姫千歌風呂 その2

 

神無月の巫女 エロ総合投下もの

姫千歌風呂 その2

 


「千歌音ちゃん…?」
 ――感じてる?
 呆けたままそんな事を聞いてしまって、当然といえば当然だけれど千歌音には否定されて
しまった。
「そんなこと…っ」
「でも、千歌音ちゃん…」
 この感触は、勘違いではないはず。
 そっと、千歌音の胸の先に触れさせた指を動かして尖ったそれを優しく撫でると、千歌音が
身体をそらして声を上げた。
「ふぁ…っ!あ…姫子…っ」
「やっぱり…」
 感じているんだ。
 そう思うと、嬉しいような、恥ずかしいような複雑な気分だった。
 腰に回した手に力を込めて許さないけれど、千歌音が姫子から離れようと身を捩った。
相当恥ずかしいのだろう、こちらを見ようともしない千歌音の肩は小さく震えている。
「千歌音ちゃん……っ」
 どうしよう。可愛すぎる。
 震える首筋に頬を寄せて、強く抱きしめなおした。どんなにぎゅっとしても、足りない。
 身体の奥から湧き上がってくる熱と欲望にじりじりする。
 もう我慢の限界だった。
「姫――んんっ!」
 顎を捉えて上向かせると、柔らかい唇を貪った。ぎゅっと閉じられた目の端には僅かに
光るものがあって、それがまた激情に拍車を掛ける。
 ――こんなの、反則だよ千歌音ちゃん。
「ごめんね…っ、千歌音ちゃん…」
 唇を啄ばんで、口内を舌で愛撫するその合間に言葉を紡ぎ出す。


「ん、はぁ…、んん…っ、…姫子?」
「私、もう我慢できないよ…。その…」
 身体に巻いていたタオルを解いて、千歌音の背に抱きついた。あまり大きくはない胸が、
千歌音の背との間に押し潰される。
 伝わっているだろうか。胸の様子、心臓の鼓動が。
「あ…。姫子…も…?」
 呆けた千歌音の声に、僅かに安堵の響きが混じる。
 恥ずかしかったけれど、こくりと頷いて姫子は千歌音の唇を塞いだ。
「ん……ぁふ…、ん…っ」
「…っ。…千歌音ちゃん」
 キスを交わしながら、両胸に這わせた手でその先端を愛撫していく。ふと思い立って
ボディソープを直接手に取ると、豊かな胸に塗りつけた。
「ふぁ、あっ…!?」
「千歌音ちゃん…善くしてあげるね。…ううん、させて」
 ぬるぬるのボディソープは潤滑油の役割を果たしていて、多少強く揉んでも大丈夫
のようだった。
滑って上手く掴めないから痛みはないようで、込められた力の分だけ強い刺激に変わる。
「んく…っ、あぁ……んっ。だ、駄目…、こんなところで…姫子…っ」
 くにくにと先端を揉んでいた手を片方、滑らかな肌で石鹸を擦り落としながらお腹の方へ
下ろしていく。
「駄目なの?でも……ほら、千歌音ちゃん」
 ぬるり、と左手に熱く濡れた感触。そっと秘裂にそって指を奥に滑らせると、千歌音の
腰が引いて姫子の腕を抱え込むように前のめりになった。身体を捻ってこちらを見上げてくる。
 何かを懇願するような眼差し。何度も見覚えのあるそれは姫子の背筋をゾクゾクさせた。


「…ベッドに行きたいの?」
 胸と秘所を愛撫しながら、うなじに口付けて囁いた。ぎゅっと姫子の腕にすがりつき
ながらこくこくと頷く千歌音の唇からは、抑えきれない甘い吐息が漏れている。
 そんな表情が、艶かしい姿態がますます嗜虐心を煽るのだと、どうして千歌音は
気付かないのだろう。頭の回転の速い千歌音なら分かりそうなものなのに、何度
夜を繰り返してもこれに関してだけは学習が無い。
 ――それとも、誘っている?

