃさっそく、着替えましょうね」
千歌音には、熱っぽく瞳をうるうるさせて縋りついてきたり、唇で誘惑したりする
姫子が、妙に色っぽく感じられた。
少し乱れた着衣や髪も、姫子の艶っぽさを品のいい程度に演出させる要素となっている。
心の動揺を見抜かれぬようにして、そして理性が感情を制し、精神を肉体よりも優位に
立てようとして、わざと姫子を子ども扱いしてみたのだった。
それは友情以上の感情を溜め込んだ千歌音が、姫子に対し精神の均衡を保つ常套手段であった。
肉欲の奴隷と成り下がったときの自分を想像することは、誇り高い千歌音にとって、
我慢がならなかった。
なにより、そんな自分を姫子が蔑むのではないかという最大の恐れが、自分を戒める
原動力となっていた。
欲望にぎりぎり歯止めをかけることには長けているのだ。
いつもどおりの自制心で、千歌音は禁断の色欲を封じた……はずだった。
寝そべったままの、姫子のパジャマの上衣のボタンを、千歌音は一つずつ丁寧に外してゆく。
姫子の着ていた薄紫色のパジャマは千歌音の借り物とみえて、姫宮家御用達の上等のシルク製で、
サイズは少し大きめだった。
前をはだけると姫子は、可愛らしく小さなピンクの花柄模様のレース飾りがついた、
白地のキャミソールを身に着けていた。
その下には、ブラジャーは着けていない。
木綿製の薄い下着を通して、標準的な大きさだが形の良い胸がみてとれる。
中央部が突起した二つの乳輪が透けてみえそうだ。
千歌音は思わず息を弾ませた。
その二つの山なりに触れそうになって差し出した手を、理性が頭をもたげ、
慌てて引っ込めさせる。
しかし姫子のほうは考え事に夢中になって、その様子には気づかない。
直前のキスが拍子抜けするほど軽かったので、姫子はキスなんて千歌音にとっての
スキンシップに過ぎないのかなと思いはじめた。
姫宮家主催のパーティーには、諸外国からの来賓も多いのだから、千歌音にとって
キスなんて社交辞令みたいなものかもしれないな、と。
千歌音は、興奮を気取られないように平然として、姫子の下半身を覆っていた布団を剥ぎ取った。
パジャマのズボンを穿いていなかったので、白いパンティーのみ身につけた、色白の両足が露わになる。
その太腿を異常な目つきで眺め回していたが、姫子の視線が気になるので目を逸らした。
姫子の首と背中に手を当て、両腕で姫子の上半身を起こす。
そして、姫子にくるりと向こう側を向かせる。
二本の腕からパジャマの袖を器用に抜き取って、脱がせた。
姫子のキャミソールは肩紐が長く、後ろの背中が途中まで大きく開けられたものだった。
千歌音は、姫子と対峙していないこの状態で、湧き上がる欲求の血潮と心の乱れを鎮めようとした。
千歌音は、姫子の紅茶色の後ろ髪を鷲掴みにして、肩越しに前身に垂れさせ、
姫子の両手でその束を押さえさせた。
次に肩紐を外そうとしたが、思い立って、その両手をとめてしまった。
そして、その手の行く先に迷った挙句、姫子の幅が狭くやや撫で気味の両肩に、千歌音は手をかけた。
露になった白い背中を、固唾を呑んで、隈なく眺め渡す。
――…なんて、細くてきれいな背中と小さな肩幅、そして華奢で括れた腰周りなのかしら……。
たまに同伴の入浴中でも見かけた姫子の背中が、この時非常に魅惑的で、
いつも以上にこの小さな背中を守りたい、と千歌音に思わせた。
どちらかと言えば千歌音のほうが、学園でも姫宮家邸内でもいつも後ろを
追いかけてくる姫子に対し颯爽と歩く「宮様の背中」を見せていたので、
新鮮な感覚だったのかもしれない。
もっと顔を近づけようと、千歌音は身を乗り出して、ベッドの上に片膝をつく。
その動きをベッドの軋む音で察した姫子は、千歌音の身体ひとつ分の場所を設けるために、
ベッドのサイドから中央に詰め寄った。
背中の一点を凝視しながら、千歌音は姫子と同じ平面上に座した。
背中はその人の人生を語る、という格言がある。
うなじから背の中央を伝って走る一直線の背骨が、姿勢の良さと姫子の歪みない心身の
成長ぶりを示唆しているようだ。
うっとりと見入っていた千歌音は、姫子の目線がないのを隠れ蓑に、ふと悪戯をしてみたくなった。
その背骨に沿うようにして、唇を這わせる。
途端に姫子が背中越しの刺激に俊敏に反応した。
「ひゃ…んっ…!ちょっ…と、千…歌音ちゃん!」
奇声とも喘ぎ声とも受け取れる声をあげて、両肘を後ろに突き出す格好になる。
肩甲骨が浮き彫りになって、背中に二つの逆三角形の台地を形成する。
その姿は千歌音のイマジネーションをかき立てた。
「姫子の背中には、天使の羽根が生えてるみたい…」
「え…?…あ、じゃあ、千歌音ちゃんは月から舞い降りた天女かな」
歯が浮きそうな台詞が臆面もなく返ってきたので、千歌音は思わず口元が緩む。
本当にこの子は天使なのかもしれない。そして、その純粋無垢な魂を汚すことを、一時でも
夢想していた自分を恥じてもいた。
欲望を忘れようと、反省するように頭を垂れる。
姫子は、自分の背中に千歌音の額が、ごつん、と当たって、軽く重心をかけてくるのを感じた。
「…千歌音ちゃん…?気分でも悪いの?やっぱり疲れてる……?」
「姫子、お願い……少しだけ、このままでいさせて。すぐに私、落ち着いて…
いつもみたいに、良くなるから……」
姫子の身体からは、さっきまでの茹だるような熱っぽさや気だるさが、
既に尾を引きはじめていた。
何より千歌音を気遣う姫子のことである。
うんうんと頷いて、肩にかけた千歌音の手に労わるように掌を重ねた。
姫子は、千歌音が体重を掛けやすいように、お腹に少し力を込めて、
前屈みになった
…が、傾きすぎて、うつ伏せに倒れそうになる。
あらら……と姫子。
反射神経の良い千歌音は、急いで姫子の肩を引っ掴んで支えようとする。
その反動で逆に姫子が、後ろの千歌音の懐へと体を預ける体勢になった。
千歌音の豊満な胸がクッションとなって小さな背中を、すぽん、と受けとめる。
姫子は思わぬアクシデントに、またしても身体が緊張して硬くなってしまう。
千歌音の息遣いが、聞こえてくるような至近距離だ。
実際、耳の裏に千歌音の生暖かい息がかかっている。
ほのかに千歌音がつけているコロンの香りが漂ってくる。
それは上品だけれども、どこか性感を刺激するような妖艶な匂いでもあった。
姫子は自分でも、理解不能なほど、胸の鼓動が速くなり、全身の神経が収縮し、
顔に集中して血が上流するのを感じた。
これは、すでに風邪による高熱や眩暈のせいではないことは明らかであった。
胸に両手を当てたまま、うずくまる様に背を丸めつつ、姫子は考える。
このドキドキはもしかして、恋のときめき…?
ソウマくんとのキスの時も感じた…でも、今はそれ以上…。
なんで千歌音ちゃんにこんなにトキメクのかな…女の子なのに……。
私って変なのかな………。
【挿入歌】♯「Suppuration-core-」by KOTOKO を脳内演奏して下さい♪