Episode 3:Return Kiss その6

神無月の巫女 エロ総合投下もの

Episode 3:Return Kiss その6

 

視聴者の皆々様。こんばんわ。 いつも大変遅れまして申し訳ございません。
毎度ご愛顧頂きまことに有難うございます。
インターネット配信・百合脳大河ドラマ「神無月の巫女:番外編」第三部・映画版
「神無月の巫女・ザ・ムービー―Return Kiss―」のお時間です。


さあて、今晩の「神無月」はぁ~?(サザエさん風に)

やっぱり 交  差  点  エ  ン  ド ですよね?(大嘘)


ところで、姫子・千歌音ラブラブ百合ED→ソウマ姫子にフラレ場面は、460さんが
見事に鬱々モードで再現(なんて絶妙な投下タイミング。あなた様は神ですかw)
してくださいましたので、今回の放送分ではざっくり割愛させていただきます(笑)

…さて本日は、とうとう怒涛の第三部最終話となる第6回「甦る唇の記憶」をお送りします。
都合12レスほど1時間半以上(≦∞通信環境…以下略)枠を予定しております。
合言葉は「千歌音ちゃん、>>850からの続き、受け取って!」
 
↓では、どーぞ。(゜ヮ゜)ノ


―――絶頂のまさにその直後。

姫子は興奮の峠を通り越しての忘我状態にあった。
精根尽き果てたような表情で、身を捩じらせた姫子の上体を、千歌音は優しく手を添えて起こした。
そしてさも愛しく慈しむように、腕の中にしっかりと抱きとめる。
顔がよく見えるように、麗わしの姫君の乱れた前髪をさらりと掻き分ける。

千歌音は自分の口周りにたっぷりとついた、姫子のものであった血潮を手で拭い、
さらに指の血液をチュルッと口に含んだ。
そして今宵の秘め事の最後を締めくくるかのごとく、姫子の唇に感謝と歓喜の気持ちをこめて、
心篤く口づけを施す。

「…ありがとう、姫子。今夜の貴女、とても良かったわ…
 私、二人だけの今日のこと、これから一生忘れない…」


…んんっ?……くちゅっ…。

とろんとした姫子の瞳の中に、千歌音の血塗れの唇が色鮮やかに大きく映る。

姫子は、自分の口の中を、溶岩のような赤く生ぬるい液体が、溢れているのを感じた。
赤ワインのようにほろ苦い味わいと、鼻腔をくすぐる甘酸っぱい匂いまで、今は分かってくる。
生きている証の深紅の溶媒、それを自分の唾液とともにごくりと飲み下した。

喉の内壁を愛撫していくように流れて、体内の奥に溜まりこんでゆく、
この液体の感覚、どこかで……?


―――あ………っ?!

―――ピカッ! ザ―――ッ!


その刹那――。

姫子の頭に閃光のような衝撃が走って、何か複数のイメージの欠片が
情報の洪水となって押し寄せてきた。
断続的な記憶の切片が次々と連なっていて複数枚の画像に形をなす。
さらにそれは重なり合い連なって時系列に沿った、いくつかのシーンを色鮮やかに
再生した映像となっていく。
姫子の中で、見たことのある風景、愛しく懐かしい人々の顔を収めたフィルムが、
時間を巻き戻して廻り始める。

姫子はその記憶のフィルムの衝撃の光に、眩暈を感じて気を失った。

 

姫子の頭の中を幾つかの想い出がフラッシュバックしてゆく―――。


――……… ザ――――ッ。 ―――プツンッ―…………。


姫子が再び瞼を開いたとき、最初に目に映ったのは、
見覚えのある顔の輪郭と、赤く濡れて光る口元だった。

眼前の少女は、自分の身体を細長く白い両腕で抱えてくれている。
大きな涙の海をその瞳に浮かべながら。
みるみるうちに溢れ返るその雫が頬を幾筋も伝っては、止め処もなく流れ落ち、
姫子の胸元に垂れ込める。