「でも、これから身体洗って、服着て、寝室に戻って…それまで我慢できる?」
 千歌音は迷った末に微かに頷いたけれど、少なくとも姫子は出来ないと思った。
 こんなに可愛い千歌音を見せつけられていて、燻っている熱が上がりこそすれ
下がることは無い。
「私は無理かな…。だって、千歌音ちゃん…すごく可愛い」
 責任は取ってもらわないと、と姫子は自分でも呆れるくらい勝手なことを考えながら、
千歌音の首筋に唇を這わせていった。千歌音はなんだか泣く様な声を出して身悶えた。
「ぃ、んん…っ」
 秘所に這わせた手でゆっくり敏感なところを撫でながら、暴れる千歌音の腰を抱える。
「椅子、危ないから取っちゃおうか。ちょっと腰上げて?千歌音ちゃん」
 椅子をどけると、タイルの上に腰を下ろした姫子の脚の間に座らせた。浴室の温度に
温められているタイルはそれでも上気した肌より冷たくて、千歌音の身体がびくりと跳ねる。
「ね…千歌音ちゃん、どうしたらいい?」
 腿で千歌音の腰を挟んで、逃がさない。
 本当は、千歌音に訊ねるまでもなく姫子は千歌音の弱いところなんて知り尽くしている
から、的確に其処を愛撫することが出来る。
 それでもこう意地悪するのは、もっと可愛い千歌音を見たいが為だ。
 姫子の思惑通り千歌音は泣きそうな顔をして首を左右に振ると、更に身体を捻って
姫子の肩口に頭を押し付けてきた。


「恥ず…かしい…っ」

 足腰に力が入らなくなってしまうくらいにゾクゾクする。
 姫子は、背筋を快感が這い上がってくる感覚に身を震わせた。
「千歌音ちゃんは恥ずかしいと感じちゃうんだね。私、我慢してちゃんと洗ってたのにな…」
「や、や…ぁっ」
 鏡を見れば、そこには秘所と胸を愛撫されて悶えている千歌音の姿が、正面から
映し出されている。
 綺麗だった。

 姫子は千歌音を抱き直して正面を向かせると、千歌音が動きにくいように肩に顎を乗せた。
「千歌音ちゃん、もうちょっとこっちに体重かけてくれる?」
 もう抗う気力も無いのか、目を閉じた千歌音は大人しくそのまま姫子の手にされるが
ままになっている。こうすると、より一層千歌音の裸体が露に照らし出された。
 硬く尖りきっている先端を転がして刺激しながら、豊かな胸を揉んでしばし感触と反応を
楽しんだ。

「――ここで、して良いよね?」

 

 迷った末に、千歌音はこくりと頷いた。
 こんな場所で、明るい中で――という羞恥心はあるのだけれど、それ以上に身体の
疼きが耐え難いものになりつつあった。
 それに、姫子も興奮して、感じてしまっているから。
 千歌音だけがそうなのだったら、恥ずかしくてとてもこんなところでの行為は許容でき
ないけれど。姫子もそうなのだ…という事実は、千歌音の心をひどく容易に柔らかくする。

 風呂場で電気を消しては危ないから、明るいのだけはどうしようもない。目を閉じて
何も見えないようにしていても、瞼越しに感じる明るさに恥ずかしくなってくる。
「千歌音ちゃん…。千歌音ちゃんの身体、凄く綺麗」
 千歌音は視界を遮って何も見えない。けれど、もちろん姫子は目を閉じてくれないから
そういうわけではない。その上このような事を言うなんて意地悪だと思う。

「姫子…お願い、見ないで…っ」
「やだ。だって、私ね、千歌音ちゃんの裸こんなにちゃんと見るの初めてなんだもん」
 ふにふにと、姫子の指先が千歌音の胸先を摘まんで揉んだ。嬲るように。
「ぃあ…っ、ずる……いぃ…っ」
「じゃあ、目を開けて?私、千歌音ちゃんみたいに綺麗じゃないから恥ずかしいけど、
見ていいよ」
 戸惑っていると、姫子が耳元でくすくすと笑った。
 先ほどから姫子の手は、後ろから千歌音の胸に回されていて、柔らかく愛撫を続けている。
 気持ち良いけれど強くは無い刺激の連続に、少しずつ慣れて呼吸も落ち着いてきた。
代わりに、それ以上を求める切ない疼きがじわじわと身体の芯から湧き上がってきて
いるのが分かる。

「もったいない事したなぁ…。こんなに可愛い千歌音ちゃんが見られるなら、
もっと早くこうしておけば良かった」
「…っ」
 居た堪れなくなって身体を隠そうと背を丸めると、姫子に腕を取られて遮られた。


「あ、千歌音ちゃん右手挙げておかないと、包帯濡れちゃう。…そうだ、身体洗ってる
途中だったね」
 と、何の名残も無しに姫子の手が胸から離れた。
「――えっ?」

 ここで、すると言っていたのに。
 驚きと焦燥に千歌音が目を開けると、姫子がにっこりと笑って千歌音の右側に座り
こんで、支えるように背中に手を回してきた。千歌音の右腕は姫子の首に回させられる。
「あ――」
「洗ってあげるね、千歌音ちゃん」
 焦らされて熱を持った身体を持て余していたけれど、千歌音は頷くしかなかった。
千歌音から続きの催促をするなんてはしたない事、出来るわけがない。
 姫子の手がもう一度スポンジを取って、ボディソープを多目に泡立てる。
 それを胸から腹、脚へと満遍なく滑らせていく。

 すぐに全身が白い泡にまみれた。
「ん…っ、んん…」
 必死に声を堪えていると、スポンジが身体から離れて。
 洗い流してもらえるのだ、とホッとしたら、今度は直接に姫子の手が肌に触れてきた。
「ゃんっ…!姫…子!?――んっ、く、あっ、ああ……っ」
 石鹸でぬるぬる滑る奇妙な感触は、これまでに経験したことの無いもので。
「暴れちゃ駄目だよ、千歌音ちゃん」

「ふぇ、…っあ、あぁ…、んっ!んん…っ」
 引き寄せられるままに姫子の胸元に額を寄せて、その首に両腕でしがみついた。
それでもどうしても湧き上がる快感に堪えられなくて、各所を撫でられる度揉まれる度に
身体が跳ねてしまう。


「もうそろそろ流して良いかな…」
 姫子がそう言ってシャワーの栓を捻って千歌音の身体を洗い流す頃には、
すっかり全身から力が抜けて、息が上がってしまっていた。

 どれくらいの間堪えていたのだろう。敏感なところに触れてもその表面を
撫でるだけで、決して強くは刺激してこない姫子の手に。
 達するには至らない、じれったい快感が全身を妙に過敏にしてしまっていて、
泣きだしてしまいそうな気分だった。
 頭がぼうっとする。全身が熱くてぐったりする。
 身体の芯が、はしたなく疼いている。

「姫…子…。お願い…だから、もう…っ!私、これ以上は……」
「我慢できない?」
 嬉しそうに笑って姫子が言う。
 なまじ邪気が無いだけに性質が悪い。

「お願い……」
「可愛いおねだりだね、千歌音ちゃん」
 笑いながら顔を寄せてきて、唇を塞がれた。背中に回された手が一層千歌音を
引き寄せ抱え込んで、横抱きされる形になる。
 千歌音は、抗議の意を込めて肩口に強く額を押し付けた。
「そんなにしがみつかれたら、出来ないよ千歌音ちゃん」
 姫子がくすくすと笑って、少し身体を離した。
 そんな事を言いながら、手はしっかり内腿を撫でさすっている。