二人の乙女の身体に、窓辺からの強く明るい月光が、神からの恩寵のように降り注いでいた。

姫子の太陽の巫女の証は、持ち主の未だ熱情さめやらぬ肌の紅潮と満月からの照射と
によって、一際くっきりと、ひとつずつの火焔の揺らめきまでが遠目ででも分かるほどの
形をなし、色鮮やかに見えている。

月光に煌めく涙の一滴がタトゥーの上で撥ね返って、
そのタトゥーがその形のままに、太陽のように燦然と輝いた。

明敏な意識を保ったまま、姫子の記憶の中の、あの情景が一瞬の閃光とともに甦った―――…。


―――…胸元の痣の眩い輝きが薄らぐと、
姫子は泣いている黒髪の少女の頬に、そっと右手を差し伸べた。
その少女は、姫子のその掌に手を重ねて、自分の濡れた頬に引き寄せた。
重なり合った二つの掌の上も、涙の通り道となってゆく。

姫子の真っ赤に燃えた唇の動きから読み取れる、「その人」の名は………。

 

「千歌音ちゃん…。
 ……私、どうして貴女が泣いているのか、今ならはっきりと分かるの…」
「姫子…どういうことかしら?まさか…貴女……」

涙に濡れた千歌音の顔が、少し引きつった。
驚きで、思わず頬に当てた手が離れる。

「私、ついさっき夢の中で全部思い出したの。
 誕生日の千歌音ちゃんとのファーストキスと、河原での人工呼吸…
 そして遠い昔の「私たち」、月の巫女と陽の巫女の悲しい宿命……。
 私と千歌音ちゃんにとって何より大切なことだったのに、気絶か何かのショックで
 忘れてしまっていたの。
 ごめんなさい…私の記憶がないことが千歌音ちゃんを、今までこんなにも
 苦しめていたなんて………」

 

姫子の方が自らの無知と無理解を謝るので、千歌音の嘆きは諦めにかわる。

「…そう。とうとう知ってしまったのね。
 本当は私、姫子に前世の記憶は取り戻して欲しくなかったの…ファーストキスと
 河原でのキスだけ憶えておいてほしかっただなんて、私ってずるい女…。
 前世のことはずっと、自分だけの胸にしまっておこうと思っていたの…
 姫子を騙していて悪かったと思っているわ。
 知られるのが怖かったの、こんな残酷な私たちの運命を……
 せっかく転生したのに、再会したのに…いずれ二人のどちらかが、
 また死ぬために生まれてきたなんて……」

「前世の巫女たちにあんな真実があったなんて知らなかったの。
 私こそ気づいてあげられなくて、ごめんなさい。
 前世の陽の巫女の死で、千歌音ちゃんは……月の巫女である『貴女』は、
 ずっと自分を責めてきたんだね。
 生まれ変わってきてからも、ずっと一人で…でも、もう心配しなくていいの……」


腕の中の姫子が仰ぎ見て、手を再び差し出す。
千歌音の涙の乾ききっていない頬筋を、慰めるように撫でる。
その掌がすごく温かい。

「「『私』は『貴女』とこれからもずっと一緒にいるからね………」」

姫子の声が「誰か」の声とかぶって、こだまのように心に響いてくる。

 

その姿は、千歌音の脳裏に強く刻まれてきた、月の巫女に抱かれた陽の巫女の
最期の笑顔を彷彿とさせずにはいられなかった。
全ての不条理を許してしまえるような、あの慈愛に満ちた微笑を―――。

千歌音は湧き上がる涙を堪えるように、眉を寄せ、唇をぎゅっと噛み締める。
ひとりでに、心の中の「私」の声がこだまする。


  ――姫子のこの仕草と笑顔……あの時と「あの方」と同じ……。 
  私の腕の中の「あの方」は息絶える間際まで、こんなふうに
  余力を振り絞って私の頬を撫でて、私の心を慰めてくれたわ……。
  ただの一言も、自分の身体を貫いた血塗りの刃を手にした「私」を
  怨むことも、誰も責めることもなく。
  全てをご自分で悟って。一人だけでで背負って。