「あ…、……っ!」
 それがじわりじわりと上に移動してきているのを感じながら、千歌音は姫子の
肩口に唇を押し付けて、じれったい快感にただ耐えた。


「ん、ふっ……千歌音ちゃん、私のお願いもきいてくれる…?」
 千歌音の熱い唇がいきなり肌に触れて、一瞬びくりとした。愛撫する手が
止まらなかったのは幸いで、千歌音には気付かれずに済んだようだけれど。
「ん……」
 赤子のように肌に吸い付いたまま、千歌音が鼻にかかった声を漏らす。
 熱いのは、千歌音の唇ではなくて、きつく吸われた肌なのかもしれない。

「目、開けて」
「っ…!…ん」
 しばしの逡巡の後、千歌音は薄く目を開けてそのままこちらを上目遣いに
見上げてきた。
 声を抑えるためだろう、唇はそのまま肩に押し付けているから、その仕草は
なんだか幼くて可愛らしい。そのまま目を伏せる表情が艶かしくもあった。
「……っ」

 ――自業自得だよ、千歌音ちゃん。

 もっと焦らして。
 もっと可愛い千歌音を見たい。

 なかせて、みたい。


「うん…そのまま、前見て」
「――っ!」

 千歌音の前方には、鏡がある。
 浴場でも曇ったりなんかしない、高級な磨きこまれた鏡が。

「ね?千歌音ちゃんの身体、綺麗でしょ?」
 ぴたりと動きを止めていた千歌音が、ハッとして視線を背けると、姫子の胸に
押し付けるように頭を振った。
「あ、駄目だったら、千歌音ちゃん。ちゃんと見て」
 脚の付け根を撫でていた指で、千歌音の敏感な突起をぐいと押し込んだ。
「ん、ああっ…!」
 いきなりの刺激に千歌音の身体が跳ねた。

「姫…子…っ!やめて…」
「あれ?止めて良いの?」
「それは…そ、その…だけど。でも、こんなの…恥ずかしくて、どうにかなってしまう」
「…良いよ。どうにかなっちゃっても、ちゃんとお部屋まで運んであげる。
……今日は千歌音ちゃんのお世話するって決めたんだから」
「姫…」
「ね、だから千歌音ちゃん。ちゃんと鏡見て?じゃないともっと意地悪しちゃうよ」
 指先で、蜜に濡れた突起を転がす。千歌音が敏感に身体を跳ねさせるのが
面白くて可愛い。

「や…っ」
「そっか、意地悪されたいんだ…。千歌音ちゃん、恥ずかしい事されると感じちゃうんだもんね」
「そんなこと…な…っ、あ、あぁ…っ!」
 秘裂に沿って指の一本を滑らせると、溢れる蜜が絡み付いて淫靡な水音を立てた。


「ほら、さっき洗い流したのに、もうこんなにとろとろになってるよ。
これでも、そんな事言うの?」
「くふ、はぁ…、あっ、んぅ…」
「もう…千歌音ちゃん」
 背中を支えていた手を下に滑らせて、お尻の下から熱い蜜を掬い上げる。
そのまま指を少し引いて、其処にあてがった。
「えっ!?」
 途端、びくりと千歌音の身体が跳ねて背筋が伸びる。
「やだ、駄目っ……姫子!其処は違う…触ってはだめ…!汚いから……」
「汚くなんか無いよ。だって千歌音ちゃんだもん」
 先ほど洗ったばかりなのだから汚いはずが無いけれど、汚いのだと言うのなら
なおの事綺麗にしなければ。
ここは風呂場で、千歌音の身体を洗うためにきているのだから。

 緩々と撫で回して蜜を馴染ませるように擦ると、その度に千歌音の腰が指から
逃げるように浮いた。
「ふぁ、んんっ!あ――」
「わ、千歌音ちゃん、えっちぃ…。こっちの方が感じちゃうんだ……」
「――っ!」
 激しく首を振る。
 姫子の指先には、其処がひくひくと脈動しているのが感じられる。緊張してきつく
締まる其処は、それでもぬめる蜜の助けを借りた指の侵入を容易く受け入れた。
「あ――」
 楔を打たれたように千歌音の背が伸びて、身体が強張る。

「お願い…抜いて…っ」


「だめ」

 中でくにくにと指先を動かして、きつい其処を段々と馴染ませていく。
「あ、つぅ…ッ!姫子…動かしちゃ、あ、だめ……」
「ね…鏡見て、千歌音ちゃん」
 千歌音がようやく鏡を見る。居た堪れないように視線をさまよわせながら
だったけれど、姫子がさらに指をくねらせると顔を前に向けた。
「や…ああっ…」
「目、閉じちゃ駄目だよ、千歌音ちゃん」
 言いながら、くい、と千歌音の後ろに差し入れた指を動かす。
「くぅ、ん…っ!」
 声と共に、千歌音がぎゅっと目を瞑った。
「あ、駄目だったら」
「ふぁ…っ、ああっ姫子…っ、だって今のは…、あっ!…ん、ぅ…ん、はあ…ぁ」
 段々と千歌音の声に甘い響きが混じって、抵抗から力が抜けていく。

「こっち、ほんとに感じやすいんだ……」
「いやぁ…っ」
「今更いやって言っても、説得力ないよ、千歌音ちゃん」
「んん…ッ!違うの…だって、こんな」
「ぅん…」
 ぴたり、と指を止める。すると千歌音の腰が僅かに求めるように揺れて、
でもそれは見なかった振りをしてあげた。
「……っ」

「ね?千歌音ちゃんの身体、綺麗でしょ?」


「そんな事…ない…っ」
 目を背けたくても背けられなくて、千歌音が泣きそうになりながら精一杯の
抵抗を口に出す。
 潤んだ瞳が、目の縁に溜まった今にもこぼれそうな涙が、姫子の劣情を激しく煽る。
 下腹部がどくりと脈打つ感じがして、まだ一度も触れられていない秘所が
じりじりと疼いた。

 首に回された右手はそのままに、肩を開いて千歌音の身体を正面から鏡に
向けさせる。
「これから、教えてあげるね。千歌音ちゃんの綺麗なところ、可愛いところ、
気持ちよくなれるところ」
「姫、子…、恥ずかしいから…っ、お願い、普通に…」
「でも、せっかくお風呂場に居るんだもん。ね?」
 千歌音の身体に一瞬力が篭る。
 けれど、そんな可愛らしい抵抗は指先一本で封じることが出来るのだ。それをもう
千歌音も分かっているから、泣きそうになりながらも千歌音は鏡を見つめ続ける。
 それを鏡で確認しながら、姫子は千歌音の身体に手を這わせていった。

 鏡に映る千歌音の裸体の美しさに、ほうっとため息をついた。
「全然無駄なお肉がなくって、ウェストなんてこんなに細い…良いなぁ」
 腹部を撫でる手を、そのまま上に滑らせた。
「それなのに、お胸はこんなに大きいし、形もいいし……」
「あっ…!」

「可愛い。ね、千歌音ちゃん……千歌音ちゃんのここね、ちょっと撫でるとすぐ
かたくなっちゃうんだよ。――ほら」
「ふぅ、ぅんっ、く、あぁ…っん」
「赤くなって、可愛い。こってるね…揉みほぐしてあげよっか」


 そうして説明しながら、姫子は次々に千歌音の身体を愛撫していった。
 感じやすいところ、綺麗なところ、姫子が好きな身体の部位。
 しばしば千歌音は羞恥と快感に目を瞑って、それが長くなると後ろに
差し入れた指先で牽制した。

「うん…それでね、こっちが――」
「あっ、や、いやぁっ……!」
 内腿に手を滑らせて、少し力を込める。
と、それまで隠れていた秘所が鏡に映されて、千歌音は悲鳴を上げた。