  「大丈夫。心配しないで………私は、これでいいから…悲しまないで
   …ありがとう…さ、よ…なら………」
  
  って、呟いて
  優しい笑顔を「私」に手向けて、逝ってしまった。

  命果てた「あの方」の身体が、いつまでも太陽みたいに暖かくて…
  「私」は絶対にすぐに生き返るものだと信じて、
  ずっとずっと口づけをしていた………
  
  何度も何度も私の息吹を送り続けていたのに………。
  「あの方」の唇はもう開くことはなかったの……

 

掠れるような声で、潤ませた瞳で、今の自分を取り戻した千歌音が答える。

「……前世では月の巫女が陽の巫女を姉のように慕っていたわ。
 それなのに『私』はオロチを倒した後に『あの人』を……。
 転生したら今度は絶対、私が陽の巫女になる女の子を守るって決めてたの…。
 それが姫子だった。姫子が運命の人で私は良かったの…。
 だからオロチの最初の襲撃や水難事故のとき、私は貴女を助けるのに必死だった。
 姫子の笑顔がまた見れるなら、その言葉が聴けるなら、私は命を捧げても惜しくはないと……」

「私も大好きな千歌音ちゃんが月の巫女で良かったよ。
 でも、千歌音ちゃんが月の巫女って分かる、そのずっと前から、
 私は千歌音ちゃんのことが好きだった。
 何でもできて何でも持っている素敵な「宮様」じゃなくて、私の前では、いつも等身大で
 素顔の自分を見せてくれる普通の女の子の「千歌音ちゃん」が大好きだから…。
 月の巫女と陽の巫女の因縁とか想いとかも大事だけど、
 私は今の千歌音ちゃんへの想いのほうが重要なの!」


姫子はきっぱり言い切って、真珠のような瞳で、真摯に千歌音の目を見据えた。


姫子の純粋な眼差しに、暗い回想で疼いた心が堪えきれずに、
千歌音は思わず伏目がちになる。

「本当は一人だけの苦しみと悲しみに満ちた歳月なんて、もうお終いにしたかったわ…
 でも、姫子を運命の業火に巻き込みたくなかった…もう二度と…」


姫子は千歌音の首に両腕を絡ませて、注意を惹くように、少しばかり憂いに沈んだ、
サファイアのような瞳の顔を覗き込んだ。

「貴女が気の遠くなるような昔から『心の社』に閉じ込めてきた想いと迷いと心の痛み…
 それが私にも今なら分かるの。
 これからずっと、私は千歌音ちゃんと想いを共有してゆくの」
 

天岩戸のように固く閉じられた心の扉に差し込んでくる光の声。
千歌音の瞼が大きく開かれた。

じっと見つめあう二人の乙女の美しい横顔が、月明かりに照らし出される。

「姫子…ありがとう。姫子の言葉で私は今やっと気づき直したの。
 思い返してみたの、現在の私の気持ち。
 陽の巫女の生まれ変わりだから、私は姫子を好きになったのではないの、
 今のままの姫子を愛しているんだということにね……」

 

千歌音の涙の乾ききった切れ長の瑠璃色の瞳が、姫子の明るく澄み切った瞳を、
優しく捉えている。
月の少女は、太陽の少女の折れそうなくらい華奢な腰にそっと両腕を回す。
今日何度も何度も、その身を強く優しく抱き締めた細長い腕としなやかな手つきで。