「千歌音ちゃん、脚開いて?」
 くにくにと左手の指先を曲げて合図する。
「ふぁ……ぁん、ふぅ……ん…っく、ぅう」
捩じるような動きを付け加えると、千歌音はもうほとんど泣いていると
言ってもいい声を上げながら、少しずつ脚を開いていった。

「――綺麗」


「や、ぁ…っ、ああっ!」
 羞恥に堪え切れなくなって千歌音が頭を振ると、
「千歌音ちゃん…可愛い」
 額に口づけて千歌音を抑えながら、姫子が言った。途中からは姫子の手を
借りて大きく開いた脚の間からは、これまで自分では見たことも無い部分が
明るい照明の下、まざまざと照らし出されている。

「……っ」
 恥ずかしい。消えてしまいたい。
 こんな風にはっきりとその部分を見たのは、初めてだったけれど。
 其処は、とても――
「綺麗だよ、千歌音ちゃん」
 思考を、まったく正反対の言葉で姫子が遮る。熱に浮かされたような、ため息と
一緒に吐き出されるような、そんな掠れた声。
 千歌音は首を振る。けれどもそんなのが今の姫子に通じるわけが無い。
普段は気弱なくせに、こういうときだけはいつも姫子は強気で強引なのだ。
「ホントだよ。…嬉しいなぁ。いつもは、お部屋が暗いから、こんなにちゃんと
見られないでしょ?」

 本当は、暗がりの中でさえ姫子にこんなところを曝け出すのは恥ずかしい。
 でも、姫子がどうしてもと求めるから。求めてくれるから。
 逃げ出したい気持ちを必死に抑えて、いつもそれを許容する。
「見ないで…っ」
 それでも、忍耐強さには自信があったけれども。あまりにこれは恥ずかしい
行為だった。
 姫子は酷薄に笑って、鏡の中の千歌音から、千歌音に視線を移す。

「――い、や」 


「姫子……っ!」
「赤くなって、ちょっとふっくらしてるでしょ?千歌音ちゃんが感じてる時ってね、
いつもこうなってるんだよ」
「い、いや…そんなの言わないで」
 姫子は無情にも指で其処を左右に押し開いて、完全に露出させていく。

「――ここが、甘いおつゆが出てくるところ」
 くちゅくちゅと掻き回されて、腰が踊る。それで一層刺激が増してしまうけれど、
姫子がまだ最後までしてくれる気は無いのだと分かるから、必死に腰を抑えて堪えた。
「こうして中に入れてね…ん、っと、このあたり」
「んぁ、は……、あぁ……あっ!」
 姫子がなかで指先をぐいとお腹側に曲げて、千歌音の反応を見ながら探っていく。
「んくぅ…っ!うぁ…っ、あっ!――ああっ!」
「ここを強く押し上げたり、揉んだりするとね…。――千歌音ちゃん、目、開けて」

 目を開けると、姫子があいた指で千歌音の一番敏感な処を露出させた。
「っ!あ……っ」
「動いちゃ駄目だよ、千歌音ちゃん。――ね?分かるでしょ?なかの…このあたりを
強くいじるとね、千歌音ちゃんの此処…」
「聞きたくない…っ、やめて姫子…!」

 聞かなくとも、一目瞭然だった。
 姫子の指に露にされたその敏感な肉芽は、いやらしく充血して膨らんでいる。
 姫子はくすくすと笑った。嬉しそうに。
「すごく敏感になっちゃうんだよ。どっちか片方いじるより、何倍も反応してくれるの」
 それを証明するかのように、姫子が内壁をぐいと揉みあげながら、開いた指で
肉芽を軽く転がしていく。
 それだけで、もう千歌音は軽く達してしまいそうだった。其処から快楽の波がじわじわと
広がっていく。


「可愛い……。千歌音ちゃん」
 なのに、姫子は愛撫する指を止め、なかからもするりと指を抜いて離れていってしまった。
「あっ…」
 その感覚が狂おしいほどに切ない。多分このまま最後までしてはくれないのだろうと、
分かっていたはずなのに。
 頬を涙が伝う。
「ちょっと意地悪だったかな…でも、可愛いよ千歌音ちゃん」
 流れる涙を、姫子が唇で拭い取る。