「生まれ変わる前の人生よりも、生まれ変わった後の人生のこと考えようよ。
 これからは、二人一緒で、ね?」

「そうね…これからが、私たちの新しい人生と恋のはじまりかしら」

「うん、うん…じゃぁ、その新しい人生のお祝いに…私からのプレゼント。
 千歌音ちゃん、私の『本当』受け取って!」

丸く大きなすみれ色の瞳の少女の、あの最高の笑顔が近づいてくる。

姫子は千歌音の唇に、甘くて蜜のように蕩けるキスをした。

「千歌音ちゃん、ハッピー・リバースディー! 私たち、生まれてきておめでとう!」

千歌音も姫子の唇に、負けないくらいの情熱的で盛大なキスをお返しする。

「姫子も、ハッピー・リバースディー! 私たち、生まれ変わってきてありがとう!」


そして、二人の少女は、明るく楽しく笑いあって、
しっかりと抱き締めあって、誓いあっては、語り合った。
キスではじまる姫子と千歌音の今日からの新しい人生と恋とを………。

 

―――その後。
二度三度の熱い抱擁を繰り返してからの、姫子と千歌音の寝物語。

今、二人の少女は身に一糸纏わずに、お互いの素肌で暖めあいながら、
ベッドに横になっている。
姫子に腕枕をしながら、千歌音が耳打ちするように語りかける。

「たしかフランス人女性の書いた哲学書で読んだことがあるの。
 『私たちは二度生まれてくる。最初は人間として。その次に女性として』って言葉をね。
 女の子にとっては、男性とはちがう女性、女性らしい女性として生きることが
 『第二の人生』なのよ。他のみんなも姫子も私も、それは変わらない事実だわ。
 でもね、私たちには、二人の間にしか分からない運命が、誰も知らない特別な人生があるの」

「うんうん、千歌音ちゃん。私も分かる。
 それがあるから、私たち何度も転生して、再会して、恋に落ちるんだよね」

「そうよ、姫子。私たちは今、いうなれば『第三の生』を生きているの、それはきっと………」

ひと呼吸おいて、二人の乙女は口を揃える。


「「神無月の巫女として」」


【終】

…じゃ、なくてエピローグへ続く。

【ED】♯「agony」by KOTOKOの脳内演奏をお願いします♪

 


Return Kiss おまけ

―――……ブ―――――ッ!  スルスルスル……ザワザワ……
(ブザー鳴って黒幕が下りてゆく。次第に照明が点灯しはじめる空間。漏れ聞こえてくる、ざわめきの声)

♪―場内アナウンス―♪
本日は、劇場版「神無月の巫女・ザ・ムービー―Return Kiss―」を長時間ご覧くださいまして
誠に有難うございました。館内が明るくなるまでは、他のお客様のご迷惑になりますので、お座席
をお立ちにならないようお願い申しあげます。また、お持ちになられましたご飲食物などのごみ類
や不要のパンフ等は必ず、各自でお持ち帰り下さい。
それでは、お手回りのお荷物・貴重品等お忘れ物なきようご留意の上、お足元にお気をつけてお帰り
下さい。次回のご来場もスタッフ一同、心よりお待ちいたしております。…プツンッ


ユキヒト「先生、先生!ほら、もう終わっちゃいましたよ、映画」ユサユサ…
    (隣席の長髪の男の肩を揺さぶって起こす)
カズキ 「パチッ… んんっ…?ああっ、ユキヒト君…いやぁ、実にいい映画だったねえ。
     感動ものだよ、ははは」
    (眠そうな瞼を擦りながら、うーんと背伸びをして肩を叩く)
ユキヒト「何言ってんですか、先生!ほとんど爆睡してたでしょ?!こんなに涎たらして
     大きなイビキもかいてたし…だいたい、先生が学割でチケット買いたいからって、
     こんなクソムービーに無理矢理つき合わされた僕の身にもなってくださいよ、もう!」プンプン…
カズキ 「はははっ、じゃ、もう行こうか」


――…館内を後にする怪しげな雰囲気のヤサ男二人組。

その背後では、パンフや紙コップをバサバサと盛大にスクリーンや地面に叩きつける音、
夥しい観客の「金返せ――ッ!ゴルァ!!」「ソウマ救済しろや!!ボケェー!」
「オロチ衆、完全ムシかい!チクショー!!」等の罵声が飛び交っていた……―――。

最終更新:2007年04月21日 17:44
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