 恥ずかしくて、姫子にそんなところを見られるのが居た堪れなくて、なのに身体はもう
自分の思うとおりにならなくて。涙を堪えることが出来なかった。
 続きが欲しいのに、姫子の指に身体を鎮めて貰いたいのに。
 千歌音がどんな状態か、多分千歌音よりもずっと分かっているはずの姫子は、少しずつ
しか望むものをくれず、千歌音を辱めていく。千歌音の悶え乱れる様を楽しんでいる。

 なのに、鏡の中の姫子は、微笑んでいるから。
 だから千歌音には姫子を責める事が出来ない。
 千歌音に意地悪する時の姫子は、生き生きしていて、細められた瞳と嬲る声音には、
それでも確かに千歌音への気持ちを感じ取ることが出来るから。

 そんな姫子が見られるのは、掛け値なしに嬉しいことだったから。

「――姫子…」
「なに?千歌音ちゃん」
「…して。姫子が欲しいの」
 多分、これを言わせたかったのだろう。姫子は満面に笑みを浮かべて唇を近づけてきた。
「大好きだよ、千歌音ちゃん」


 ――ふ、と気がついて目を開くと、千歌音は温かい湯に浸かっていた。

 姫子に後ろから抱えられ右手はしっかり湯船の外に出されている。
「……ん…」
「あ、気がついた?千歌音ちゃん」
「姫子…」
 姫子の声を聞いて、我に返った。まだぼうっとしている頭を必死に回転させながら、
姫子の腕の中から逃れて身体を離した。目覚めたばかりの頭は思うように働かなくて、
いまどういう状況に置かれているのか把握するのに難儀した。
 姫子が残念そうに手を伸ばしてくるけれど、今はそれどころではない。

 怪我をして、姫子と浴場に来て、姫子に身体を――
 身体を洗ってもらって。なんだか身体がおかしくて、姫子に意地悪されて。

 ――あの後、どうしたのだったか。

 いやらしくねだって、はしたなく腰を振って。
 恥ずかしいことに大きな声を上げて――
「……っ」
 立て続けに何度も達せられてしまって、気を失ったのだ。

「可愛かったよ、千歌音ちゃん」
 姫子の腕が、千歌音を軽く抱きしめてくる。悪びれもせずに。


「…姫子」
「ごめんね、ちょっと最後やりすぎちゃった。身体つらい?」
 ごめん、と謝りながらも姫子の声は嬉しげで楽しげだった。

「……やりすぎたのは最後だけ?」
「…うーん…」
 困ったような笑顔を浮かべて、姫子が視線を彷徨わせる。
「でも、その…よかったでしょ?」
「…っ、それを、私にきくの?」
「ごめんね。でも、私はすごく満足。あのね、すごく素敵だったよ、千歌音ちゃん」
 まわした腕に一瞬力を込めて、姫子が本当に満足そうに幸せそうに笑った。
「……」

 姫子はずるい。
 あんなに意地悪をしておいて、泣かせておいて。
 今回ばかりは終わったら沢山文句を言って、反省してもらうつもりだったのに。
 結局、こんな笑顔を見せられたら千歌音が姫子を責められるはずが無いのだ。
 姫子の笑顔一つ、求めてくれる心一つで、容易く千歌音の心は嫌と拒絶する事を
放棄する。
 病的とさえ思うけれど、姫子が望むのならすべて受け入れてしまうくらいに、
姫子に魅せられている。


「ね、千歌音ちゃん。…またお風呂で千歌音ちゃんの身体洗って良いよね?」
「――」

 こうして、どんどん千歌音は姫子に主導権を明け渡していってしまうのだった。

最終更新:2007年04月21日 20:48
ツールボックス

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